仮面ライダークロス 第十九話 Mの狂気/落城。そして… |
「おい!ランカ、シェリル!お前ら本気かよ!?」
アルトはランカとシェリルを止めようとしていた。こんな状況であるにもかかわらず、二人がライブを再開すると言いだしたからだ。
「当たり前でしょ?まだ最後まで歌い切ってないのよ!?」
「だからって…それにお前ら、さっきまで変な装置に繋がれてたんだろ!?」
シェリルは大丈夫だと言い張るが、アルトはランカとシェリルを心配した。ちなみに彼がラピュタの歌声のことを知っている理由だが、実は、ライダー達がラピュタに突入する寸前に、ディスクがウェンディのライディングボードに盗聴機を仕掛けていたのだ。それゆえに彼は全ての事情を知っている。スパーダやドナルドも同じ理由だ。
「大丈夫だよ、アルトくん。」
「ランカ…」
「あたし達には仮面ライダーみたいに、戦う力なんてない。でも、歌ってみんなを応援することはできる!」
「この街を守るのがライダー達の仕事なら、あたし達の仕事は歌うことよ!」
「お前ら…」
アルトはその言葉を聞いて考える。
「…わかったよ、そこまで言うなら好きにしろ。」
二人の熱意に、ついに折れたアルト。
「ありがとうアルトくん!」
「…ありがと。」
ランカとシェリルはアルトにお礼を言い、ライブの準備にかかった。
「しかし、こんなデカブツどうやって潰すんだ?」
ソウガのダンテサイドが呟いた。
はっきり言おう。ムスカが起動させたラピュタの神というらしいこの巨大ロボットは、ウルトラマンとかに出てくる怪獣と同レベルか、もしくはそれ以上の大きさだ。前に破壊したハイパークライシス要塞の、五倍はある。これだけの質量の相手に正面から挑んだところで、まず勝つのは難しいだろう。
「やるしかなかろう。」
バージルサイドの結論としては、確かにそれしかない。
「ま、やらねぇよりはマシだよな。」
照山が同意する。
その時、
「踏み潰してやる!!」
ラピュタの神が、その巨大な足で、ライダー達を踏みつけてきた。
「散開!!」
アークライトの指示を受けて散らばるライダー達。しかし、クロスだけはその場を動いていない。
「光輝!!」
フェイトが叫ぶ。対するクロスは、慌てず騒がす右腰のスロットを軽く叩き、マキシマムを発動。
〈ETERNAL・MAXIMUM DRIVE!〉
「エターナルブロウクン!!」
必殺の右拳を突き上げ、ラピュタの神の足裏を殴る。
ゴガァァァァン!!!
壮絶な大音響が轟き、ラピュタの神が押し返された。
「…ウソ…」
呆然と呟くなのは。いかにアンリミテッドフォースで強化しているとはいえ、それはあんまりな光景だった。
よろめくラピュタの神を尻目に、クロスは言う。
「大きさに騙されちゃいけない。こっちの攻撃は通ってるんだから」
「あ…」
はやては察した。クロスのこの行為は、自分達を鼓舞するためのものだったのだと。他の全員も悟っていた。
「でもよぉ…」
悟って、照山は言う。
「それはお前に限って言えることなんじゃねぇのか?」
クロスはフェニックスクロークを翼のように展開し、フェニックスクロークから虹色のエネルギー弾を乱射。Wはハードタービュラーで飛行しながら、バルカンで銃撃。アクセルは一度通常フォームに戻った後、アクセルガンナーとなって砲撃。ブレイドはサンダーディアーの力をジョーカーソードに宿し、飛行しながら電撃を放つ。ソウガはドレッドマグナムを弾を榴弾に設定して、背部の翼で飛行しながら爆撃。その他の者も魔法や能力を使い、それぞれがラピュタの神を攻撃していく。
相手が相手なため、こちらの攻撃の威力は針で刺す程度のものだが、ラピュタの神は確実にダメージを受けている。
「くそぉっ!!」
ラピュタの神は巨大すぎるために、ライダー達への攻撃はなかなか当たらない。ムスカはそのことに苛つきながらも、ラピュタの神を操作し、攻撃を続けていた。
その時、
「貴様らの悪事もこれまでだ!!」
ラピュタの神と同じ大きさにまで巨大化したムンドゥスが現れ、ラピュタの神の前に立ちはだかる。
「ここからは、私が相手だ!!」
「やっと当てやすい相手が現れたか。いいだろう、見せてあげよう。ラピュタの雷を!!」
ムスカは喜び、ラピュタの神を操作して、右手を前に向けた。
すると、ラピュタの神の右手に、小さなオレンジ色の光球が産み出される。
「!!」
それを見て何かを感じたムンドゥスは、額の第三の眼に魔力を集中させた。
そして、ラピュタの神から光球が発射され、ムンドゥスの光線がそれを迎え討つ。
ズドガァァァァァン!!!
大爆発が起こった。
(なんという凄まじい…!!)
ムンドゥスが危機感を覚える程の。これを食らっていたら、いくら彼でもただでは済んでいない。街に当たったら大惨事だろう。
次の瞬間、
「ぐあっ!!」
ムンドゥスは爆煙の中から現れたラピュタの神に殴り飛ばされていた。
「ぐっ!!」
どうにか持ち直し、転倒を避けたムンドゥス。そのまま翼からエネルギー弾を放って反撃、さらに手から巨大な雷撃をも食らわせ、ラピュタの神をよろけさせる。
「やるじゃないか。このラピュタの神の力を試すのに、君ほどの適任はいない!!」
「ほざけ!!」
言い合いから取っ組み合いに入るムンドゥスとラピュタの神。互いの戦力は、拮抗していた。
「まさか、校長と互角だと!?」
「このままじゃジリ貧だぜ…」
ラピュタの神の予想以上の力に、シグナムもヴィータも驚いている。
「こうなったら、私の全魔力を使って、スターライトブレイカーを…!」
「手伝うよ、なのは。なのはのスターライトブレイカーと、私のプラズマザンバーブレイカー。そこにはやてのラグナロクブレイカーを、全魔力を込めて使えば…!」
フェイトの考える通り、倒すまではいかなくとも、ラピュタの神に甚大なるダメージを与えることはできるだろう。そうすれば、ムンドゥスが格段に有利になる。自分達は魔力切れで戦えなくなるが、あとはムンドゥスやライダー達に任せればいいだけの話だ。
しかし、
「ダメや!!」
はやてが拒否した。
「はやてちゃん…?」
「はやて?どうして!?」
驚き尋ねるなのはとフェイト。その疑問には、サイコキネシスの能力を使って飛んできたアークライトが答える。
「この状況をよく見ることだ。我々だけで戦っているのならまだしも、今は校長が戦って下さっている。お前達の砲撃魔法は威力も大きく、範囲も広い。だが、もし間違って校長に当たったらどうする?」
「あ…」
「そうか…!」
二人は気付いた。ムンドゥスとラピュタの神は、今取っ組み合いを行っている。確かに、間違ってムンドゥスに当たる可能性があるのだ。
「もしそうなったら、校長先生が不利になる。校長先生の不利は、そのままこっちの不利に繋がるんや。そうなったら、どうなるかわかるやろ?」
つまり、はやてが言いたいことはこうだ。
下手を打てば負ける。
その事実を前に、なのは達は今度こそ、手が出せなくなった。
「こうなったら、お前らの校長先生が勝つことを信じるしかねぇぜ。」
「だが、ラピュタの神は予想以上に強い。このままでは、よくて相討ちが限界だろう…」
Wから告げられる冷酷な事実。
しかし、次にソウガの放った言葉が、逆転の一石を投じることとなった。
「せめてこっちもあいつと同じサイズなら、簡単にぶっ殺してやれるんだけどな…」
言ったのはソウガのダンテサイド。
「馬鹿が。そのようなことを考えている暇があったら、少しはマシな作戦を考えろ」
それを聞いたバージルサイドはすぐに諫めるが、
「同じ…サイズ…同じ…大きさ…」
ダンテの言葉を聞いていたクロスは考える。
そして、閃いた。
「そうか!そうだよ!こっちも校長やラピュタの神と、同じ大きさになればいいんだ!!」
「お前…まさか…」
バージルはクロスの意図をすぐに察し、クロスは頷く。フィリップも気付いた。
「しかし、それは理論上の話だろう?実際にできるとは…」
「やってみせます。それしか、手がないから…」
その言葉を最後に、クロスは集中状態に入った。
(イメージしろ…大きく…大きく…あいつと同じくらい大きく…この街を…みんなを守るために…!!)
すると、クロスの身体が光に包まれ始める。
そして、
「うおおおおおおおおおおおおおお!!!」
光がどんどん大きくなっていき、光が消えた時、
クロスは巨大化していた。ラピュタの神と同じ大きさまで。
「いやいやいや…」
「馬鹿な…」
「ハッハッハッハ☆」
照山は首を横に振り、アクセルは呆然と見上げ、ドナルドは笑う。
クロスがやったことは、いたって単純。アンリミテッドフォースを使って巨大化したのだ。
「こんなこともできるのか、アンリミテッドフォースって…」
「いや、いくら無限の力っつったって、こりゃあねぇだろ。」
ブレイドは驚き、ダンテが呆れた。
「シグナム。お前、これでもまだクロスアンリミテッドと戦いたいなんて思うか?」
「それは…その…」
「私はもうツッコまんぞ。」
「すごい…すごすぎるよ光輝くん…」
「あかん…もうすごい以外の言葉が見つからへん…」
「光輝…」
他の者もそれぞれ、驚愕を表す。
「まさか、本当にやってしまうとは…」
バージルですら驚いていた。
「けど、これならいけるんじゃねぇか!?」
「ああ、勝負は決した。いや、彼を敵に回した時点で、もう彼らの敗北は決まっていたというべきか…」
Wの言う通り、この戦いの決着は、もうついたも同然だった。
「お前は…まさか、白宮光輝か!?」
「校長先生、下がって下さい!あとは僕がやります。」
「…すまん…」
満身創痍のムンドゥスはこの場をクロスに任せ、人化をかけて人間と同じ大きさに戻った。
「何だ…何だこれは!?」
一人慌てるムスカ。
「行くぞ、ムスカ!!」
とクロスは言った。
テメンニグル学園。
現在避難所として機能している体育館で、それは起きた。
突然、ランカとシェリルがステージの上に立ったのだ。
「ちょっとみんな!なに辛気くさい顔してんの?ライブを続けるわよ!あんな不完全燃焼のまま終わるなんて、ありえないんだからね!」
シェリルの言葉に、避難者全員がステージを見た。ランカが続ける。
「あたし達には、戦う力なんてありません。でも、戦ってる人達の勝利を信じて、歌を送ることはできます!だから!」
「歌うわよ、みんな!ライダー達の、勝利を信じて!!」
さらなるシェリルの言葉に、体育館中が静まりかえった。
やがて…。
パチパチ…。
小さな拍手が聞こえてきた。
その拍手は数を増し、体育館中を満たす、大音響の拍手へと変わっていく。
パチパチパチパチパチパチパチパチ!!!
ランカとシェリルを、祝福の拍手が包んだ。
「みんな、ありがとう!」
「じゃあ行くわよ!本当の本当に最後の曲…」
「「ライオン!!」」
歓声が、こだました。
クロスの巨大化を好機と見て取ったアークライトは告げる。
「決着をつける!それ以外には構うな!結果は全てに優先される!我らの覚悟と、力を示せ!!」
その言葉と、ランカとシェリルの持ち歌をバックミュージックに、彼らは戦いの準備を整えていく。
「さぁ、暗黒に沈め。」
クロスはラピュタの神を指差し、台詞を言った。
「ふふふ…面白いじゃないか!!その覚悟の程を見せてもらおう!!!」
ムスカは事態を理解し、ラピュタの神を操作して、目の前の不届きな存在を叩き潰そうとする。
そこからクロスとラピュタの神の、壮絶な殴り合いが始まった。
どちらもノーガードだが、クロスはアンリミテッドフォースによってスーツの防御力を強化しているため、ダメージはないに等しい。対するラピュタの神は、それ自体が高い防御力を誇るが、クロスは防御力だけでなく、自身の攻撃力も強化して殴っているため、ラピュタの神にかなりのダメージを与えていっている。
「なぜだ!」
殴り合いながらも、ムスカは問いかけてきた。
「なぜ私の邪魔をする!?ラピュタはかつて世界を支配していたのだ。世界は元のあるべき姿に戻るだけだぞ!?なぜそれがわからん!?」
「勝手なことばかり言うな!!」
クロスはムスカの考えを否定する。
「世界を支配?それがあるべき姿?そんなことが、許されるとでも思っていたのか!!なら僕は否定する!!世界征服なんてこと、させるもんか!!!」
そこまで言ったクロスは、ラピュタの神を蹴り飛ばした。
〈ETERNAL/INFINITY・MAXIMUM DRIVE!〉
「アンリミテッドスマッシュ!!」
さらにマキシマムを発動させ、両手からエネルギーの刃を飛ばす。
ドガァァァァァァァァァァァン!!!!
アンリミテッドスマッシュはラピュタの神に直撃し、ラピュタの神は大爆発を起こして跡形もなく消滅した。
だがムスカは直前に空を飛んでラピュタを脱出しており、しかも隠し持っていたもう一つのレリックまでも使い、パワーアップしている。
「まさかラピュタを落とされるとは…はっ!?」
ムスカは不意に殺気を感じて振り返った。そこにはソウガがおり、すでに群雲を振りかぶっている。
「ちぃっ!!」
ムスカは赤いエネルギーの剣を生み出し、群雲を受け止めた。
「終わりだムスカ。ラピュタが落ちた以上、もはや貴様に勝ち目はない。」
「この馬鹿騒ぎも、いい加減お開きにしねぇとな!!」
言いながらソウガは、ムスカを地面に叩き落とす。ムスカはすぐに立ち上がって身構えた。
「「さぁ、お前の罪を数えろ!!」」
「さぁ、振り切るぜ!!」
そこへWやアクセルトライアルに戻ったアクセル。元の大きさに戻ったクロス。さらになのは達も駆けつけ、ムスカに挑んでいく。
「ぜいっ!!」
「ぐっ!!」
ブレイドはジョーカーソードでムスカの剣を破壊した。
「おのれ…この私がゴミごときに…」
そこへ、
「ギガストハンマァァーッ!!!」
巨大化したグラーフアイゼンを構えたヴィータが、
「紫電…一閃!!!」
レヴァンティンに炎を宿したシグナムが、
「リトルボーイ!!!」
拳に炎と光を宿した照山が、
「うおおおおーッ!!!」
エンジンブレードを手にしたアクセルが、それぞれ飛びかかっていく。
だが、
「ゴミがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ムスカは至近距離からエネルギー波を放って迎え討ち、四人を吹き飛ばした。
「はやて…ごめん…」
「主…申し訳…ありません…」
「良い。むしろよくやった」
「ありがとうな、二人とも。ゆっくり休んでな…」
デバイスを破壊され、戦闘不能に陥ったヴィータとシグナムを労うアークライトとはやて。
「チッ…さすがに…限界…か…」
「照山!!」
気絶した照山の身を安じるクロス。
「左…フィリップ…あとは…頼んだぞ…」
「ああ、大丈夫だ照井。」
「あとは僕達に任せたまえ。」
変身が解けて気絶した照井の意志を引き継ぐW。
ムスカは言う。
「すでにラピュタのデータは全て取ってある。あとはそれを元に再現すれば、ラピュタは復活だ。ラピュタは滅びぬ、何度でも蘇るさ!ラピュタの力こそ人類の夢だからだ!!」
「ふざけるな!!こんなもんが人類の夢だと!?お前らが使ってんのは、この街を泣かせる最悪の兵器だ!!」
「街の涙を拭うのが、僕達仮面ライダーの仕事だからね。そのデータも、破壊させてもらうよ!」
ムスカの言葉に反論するW。
「街の涙を拭うだと?そんなことのために、私の邪魔をしているのか!?」
「そんなことなんかじゃない!!大切なことだ!!」
怒るクロス。
「この街を守ってるのは、仮面ライダーだけじゃない!!」
「私達も戦う!!この街が好きだから!!」
「私らの意地を、見せつけたる!!」
なのは、フェイト、はやての三人も、デバイスを握りしめた。
「貴様に譲れんものがあるように、私はこの街の未来を一歩も譲らん!!」
アークライトも力強く言い放つ。
「お開きにするっつったろ?」
「終らせるぞ、貴様の野望を!!」
〈DREAD・MAXIMUM DRIVE!〉
ソウガはドレッドマグナムの排侠動作を行い、ドレッドマグナムを両手で構える。
「行くぜフィリップ!!」
「ああ!!」
〈CYCLONE/HEAT/LUNA/JOKER・MAXIMUM DRIVE!〉
プリズムビッカーのスロットにメモリを装填するW。
「見せてやる。僕達の力を!!」
〈INFINITY・MAXIMUM DRIVE!〉
左腰のスロットを軽く叩くクロス。
「行くぞ!!」
〈SPADE J,Q,K,ACE,JOKER〉
〈JOKER ROYAL STRAIGHT FLASH〉
五枚のカードのオーラを出現させ、ジョーカーロイヤルストレートフラッシュ発動の準備を整えるブレイド。
「スターライト…」
「プラズマザンバー…」
「ラグナロク…」
なのは、フェイト、はやては全魔力を込め、
「ドレッドバースト!!」
「ジャックポット!!」
「「ビッカーファイナリュージョン!!」」
「インフィニティーブレス!!」
「ラァァァァイッ!!」
「「「ブレイカァァァァーッ!!!」」」
「エターナルディストーション!!」
「ドナルドマジック!!」
ライダー達は一斉攻撃した。
「ならば…死ねぇぇ!!!」
ムスカは巨大なエネルギー波を放って迎え討つ。レリックだけでなく、自分の命すら削って放つ攻撃に、ライダー達も押され始める。だが、
「おおおおおおおおおおおおおおお!!!」
クロスが全員にアンリミテッドフォースを注ぎ、強化。
「ブレイク…」
そして、
「「「シュゥゥゥゥト!!!」」」
ついにムスカのエネルギー波は破られた。
「光輝君!今だよ〜♪」
「ああ!グランドフィナーレ!!」
〈CROSS/ETERNAL/INFINITY・MAXIMUM DRIVE!〉
クロスはドナルドに促され、クロスドライバーに音声入力。三つのメモリから両足にエネルギーが送られ、クロスは空高く飛び上がる。
そして、
「エンドレスレジェンド!!!」
クロスは必殺の両足蹴りをムスカの顔面に叩き込んだ。
「ぐあああああああ!!があっ!!!」
激しく吹き飛ばされたムスカ。着地したクロスは告げる。
「眠れ。深淵の底で」
「ああ…目が…目がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!
ムスカはクロスのマキシマムを受けた影響と、それによるレリックの連鎖反応によって大爆発を引き起こし、塵一つ残らず消滅した。
「終わったようだな」
先程風上光に倒されたスカリエッティを連れてスパーダは戦いが終わったことを確信した。
「やはり、落ちましたね。」
ずっと事態を静観していた井坂は、誰に聞いてもらうともなく言った。
「ラピュタ…あれも確かに強力ではありましたが、所詮地球の記憶には敵わないということです。」
ムスカ達が負けるということを始めからわかりきっていた井坂。そんな彼は背を向け、歩き出す。
「さて、私はしばらく、身を隠しましょう。彼らに対抗できるだけのメモリを手に入れなければいけませんし…」
そこで井坂は呟く。
「ガイアインパクトも阻止しなければいけませんしね。」
スカリエッティ達の手を借りて、とある組織から入手したデータ。そこにあった計画の名前を。
「ああ、それにしてもつらいですよ、冴子君。私はこうして生きているのに、君に会うことができないとは…」
愛しき人の名を呼んだ井坂は、夕焼けの中へと消えていった。
テメンニグル学園。
今ここでは、後夜祭が行われていた。
校庭の真ん中にキャンプファイヤーを作って、みんなで歌ったり騒いだり。
僕は校舎の屋上から、その様子を見ていた。
今日は本当に疲れた。早く帰って寝たい。僕がそう思っていた時、
「光輝。」
僕の後ろから、声がかかった。振り向いてみる。フェイトさんだった。
「どうしたのフェイトさん?後夜祭、参加しないの?」
「光輝こそ。こんな所にいていいの?」
「いや、ちょっと疲れててさ、みんなと一緒に騒ぐ体力がなくて…」
「そうなんだ…」
「うん。」
それっきり、僕達は黙ってしまった。
「光輝。」
先に口を開いたのはフェイトさんだ。
「何?」
「あのね、光輝。覚えてる?」
「…何を?」
「あの…その…」
どうしたんだろう?フェイトさんの顔が赤い。
「ラピュタの中で戦ってた時、私のこと…その…好きだって…」
「えっ?あっ…」
そういえば、言った。僕は自分の顔が赤くなるのを感じた。
そのまま、またどっちも黙ってしまう。
「…あのね光輝…」
やっぱりフェイトさんが先に口を開いた。
「…な、何?」
怖かった。何て言われるのかが。
答えは…
「…私も好き。光輝のことが…大好き。」
だった。…えっ?
「えっ…いいの?」
「…うん。」
フェイトさんは頷いた。それから続ける。
「あと、まだ言ってなかったね。」
「えっ?」
「助けてくれて…庇ってくれて…励ましてくれて…」
フェイトさんは一呼吸おいて、それから言った。
「ありがとう。」
「…っフェイトさ」
そして気付いた時、僕の唇に、フェイトさんの唇が重ねられていた。
この時僕は心から思った。人造生命でもいい。フェイトさんが生まれてきてくれて、本当によかった、って。
後夜祭会場。
「照山くん。」
はやては照山に声をかけた。
「ん?どうしたはやて?」
「怪我はもう大丈夫なん?」
「ああ。あの後光輝がバッチリ治してくれたからな」
「そっかぁ…ホンマによかった…照山くん、最初の怪我は私を庇って負ってもうたから、ホンマに感謝や。ありがとうな、照山くん。」
「いいってことよ。あれぐらいできなきゃ、漢じゃねぇからな。」
気前のいい笑顔を見せる照山。
「そんでな、照山くん。もしよかったら…」
「ん?」
「…友達からでも、ええかなぁ?」
「…ああ、いいぜ!」
「ほ、ホンマか!?」
「おう!」
「おおきに!ありがとうな、照山くん!」
はやては照山に抱きついた。
今宵、テメンニグル学園で二組のカップルが誕生した。
だが彼らは知らない。
この学園には、後夜祭で告白すると、永遠に結ばれるという伝説があることを……。
風都タワー。
ここの屋上に、一人の男がいた。
「ケッ!なーにが、面白いものが見られるから来てみろ、だ!ムスカの野郎、あっさり逝きやがって…」
なにやら機嫌が悪そうな男。しかし、その口元は突然、三日月のように笑った。
「まぁいいや。おかげでめぼしい感じのやつも見つかったし。にしても、しばらく戻ってこねぇうちにずいぶんと面白ぇ街になったよなぁ、この風都は!」
今彼の脳内には、ソウガの姿が浮かんでいる。
「近いうちに殺りあおうぜ、悪魔の仮面ライダーさんよ!」
言って男は、あるものを取り出した。
それは、
Bと書かれた銀色のガイアメモリだった。
〈BERSERK!〉
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次回、
仮面ライダークロス!!
ダンテ「海はいいなぁ…」
ヴィヴィオ「ママ、遊んで〜。」
?「食べる?」
光輝「い、いえ、いいです!」
?「俺と遊ぼうぜ。悪魔の仮面ライダーさんよ!」
第二十話
怒りのN/夏だ!海だ!ドーパントだ!?
これが裁きだ!!
説明 | ||
これまでの、 仮面ライダークロス。 圧倒的な力でムスカを追い詰めるソウガ。 スパーダやドナルドなどの登場もあって、他の者も次々と勝利を収めていくが、追い詰められたムスカは最終プログラムを起動し、ラピュタを自分と同じ姿の超巨大ロボット、ラピュタの神に変形させる。 今ここに、最終決戦の火蓋が切って落とされた! 長編は今回で最終章です。もうシリアスなのかギャグなのかわからない仕上がりになっていますが、それでもよければどうぞ。 |
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