仮面ライダークロス 第十六話 Mの狂気/カオスな文化祭
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テメンニグル学園。

文化祭まであと一週間を切ったこの学園は、やはり様々な準備の関係もあって慌ただしかった。

特に学級委員であり、生徒会役員でもある彼、バージルは大忙しだ。本当に毎日が忙しく、てんてこ舞いを強いられている。だが、彼はそんな中にこそ、生きがいを見出だしていた。

ただ、数日前に起きたバイオハザード、あのことが彼の脳内にいつまでもとどまり続けている。あんなウィルスが自然発生したとは、到底考えられない。ともすれば、撒き散らした犯人がいるはずだ。しかし何のために?愉快犯にしては度がすぎている。下手を打てば人類が絶滅するところだったのだから。

ならばテロか?それならつじつまが合うが、一番の問題点がある。父、スパーダが全て処分したはずのT-ウィルスが、なぜ残っているのか…あれがなければM-ウィルスが生まれることもなかったし、あのような…ムスカゾンビ、略してムスゾンが大量発生するような、バイオハザードが起こることもなかった。

(もしや、テロの主犯はアンブレラ社の科学者か?)

バージルがそういう考えに行きついた時、バイオハザードよりさらに前に起きた事件が、彼の脳内に呼び起こされた。

 

ジェイル・スカリエッティ脱走事件。

 

ほんの数ヶ月前まで教師としてテメンニグル学園にいたこの科学者は、クローンや戦闘機人の研究などの違法行為を行っていたがために、仮面ライダーアクセル、照井竜に逮捕された。

しかし、彼は数週間ほど前に脱走し、現在行方を眩ましている。

(……まさかな)

バージルはスカリエッティが関与していることを考えたが、さすがにそれはないと思った。考えられない話ではないのだが、しいていうなら理由がないからだ。

人間をムスゾンに変えるウィルスなど、作ったところで何の意味もない。スカリエッティであっても、そんな日合理的なことはしないはずだ。

とりあえずこのことは忘れて、今は準備に専念しよう。バージルがそう思って、用具運びを手伝いに行こうとした時、

 

「あ〜、かったり〜」

 

その声が聞こえた。

 

 

 

 

またか、と思いつつ、俺は声が聞こえた方、3年B組の教室に行く。

そこにいたのは、煙草をふかしながら缶コーヒーを飲む、銀八だった。ちなみに、他のクラスメイトは外の準備に出払っているため、今このクラスにいるのは銀八一人しかいない。

俺はため息をつく。

「毎年恒例だから別に珍しくもないが、相変わらずやる気がないな銀八。少しは他の教師連中を見習って、準備の手伝いをしようとは思わんのか?」

「思わないね。」

即答か。まあ、わかりきっていたことではある。それで、次は『俺、文化祭嫌いだから。』か?

「俺、文化祭嫌いだから。」

やはり…これもわかりきっていたことだがな。

 

さっきも自分で言ったように、この男は文化祭が嫌いだ。準備などまるで手伝おうとはせんし、いつもこんな具合にさぼっている。好き嫌いの問題ではないだろうに…。

「全く…文化祭の何がそんなに気に入らんのか知らんが、働いていない教師は貴様だけだぞ。それでは他の生徒に示しがつかんだろう」

「いいんだよ別にそういうのは。やりたい奴だけ勝手にやってろ。」

よくこんな奴が教師になれたな。俺は未だに信じられん。

「やりたいやりたくないの問題ではない。今やるべきことだからやっているのだ」

「真面目だねぇお前は。俺にゃあ無理だわ」

真面目不真面目の問題でもないがな。

「大体、何で文化祭なをかあるんだよ…文化祭なんざ全世界から消えてなくなっ…!?」

いい加減苛つきが我慢の限界に達した俺は閻魔刀を抜き、その切っ先を、教師という仮面を被ったダメ人間の喉元に突き付け、黙らせた。

「くだらん願望をグタグダ呟いている暇があったら、とっとと働け。」

「や…ちょっと落ち着こうよ。それより、お前の弟だって働いてねぇぞ?それはいいのか?」

「何?」

俺は銀八に言われ、窓の外を見る。

 

校庭に生えている木の上で、ダンテが昼寝に興じていた。

 

「ダンテェェェェェェェェェェェェ!!!」

俺は我を忘れて窓から飛び降り、ダンテに斬りかかった。

「うおっ!?何だ!?」

ダンテはすぐさま目を覚まし、木の上から飛び降りた。俺もダンテを追って飛び降りる。

「ど、どうしたんだよバージル!」

「黙れ我が家の恥さらしが!!今すぐその首をはねてやるからそこに直れっ!!!」

当然そんな俺の申し出を受けるはずもなく、

「じ、冗談じゃねぇ!」

ダンテは逃げ出した。

「逃がすか!!」

俺もダンテを追う。

首をはねるまではせんが、全身を嫌というほど斬り刻んでくれる。覚悟しろダンテ!!

 

 

 

 

 

僕は一真と一緒にアーチを作っていた。

すると、

 

「落ち着けってバージル!!」

「逃げるなダンテ!!」

 

そんなやり取りが聞こえてきた。

僕と一真が声のした方向を見ると、全速力で逃げるダンテを、バージルが閻魔刀を振り回しながら追いかけているという、なんともシュールな光景が目に入った。

「ど、どうしたんだ、あの二人?」

「大方、ダンテが準備をサボってて、それを見つけたバージルが、ダンテを粛清しようとしてるんでしょ。」

粛清か…我ながら、嫌な言葉を使ったなぁ…。

「粛清してやる!!」

…そうでもないかも。

とりあえず命懸けの鬼ごっこを続ける理事長の双子の息子達を無視し、僕と一真は再びアーチ作製に取り掛かった。

 

 

 

 

 

全く、今日は疲れた。

愚かな弟と鬼ごっこをするハメになったり、その後もサボり続けるダメ教師を本気で斬り捨てかけたり、俺の心労は溜まる一方だ…。

「そう気を落とすなよバージル。」

誰のせいだと思っている?俺はまた閻魔刀を抜きかけたが、精神的疲労のうえに肉体的疲労まで重ねるのは嫌だったので、ダンテの言うことは全て無視することにした。

ダンテの戯れ言を無視しつつ、俺は家路を行く。我が家はもう目の前。

「ただいま〜」

先に入ったのはダンテだ。俺も続いて入る。

「おかえり、ダンテ、バージル。」

ダイニングに入った時、お袋は何かの作業をしていた。

「お袋、それは?」

俺が尋ねると、お袋は答える。

「バースデーケーキを作ってるの。あなた達は今日、誕生日でしょ?」

誕生日?今日だったのか?すっかり忘れていたな…。

「もうすぐできるから待っててね。」

「ああ。」

「おう。」

俺とダンテは交互に返事をし、自分の部屋に行く。

 

 

 

 

 

ダンテとバージルが帰宅して数時間後、スパーダが帰宅し、小さな誕生会が始まった。

「ダンテ、バージル。誕生日おめでとう」

エヴァが祝福する。

「素直に感謝させてもらうけど、そんなに気を使わなくてもいいんだぜ?」

「もう誕生日を祝ってもらうような歳でもないしな。」

「そう言うな。今回は私から誕生会を開くように言ったのだ」

スパーダから告げられた言葉に、二人は少し驚く。珍しいこともあるものだ、と。

「実はお前達に、渡したいものがある。お前達がかねてからほしがっていたものだ。」

「俺達がほしがっていた?バージル、そんなもんあったか?」

「…いや、記憶にないが…」

互いに顔を見合わせるダンテとバージル。すると、スパーダはトランクを取り出して、テーブルの上に乗せた。

「開けてみろ。誕生日プレゼントにはちょうどいいはずだ」

「…じゃあ。」

ダンテは不審に思いながらも、トランクを開ける。

「これは……ドライバー?」

「ガイアメモリもあるぜ…」

中に入っていたものを見て交互に驚くバージルとダンテ。

入っていたのは、ドクロの形状をした二つのドライバーと、Sと書かれた青いガイアメモリに、Bと書かれた赤いガイアメモリだった。

スパーダが説明する。

「ソウガドライバーとスラッシュメモリとブラストメモリ。私がお前達のために造ったドライバーと、ガイアメモリだ。」

「ソウガ、ドライバー…」

ゆっくり呟くバージル。ダンテは尋ねた。

「これを使えば、仮面ライダーに変身できるのか?」

「ああ。」

スパーダは肯定した。そこで、エヴァが思い出す。

「そういえば、二人とも仮面ライダーになりたいって言ってたわね。」

そう、二人は仮面ライダーになりたがっていたのだ。

彼らは仮面ライダーではないため、ドーパントをメモリブレイクする方法が、ピンポイント攻撃に限られてしまう。だが仮面ライダーになればメモリブレイクの方法も増え、その分幅広く、より迅速な戦闘が可能になる。もっともそれはバージル側の意見であり、ダンテ側としては、ライダーになって戦うのが面白そうだからというのが理由だが。

本当に、思いがけない誕生日プレゼントだった。

「使用法を教えよう。」

スパーダはソウガドライバー、スラッシュメモリとブラストメモリの使い方を、二人に教えた。

 

 

 

 

 

空中都市。

ウーノはスカリエッティに告げた。

「現在システムを80%まで解析。完了まで、あと二時間です」

「ふむ、予定通りだね。このまま行けば、何の問題もなく計画を実行できるだろう。」

そこへ、一通り空中都市を見学していた井坂が戻ってくる。スカリエッティは声をかけた。

「井坂先生。もうすぐですよ」

「…そうですか…」

「あ〜らぁ〜?ずいぶん元気がなさそうですけど、大丈夫ですかぁ〜?」

クアットロは井坂の体調を気遣うが、

「問題はありませんよ。ええ、ありませんとも…」

井坂は、どう考えても大丈夫ではなさそうな感じで返答する。

彼が不調な理由はいたって簡単。大いなる力が手に入ると聞いてついてきた結果が、期待外れだったからである。井坂はガイアメモリが手に入ると思っていたのだが、実際はそうではなく、この空中都市だった。ガイアメモリ一筋である井坂にとって、これはなんともつらい事実だ。

と、ムスカがやって来てスカリエッティに言う。

「どうかね?素晴らしいだろう。井坂君の手を借りて、ついに復活を果たしたのだ。ベルカよりさらに前の時代、世界を征服していたこの超古代帝国『ラピュタ』がね」

「ええ、とても素晴らしいものですよ。あとはシステムを解析し、我々全員で使用可能に設定すれば…」

実はムスカは、このラピュタという空中都市を制御するために必要な『飛行石』という石でできたペンダントを持っており、ムスカ一人でならラピュタを制御できた。しかしそれでは意味がないため、こうしてシステムを解析し、全員が使えるよう設定を行っていたのだ。

「ふふふふ…はっはっはっはっ!!」

ムスカは笑いが止まらない。

「これで世界は私のものだ!!」

「はぁ…そうですか…」

露骨に興味なさげな反応をする井坂だが、今のムスカはそれすら許せるほど上機嫌だった。

そういえば、とスカリエッティは思い出す。

(テメンニグル学園はもうすぐ文化祭だったな…このまま行くと私達の計画と重なるかもしれない…)

こんな時でもテメンニグル学園のことを覚えていた彼だが、

(…まあいいか)

今はどうでもよかった。

 

 

 

 

 

文化祭前日。

全ての準備が終了し、もはや明日を待つばかりとなったテメンニグル学園。時刻はすっかり夕方だ。

早乙女アルトは校舎の屋上から夕焼けを見ていた。

アルトはいつものように紙飛行機を折ると、夕焼けに向かって飛ばす。彼は紙飛行機を折るのがとてもうまく、紙飛行機はどこまでも飛んで行き、やがて見えなくなった。

その光景を見て無意識の笑みを浮かべていると、

「アルトくん!」

彼を慕う二人の少女、ランカ・リーとシェリル・ノームが現れる。

「ランカ、シェリル。」

「なぁにこんな所で。サボってるの?バージルに斬られるわよ」

「違ぇよ!」

会って早々のシェリルの発言を、アルトは慌てて否定した。

「大体、もう準備は全部終わったから、帰っていいって言われたろ。それよりお前ら、明日は大丈夫なのか?」

明日の文化祭では、ランカとシェリルのライブがあるのだ。

「当然!あたしを誰だと思ってるの?シェリル・ノームよ。」

「あたしも大丈夫。心配してくれてありがとう、アルトくん。」

「別に、心配なんかしてねぇよ。お前ら二人が揃って、ライブが失敗するなんざ、ありえないからな。」

「わかってるじゃない。」

「明日、見に来てね!」

「ああ。」

二人はアルトと別れた。

 

 

アルトから離れて、二人は視線をぶつけ合う。

「あたし、負けませんから!」

「フッ…受けて立つわ!」

二人はアルトのことを想いながら、明日のライブに向けて練習を始めるのだった。

 

 

 

 

 

文化祭当日の早朝。

アークライト達生徒会役員は、まだ生徒が誰一人として登校していないなか集合し、会議を開いていた。

「本日は文化祭。生徒会会長としてこの日が迎えられたことを、心から喜びたい。しかし、学園を疎ましく思う者達にとっては、学園に落ち度を作る絶好の機会だ。」

「そこで俺らが学園を警護する。そういうことですね?」

「そうだ。」

左天が尋ね、アークライトが肯定する。

「まあ、そんな命知らずはいないと思うけど、一応警戒はしてちょうだい。」

副会長の離琉が言ったあと、アークライトが警備について説明がされ、役員達は解散した。

 

 

 

 

 

…とりあえず説明を求めたいな。

えっ、何の説明って?実はウチのクラス、3年B組の出し物は、喫茶店なんだ。文化祭と来れば別に珍しいものでもないんだけど、ウチのクラスのは、ちょっと問題がある。大声で言うのが恥ずかしいから小声で言わせてもらうけど…よく聞いてね?

ウチのクラスの喫茶店は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

猫耳メイド喫茶なんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、言っちゃった。恥ずかしい…。

いや、なのはさんもフェイトさんもはやてさんも、それ以外の女子も、全員猫耳メイド姿が恐ろしくよく似合ってるんだけど、これはないよ…。

ちなみにこの案を出したのは銀八先生。先生曰く、『俺は文化祭が嫌いだから、せめて目の保養になるものをやれ』だそうだ。相変わらず勝手な人だなぁ…。

「光輝。」

そう思っていると、フェイトさんが僕の側にきた。ヤバい、可愛すぎる。直視できない。目のやり場に困る。

フェイトさんは顔を赤くしながら、僕に尋ねてきた。

「に、似合う…かな…?/////」

僕は即答する。

「似合うよ。似合いすぎるくらい似合う」

「あ、ありがとう/////」

フェイトさんはさらに顔を赤くした。

このままでは理性が飛んでしまう。僕は別の話題を切り出すことにする。

「そ、そうだフェイトさん。休憩時間に一緒にいろいろ見て回らない?」

「えっ…」

フェイトさんは考えている。そして答えは…

「ごめん。私役員の仕事があるから…」

だった。

「そっか、それじゃあ仕方ないね。」

ちょっと残念だな…。僕が思っていた時、

「フェイトちゃ〜ん」

はやてさんが来た。

「どうしたのはやて?」

「副会長から伝言や。」

「副会長から?」

「『急きょあなたを警備から外すことになったから、楽しんでらっしゃい』だそうや。」

「そんな…悪いよ。」

「ええてええて!フェイトちゃんは光輝くんと楽しみや?じゃ!」

「あっ、はやて…!」

はやてさんは行ってしまった。

「…」

「…」

互いに黙る僕とフェイトさん。先に沈黙を破ったのは、僕だった。

「…つまり、大丈夫って、ことなの…かな?」

「…うん。」

こうして僕とフェイトさんは、休憩時間に文化祭を一緒に見て回ることになった。

 

 

 

 

 

休憩時間。

光輝とフェイトは、一緒に文化祭を見て回るべく、合流したのだが…。

「…フェイトさん。」

「なに、光輝?」

「どうしてメイド服のままなの?」

フェイトは制服に着替えず、メイド服のまま光輝と合流したのだ。

「着替えるタイミングがなくて…」

ウソだ。着替えるタイミングならいくらでもあった。本当は、一秒でも長く光輝の側にいたいからである。自分のメイド姿を見た光輝の反応が可愛かったから、少し困らせてやろうという、いたずら的な意味でもあるが(さすがに猫耳は外してある。ちなみにポケットの中)。

「じゃあ仕方ないね。行こうか」

「うん。」

しかし光輝はそんなことになど気付かず、フェイトと一緒に校庭に出る。だが光輝はどうしてもフェイトのメイド姿を意識してしまい、動きがどことなくぎこちなかった。

 

 

 

 

 

二人がしばらく文化祭を見て回っていると、翔太郎、フィリップ、亜樹子、照井の四人に出くわした。

「よぉ光輝…ってうおおっ!?」

翔太郎はフェイトのメイド姿に反応する。

「すっごぉ〜い!本物のメイドさんみたい!」

「あ、ありがとうございます…/////」

亜樹子の賞賛の言葉に、フェイトは照れながらもお礼を言った。そして、

「ってあんたはいつまで見とんじゃい!!」

フェイトの姿を食い入るように見ながら鼻の下を伸ばしていた翔太郎は、亜樹子にスリッパで叩かれた。

「なぜそのような格好を?」

「実は…」

フェイトは照井の質問に答える。

「そういうことか…」

照井は納得した。

「だが仕方ないとはいえ、よくそんな格好をする気になったね。僕には無理だ」

フィリップは少し呆れ顔になり、光輝はあることに気付く。

「そういえば、フェイトさんって変わったよね?前のままだったら絶対やらなかったはずなのに。」

「そ、そうかな?」

「うん、変わったよ。」

言われてフェイトは考える。

(光輝のおかげかな?)

と。

「じゃあ僕達はこれで。楽しんでいって下さいね」

「おう。」

光輝とフェイトは、翔太郎達と別れた。

 

 

 

 

 

二人は、お笑いライブの会場に来ていた。

「あはははは!!」

目尻に涙が浮かぶほど笑うフェイト。光輝もその横で腹を抱えて笑っている。

素人がやるネタだからと期待はしていなかったが、こういうのもいいな、光輝はそう思った。

「続いての挑戦者は、ドナルド・マクドナルド君です!」

「「え?」」

二人は同時に耳を疑う。

まもなくして、会場のステージにドナルドが立った。

「ドナルドは今、ダンスに夢中なんだ!これか?これか?これかぁ?フッ!フッ!」

言いながら様々なポーズを取ったり、ダンスを踊ったりするドナルド。光輝とフェイトは黙っていたが、なぜか会場は大爆笑の渦に巻き込まれていた。

「ランランルー!」

「「…」」

笑っていなかったのは、光輝とフェイトだけだった。

 

 

 

 

 

その後も文化祭を見て回り、光輝は時計を見る。

「あっ、そろそろ始まる。」

「何が?」

「今日は体育館で、ランカさんとシェリルさんのライブがあるんだ。もうそろそろ始まるから、一緒に見に行かない?」

「うん、行く。」

二人は体育館に向かう。

 

 

 

 

 

体育館。

到着した二人は、並んで椅子に座り、ライブの開始を待つ。

「それにしても、すごい人数…」

フェイトは集まった観客の多さに、圧倒されていた。

「ランカさんとシェリルさんにはファンクラブもあるらしいからね、それを含めたらかなりの人数になると思うよ。」

光輝はわかりきっていたことと思いつつも、やはり圧倒されている。

 

次の瞬間、照明が全て消され、

 

 

「あたしの歌を聴けぇ〜!!」

 

 

シェリルがステージに登場。そのまま彼女の持ち歌、『射手座☆午後九時Don't be late』を歌う。

「シェリルゥゥ!!」「シェリル!!」

巻き起こるシェリルコール。さすがに大人気だ。シェリルに声援を送りつつも、光輝とフェイトは引いている。

歌終了後、舞台は再び暗転。

 

 

「みんな、抱きしめて!銀河の果てまで!!」

 

 

今度はランカが登場し、彼女の持ち歌、『星間飛行』を歌う。

「ランカちゃぁぁん!!」「ランカァァ!!」

巻き起こるランカコール。光輝とフェイトは、再び引いていた。

 

 

その後、舞台が再び暗転し、ランカとシェリルが姿を現す。

「みんな、テメンニグル学園文化祭、楽しんでる?」

「今日はあたし達のライブに来てくれて、ありがとう!」

歓声があがった。

 

 

 

 

 

「さぁ、祭りの始まりだ!」

スカリエッティが、何かの開幕を告げる。

 

 

 

 

 

大興奮のまま続く、ランカとシェリルのライブ。しかし、それもいよいよ終了が近付く。

「今日はこの文化祭に来てくれて、本当にありがとう!」

「あたし達のライブは、次で最後の曲になります。それでは聴いて下さい!」

「「ライオン!」」

二人は最後の曲を歌おうとする。

 

だが、どういうわけか、曲が流れない。

 

「どうしたの?」

「何かあったのかな?」

不審に思う光輝とフェイト。観客達もざわめき出す。

その時、

 

体育館の天井を破壊して、ひょろ長い手足のロボットが数体、侵入してきた。

 

たちまちパニックに陥る観客達。みんな我先にと逃げていく。

「ランカァァ!!シェリルゥゥ!!」

ライブを見に来ていたアルトは、急いでランカとシェリルの元へ行こうとするが、逃げ惑う観客達が邪魔で、近付けない。

「フェイトさん!」

「うん!」

 

〈CROSS!〉

 

「変身」

 

〈CROSS!〉

 

「バルディッシュ、セットアップ!」

 

〈SET UP〉

 

二人は変身し、ロボット達に挑む。

 

 

 

 

 

ロボット達から襲撃を受けているのは、体育館だけではない。テメンニグル学園全体。いや、風都全体が、ロボット達の襲撃を受けていた。

ロボット達は目から光線を出したりして、破壊活動を続けていく。

「ぎゃーっ!!なに!?何なの!?あたし聞いてない!!」

「こっちだって聞いてねぇ。行くぜ、フィリップ、照井!」

「「ああ」」

 

〈CYCLONE!〉

〈JOKER!〉

〈ACCEL!〉

 

「「変身!」」

「変・身!」

 

〈CYCLONE/JOKER!〉

〈ACCEL!〉

 

翔太郎とフィリップはWに変身し、照井はアクセルに変身。それぞれロボット達の撃破に向かう。

 

 

 

 

 

 

「歌っている場合ではないぞ一真!!」

カラオケコーナーで「ELEMENTS」を歌っていた一真は、乱入してきたバージルによって歌を中断させられた。

「何だよバージル。せっかく気持ちよく歌ってたのに…」

「歌っている場合ではないと言っている!外を見てみろ!」

バージルは渋る一真を無理矢理連れ出す。

 

外の惨状を見た一真は驚いた。

「これは!?」

「わかったか?奴らを迎撃するぞ!!」

「ああ!変身!」

 

〈TURN UP〉

 

一真はブレイドに変身し、バージルとともにロボット達を迎え討つ。

 

 

 

 

 

体育館に侵入したロボットを全て倒したクロスとフェイト。

「ランカ!シェリル!」

そこへ、アルトがランカとシェリルを捜しに来た。

「アルト!どうしたの?」

「光輝か!いないんだ。ランカとシェリルが!」

「何だって!?」

驚くクロス。フェイトは冷静に判断する。

「でも、ちゃんと逃げられたんじゃないかな?あれだけたくさんの人が逃げ回ってたから、たぶんこっちが気付いてないだけなんだと思う。」

「だといいけどな…」

「とにかく、僕は他のロボットを倒しに行くから、アルトは避難してて。」

「頼む!」

アルトは避難していった。

「フェイトさんも…」

「私はこのまま戦う。仮にも生徒会役員だし」

「わかった。じゃあ行こう!」

二人はロボットを全滅させるべく、体育館を飛び出す。

 

 

 

 

 

「くそっ!こいつら、倒しても倒してもキリがねぇ!!」

悪態をつく翔太郎。

『ここはやはり、大元を叩くべきだ。ロボットの動きをよく見れば、敵の拠点を割り出せるはず…』

「…それしかなさそうだな…!」

Wは戦いながら、ロボットがどこから飛来するのかを見極めようとする。

 

 

やがて、Wはロボット達がどこから現れるのかを突き止めることができた。その場所とは…。

 

「…空?」

 

そう、空だ。

ロボット達は、いつの間にか出現している巨大な積乱雲から、次々と降下してきている。

『敵の拠点は雲の中か…』

「よし、じゃあハードタービュラーで…」

Wがスタッグフォンでリボルギャリーを呼び出そうとした、その時、

 

積乱雲が晴れ、中から巨大な空中都市が出現した。

 

「何だありゃあ!?」

これにはWも驚く。この街住んでから結構な時間が経っているが、こんなものを見るのは初めてだった。

同時に、ロボット達の攻撃が止まる。

すると、

 

「風都の諸君、ごきげんよう!」

 

空中都市から、風都全体に声が響いた。

「おい、この声…」

『ああ、間違いない。』

しかも聞き覚えのある声である。

そこへ、フェイトを連れたクロス。ダンテとバージルを連れたアクセルとブレイドが来た。

「翔太郎さん!」

「光輝!無事だったか!」

「はい。それより、この声はムスカ大佐のものでは!?」

そう、この声はムスカのものだった。

ムスカは空中都市から続ける。

「私は長年追い求めていたこの空中帝国、ラピュタを得た!」

「ラピュタだと!?」

「知ってんのかバージル?」

バージルはダンテの問いに答えた。

「ああ。ベルカよりさらに前の時代に存在していたという、超古代帝国だ。一時期世界を征服していたこともあるらしい」

すると、今度は違う声が響く。

「我々はこの力をもって世界を征服する!その手始めとして、まずはこの風都から制圧することにした!抵抗は無駄だ。大人しく降伏したまえ!!」

アクセルは気付いた。

「今度はスカリエッティだと!?奴ら、手を組んでいたのか!?」

「バージルがろくなことにならないって言ってたけど、まさかこんなことになるなんて…!」

ブレイドはスカリエッティの予想外の行動に焦る。

「スカリエッティ先生……」

フェイトは誰にも聞こえないような声で呟いた。

「大人しく降伏しろだと?ふざけやがって…」

「世界征服…そんなこと、させない!!」

Wとクロスは、打倒ラピュタの決意を固め、ラピュタを見上げた。

 

 

 

 

 

井坂は近くのビルの屋上から、ラピュタを見ていた。

「いくら助けていただいた恩があるとはいえ、付き合いきれませんよ。」

彼はラピュタが風都に到着すると同時に、ラピュタから離脱したのだ。

「ですが、見届けさせてもらいましょう。あなた方が本当に世界を征服できるかどうかを、ね…」

井坂は傍観を決め込み、ラピュタを見続けた。

 

 

 

 

 

「ドクター。」

「どうしたんだね、ウーノ?」

「井坂氏の姿がありません。逃げ出したものと思われますが、いかがいたしましょうか?」

スカリエッティは考えてから答える。

「放っておきたまえ。元々、ラピュタの封印を解いてもらうのが目的で彼を助けたんだ。もう必要ない。それより…」

スカリエッティは、意識を失っている二人の少女、ランカとシェリルに近付いていく。

「今はこっちの方が最優先事項…ウーノ。『ラピュタの歌声』の起動準備は、もう済んでいるね?」

「はい。あとはこの二人をシステムに接続するだけです」

「素晴らしい…では、早速始めてくれたまえ。」

「了解しました。」

ウーノはロボット達に彼女達の運搬を任せ、どこかへ歩いていった。

誰もいなくなった部屋の中で、一人不気味に笑うスカリエッティ。

「さぁ、本当の祭りはこれからだよ、仮面ライダー諸君。そして、理事長…ふふふ…ははははは!!」

 

 

 

 

 

 

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次回、

仮面ライダークロス!!

 

W「こっちから乗り込んでぶっ倒す!」

ノーヴェ「あたしらも連れてってくれ!」

ムスカ「これが、ラピュタの力だよ!!」

ダンテ&バージル「「悪魔の仮面ライダーだ!!」」

 

第十七話

Mの狂気/天空城に殴り込め!

 

これが裁きだ!!

説明
サブタイトル通り、カオスです
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