そらおと/ZERO 第四章「約束」 |
真っ赤な夕陽が沈んでいく。
その赤い世界の中で、俺は目的の場所に立っている。
いつもは深い緑が生い茂るここも、今は朱色に染め上げられていた。
そこへ足を踏み入れるのに少しだけ戸惑いがあった。こんな事は生まれて初めてだ。
「あれ? 智蔵君?」
「お、おう」
農作業の後だったんだろう、袖と膝の汚れた風音が俺に気付いて首をかしげた。
「手伝うか?」
「いいえ、今終わった所ですから。あとは片づけだけですよ」
「んじゃ、それだけやっちまうか」
はい、と頷いく風音と二人で農具を小屋まで運ぶ。
幼馴染の俺達にこの辺での遠慮はない。
「お昼休みはごめんなさい。どうしてもやらなくちゃいけない事があって」
「いいって。俺も似たようなもんだったしさ」
後片付けを手伝いながら、俺達はいつもと何も変わらない会話を続けている。
風音がいつも通りで落ち着くせいなんだろう。ここに来た本当の理由を少し言いづらい。
「…あのさ」
「そうだ、智蔵君は今日の晩御飯決めてます? 家で余ったお野菜を持っていきません?」
「あー、そうだな。食い扶持が増えたからなぁ…」
見月とニンフは分からないけど、少なくともイカロスは俺が養う必要がある。
お金に困っている訳じゃないけど、食材があるにこした事はない。
「お客さんでもいるんですか?」
「まあそんなとこ。そういえば好き嫌いあるのかな、あいつ…」
「直接聞いてみたらどうですか?」
「そうだな。帰ったら聞いてみるか」
ついつい風音の話に乗って雑談を続ける。そして、俺自身も今の時間を続けたい。
でも、それじゃあ駄目だ。ここで何もしないで帰ったら、黙って見送ってくれたニンフ達に立つ瀬がない。
何より、俺が今の状況に我慢できない。
おかしな話だ。俺が風音と今の時間を続けたいのに、それに不安を抱えている。
「そのお客さんの事なんだけどさ、ちょっと変わった奴なんだ」
「変わった人、ですか?」
だからこそ、俺はここに来た。
自分の抱える不安をはっきりさせるために。
「うん、すっげー変わり者でさ。俺を守るだの従うだの言うくせに、ちっとも俺の言う事を聞かないんだ」
「…はあ」
風音はよくわからないといった風に俺の話に相づちを打っている。
もう止めろ。これ以上は本当に引き返せなくなる。
そんな自分の弱気を胸に押し込んで、俺は言葉を続ける。
「俺さ、なんか変な事に巻き込まれちゃってさ。聖なるパンツだかなんだかしらないけど、命狙われちゃってさ」
「………」
おかしな事を言いだした俺に風音は何も言わない。
「見月の奴までちゃっかり乗り気なんだぜ。しかもその相棒がまた偏屈でさ、エンジェロイドだかなんだかしらないけどホント、困ったもんだよ」
わざと笑い話になる様におどける俺。それに笑い返さず、かといって驚きもしない彼女の反応にうすら寒い感覚が告げる。
それは半ば確信だった。触れたくない現実、あり得ないと思いたい幻想が崩れ落ちてく。
「風音は…違うよな? ライダーのエンジェロイドなんかじゃ、ないよな?」
自分もでも分かるくらいに震えた弱々しい声だった。
俺がすがりたかった日常のかけら。大切な幼馴染が偽りの((稀人|まれびと))だったなんて、信じたくないという願い。
「いいえ、私はライダーのエンジェロイドですよ。智蔵君」
その幻を、彼女は切なそうに笑って引き裂いた。
赤い世界に、見知った幼馴染の姿は無かった。
そこにあるのは、機械的な意匠をした羽を持つ『倒すべき敵』の姿だった。
そらおと/ZERO 第四章「約束」
「…夢なら、よかったのにな」
朝だ。
俺はいつも通り布団の中で夢から覚めた。
一つ違う所は、最近続く妙な夢じゃなくてれっきとした現実の焼き増しだったという事だ。
「マスター。おはようございます」
あの後、俺は逃げるように風音の前から立ち去った。
…違う。実際に逃げたんだ。
どんな顔で、なんて言えばいいのか分からなくて現実から逃げた。
「…マスター?」
「幻滅、されただろうな」
思わず溜息が出る。これから風音とどう付き合っていけばいいのか。
今まで一番近くにいた家族みたいな存在だったのに、どんな風に接すればいいのか分からない。
それに何より、風音がエンジェロイドだったという事は。
「脈拍、異常なし。呼吸、異常なし」
「俺の頭ん中、どうなってんだろうな」
俺には風音と幼い日々を過ごした記憶が確かにある。でも風音は『最近になって』この町に召喚されたハズのエンジェロイド。
記憶の中にある風音と、人間じゃないという昨日の風音。どっちが本当なのか分からない。
結局の所、俺の一番の悩みはそこだった。
今の風音は本当に俺の知る風音なのか。それすらも曖昧だから、何をすればいいか分からない。
「どうしよう、マスターの様子がおかしい…」
………さて、いつまでもここで悩んでも仕方ないだろうし。
「イカロス君」
「よかった、ご無事なのですね、マスター」
「うん無事だ。だからさっさと俺の上からどいてくれないか」
寝起きから超至近距離でこっちを覗き込んでくる迷惑な奴に説教せねばなるまい。
風音の事はその後で云々と悩む事にする。
つーか、こんな状況で色々真面目に考える事ができた自分を褒めてやりたい。
「朝食の用意ができています。そあらさんとニンフも待っていますので」
俺の無事を確認したらそそくさと部屋を立ち去るイカロス。その動作にはまったく迷いが無い。
「ま、悪い気はしないけどさ」
綺麗な女の子が心配してくれるというシチュエーションは、まあ、嬉しい。
あいつに悪気が無い事も十分に分かっているし、ちょっとだけ元気が出たのも事実だ。
「…さて、気合い入れなおすか」
正直な話、次に何をするべきかは分かっていたのだ。
意気地が足りずに逃げてしまった昨日の自分を殴ったやりたい。
「風音と、もう一度じっくり話さないとな」
話すべきことは二つ。
一つは風音に俺達と戦う意思があるのかどうか。そしてもう一つは。
「どっちが本当なのか、はっきりしないと」
俺の記憶と風音の在り方の矛盾。この真相を知らない限り、俺はきっと前に進めない。
それを知る一番の近道は、風音と向き合う事だ。
「困った話だよなぁ」
風音と向き合うためにこの矛盾を解きたいのに、向き合わないと解消できない。
ひどい話だ、ホント。
「…本当に居つくんだな」
居間に降りると、イカロスの言った通り見月とニンフが食器を並べている最中だった。
「なによ、悪い?」
「あ、やっぱり迷惑だったかな?」
いや。先に共同戦線を言い出したのはこっちなんだから、これくらいはいいんだけど。
「見月はいい。でも悪びれないニンフさんはNGの方向で」
だからといって、当然のごとく居間を占拠されるのも家主としてどうかと思う。
「ふん。昨日は酷い顔して帰ってきたくせに、もう立ち直ったなんてタフねアンタも」
「うるせー。ポジティブが売りなんだよ俺は」
痛いところを的確についてくる点もどうかと。貴女は僕の味方なんですよね、ニンフさん?
「…で、どうするの? 何ならこっちで引き受けてもいいけど?」
「いや、大丈夫だ。もう一度、風音と話する」
でもこういう風に最後には俺を気遣ってくれるのは素直に嬉しいので、不問にしよう。
本当は心配なくせに、わざと厳しい事を言って俺の尻を叩いてくれるニンフの存在はありがたかった。
「あのさ桜井君。風音さんとは本当に…?」
「わかんねえ。その辺も含めてはっきりさせる」
見月は不安そうだった。風音と戦う事になるかどうかが気になるんだろう。
こっちにきて二週間以上経つ見月だが、こいつが一番親しくなったのは風音だと思う。それを思えば当然の反応だった。
「心配すんなよ。万が一の時は俺が…は無理だから俺とイカロスで何とかする。そもそも俺は風音とやり合う気なんてないから、いざという時はマスターの方をとっちめるさ。体力には自信あるし、マスターの方なら小細工抜きで殴り合っても俺が勝てる」
だから見月を安心させるために宣言しておく。現状、俺の立てられる方針はこれだけだ。
これは風音が俺と戦う気になった時には瓦解する方針なんだけど、それは無いと信じたい。
「お前もそれでいいか、イカロス?」
「…はい、私もそれで構いません。ひよりさんと争う事は、私の本意ではありませんから」
イカロスも素直に頷いてくれた。
どうやらイカロスは風音とも面識があった様だ。ニンフの例を思えば当然なのかもしれない。
「そういう意味じゃないんだけどなぁ…」
「うん? なんだって?」
「なんでもない。桜井君がそれでいいなら反対しないよ。こっちはバーサーカーの調査を続けるから」
「え? お前らそんな事してたのか?」
おいおい、二人だけであいつらを追うなんて危なくないか?
「大丈夫よ。むしろ襲撃されないために相手の本拠地を探り出して監視しておきたいくらいなのよ」
「ニンフがそう言うならそうなんだろうけどさ… 俺とイカロスに手伝える事はないか?」
「無いわ」
おおう。聞きました奥様? ニンフさんってば真顔ではっきりと言い切りましたよ?
「むしろいられると私のジャミングで隠れきれなくなる可能性が上がるから。特にアルファーの動力炉は隠すなんて無理なくらいの高出力だし。アンタはヒヨリの方に専念しなさい」
「うーん。それはありがたいけど、イカロスはどう思う?」
「ニンフの意見に賛同します。マスターはご自分の問題に集中するべきかと思います」
むう。イカロスにまでこう言われると、もう反論する余地は無いか。
俺としては見月達の事が心配なんだけど、どうやらいらぬ気遣いみたいだ。
「………桜井君って、ニンフさん達との接し方うまいよね」
「そうか? 確かに遠慮はしてないけどさ」
こいつらって基本的にわがままでフリーダムだから、こっちも本音でぶつからないと振り回さるだけになるっていうか。気を遣っても俺が損するだけなんだよな。
「うん。なんて言うかな、慣れてる気がする」
「慣れてなんかねぇんだけどな」
自慢じゃないけど、俺に女の子の知り合いは少ない。
せいぜい風音と会長、最近で見月くらいだ。残りの女子には蛇蝎のごとく嫌われている。
それでも、それに後悔なんて無い。自分の本能が赴くままに女の子の真理を探究し続けた結果なのだから…あ、ちょっと涙出てきた。
「いい笑顔してるとこなんだけど、そろそろ時間じゃない?」
「おっと、そうだったな。サンキューニンフ」
日々繰り返してきたセクハラによる自業自得に涙している場合じゃない。
昨日に続いて見月と一緒に登校するとあらぬ疑いをかけられてしまうから、俺が先の家を出る事にしていたのだ。
「んじゃ行ってくる。イカロスは大人しく―」
「はい、ご一緒さていただきます。マスター」
…だよね。そう来ると思ったよ。
「あのな、イカロス。俺はクラスメイトに嫉妬で殺されるなんてまっぴらだ。だから見月とは別の時間に登校する。この意味が分かるな?」
「はい。そあらさんが共に行動できない以上、私の警護が必要になります」
うん、ものの見事に全然分かってないね。
せっかく見月と別に登校しても、君が一緒にいると状況は全く変わらないんだ。むしろ悪化すると思う。
「ニンフ…」
「諦めなさい。ソアラは学校、私はバーサーカーのマスターの捜索。他に人員はいないし、護衛ならアルファーが適任だから」
唯一イカロスを言い含められるニンフがこういう以上、俺に逃げ道はない。
うう、今までの俺はモテない男だったハズなのに。
突然こんな女の子に囲まれ始めたら、本当にクラスメイトにあらぬ疑いをかけられて誅殺されてしまうかもしれぬ。
っつーか、そもそも背中に羽の生えた女の子が転校生とか無理があり過ぎるんじゃないだろうか。
「手続きの件は会長さんにお願いしています。あとは学校関係者に記憶改ざんの催眠をかけるだけです」
「…マジかよ」
色々な意味で聞き捨てできない台詞なんだけど、それ。
「ご安心ください。必ずお守りします」
「あー、うん、頼む」
そんな俺の悩みなど気にも留めない頑固者は、精一杯のやる気を見せているのだった。
「転校生のイカロス君だ。仲良くするように」
「よろしく、お願いします」
『うおおおおおおおおーーーーーっ!』
「…はぁ」
案の定、クラスの男子共の熱狂ぶりは半端なかった。その様は飢えた野獣である。
ちなみにイカロスが俺と一緒に教室まで入ってきた所はばっちり見られているので、さっきから背後の殺気がえらい事になっている。
…俺、バーサーカーと戦う前に死ぬんじゃないかな?
「イカロス君は桜井の家に世話になっているそうだな。皆、仲良くやってくれ」
はい死んだ。今の担任の紹介で俺死んだよ。
『桜井を処刑しろっ!』
『異議なしっ! 異議なしっ! 異議なしっ!』
おいお前ら、ホームルーム中なんだから座れよ。座ってくださいお願いします。
「ははは、若いなお前ら。若い情熱の迸り、先生は否定しないぞ」
「そこは止めろよっ!」
昨日は俺の遅刻を叱ったくせに、クラスメイトの暴動は静観とかおかしくね? この担任おかしくね?
「先生、桜井の歳の頃にこんなラッキーイベント無かったからな。羨ましいぞぉ」
「さわやかな顔でアンタまで嫉妬してんじゃねぇよ教育者!」
いかん、本当に味方がいねぇ。一縷の救いを求めて見月の方へ目をやるが、頼れる同盟者さんはそっぽを向いたまま無関係を決め込んでいる。
よく分からないけど見月は今朝の一件からずっと不機嫌のようだ。俺が何をしたっていうんだ。女の子って分かんねぇ。
「大変ですね、智蔵君」
「…まあな」
結局、隣の風音だけがいつもの様に俺を心配してくれるのであった。
…いつまでも、その優しさに甘えるわけにはいかないよな。きっと風音は俺との会話を待ってる。なら、俺はその気持ちに応えないと。
「あのさ、風音。今日の昼休み―」
「あ。智蔵君、危ないですよ」
「―え」
『死ねぇぇぇぇ!』
うわー。本気で襲ってくるか普通。
しかも昔の漫画みたいな飛びかかり方しやがって。おしくら饅頭とか、今時流行りませんよ?
…あ、この位置だと逃げたら風音が巻き込まれるな。仕方ない、ここは大人しく押しつぶされるか。
っと、その前に。
「イカロス、これはだな」
「はい、存じておりますマスター」
よかった。イカロスの奴、俺を守るとか言ってるからてっきり暴れだすと思ったけど、ちゃんと自重してくれるらしい。
「以前から、よく見る光景ですので」
待てい。俺はこんな事態初めてなんだが。
それともあれか、君は俺の未来が見えるとでも言うんですかイカロス君。
「ぎゃぶぁぁー!」
そんな突っ込みを心の中でしながら、俺はクラスメイト達に圧殺されたのであった。
「…ん」
心地よい感触と、間近に感じる人の気配で目が覚める。
最初に視界に入ったのは抜けるような青空と。
「…風音?」
「はい。大丈夫ですか?」
見知った幼馴染の微笑だった。
「…んっと。まあ」
大丈夫といえば大丈夫だけど、あえて言うなら。
「ひざ枕とかされると、ちょっと困る」
「ごめんなさい、こっちの方が智蔵君も楽かなって思いましたから」
少し痛む首を捻りながら体を起こす。ここは学校の屋上のようだ。
「いや。楽には楽だったんだけど、それ以外の部分で楽じゃない。とりあえずサンキューな」
ぶっちゃけると恥ずかしいのだ。いくら幼馴染とはいえ、相手は同い年の女の子なんだから。
「今、何時だ?」
「お昼休みですよ」
「うへぇ。午前中丸ごと寝てたのかよ」
あいつら、本気で俺を亡き者にしようとしたんじゃあるまいな。
流石にそうなったら担任が止め…ないかもしれないんで、その辺はイカロスに期待しよう、うん。
「本当は見月さんとイカロスさんも看病したかったみたいですけど、少し無理を言って私が引き受けたんです」
「無理って、どんな?」
「秘密です」
むう。しれっと言い切る風音だが、結構大変だったんじゃないのか、それ。
見月はともかくイカロスなんて俺を護衛する気満々で学校に来ている訳だし、相当駄々をこねたを思うんだけど。
「ところで智蔵君、さっきのお昼休みの話ってなんですか?」
「あ、ああ。それなんだけどな…」
つい風音がいつも通りだったから流されてしまった。
今、俺が風音と話すべき事を忘れちゃいけない。ここは丁度屋上だ。人影もないし、内緒話をするにはもってこいだろう。
「―あ」
そこまで考えて、ようやく気が付いた。
俺をわざわざこんな所で看病していた風音の真意。それは俺の目的を読んだ上で、都合のいいロケーションを選んでくれたのだと。
「すまん。気を遣わせてばっかりだな、俺」
「いいえ。私も智蔵君とちゃんとお話したかったですから」
風音は微笑をたたえたまま、俺をまっすぐに見つめてくる。それに応える為に俺も風音を正面から向き合った。
幸いな事に、昨日と違って心は穏やかだ。風音が俺の知る幼馴染のままで接してくれているからなんだろう。
「えっとさ。とりあえず、風音はこの戦いに参加する気はあるのか?」
「はい。消極的な理由ですけど、私にも戦う理由がありますから」
よどみなくきっぱりと言い切る彼女に少し驚いた。風音の性格なら、絶対にためらうと思っていたのに。
「その理由って、なんだ?」
「ちょっと言えません。私のは自分勝手なわがままみたいなもので、イカロスさん達みたいな誇れるものじゃありませんから」
「そっか。でも、イカロス達の戦う理由ってそんなに凄い事なのか? 単にマスターを守るって言ってるだけだぞ?」
「それでいいんです。それが私たちにとっての使命なんですから」
「…俺には、よくわかんねぇよ」
少しだけ、風音の物言いに腹が立った。
自分たちの役割をこなすだけの道具みたいな生き方が、俺には誇れるなんて思えなかった。
「智蔵君は分からなくていいと思います。そんな貴方だから、イカロスさんもニンフさんも自分の意志でそれを選らんだんです」
「風音。ずるい言い方だぞ、それ」
「そうですね。ごめんなさい」
苦笑する風音に俺はそれ以上責める事ができなかった。
その表情を見て、少しだけ風音の考えている事が分かった。理由は分からないけど、風音はイカロス達を羨ましいと思っているんだって事に。
「それでさ、風音は俺達と戦うつもりなのか?」
別の話を振ってこの話題を打ち切る。
風音自身も今の話を続けたいと思わないだろうし、こっちの方が重要な話になる。
「いいえ、私は智蔵君と争いたいと思いません。ですが―」
「あいつが、そうは思わない?」
「はい。私のマスターは智蔵君と戦って勝ちたいと考えていますから」
「へっ。それなら自分の体一つで喧嘩売って来いっての」
風音のマスター。確かにあいつなら俺を敵視していても不思議じゃない。
付き合いこそ長いが、あいつと俺は犬猿の仲だ。顔を合わせれば必ずと言っていいほど衝突してきた仲なんだから。
「以前の智蔵君と私のマスターだったらそうなんでしょうけど。今は、その」
「分かってるよ。エンジェロイド同士を戦わせて優劣を決めたいんだろ? あいつらしい考えだ」
そういう所こそが、俺があいつを嫌う理由なんだ。
優雅だの、華麗だの、真剣勝負だの、そんなお題目を並べる暇があるなら自分が泥を被ってでも勝ちに行けばいい。
わざわざ自分以外のやつを使って互いの勝敗を決めようなんて、俺は認めない。
「それと風音、あいつをマスターなんて呼ぶなよ。今はそうでも、元々俺達三人は―」
「違います。智蔵君の幼馴染は本当は一人だけです。私は、元々存在しない異物なんです」
「―っ!」
俺が一番認めたくない事。
今までのお前がいなくなってしまうという事実を。お前が自身が言うのか、風音。
「智蔵君の幼馴染は私のマスターだけです。智蔵君も気づいているハズですよ? イカロスさんが学校関係者に記憶の改ざんをして溶け込んだ様に、私も―」
無表情で事実だけを並べていく風音。
「嘘だな」
「…智蔵君?」
それにどうしようもなく頭に来たから、言ってやる。
「なら、なんでお前は毎日俺と一緒にここで過ごしてきたんだ?」
「それは、敵のマスターの情報を知る為に」
「俺がマスターになったのはつい二日前だ。俺と風音が一緒に過ごしてきたのはいつからだ?」
そもそも、敵の情報を知るなら知り合い程度でいいんだ。幼馴染なんて近すぎる関係は、むしろ自分の正体の露見を招く。
「それも、記憶の改ざんで―」
「無理だろ。俺にハッキングしたらそれこそイカロスとニンフが気づく。あいつら、いつもどっちかが俺に張り付いてるんだぜ」
ちょうど今がそれだ。お互いに良く知っているから。知ってしまっているから。
「風音。お前さ、俺と今みたいな関係でいたかったんじゃないか?」
誤魔化す事なんて、できない。
「………っ!」
風音は俺と幼馴染でありたいという願いを持っていたんだ。
そして俺も、風音に対して誤魔化す事はできない。
「俺は、風音と幼馴染でいたい。いつもみたいに俺が馬鹿やって、風音がそれを心配そうに見ていたり、二人で何でもない事を一緒にやりたい。そんな関係でいたい」
唇を噛みしめてうつむく彼女に、俺は言葉を続ける。
「マスターだのエンジェロイドだの、そんなのは二の次でいい。俺の幼馴染は三人だ。それ以外を、俺は認めたくない」
俺はようやく真っ直ぐに彼女と向き合って、自分自身の意志を伝える事が出来た。
そう、最初から俺の答えなんて決まっていたんだ。
変に悩んだのは、自分の記憶と今の現実に矛盾があったからってだけで。風音の望んだものが本当なら、何も迷う事なんてない。
惜しむらくは、この言葉を昨日の夕陽が沈むあの場所で言えなかったという事。それさえなければ、こうやって彼女を傷つける事も無かったのに。
「風音は、それじゃあ嫌か?」
「…嫌じゃ、ないです」
ぽつりと、呟いて彼女は俺に抱きつく。俺も、抱擁でそれに応えた。
風音の体は暖かい。彼女が俺達と違う存在だなんてとても思えなかった。
「………やっぱり、桜井君はずるい人です」
「悪い。確かに今の言い方はずるかった」
俺と風音の関係は、何も変わりはしない。
彼女がエンジェロイとか、敵だとか、そんなのは別の話だ。
「そろそろ休み時間も終わるな。降りようぜ」
「………智蔵君」
「うん?」
「私、約束します。何があっても、必ず貴方を守れるように頑張ります」
「うーん。気持ちは嬉しいけど、若干一名ともめると思うぞ?」
「そうですね、イカロスさんは駄々をこねると思いますけど、もう決めましたから」
俺から離れた風音の笑顔はすっきりとしていて華やかだった。
それだけで自分の決断が間違いじゃなかったと信じられた。何があっても、きっと俺達はこの幼馴染という関係を貫けると。
屋上から降りて教室に向かう。
色々あったけど俺自身の問題はけりがついた。ようやく一息つけると言いたいけど、まだいくつか問題は残っている。
「またクラスの連中が俺を襲って来るとか、ないよな?」
「ないと思いますよ。ちゃんと見月さんがフォローしてくれてましたから」
それはありがたい。ありがたいんだけど、もっと早くして欲しかった。
なんで今朝の時にしてくれなかったんですか見月さん。何か俺に恨みでもあるんですか?
「あとはあいつと話をつけないとな。ここん所会ってなかったけど、久しぶりに会いに行くか」
「それは…」
風音の表情は暗い。
彼女の危惧する理由は分かるんだけど、会わない事には始まらないんだよな。
「ま、なんとかなるさ。放課後にでもちょっと遠出して―む?」
廊下の向こう側が少し騒がしい。何事かと思い人ごみを覗いてみる。
「ふっ、何も照れる事はないじゃないですか。僕の優美な佇まいに思わず畏敬の念を抱くのは仕方のない事ですがね、モナムゥ〜」
「…マスターは大事な用事の最中です。面会は別の機会にしてください」
「ぶっ!? な、何やってんだお前らーーー!」
人ごみの中心にいたのは((我が家の居候|イカロス))と―
「マスター? お話しは終わったのですか?」
「おや、そっちから来てくれるなんて殊勝な心がけじゃないか。久しぶりに会うけど少しは謙虚さを身に着けたのかい、ミスター桜井?」
たった今、俺が会いに行こうと考えていた鳳凰院=キング=((頼朝|よりとも))という男だった。
「お前、なんでここにいるんだよ。学校はどうした?」
「もちろん欠席したよ。ああ、ちゃんと欠席届も出したから何も問題はないよ」
こいつ、鳳凰院は町から少し離れた有名な私立の生徒だ。噂によると、お金持ちの連中がこぞって通うあそこは陸の孤島に等しいらしい。
そんな所からよく出てこれたもんだと感心したい所だが、俺たち町立の生徒からしたら完全な異邦人である。
「それよりも聞いたよ。君も僕と同じ立場になったというじゃないか。なら、挨拶くらいはしないと礼に欠けるだろう? トレビア〜ン的にね?」
まあそれ以前に。
周囲に薔薇をまき散らしつつ耽美なポーズを見せつけ、終いに意味不明の語尾をつけるコイツは常識的な観点から見ても十分に異邦人、いや宇宙人なんだけどさ。
「やめろよ。お前と同類にされると寒気がする」
俺はこんな変態じゃないし、人が多いこの状況でマスター云々を暴露されても困る。
『おい、桜井の奴、あいつと知り合いみたいだぞ』
『やっぱ類は友を呼ぶんだな』
『あの人、顔はいいのに桜井と同じ変態なんだ。残念ねー』
いや、ホントに困る。ただでさえ低い俺のクラスの地位が底辺まで直滑降しているんだってば。
「ふむ、確かに人が多いね。挨拶程度なら問題ないと思っていたんだけど、僕の眩い美貌が衆目を集めてしまうのかな。モダ〜ン」
「はいはいそうだな。だからさっさと帰ってくれ」
こういう奴への主な対処方は二つ。
徹底的に無視するか、適当に流すべし。俺は後者を採用している。
「キミがそれでいいなら、僕は構わないけど。本当にそれでいいのかい?」
にやにやと笑いながら挑発的な事をのたまう((変態野郎|ほうおういん))。
…ちっ。この野郎、俺の内心を見抜いてやがる。
どの道、俺はこいつとしっかり話をしないといけない。でないと風音と今の関係を続けるのが難しくなる。
「分かった。放課後、いつもの場所でいいか?」
「いつもの? …ああ、あそこか。分かったよ、という訳だから君は邪魔しに来ないでくれよライダー?」
「…はい」
鳳凰院の『命令』にか細い声で風音が答える。野郎、なんてこと言いやがる…!
「てめぇ…!」
「クールダウンだよミスター桜井。これ以上騒ぎを大きくする気かい? それは優雅じゃないよ。シャンパ〜ン」
「…言っていい事と悪い事があるだろうが」
全力で自制しつつ、戯言をぬかした馬鹿野郎を責める。
「そうかい? まあ、君ならそう言うだろうと思っていたけどね。ビダルサス〜ン」
ははは、と笑ってきびすを返す鳳凰院に悪びれた様子は無かった。
「じゃあ、また放課後に。…楽しみにしているよ、アーチャーのマスター」
周囲の連中には意味不明であろう妄言を言いながら立ち去っていくあいつを、俺は最後まで睨み続けた。
やっぱり、あいつはいけ好かない。
言動も変態なら、他人への気遣いもない。自分の意志だけが絶対だという唯我独尊。
なんで。
「あんな野郎が、風音の」
優しくて、他人の事を真っ先に考える風音のマスターなんだよ。
俺はこの戦いそのものは否定しない。それがあったからこそ俺は風音や見月、そしてイカロス達に出会えたんだから。
それでも、この采配をした野郎は神様だろうが許せない。
なんでこんな人の悪い組み合わせにしたんだと、できる事なら直談判してやりたかった。
騒ぎの元凶が立ち去り、休み時間が終わるからなのか。
あれだけあった人だかりは波が引くように無くなっていく。
「…マスター」
「…智蔵君」
残ったのは俺と、不安そうな顔をするイカロスと風音だけだ。
俺は―
1.風音を励ます。
2.イカロスに何があったかを聞く。
*選択肢による変化はその場の会話のみです。メインシナリオに影響はありません。
1.風音を励ます。
「風音。あいつの言った事、あんまり気にするなよ。何考えてるか知らないけど、あいつちょっと様子がおかしいみたいだから。………いや、あいつがおかしいのはいつもの事だから丁度一周してまともに…なってねぇなぁ。あいつがまともになる事は論理的にあり得ないって事か」
「…くす。それを聞いたら頼朝君は怒ると思いますよ?」
「どうだか。むしろ『僕の優れた頭脳は凡人には及びもしない人類の宝物だからね、当然だよ』ってふんぞり返るだろ」
「もう、そんな事ばかり言うから二人とも喧嘩ばっかりなんですよ」
よかった。まだ苦笑の色が濃いけど、風音が笑ってくれて一安心だ。
さっき鳳凰院に命令された時の風音はとても弱々しくて、凄く不安だったのだ。
「あの方は、マスターのお知り合いなのですか?」
「まあな。実は腐れ縁なんだ、あいつとは」
話すと長くなるし、イカロスには簡単な説明だけしておく。
あいつについてじっくり語るとなると、とてもじゃないけど時間が足りないからだ。
「って時間! もう昼休み終わりじゃねぇか!?」
『あ』
二人の声に重なる様に予鈴が鳴る。
いかん、またクラスメイトにからかわれる材料が増えてしまう。
いや、それだけで済めばまだマシな方か。また嫉妬に狂って襲われたら堪ったもんじゃない。
「急ぐぞ!」
二人を連れて自分のクラスへと走る。
その後、俺がクラスメイトにどういう目で見られたのかは―
『桜井の野郎、今度は風音か…!』
『イカロスさんも一緒じゃねぇか! 野郎ぶっ殺してやる!』
『待ちなされ殿、ここは殿中にござる。やはり放課後、人気のない所で…』
まあ、当然の結果だと思う。
それでも、俺は無実だと叫びたかった。
2.イカロスに何があったかを聞く。
悔しいけど、風音の件は鳳凰院に直接抗議するべき事だ。
デリカシーの無い俺が変にフォローしようとしても、余計に風音を傷つけるだけだろう。
「イカロス、あいつに何か変な事言われなかったか?」
だから別の話を振って、この件については一先ず置いておくしかない。やはり、放課後すぐにでも鳳凰院とは話をつけるべきだろう。
それにしても、イカロスがまともな応対を出来た事は驚きだ―
「発言の意図がよく分かりませんでしたが、自分の物になれ、と言われました」
「―ってなんだそりゃぁーーー!?」
初対面の女の子に何をのたまってんだあの野郎!
「私はマスターの物ですから、貴方の所有物にはなれませんと答えたのですが…」
そ、そうか。それはそうだよな…って。
「待て。それをさっきの人ごみの中で言ったのか?」
「はい」
「ぎゃああああああぁぁぁぁーーー!」
バカバカ、イカロスのおバカ! 見月のフォローがどんな物だったか知らないけど、完全に致命傷だぞこれー!
「と、智蔵君、大丈夫ですよ。皆さんはきっとイカロスさんの新手のギャグだと思ってくれてますよ」
「じゃあ聞くけど。風音はイカロスが冗談を言える性分だと思うか?」
「………天変地異の前触れなら、あるいは」
「そこまで言うなら、素直にあり得ないと言ってくれ…」
終わった。俺の学校生活は終わった。
きっと俺は女の子を召使の様に扱う変態外道ご主人様というレッテルを張られたに違いない。
「マスターの評判でしたら、何の問題もありません」
「…その心は?」
「そあらさんから、マスターは覗き常習犯の超絶エロ魔人の称号を持っていると聞きました。これ以上落ちる評判なんて無いとも」
「見月め、裏切ったな! 俺の気持ちを裏切ったなー!」
あいつ、何が同盟者だ! 最初から俺を陥れる気満々だったんじゃねぇか!
「だ、大丈夫です! 少なくとも私は智蔵君の味方です!」
「私も、マスターに最後までお仕えする所存です。ご安心ください」
「…ありがとう」
本来なら素直に喜ぶべき言葉のはずなのに、涙が止まらなかった。
できればもっと別のシチュエーションで言われたかったよ、ちくせう。
真っ赤な夕陽が沈んでいく。
その赤い世界の中で、俺は目的の場所に立っている。
まるで昨日の焼き増しの様な風景だが、今日は場所も違えば待ち人も異なる。俺が立っているのは、大桜が見える丘への一本道だ。
近くにベンチもあるのだが、俺は座る気にならなかった。
一人で行くなら気を抜くなと見月に念を押された事もあれば、これから会う奴に疲れて休んでる姿なんて見せたくないからだ。
「やあ、待ったかいディアフレンド?」
「ああ、待った。お前、学校休んだくせに何やってたんだよ」
「色々だよ。これでも忙しいんだ。時は金なりだよ。マネー・オブ・タイムさ。…フロムだったかな?」
「知らねぇよ」
悪びれない男、鳳凰院に精一杯批難の眼差しを向ける。
「それはこっちも同じだ。イカロスと見月を説得するのに時間がかかってんだぞ」
またもや単独行動をするという俺の提案に、当然ながら二人は反対。最終的に風音を見月達が見張る事で了承してもらったけど、二人は明らかに不満そうだった。
協力を頼んだ見月に対して俺は一人で動いてばっかり。イカロスにいたっては、俺の護衛という主任務をまったく果たせていない事になる。そりゃ不機嫌にもなる。
かといって、やっぱりここは譲れなかった。俺は風音との問題を自分一人で解決したがっている。
望みが薄い事だと分かっていても、諦める事なんてできなかった。
「さて、それじゃあ話というのは何だい、ミスター桜井?」
「その前に、そのミスターとかやめろ。今日は真面目な話をしに来たんだ。お互い遠慮なしでいかないか?」
俺の提案に鳳凰院はふむ、と頷き。
「確かに茶化している場合じゃないかな。ここは人気もないし、それもいいだろう。じゃあ、((智蔵|・・))」
「おう、悪いな((頼朝|・・))」
あっさりと『お金持ちの変態ドラ息子』という仮面を脱ぎ捨ててくれた。
「分かっていたけど、昔から女の子の事になると本気になるよね、君は」
「当たり前だろ。他にどんな時があるってんだ」
「………それもそうだね。僕も綺麗な女性は大好きだし、是非お近づきになりたいと思うね」
元々、俺と鳳凰院の関係はこういうものだった。
昔からの腐れ縁で、中学に上がる前までは喧嘩しつつも一緒に野山を駆けた仲である。
中学になってから家柄と学校の違いが大きくなったせいで疎遠になっていたけど、裏表の激しい所は変わっていないらしい。
甚だ不本意なんだけど、要するに俺たちの関係は幼馴染というやつなのだ。
「さて、君からの話なんだけど。ある程度の予想はついてるんだよね」
「なら話は早い。勝負なら俺とお前だけでやろうぜ。風音を巻き込むんじゃねぇよ」
「断る。それじゃあ今までと何も変わらないじゃないか。それに君、チビなくせに強いしね。僕は怪我したくないし」
予想通りの反応だった。
こいつは俺との勝負にこだわるくせに、自分が痛い目を見るのを嫌がる性質なのだ。そこは変わっていてほしかった。
「…分かった、じゃあ二対二だ。イカロスと風音、俺とお前でやり合おう。先にどっちか勝負をつければいいよな?」
「駄目だよ。君は自分のエンジェロイドにライダーの足止めをさせるだろう? それじゃあ僕と君だけの勝負になってしまうじゃないか」
「お前って、我儘な奴だよな」
「当然だろう?」
満足そうにふんぞり返る鳳凰院。
やっぱりここでぶん殴ってやろうか? いや、そんな事をしても何も変わらない。我慢だ我慢。
「じゃあどうしたいんだ、お前」
「決まってる。僕のライダーと君のアーチャーを戦わせたいのさ。僕も君と命のやり取りをしたい訳じゃないからね。ライダーが負ければ素直に退くさ」
「却下だ。俺は風音と戦うつもりはねぇんだ」
「だろうね。まったく、頑固な事だ」
「どっちがだ」
結局、お互いの目的は平行線のままだ。
俺は風音と戦いたくない。鳳凰院は風音を戦わせたい。これが変わらない限り、どっちも望む妥協点にたどり着けない。
それと同時に、俺にはさっきから気になっている事もある。
「…なあ」
「なんだい?」
「なんで風音をライダーなんて呼ぶんだ。俺たちは幼馴染じゃねぇか」
「冗談じゃない。僕の古い友人は君ぐらいだ。『アレ』の入る余地なんて無いよ」
「ってめぇ…!」
終いには『アレ』呼ばわりか、温厚な俺もいよいよもって我慢の限界だ。
「君こそ、なぜそこまで肩入れするんだい? ライダーの記憶操作には気づいたんだろう? なら―」
「風音は風音だ。あいつは俺達と幼馴染って関係を望んだんだ。それは本当の事なんだよ」
そう。それだけは譲れない。
例え思い出は偽りでも、風音の心は嘘じゃない。俺は昼間の屋上でそれを確かめられたんだから。
「…はあ。目を覚ませ智蔵、君はアレを美化しすぎているよ。アレの正体は油断ならない性悪だ。マスターである僕だからこそ、それが分かる」
「分からねぇよ。お前の中にだって風音との思い出はあるだろ。それはそんなに歪なもんだったか?」
俺の言葉に鳳凰院は苦笑して。
「無いよ」
「…なに?」
あからさまな侮蔑の表情と共に、鳳凰院は口を歪めた。
「僕にはもうアレが幼馴染だなんて記憶はないんだ。本人にきっちり修正させたからね。だから君の様な思い入れは無い」
「お前…!」
「考えてみなよ。僕は召喚した矢先、その相手に記憶を弄られたも同然なんだよ? そんな屈辱、いつまでも残しておく訳ないだろう?」
鳳凰院の表情は侮蔑に加えて、憤怒まで見え隠れしている。
こいつがこんな表情をするなんて、初めて見た。
「まったく、従順な君のエンジェロイドが羨ましいよ。知らないうちに自分の頭を弄られるなんて、冗談じゃない」
次第に増していく憤怒の発露。
「…それは、そうかもしれないけどよ。風音にだって悪気は―」
「悪気が無いなら余計に性質が悪い! あの女、自分の望みのために人の意志を捻じ曲げたも同然なんだぞ!」
記憶の書き換えなんて、自分という存在への究極的な干渉に等しい。
それに対してこいつは本気で怒り、侮蔑している。
それは、間違いなく鳳凰院の持つ正しい怒りだった。
「智蔵、君も目を覚ませ。キャスター辺りなら記憶の改ざんも修正できるだろう、今夜にでも処置してもらうといい」
その言葉は鳳凰院なりの俺への気遣いだったのかもしれない。
「…俺の情報、知ってんのな」
「こっちも色々と人手を割いているからね。まあ、ミス五月田根ほどじゃない」
それに気づいてしまったから、俺はとっさに反論できなかった。
「僕の家は前回の戦いの勝者だったからね。事前の情報もちゃんとあったんだ」
ああ、そういえば最初の夜に会長がそんな事を言ってたっけ。
「だから風音のしている事にも気づいたのか?」
「ああ。そもそも自分のエンジェロイドが幼馴染だったなんて、辻褄が合わないだろう? 違和感に気づけは、あとは簡単だったよ」
「そう、だよな」
確かにそうだ。
鳳凰院にとって風音の在り方にはそもそも矛盾があった。風音のついた嘘は、こんなにも儚いバランスだったんだ。
「その顔だと、まだ思い出に引きずられているね。何なら、僕のライダー自身に処置をさせようか?」
「風音にはできねぇよ。俺にだけは、きっと」
あの時の風音の気持ちに嘘は無かったと、俺は信じている。
だから俺と幼馴染だったという関係を、風音本人から終わらせる事なんてできない。
「できるさ。僕が命じれば」
「無理だって。風音は絶対に首を縦に振らない。賭けたっていいぞ」
俺の抗議の声に鳳凰院はにやりと笑って。
「それができるのさ。これがあればね」
自分の右手に絡み付く二本の鎖を見せつけた。
「((契約の鎖|インプリンティング))、だったか?」
昨日会長にもらった資料によると、それはマスターとエンジェロイドの契約の証だったハズだ。
俺の右手にも三本あって、普段は誰にも見えないように消えている。
「これで何するんだ? 自分がマスターだから言う事を聞け、とか?」
そんなんであいつらがいう事を聞くとは思えないんだけどな。いや、風音は律儀だから聞いてしまうかもしれない。
「…智蔵。それを本気で言っているのかい? ああ、言ってるんだろうね。君は国語の点数も低いし、ミス五月田根からの情報もろくに吟味していないんだろうね?」
「ぐ、ほっとけ。つまり何が言いたいんだ、お前」
仕方ないだろ。あの時はお前たちの事を知って他の事に気が回らなかったんだよ。
「これはね、智蔵。僕達マスターの証であると同時に切り札なんだよ。エンジェロイドへの強制力を持つ絶対命令権。僕達がアレらを従える唯一にして絶対の権利なのさ」
「権利、ねぇ…」
あいつらが絶対に従う命令、か。三本あるってことは、三回できるって事なんだろうか。
俺としてはたった三回でイカロスを止められるとは思えないんだどな。
今日がいい例だ。このままだと俺の学校生活は瓦解するんじゃないだろうか、マジで。
「まあ、君のアーチャーは従順だ。それを使う必要性は低いかもね。強く、従順で、美しい。まったく、羨ましい限りだよ」
「天然で、頑固で、無愛想だけどな」
俺と鳳凰院との間に広がる認識の差は大きい。これが『隣の芝生は青い』って事なのか。
…いや、待て。
今さらだけど、俺と鳳凰院の右手にある鎖の数が違う。
俺は三本、対して鳳凰院は二本。この違いの意味する所は。
「…お前、風音に何をさせた?」
「さっきも言っただろう。僕への記憶改ざんを修正させたのさ。まったく、こんな事のために大事な鎖を一本使うはめになるなるとはね」
心底忌々しげに語る鳳凰院。その憤りは分からない訳じゃない。
こいつの憤慨は目の当たりにしたばかりだし、俺だって見知らぬやつに頭を弄られるなんてゾッとする。
それでも。いや、だからこそ。
風音がそれを強制させられるまで頑なに拒んだという事は。
「やっぱり、風音は俺達と幼馴染でいたかったんじゃないか。お前に強制されないとできないくらいに」
「…どうだか。アレが君にご執心だった事は確かだけどね」
俺から少しだけ目を逸らした鳳凰院は、今日初めてこいつらしからぬ顔をした。
それは、自分のした事に後悔している顔だったと思う。
結局、俺たちの話し合いは物別れに終わった。
俺と鳳凰院の求める物は決定的に違う。
俺は風音とイカロスの戦いを避けたいのに、あいつはその逆を願っている。
この時点で交渉が決裂するのは当然の帰結だったのかもしれない。
「マスター、お迎えに参りました」
「家で待ってろって言っただろ。まあ、いいけどさ」
どうやらイカロスは俺の近くで護衛を続けていたらしい。律儀な事だ。
二人で家路を歩く。互いに話す言葉は無かった。
俺には雑談をするだけの余力が無かったし、イカロスは元々無口だ。
「…交渉は、失敗したのですね」
「…ああ」
お互いの言葉は端的で正確だった。余分なものは一切ない。
イカロスも俺の表情を見て結果を悟ったんだろう。
また、無言の時間が続く。俺の先を歩くイカロスの表情は分からない。
「…マスター」
「…なんだ?」
立ち止まったイカロスが俺へ振り向く。そして。
「ご安心ください。貴方は私がお守りします。例え―」
私がひよりさんを、この手にかける事になっても。
静かに、彼女はそう誓った。
「………お前」
「今、私がお約束するのはそれだけです。マスターは何も責を負う必要はありません」
再び俺に背を向けて、イカロスは歩いていく。
俺は、その背中に何も言えなかった。
正直な所、俺は呆けていたのだ。
アーチャーのエンジェロイド、イカロス。俺と契約したエンジェロイド。
あいつは確かに俺を『守る』と公言してはばからなかったけど―
「…バカ。無理してんのが見え見えじゃないか」
―今まで決して。誰かを『倒す』とは口にしていなかったんだ。
悪いのは出来もしない事を口にしたイカロスなのか。
そんな事を言い出すまであいつを心配させた俺なのか。
きっと、両方なんだろう。
歩き続けるイカロスと、立ち止まった俺の距離は少しだけ離れていた。
それは、物理的な意味だけじゃない気がした。
To Be Continued
interlude
「へえ。つまりお前は智蔵と争う気はない。そうなんだなライダー」
「はい。付け加えるなら、アーチャーと戦う気もありません。あの人と正面から戦って勝てるのはバーサーカーくらいですから」
自分のマスターからの侮蔑混じりの視線を、風音日和は真っ向から受け止めた。
先日の彼女ならばこの様な事はしない。ただ俯いてマスターの命令に従うだけだっただろう。
「加えて、セイバーまで学校に常駐しています。二対一でこちらに勝機はありません」
しかし、今日の彼女は違った。
意志にあふれる瞳はまっすぐに自分のマスターへと向けられている。
「ここは私たちも彼らと共闘し、バーサーカーを討つべきです。あの戦闘能力は放置するには危険過ぎます」
今日、彼女は自身の誇りを取り戻したのだ。
決して叶わないと思っていた自分の醜い願い。それをあの少年はまっすぐに受け止めてくれた。
彼の想いにかけて、自分は戦わなくてはならない。何よりも先に、自身が犯した罪と。
「マスター、再度進言します。桜井智蔵と共闘を。それがこの戦いを勝ち抜く最善の一歩です。彼らと共にバーサーカーを打倒した後にでしたら、私は誰とでも戦います。例え、それまで共闘していた相手でも」
「…く。智蔵と協力しろと言ったり、最後に裏切れと言ったり。お前は本当に恐ろしい奴だよね」
「優先順位の違いです。まず叩くべきはバーサーカーである、という事です。私個人では彼女に太刀打ちできません」
自分が傷つけた少年とまっすぐに向き合う。彼との関係を修復しなければ自分は許されないのだと、彼女は断じていた。
「…確かにね。バーサーカーはアーチャーとキャスターのタッグですら一蹴したというし、最大限の警戒は必要だね」
「はい。私はマスターの必勝を誓います。この言葉に嘘偽りはありません」
風音日和の言葉に嘘は無い。彼女は自分のマスターに必勝を誓っている。
バーサーカーとそのマスターさえ打倒できれば、あとはアーチャーやキャスターと真剣勝負をしても辞さない心づもりだった。
まずはマスターとエンジェロイドとの正しい在り方から。
あの少年は嫌うだろうけど、目の前のマスターに許されざる不義をした贖罪には、これくらいしないと釣り合わない。
「でも却下だ。僕は何よりも智蔵との決着を優先したいんだよね」
「マスター…! それではお互いにつぶし合うだけです! 後に控えるバーサーカーとの戦いに差支えます!」
「黙れ。お前は僕の駒だ。進言は許したけど、そんな底の浅い欺瞞に付き合う気はないんだ」
だが、目の前の少年はその程度では足りないとばかりに彼女を叱咤する。
「バーサーカーと戦う為にも、アーチャーは是が非でも手に入れておきたい。お前のハッキングならできるだろう?」
「―っ!」
気づかれていた。彼女の性能を熟知するこのマスターは、すでに別の方法で対バーサーカーへの策を練り始めている。
「お前のハッキングでアーチャーを掌握すれば、バーサーカー戦でも十分に勝機がある。違うかい?」
「…違い、ません」
それは、イカロスという人格を消去し完全な操り人形とする策だ。
当然、それは桜井智蔵を打倒するという目的と重なる。
「ふん。お前だってこの程度の策は思いついていただろうに。それを進言するなら僕もお前の事を見直したんだけどね」
少年の言う事は事実だ。
彼女もその手は思い至っていた。しかし、あまりに非道な行為ゆえに口にしなかっただけ。
「それは、本当に酷い事です。マスターの、非道を罵られる事を避けるためにも―」
「お前が僕に非道を説くのか! この裏切り者がっ!」
容赦のない平手が、風音の頬を打ち据える。
それに怯まず、彼女は言葉を続けた。
「っ! どうか考え直してください。それをしてしまえば、マスターは本当に」
桜井智蔵と仲たがいをする事になる。
後に続くべきその言葉を、彼女は必死に呑み込んだ。
今のマスターの前で彼の名を出すのは、精神衛生上良くないと察したのだ。
「…ふん、まあいいさ。お前があいつの味方をするのは予想がついていたしね」
白けた、という顔で自分を見下す少年。それを見て彼女はようやく安堵の息を漏らした。
自分のマスターは大胆だが、リスクの計算にも長けている事を彼女は知っている。
確かにアーチャーを掌握できれば勝ちは見える。だが、その行為こそが最大の難関なのだ。
戦闘能力を含め全能力に優れる彼女をハッキングするのは容易ではない。他の邪魔が入った瞬間、おそらく自分たちは敗退する。
それに対して、彼女たちと共同戦線を張る方がはるかにリスクが少ないのだ。
「では、マスター」
「ああ、分かってるさ。お前の言わんとしている事はね」
ふん、と鼻をならしながらも思案にふける彼女のマスター。
それを見て、風音はこれからも苦労するだろうけど彼らに精一杯の償いをしていこうと誓った。
「…分かっているさ。本当に、ね」
そのマスターが右手の鎖をもて遊んでいる事に、気づく事なく。
「ニンフと!」
「アストレアの!」
教えて! エンジェロイ道場!
「さて、やってきました読者(筆者含む)のオアシス。エンジェロイ道場よ」
「…ニンフ先輩。私、全然出番無かったんですけど?」
「あんたの見せ場はライダー編の後なのよ。もう少し待ちなさい」
「ぐぬぬ、出番の多いニンフ先輩とイカロス先輩が憎い…!」
「今回はインプリンティングについてね。本編でも説明があったけど、要するに令呪みたいなものね」
「ぶっちゃけ過ぎです、ニンフ先輩」
「マスターが持つエンジェロイドへの絶対命令権。これを使われるとエンジェロイドは絶対に逆らう事はできないわ。その代り使用できるのは三回まで。使う度に右手の鎖が砕けて、最後の鎖を使うともうエンジェロイドを従えることが出来なくなるの」
「そうですか? イカロス先輩辺りならそんなの無くても智蔵さんの言う事を聞くと思いますけど?」
「それは特例的なものよ。私たちは常人を遥かに上回る能力を持っているんだから、普通のマスターは警戒するの。だからマスターはインプリンティングを使うぞってエンジェロイドをけん制するか、信頼関係を築いてその必要性を無くすのが急務になるわ」
「へー。ニンフ先輩とそあらさんはどうなんですか?」
「もちろん良好な関係よ。智蔵とアルファーみたいに無条件って訳でもないけど、お互いが勝ち残るという目標が合致したからこその信頼関係ね。あんたは?」
「あはは、守形さんは無愛想だけど良い人なので特に困らないですよー」
「でしょうね。今回の戦いではヒヨリとホウオウインの関係の方が異端になるのかしら」
「それともう一つ。インプリンティングは『強制』だけじゃなくて『強化』もできるわ」
「強化?」
「マスターとエンジェロイドが合意した上で使われた場合、エンジェロイドの性能を一時的に強化できるの。例えば、アンタの騎乗スキルはF−ランクで自転車にも乗れないけど。スガタが自転車を運転しろと命令してそれをアンタが承諾した場合、アンタでも自転車くらいは乗り回せる様になるの」
「おお。凄いですね、それ」
「そんなわけで、インプリンティングの鎖はマスターにとって無駄遣いを避けるべき切り札なのよ」
「それを早速使っちゃう鳳凰院さんは馬鹿ですねー」
「…アンタがそれを言うか。あれはヒヨリを従える布石という意味では十分に効果があったでしょうから、使う価値はあったのよ」
「智蔵さんは…使いそうもありませんね」
「でしょうね。あいつは知ってても使いたがらないわ。だからこそ私とアルファーも教えなかったわけだし」
「今回のエンジェロイ道場はここまでよ」
「次回はいよいよライダー編決着です!」
「ヒヨリとの避けられない戦いに苦悩するトモゾウと、それを見かねて戦う決意をするアルファー。ホウオウインの計略の中でトモゾウの選択する道は。ここが物語における一つのターニングポイントになるわ」
「私の出番はあるかなー。あればいいなー(チラッ」
「あるわよ」
「えっ」
「チョイ役で」
「…ですよねー」
*エンジェロイドのステータス情報が更新されました。
各エンジェロイドステータス
*本編で解明されていない個所は伏せられています。
クラス:アーチャー
マスター:桜井智蔵
真名:イカロス
属性:秩序・善
筋力:C
耐久:B
敏捷:C
演算:B
幸運:C
武装:A
スキル
飛翔:A
空を自在に飛行する。ランクが高いほど空中戦で有利になる。
自己修復:A
自身の傷を修復する。
Aランクの場合は戦闘中にもダメージが回復し、戦闘不能に陥っても約半日で復帰可能。
ただし完全に破壊された場合、ダメージを継続的に受け続けた場合は発揮されない。
千里眼:B
遠距離のおける視力の良さ。
遠く離れた敵を視認し、射撃兵器の命中率を補正する。
単独行動:F
クラス別能力。マスターを失っても行動可能。
ただしイカロス自身がそれを望まない為、ランクダウンしている。
武装
永久追尾空対空弾「Artemis」(アルテミス):B
外敵を鋭く貫く殺傷力と、地球の裏側まで届く射程を併せ持つ主兵装。
可変ウイングから直接発射するので使い勝手が良く、出力調整可能。
絶対防御圏「aegis」(イージス):A
あらゆる攻撃を防ぐ全方位バリア。
非常に高い防御力を持ち、その特性を生かして周囲を巻き込まず攻撃する際にも併用される。
ただしAランク以上の攻撃は防ぎきれず、ダメージの軽減のみになる。
超々高熱体圧縮対艦砲「Hephaistos」(ヘパイストス):A
圧縮したエネルギー弾を撃ち出す大砲。
大気圏を越える程の指向性エネルギーを放出し、敵を蒸発させる。
起動と発射には数秒のチャージが必要となる。
クラス:キャスター
マスター:見月そあら
真名:ニンフ
属性:秩序・中庸
筋力:D
耐久:C
敏捷:C
演算:A
幸運:B
武装:C
スキル
ハッキング:A
生物、機械に干渉する能力。
対象の性能及び機能を強化もしくは低下させる。
高ランクになると対象の電子頭脳を破壊する事も可能(ただし相手の演算能力を上回る必要がある)
また、ハッキング中は自身のステータスが低下する。
飛翔:B
空を自在に飛行する。ランクが高いほど空中戦で有利になる。
陣地作成:B
クラス別能力。自分に有利な陣地を作る。
ハッキングを主としたトラップ陣地を作成できる。ただし対象の選別は困難。
道具作成:D
クラス別能力。有用な道具を作成する。
大抵の事をハッキングで済ませしまうニンフはこのスキルの使い道を把握しきれていない。
武装
超々超音波振動子(パラダイス=ソング):C
口から発する超音波攻撃。
数少ないニンフの武装だが、エンジェロイドに対する攻撃力は低い。
クラス:セイバー
マスター:守形英三郎
真名:アストレア
属性:中立・善
筋力:B
耐久:C
敏捷:A
演算:E
幸運:B
武装:A
スキル
飛翔:A+
空を自在に飛行する。ランクが高いほど空中戦で有利になる。
事実上、空中戦でアストレアを捕えられるエンジェロイドはいない。
怪力:C+
一時的に筋力を増幅する。
感情の起伏による怪力を発動。つまり馬鹿力。
過去にインプリンティングの鎖を力ずくで引きちぎった事からも、その腕力は他のエンジェロイドと比べても破格。
騎乗:F−
クラス別能力。乗り物を乗りこなす。
家電の操作(テレビのリモコン等)が限界なアストレアにとってまったく有用性の無いスキル。
逆に操作を誤って事故を起こす可能性が上がる。
勇猛:D
精神干渉を無効化し、格闘ダメージを上昇させる。
アストレアの場合は勇猛というよりただの猪突猛進だが、結果は大差が無い。
Dランクは若干の補正値にとどまる。
武装
???
クラス:ライダー
マスター:鳳凰院=キング=頼朝
真名:風音日和
属性:中立・中庸
筋力:D
耐久:D
敏捷:C
演算:A
幸運:C
武装:C
スキル
ハッキング:A
生物、機械に干渉する能力。
対象の性能及び機能を強化もしくは低下させる。
高ランクになると対象の電子頭脳を破壊する事も可能(ただし相手の演算能力を上回る必要がある)
また、ハッキング中は自身のステータスが低下する。
騎乗:C
クラス別能力。乗り物を乗りこなす。
日和の場合 農耕機の運転経験が数えるほどあったのみなので低い。
飛翔:C
空を自在に飛行する。ランクが高いほど空中戦で有利になる。
人間としての生活が長かった日和は飛行を苦手とする。
武装
???
クラス:メディック
マスター:五月田根美佐子
真名:オレガノ
属性:秩序・中庸
筋力:D
耐久:D
敏捷:C
演算:C
幸運:A
武装:D
スキル
医療技術:A
シナプスで従事していた医療知識。Aランクは適切な医療器具さえあれば瀕死の重傷さえも治療可能。
ただしシナプスの器具が地上に無い為、普段は腕のいい外科医程度の能力(Bランク相当)にとどまる。
シナプス製の医療器具は彼女が保有する物のみであり有限。それを消費した時に限り本来のランクへ上昇する。
火器管制:C
銃火器を扱う技能。
五月田根美香子が直伝した為、拳銃から機関銃、戦車に手榴弾と豊富な技術を持つ。
ただし扱えるのは地上の火器に限り、シナプス製の兵器は扱えない。
飛翔:C
空を自在に飛行する。ランクが高いほど空中戦で有利になる。
医療用として活動してきたオレガノは戦闘用の飛行を苦手とする。
単独行動:C
シナプスでは医療用としてマスターから離れて行動していた為、ある程度離れても活動に支障が出ない。
ただし現界の為にマスターの存在そのものは必要不可欠である。
武装
なし
クラス:バーサーカー
マスター:シナプスマスター
真名:カオス
属性:混沌・中庸
筋力:B(A)
耐久:A(A+)
敏捷:B(A)
演算:A(A+)
幸運:D
武装:A
*()内は狂化による補正値
スキル
飛翔:A
空を自在に飛行する。ランクが高いほど空中戦で有利になる。
戦闘続行:B
大きな傷を負っても戦闘が可能。
精神的な高揚により痛覚が麻痺し、痛みを感じずに全力を発揮できる。
ただし自身の保身がおろそかになる為、回避にマイナス補正がつく。
自己進化プログラム「Pandora」(パンドラ):A++
エンジェロイドの自己進化プログラム。他の生物やエンジェロイドを取りこむ事で最適な機能を獲得する。
カオスはこのシステムに一切の制限がなく、常に最適な機能を模索する事が出来る。
これによりカオスは戦闘中1ターンごとに相手より1ランク上回る性能を獲得する。
狂化:B
クラス別能力。全ステータスをランクアップさせる。
元々情緒不安定な面のあるカオスだが、狂化によってさらに不安定になっている。
マスター以外の存在は敵という認識しかなく、イカロス達の事を知識で理解してもそれ以上の思考がされない。
ただし智樹とそれによく似た智蔵は例外。彼らを認識すると著しい精神的負荷が起こる。
武装
対認識装置「Medusa」(メデューサ):A
敵エンジェロイドの電子制御機能に介入し、幻惑する。相手の攻撃や回避にマイナス補正を与える。
油断するとニンフですら幻惑されるほどの性能があり、抵抗にはAランク以上の演算能力が必須。
硬質翼:A
自身の翼を変幻自在に操る。
筋力ステータスに依存した威力を発揮する。
炎弾:B
遠距離戦闘用の射撃兵装。
複数の弾頭を連続発射する事が可能。また、チャージする事で威力がランクアップする。
超高熱体圧縮発射砲「Prometheus」(プロメテウス):A
アサシンを取り込んで獲得した武装。カオスの能力に追随してランクアップしている。
Aランク以下の防御及び耐久を貫通し、同ランクの攻撃を相殺する。
クラス:アサシン
マスター:シナプスマスター
真名:ハーピー
属性:秩序・悪
筋力:C
耐久:C
敏捷:C
演算:B
幸運:C
武装:B
スキル
飛翔:B
空を自在に飛行する。ランクが高いほど空中戦で有利になる。
二身同一:B
二人で一つの役割を負う為の機能。
離れていても互いの意思疎通を可能にする。
気配遮断:C
クラス別能力。隠密行動の適正を上げる。
ただし直接攻撃をする際には大きくランクが低下する。
武装
超高熱体圧縮発射砲「Prometheus」(プロメテウス):B
摂氏3000度の気化物体を秒速4kmで射出する。
Bランク以下の防御及び耐久を貫通し、同ランクの攻撃を相殺する。
説明 | ||
『そらのおとしもの』の二次創作になります。 第四回になる今回も一月以上かかりましたが、その分だけ若干のボリュームアップ。 書きたい事、書くべき事が多くて四苦八苦していますが、これはこれで楽しかったり。 このシリーズの目標:バトルものシリアス、および中編への挑戦。 完全オリジナルが困難なため、某作品をオマージュ(パ○リ)して練習する。 ただし練習といっても基本全力で。自分がどこまでシリアスに迫れるかを探究する。 *某作品を思わせる設定やストーリーがありますが、クロスオーバーではありません。 つまり青剣さんとか赤い悪魔さん達は出てきません。 これまでのあらすじ ある夜、桜井智蔵という少年は背中に羽を持つ少女、イカロスに命を救われる。 巻き込まれた闘争に戸惑う智蔵だったがそれに挑むクラスメイト、見月そあらの後押しをすると決意した。 そして学校の生徒として生活するマスター達と共同戦線を張るために情報交換を行う中、 智蔵は思いがけない人物がライダーのエンジェロイドだった事を知るのだった。 主な登場人物 桜井智蔵:いわずもがな智樹の祖父。基本的に智樹と同じくお馬鹿でスケベ。契約者はイカロス。 見月そあら:見月そはらの祖母で智蔵のクラスメイト。外来の転校生マスター。契約者はニンフ。 イカロス:アーチャーのクラスを担うエンジェロイド。 ニンフ:キャスターのクラスを担うエンジェロイド。 第一章:http://www.tinami.com/view/363398 第二章:http://www.tinami.com/view/370300 第三章:http://www.tinami.com/view/388794 |
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コメント | ||
枡久野恭様へ 時間はかかりましたが、その辺りをしっかり書けたなら成果はあったと自画自賛しています。執筆のスピードアップも今後の課題です。(tk) BLACK様へ 主人公をライバル視する『人間』を考えた際に、最も合うだろうと考えた結果です。そして、この先は脱落者を待つのみとなります。(tk) きちんと練りこんだ展開。そして各々が抱える葛藤が十分に表現されていて素晴らしい作品だと思います(枡久野恭(ますくのきょー)) ライダーのマスターが以外だと思う俺だった。しかしこれで一通りサーヴァントは出たわけか・・・。(BLACK) |
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そらのおとしもの エンジェロイド シリアス fate の皮を被った何か | ||
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