目撃者 |
川神学園の屋上。
それは偶然聞こえた会話。
「うむ。ここなら問題なく話ができるな」
「ここでいいの? けっこう聞かれているけど……」
「問題ない」
何だか話し声が聞こえるけど、誰だろうか。『誰にも』気づかれないように霊体化する。
覗くと二人いた。
一人は銀髪で小柄体格の着物を着ている子供と、もう一人は学生服を着て、腰に変なベルトを装着した女。
「一体どのようなご用件でしょ? 例の件はもう少し待ってほしいですけど……」
「その件は、お前に任している。時がきたら、動けばいい」
「じゃあ、一体なんですか?」
「この場において、我にその態度は解せんな。……本音を言え」
小柄体格の子供は、明らかに目上に見えるような彼女に殺意的な目つきを見せる。彼女も一度息ついて深呼吸をした後に……。
「『横から手を出さないで』でしょうか? それとも、『勝ち目がないから譲って下さい』ですか?」
と小悪魔な微笑で小柄体格の子供を見た。
「……ずいぶんと余裕じゃな」
「そうでもないですよ。彼、人気ありますから」
「ふむ、じゃあ決闘って意味でいいか?」
決闘。
川神学園が喧嘩を了承するシステム。つまり、二人は何らかの決闘を挑んだらしい。
「私には水面下の方が都合がいいんだけど、この際仕方ない……か」
「それなら安心していい。これは我らだけの決闘だ。だから気持ち知ったからって態度を変えたりしない。ビジネスはビジネスだ」
「クスッ、そうしてくれると助かるね」
「ふはははは! 我は寛大だからな」
「だったら……確認するまでもないことなのに?」
「言葉にしなきゃ分からないことってあるぞ?」
刹那。
屋上は殺意の渦に飲まれた。
二人がいなくなった後、霊体化を解く。
「う〜ん、何だったんだ今の話は……。ぼ、僕はかかわらない方が無難だな。……よし、忘れよう。とりあえず、もう少しのんびりしてから帰るとするか……」
忘れよう。
僕は関係ない。
トントン
僕は……。
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偶然だった。 | ||
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