恋姫無双 〜決別と誓い〜 第一七話
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「ここは関係者以外立ち入り禁止だ。民間人の立ち入りには行政官の特別な許可証がいる」

 

「あの〜私がその行政官なんですけど?」

 

辞令を見せると、警備兵は態度を変え申し訳なさそうに頭を下げる。

 

「・・・・これは申し訳ありません。とんだ御無礼を働きまして・・・」

 

「いえいえ。それより魯粛さんの所へは・・・?」

 

「魯粛二佐は現在街を視察に出ております。お戻りになるのにはまだ時間がありますので客室にてお待ちください」

 

と警備兵は案内する兵をすぐさま呼び、俺たちを案内してくれた。

 

「なんとか南部方面支部につきましたね・・・」

 

「そうですね。盗賊の襲撃等がありましたが幸い派遣された文官、護衛部隊合わせて死傷者は出ずにここにたどり着けました・・・・・」

 

「・・・・ありがとうございます。貴方がいなければ私たちはこうして肩を並べて歩けたかどうか・・・」

 

「自分は貴方の命令にただ従っただけです。ここに自分がいるということは貴方が有能であったがゆえです」

 

男がかけた言葉はあまりにもぶっきらぼうだったが、その台詞にはどこか温かみのある響きを含ませていた。

 

「ふふっ・・・・ありがとうございます」

 

これから右腕として働く男にほほ笑みかけると男は目を逸して弱々しく「・・・・いえ」と呟く。

 

それから彼女と男との会話は一切なく、その状態が客室に着くまで続いたが彼女はこの雰囲気がどこか心地よく感じていたのであった。

 

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「よお〜。久しぶりだなぁ亞莎!!あぁ立たなくてもいいぞ・・」

 

俺は立ち上がろうとする二人を制し彼女たちを歓迎した。

 

亞莎はこの江東の行政官として派遣された。

 

同行している文官は文官学校で優秀な成績を治めた若き精鋭であろう。

 

「はい。よろしくお願いします」

 

「でそっちは・・・・」

 

俺は隣にいた男に視線を向けると男は一礼をして自己紹介をする。

 

「呂蒙行政局長の補佐で来ました朱然といいます!!」

 

文官にはないどこか固い律儀な応答と洗礼された動き、彼が友人から聞いた通り武官だったのはうなずける。

 

「ほぉ、お前さんが朱然か・・・・。冥琳から話はきいてる。亞莎と同じで武官から軍師へとなったキレ者だと・・・」

 

「恐縮です」

 

「現場と机の上とはかけ離れた不合理なことが多々ある。それを学んでいけ」

 

「はい」

 

「しかし、部下を顎で使うようになるとは≪呉のあーちゃん≫はもう卒業だな」

 

そう彼女と俺は旧知の中で彼女の幼い頃からの知り合いでもある。

 

鼻を垂らして泣きべそをかきながら俺についてくる彼女がこれほどまでに頼もしい存在となって帰ってくるとは・・・・。

 

嬉しい反面どこか寂しく感じていた。

 

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「ろ、魯粛さん・・・・」

 

昔のあだ名を呼ばれ赤面する彼女の傍ら朱然はこの話題に興味を示しているようだ。

 

亞莎と俺を壊れた人形のように交互に見ている。

 

「二佐。その呼び名は一体・・・?」

 

「ああ。俺と亞莎は幼い頃からの顔なじみでな、故郷では彼女はこう呼ばれてたんだ。小さいときの亞莎は俺のあとを泣きながらついてくる泣き虫っ子だったのがなぁ・・・」

 

「そ、そんな昔話はいいですよぉ〜」

 

俺が昔を回顧する傍ら呂蒙はひたすら顔を紅くして恐縮していた。

 

慌てる呂蒙をみて俺は気を良くし、暫く彼女をダシにしてからかうことにした。

 

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「さて亞莎本題へと移るが、現在の治安状況や内政面での悪化がこの地帯では著しいと言わざるおえない。俺もなんとかしたいのは山々だが俺たちだけでは到底この状況を改善するのは不可能に近い。

 

そこでお前さんたちが呼ばれた訳だ。お前さんたちには現在に施行された政令または特別法に準拠して内政面を改善してもらいたい。予算、人員はなんとかするから気にしなくてもいい。好きにやってくれ」

 

「分かりました」

 

「それと・・・・、今行なっている山越との交渉が決裂となった場合は戦となる。そうなったらこの人手不足だ、派遣されたお前さんたちは二足のわらじとして軍の参謀として働いてもらうということだけは心に留めておいてくれ」

 

交渉で山越は、

 

≪自国に大幅な権限をもたせた協定でなければならない≫

とあくまでも対等な関係の協定でなく、山越の人間が他国で犯罪行為を犯してもその国の法律は適用外などこちらが不利益を被る不平等な条約を突きつけている。

 

山越はうちと戦争したいのだろう。

 

雪蓮が死に体制に動揺が走っているためこちらに分があると考えているようだ。

 

また蓮華に反対する保守派の豪族とも手を結んでいるのもあって強気な姿勢が目立っていた。

 

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漢王朝があれだけ長く体制を維持できたのは地方豪族の懐柔があったからである。

 

王朝に協力したら名士として官位をもらいその地方の支配権を独占できるという仕組みであったがこれは行政側が地方豪族に対る依存度を高めるとともに、行政よりも地方に強大な権限が回ることを意味する。

 

また豪族たちは金で雇った傭兵を持っており迂闊に手が出せない状況になっていた。

 

要するに漢王朝自体が緩やかな行政体制を敷いていたため豪族が強大になったのである。

 

呉の行政を司る役所である行政府はその地方豪族に対し身分保障と俸禄金以後六年かけて支払うと共に建業での強制移住と権限の完全移譲をすすめる≪移譲政令≫を出した。

 

地方での財政が圧迫されている地域はこれに快く応じた。

 

借金を国が負担してくれるのだから受けない手はないだろう。

 

だが当然これに反対する豪族つまりは税収が豊かな国ははこの政令を黙殺ないし拒否した。

 

これに拒否する豪族にはその政令の条項に基づき出兵がなされ半ば恐喝する形で豪族からの支配権限を吸収していった。

 

が、なかには不満から挙兵する豪族も少なくは無かったが、呉が持つ士気が高く精鋭化した国軍と劉備軍の連合軍の前に成すすべなく敗れ鎮圧されていった。

 

呉の軍と劉備の連合軍に太刀打ちできないと判断した豪族たちは命令に従わざるをえなかった。

 

だがまだ完全に鎮圧されたわけではない。

 

現状の改革に不満がある名士達は山越を扇動し呉を叩くことで、

 

政府転覆を目論み権力を得ようと画策する豪族が出てきていることは確かだ。

 

その為に山越に大量の援助物資を送っているとの報告が諜報局が入手している。

 

山越内ではイナゴによる飢饉が発生したらしく、そこに豪族達はつけ込んでいったのだろうというのは容易に想像できる。

 

 

山越は傀儡に限りなく近いものだと俺は判断している。

 

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「「分かりました!!」」

 

二人の大きな返事に頷き、これからの方針を打ち出すため二人と少々話し合った。

 

治安回復まで軍による検閲の強化と警邏をする部隊である予備隊の設置などこれからの方針を確認し合うことができた。

 

あとは引継ぎをすまして現地で指揮を採ってもらうこととなる。

 

「よし、大まかな説明は以上だ。お前さんたちには早速働いてもらいたいところだが・・・・、長旅での疲労もあるだろう。三日ほど休暇を出そう。そのあとバリバリ働いてもらうぞ」

 

「「はっ!!」」

 

「うし。いい返事だ!!期待してるぞ」

 

俺は二人と分かれると執務室に戻り仕事を再開した。

 

先ほど視察したが零細な長屋が所狭しとすし詰め状態で建てられていることが分かった。

 

所狭しと建てられた長屋が出火などの災害にあった場合、道が入り組んでおり消化活動が出来ず他の家などに燃え移るなど二次災害に巻き込まれる可能性が高い。

 

 

「まずは区画整理から始める必要があるな・・・。それと・・・」

 

こうして俺は終わりのない仕事へと打ち込むとともにまた徹夜になると思うとげんなりするのであった。

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区切りがつく頃には日が傾いてきたころだった。一息ついていると人の気配を感じ振り向くと待っていた人物がそこに立っていた。

 

諜報局の局長だ。

 

「お疲れさん。首尾はどうだ?」

 

「ぼちぼちといったところですかね?」

 

「上出来だ・・・・。実は頼まれたいことがある」

 

「なんでしょうか?」

 

「これを見てくれ」

 

一枚の紙を見せると普段は無表情の彼が驚愕の表情に変わる。

 

この紙は冥琳からの密告だった。

 

亞莎から辞令と一緒に貰ったものだ。

 

冥琳からの手紙は、

 

≪大本営に間諜が潜んでいる可能性がある。

今回正式な通達では敵に情報が漏れる可能性があったためこうして個人的な手紙という形をとった。最近での賊の一連の行動は的確かつ無駄がない。

 

恐らく情報が漏れていることが原因だ。

 

賊と山越の動きに注意をしてもらいたい。間諜に関しては現在調査中だ。なお最前線であるそちらにも敵が紛れ込んでいる可能性が高い。情報の扱いには気を遣うようにしてくれ≫

 

と書かれていた。

 

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「今回の文官の派遣に伴う護衛任務を担った大隊長の話によると、山賊の襲撃があったそうだ。これを見たあとだと話の辻褄があう」

 

「・・・・・・」

 

「捕縛した賊を尋問した結果、≪あなた方同様現状に不満を持つ者≫と名乗る者が事前にその情報を教えたらしい。

 

高級文官が向かってくること、そして哨戒部隊の監視網の抜け穴を教えてもらい自分たちはその情報を信じた・・・・と」

 

諜報局局長の顔が険しくなる。

 

「敵が情報を漏らし、呂蒙局長たちの暗殺を図ったと・・・・・?!」

 

「そうだ。しかし奇妙だ」

 

「奇妙・・・・ですか」

 

「ああ。こちらに分かるのを知っていて敵に情報を教えているのが・・・。単なるアホなのかそれとも何か裏があるのか・・・・」

 

「我々に一枚かませようと・・・・?」

 

「その可能性は高い。そこでだ。お前さんの信用できる人間を選抜し内密に調査をしてもらいたい

 

「分かりました、お任せ下さい」

 

「頼む」

 

局長は敬礼をし部屋から去っていくのを見て一人ため息をつく。

 

いつになっても変わらない。結局は正しい道を歩むものがバカを見る。

 

・・・・いや、地方を侵略する俺たちとそれを非難する豪族。

 

果たしてどちらが正しいのか・・・・。

 

見方を変えれば嫌が応でもわかる。

 

≪私はあの子を守るためならなんだってする。それであの子の笑顔が守れるなら・・・・≫

 

と答えた紫苑の気持ちが今ならわかる気がした。

 

どちらが正しいなんて関係ない。ただ大切な人が一日でも笑顔でいてくれるならそれでいい。

 

呉の国民がそして北郷がああするのも結局は大切な人を守りたいという想いからくる行動なのだと・・・。

 

 

そして山越も・・・・。

 

「さて・・・と」

 

俺はこみ上げる罪悪感に目を背けるように新しい案件が書かれた書簡に手を伸ばした-------。

 

 

説明
遅れてすみません。

忙しくて・・・・・。
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コメント
コメントありがとうございます。「もーちゃん」でもよかったのですが、真名という性質上「あーちゃん」でもいいかなと思い若干変更した次第です。魯粛さんと北郷さんはどっちが最初どっちかあえて分からいように書いています。そういった『混乱』も二次創作においての醍醐味かなと思いまして・・・・。(コック)
阿蒙ってあーちゃんじゃなくて「もーちゃん」って意味じゃなかったっけ?あとは魯粛視点で話が進む時、最初誰視点かわからないことが多いです。一人称が『俺』なので一刀のつもりで読むと話がかみ合わなくて、ああ魯粛視点かって感じることがしばしば。安易に○○視点とか書かれてないのは非常にいいですけどね。個人的にはいちいち○○視点とかかかれるの嫌いなんでwww(紅蓮のアーティスト)
緩やかな行政体勢を⇒体制 俺たちとそれを避難する豪族⇒非難(黄金拍車)
霧龍様メッセージありがとうございます。先ほど更新いたしました。迷惑をかけてしまい申し訳ありませんでした。(コック)
続きが気になるのに読めない・・・・ ツヅキ求ム(霧龍)
ご指摘ありがとうございます。大変見苦しいところをお見せしてしまいました。修正します。(コック)
体制に同様が走っているためこちらに部がある⇒「体制に動揺が走っている為に分がある」ですね。(トーヤ)
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真・恋姫無双

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