ゲイム業界へようこそ!その37 |
とあるエリアの入り口に到着…、入り口の横にはやや薄れた文字で「第三重機倉庫:第一資材置き場」と書かれてあった。どうやらここが目的の場所で間違いないらしい。
「失礼しますっと……。」
なんとなく挨拶をして俺は倉庫の中へと入った。軽く見渡してみるとそれだけで機材や部品、ガラクタなどがところ狭しと道中に落ちてあるのが分かる。これは歩くだけでも苦労しそうだ。
また人影は全くなく、静けさが漂っている。それは当たり前か、この辺りは多くのモンスター達で埋め尽くされているのだ。用事が無ければ来るだけ無駄なのである。
用事がある俺は討伐目的の牛鬼を探しながら倉庫内を探索してみることにした。せっかくだ、変身もしておこう。別に今なら誰に見られるわけでも無いから恥ずかしくもないし。
(変身…。)
頭の中で念じることで俺は一瞬の光を纏い、その後変身を完了させた。どうやら慣れてきたようで別に「変身」と声に出さなくても問題ないようだ。しかし男性から女性に変わることへの慣れは有ってもらうと困る。俺は戦闘への向き不向きから仕方なく女性へ変身しているのだ。そこのところ皆様には判ってほしい。
さて、そんなメタ発言をしていると、最初の牛鬼さん発見。どうやらこちらに気付いてないらしく、他のモンスターも見当たらない。
(好機!!)
俺は双剣ツインダガーを構えて猛突撃。急速に距離を縮め、牛鬼に先制攻撃を与える。突き、切り払い、乱舞などモン○ターハ○ターの攻撃モーションを思い出しながら相手へと切り掛かった。
「はっ、たぁあああ!!」
思わず声も出てしまうが気にしない。先制攻撃はどうやら成功、レベル差はもちろんのこと自身の攻撃力の高さもあって牛鬼のライフを一度に8割ほど削ることが出来た。その直後、怒り狂った牛鬼の棍棒による強烈な攻撃が俺へと向かってくる。あの攻撃をもらってしまったら一溜まりも無いだろう。
「フッ…残像だ。」
あっ、言いたかっただけです。別に残像を出したわけでもない、実際にはトップスピードで牛鬼の攻撃を避けて、そのまま背後へと回り込んだだけ。相手は俺の姿を見失いうろたえていたが、その姿はまさに隙だらけの状態。意味もなく「鬼人化!」と高らかに叫び、相手へ乱舞をお見舞いする。
牛鬼は唸り声と共にそのまま崩れ落ちた。一体目終了…。ねぷねぷと共に行動した際の牛鬼との戦闘がつい最近だったこともあり、今回の戦闘は予想以上に余裕があった。また相手が牛鬼一体だけというのも理由のうちに含まれるのだろう。相手が二体以上の時はどうしたら良いか?これは悩み所である。
オリ主戦闘中…。
5体目の牛鬼の討伐に成功。これでクエスト達成であろう。
戦闘描写は誰かの都合で省かせてもらうことに。ぶっちゃければ同じような戦闘描写にしかならないからつまらないという理由からダっ!!別に構わんだろう!?
一体目の牛鬼討伐以降、探し回って出会った牛鬼は全て他のモンスターと共に出現していて苦労させられた。俺の取った基本行動は牛鬼を含む相手側モンスターが3体の時は最初から勝負は行わず、即時逃亡。1、2体の時に絞り、先に体力の少ない方のモンスターから対処してその後牛鬼との戦闘にあたった。やはり一人でのクエストであるためか結構の時間がかかり体力の方も限界のようだった。
クエスト依頼も終了、ここにいる理由も特にないので俺はクエスト達成の報告をしにアニメエイトへと向かうことにした。
「アニメ店長、クエスト達成したので戻ってきました〜。」
何事もなくアニメエイトに到着し、カウンターから店長を呼び出す。「おぉ〜今そっちにいくぜぇえええ!!」と熱い声と共に店長がこちらにダッシュしてきた。この短い距離をわざわざ走ってこなくてもいいだろうに…。
それはまず良いとして…なぜだろう、異様に周りの人達から熱い視線があって気になるのだが。それも結構な数の…。
初めて来店した時こんなたくさんの視線は無かったと思うのだが一体どんな理由が?自問自答してみると思ったよりすぐ答えが浮かび上がってきた。
「アニメ店長」という渾身のあだ名を授け、あまつさえ店員達全員から胴上げまでされたのだ。そりゃ変な目で見られても当然かな。
「待たせたなぁあああ!!っておまえ誰だぁ、初めて見る顔だが?」
「いやいや店長忘れないでくださいよ?さっき一度会ったじゃないですか?」
「馬鹿やろう!!俺はお客様の顔は一度見たら絶対忘れないんだ!だからその俺が見たことないって言うんだから、お前とは初対面で間違いない。」
「えぇ〜〜!?」
店長の力説にうろたえてしまうのだが、こっちは確かに店長とさっきまで普通に会話していたのだ。初対面である方がおかしい。それにしても何か忘れていることがある気がするのだが気のせいか?
「待てよ?お前はさっき俺を呼ぶ時『アニメ店長』と言ったな差…。まさかとは思うがお前レンか?」
「ハイ、どこからどう見てもレンです。本当にありがとうございました。」
「ちょっと待ってろ……あったあった!ほら鏡で自分の顔見てみろよ?」
俺は鏡の中を覗いてみた。そこには変身した女性版の俺、レッドハートさんが写っている。自分で言うのも変だが相変わらずの整った顔をした巨乳さん。これが俺自身じゃなかったらどれだけ良かったことか。それにしても何故店長は俺に鏡を?別段おかしい所は特に無いと思うのだが。
…マテ、ヨクカンガエテミロ。ナニカオカシクナイカ?
答えはすぐに見つかった。
「なんで俺はこの格好のままなんだぁあああああ!?」
突然大きな声を発した為、更に周りからの視線が集まってしまう。俺はなんて馬鹿で阿呆なんだ!あれだけ変身の際は注意しておこうと思っていたのに…!!これでは俺の姿を見てくださいと周りに公表しているようなものだ。
「まぁ、事情はよく判らないがお前はレンで間違いないんだな?」
「はい…そうです。」
「最初見たときは誰か分からなかったが、いざ話してみると俺のソウルブラザー・レンだって直ぐに分かったぜ!!」
「アニメ店長…。」
「やっぱり魂で結ばれた絆ってもんは素晴らしいな!!俺達はどんなに離れていても決して途切れることのない強い絆で結ばれているんだ!!」
店長は拳を強く握り締め涙を流し熱く語っている。俺はその店長の言葉に深く感動してしまった。どんな姿でも絆さえ繋がっていれば分かり合える。例えそれが外見や性別、種族すら違えどだ。そんなことは平然と言ってのける店長に俺は心から痺れ憧れた!!(※別にそこまで深い意味は無い。店長はおそらくノリで言っただけ。俺も場の空気に惑わされてるだけ。)
「店長!」
「レン!」
ひしっ!!俺と店長はお互いの友情を再認識するため、涙を流し、抱きしめあった。そこには周りから拍手、歓声の嵐。ありがとう…ありがとう皆……。
それから俺と店長はしばらくの間、友情を確かめ合う為抱きしめあったのだった。
周りから俺達がどんな風に見えているかも考えずに……。(※今のレンの姿はもちろん女性)
………………
「馬鹿かオレはぁああああああああ!!」
「まぁまぁ落ち着けよ、レン。」
「これが落ち着いていられるか!?俺は健全な男の子なんだ!BLとかノンケなんかにサラサラ興味はねぇ!!」
店長に慰められながら俺は一人悶絶していた。ちなみに現在は既に男性の姿に戻っている。これ以上面倒を起こさないためだ。
店の中は先ほどのイベントがまるで無かったかのような落ち着きを取り戻していた。こういうことが日常茶飯事なのだろうか?
現在俺はカウンター内にある休憩室で休ませてもらっていた。肉体的ではなく精神的疲労のせいだ。自分自身グッタリしているのがよく分かる。
少しして落ち着いて来た俺は店長に改めてお礼を言い、変身すると女性の姿になってしまう理由を誤魔化しながらも説明しなんとか納得してもらった。質問されて説明出来るところは出来るだけ説明し、それ以外は「分からない」か「禁則事項です♪」で切り抜けた。「禁則事項」だと言う俺の返答に店長は「禁則事項なら仕方が無いな…。」と素直に引き下がってくれた。禁則事項は強いんですね、み○るさん。
それからしてすっかり元通りになった俺はクエスト達成の報告をして、店長から無事にクエスト達成に見合った報酬を頂くことが出来ました。今回の報酬はおそらくノワールにケーキ屋で奢ってもらった分の返済で全て消えてしまうだろう。思ったよりクエストでの資金集めは厳しいんだな。いや、今回は一人だったから余計に大変に感じたのだろうか?もし二人以上でクエストを受けた際はどうなるのだろうか?クエスト達成時の報酬のシステムが知りたい。
せっかく店長が目の前にいるので聞いてみることに。結果は俺の予想外の結果。別に報酬は何人でも一人頭の金額は変わらないらしいのだ。これには俺も驚かされた。それなら多人数でクエストに向かった方が絶対に効率が良いに決まっている。
しかし店の決まりからか一つのクエストに参加出来る人数は最大3人まで。確かに人数の最大上限を決めておかないと店側も利益が無くなってしまうのだろう、よく出来ている仕組みである。
一人でクエストに行ったせいもあってか、外を見れば既に夕暮れ。子供がお家に帰る時間となっていた。これでは時間の効率が悪過ぎる、次回からはノワール辺りでも誘ってみようかな。
「今日は本当にありがとうございました!」
「気にするな!クエストを受ける時だけじゃなくても構わないから遊びに来いよ!!俺は何時どんな時でもソウルブラザーのことを待ってるぜ!!」
「はい!絶対にまた来ますね!!」
「待ってるからなぁああああ!!」
アニメエイト入り口で店長に挨拶をして、俺は自宅へと帰還した。店長は俺の姿が見えなくなるまでずっと手を振ってくれていた。騒がして疲れる人だったけど、心から熱く格好いい人だった。俺もあんな人になりたいものだ。
それにしても今日は主要キャラに誰とも会ってないのに素晴らしく大変な一日だった。でも偶にはこんな日もアリだな、良い経験が出来たことだし。
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その37と言いつつ、38も足しました。 | ||
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