ゲイム業界へようこそ!その51 |
「さてと、今日もクエストに行ってジャンジャンお金を稼ぐとしますか♪」
俺は借り部屋のドアから勢いよく飛び出した、そしてその視界に真っ先に映ったものはどこかで見たことのある三人組………ん、アレ?
「あ…。」
俺はどこか気の抜けた声をあげた。もちろんそんな俺に視線を向けた三人組はといえば…。
「あっ!お兄ちゃんみっけ〜♪」
「凄いです〜!リーンボックスに来て初日でレンさんと遭遇するなんて〜!」
「あらら……ドンマイ。」
こんな反応を取っていたり……って、イヤイヤ待て待てオカシイだろjk!?何この「出口を抜けるとそこは別世界だった。」的なノリで部屋から出た瞬間に彼女達と遭遇するわけ!?というか前にも似たようなことありませんでしたっけ!!?
俺が呆然と佇んでいる間にも彼女達…ネプテューヌとコンパ、アイエフのお馴染みメイン組が近寄ってくる…、おかしいなぁ、可愛い女の子が三人も近くにいて本来であれば嬉しいはずなのに、妙に悲しい気分になるのは…。
「や、やぁ…、奇遇だね。また逢えて俺も嬉しいよ…。」
苦笑を浮かべつつ、俺は再びメイン組と遭遇するのであった。
………………
ねぷねぷ組を引き連れた俺は、リーンボックスの案内役を受け持つことになり、協会やアニメエイト、その他ここで生活するうえで必要だと思った店を彼女達に幾つか紹介していった。立ち寄った場所を覚えようとメモを取り俺の話に耳を傾けるアイエフ、何故かは知らないが必要以上に俺に身体をくっ付けて来るねぷねぷ、会話をする度にどういう訳か言動を変えるコンパ、彼女達の三種三様の動きに俺は中々に苦戦を強いられていた。
道中、アイエフが「そういえばリーンボックスにはゲイ・マーズって大型店があるみたいだけど。」などと俺に話を振ってきたりもしたが、俺は「知らない」の一言で彼女との会話を切断。俺の態度にアイエフは訝しげな表情を浮かべていたが、俺の反応の差異から何かを察したのかそれ以上は追求して来なかった。アイエフよ…、人には知らなくても良い、知る必要が無いことだってあるのだよ…。特に君のような誠実な心の持ち主は一生縁の無いものであって欲しい…、俺は切実にそう願う…。
「そういえばレン、あなたと一緒にいた彼女さんのことなんだけど。」
「ん?ノワールがどうした?」
道中でアイエフが俺に声をかける。ノワールについて何か質問があるようだ。因みに「彼女」という単語にねぷねぷとコンパが妙に反応を示していたようだが、ここでは俺のスルースキルを発動させてもらった。
「レンは…その……、ノワールさんがどこに住んでいるとかって知ってるの?」
「あぁ、協会だろ。」
「じゃあ彼女の存在が何なのか「ラステイションの女神ブラックハートだな。」やっぱり知ってたんだ…。」
俺の返答にどう思ったか知らないがアイエフはそこで一度黙り込んでしまった。彼女がどういう経緯でその質問に至ったのか気になった俺はとりあえずアイエフに聞き返してみることに。
アイエフは俺の質問に渋ること無く白状してくれた。鍵の欠片を見つける為ラステイションへと訪れたねぷねぷ一行はアブニールという企業がこの大陸の多数の企業を裏で操っているという噂を耳にする。その真相を確かめようとねぷねぷ達はとある工場の責任者シアンの援助の下に調査を始め、最終的にはアブニールの社長であるサンジュが総力を結集して作り出した大型兵器を無事に撃破、これによりラステイションでの一つの大騒動が終結となるのだ。ねぷねぷ達の勇気ある行動を称える為、ラステイションの女神様が彼女達を協会へと招いたわけだが、そこで彼女達が見た女神の姿ってのが……まぁ俺の隣にいつも一緒に居たノワールだったというオチであって。
「俺が女神様でもあるノワールと一緒にいるのは変か?」
「変って言う訳じゃないんだけど…、それでも女神様なのよ?唯の人間であるレンや私達が、彼女のような人々に崇拝されている存在の女神様と平然と慣れ親しんでいいのかなって…。」
その言葉の後にアイエフが「まぁ、ねぷ子やあなたは変身とかしちゃうから唯の人間というのは少し違うかもしれないけど。」と続けてきたが、その件については横に置いておくとして…。
「確かにそう言われるとそうかもな…。」
「でしょ!?」
「でもさ…」
アイエフの言葉に一応の理解は示したが、それでも俺はその考えに同意することは出来なかった。何故なら俺は俺なりの解答を既に見つけているからだ。今まで何も考えずにノワールと行動を共にしてきた訳ではない。
「少し思い出してみてくれないか?彼女は……ノワールはお前達と会話していてどういう表情をしていた?どんな態度を取っていた?ネプテューヌとコンパは覚えているか?」
場の空気を察したのだろうかねぷねぷとコンパの二人も真剣な表情で俺を見つめている。二人の方に顔を向けた俺は一つの問いを投げ掛けてみた。なに、引っ掛けも無い極めて簡単で自身の思うがままに答えてくれればいいだけの問題だ、彼女達でも直ぐに俺の欲する解答を出してくれるだろう。
俺の予想通り、ねぷねぷとコンパは互いに口を開き問いに答えた。
「私がノワールさんと話している時は別に辛そうな表情とかしていなかったです。確かに少しだけ怒ったり呆れたりしている時もあったですけど…、それでも照れたり笑ったりもしていて、そんな表情するノワールさんは私達と全然違いはなかったです!」
「私もコンパと同じ!ノワちゃんは私と一緒でお兄ちゃんに恋する一人の女の子なんだよ♪そんな女の子が神様やら人間やらってだけで態度を変えるわけないもん!」
二人の解答は概ね俺の思っていた通りだ……、少しねぷねぷさんが何か暴露っていたような気がしなくも無いが。
すぐ近くでコンパとねぷねぷが「ねぷねぷずるいです〜、さらりとレンさんにアタックするなんて〜!」とか「へへ〜ん、コンパも甘いね〜、攻めれる時は攻める!これが勝利の鉄則なんだよ!!これでコンパよりは一歩リードしたもんねぇ♪」などワイワイ喋っているようだが、俺は二人の会話内容に再度スルースキルを発動させてもらう………、内心はちょっとだけ嬉しい///
「ネプテューヌとコンパの言葉を聞いたろ?もちろんノワールの本心までは判らない……、けれども!それでも俺が今までノワールと接して来た期間の中では彼女は確かに喜怒哀楽を見せる何処にでも居る普通の女の子だった!そう!だから、俺は彼女が女神様ということだけで贔屓した目で見たり、差別なんかも絶対にしない!」
少し意気込んで力が入ってしまい、アイエフを圧迫するような目で睨んでしまっていたようだが、彼女の方もかなり真剣に俺の目を見つめてくれていたらしく全く気にしていなかったみたいだ、少しホッとしたな…。
俺は熱くなった空気を冷ます為、一度大きく「コホン。」と息づき、話を続けた。
「それにもしさ、仮にアイエフがノワールと同じ立場で、ネプテューヌやコンパ、それに俺から一歩引いた態度を取られたら寂しいと思わないか?」
「!!……確かにそうね、素直に寂しいと思うわ。私ってば結構馬鹿で愚かな質問してたのね。はぁ…らしくない…。」
「そう卑下するな、それに周りの大多数はアイエフの考えが当然だと考えているだろうし。だからさ、せめて俺達だけでもノワールとは今まで通り友達感覚で付き合っていこうぜ?」
「そうね、ありがと…、それより今『友達感覚』って話したけど、レンはノワールとは既に友達でしょ?私達はまだ彼女と友達とは言い切れないでしょうけど。」
「さっきの台詞は言葉の綾ってやつだ。それに何言ってるんだ、お前達は既に彼女の友達だよ。後、俺はノワールとは友達なんてレベルのものじゃないぜ。」
「だったら親友…、いえ彼氏彼女の関係っていった所かしら?」
「それはそれでおいしいのだが残念、ハズレだ……、俺とノワールは共に支えあう『パートナー』だ!」
「あらら…これは一本取られたわね。」
この会話がちょうど終止符を打った辺りで目の前に協会が見えてきた。結構ゆっくりと歩いて来たはずなのだが、先ほどの話が大分込んだようで到着するのがあっと言う間にさえ感じた。まぁ、これでリーンボックスでの案内役は終了…、そんな俺が取る行動は。
「じゃあ俺はこの辺で…。」
すかさず反転し帰宅しようとする俺…、しかし動こうとするのだが誰かが腕を強く掴んでいるせいもあって身体がビクともしない。腕を掴む主は……やっぱり安定のねぷねぷさん。女の子に似合わない腕力で俺の腕を強く引き絞る…、あの〜、ねぷねぷさん?腕がとっても痛いですよ?それに段々と感覚も無くなってきたのですけど、そろそろ本気で離してはもらえませんかね……?
「まだ駄目だよ〜?お兄ちゃんも協会に一緒に行くんだから〜♪」
「はっ!?すっかりレンさんへのアタックを忘れていたです!次は語尾を変えてみるです!!」
「とりあえず私達に捕まったのが運の尽きだと思って諦めなさい…。」
そんなこんなで俺はねぷねぷ達と共に協会の中へと入っていくのだった…。その後に多少のいざこざがあって『その50』冒頭へと繋がる。
目の前に佇む協院長が今か今かと俺の返答を待ち望んでいる、その顔から興奮のあまりか荒い鼻息が何度ととなく吹き荒れているようだ…。頼む、ほんと落ち着いてくれ。
俺は今の今まで協院長からのスカウトの件ついて考えていなかった。俺はまだリーンボックスに訪れてから大した日数も経っておらず、この大陸については未だ無知と言っても変わりない。クエストに行った回数も両手で数えられる程度だ。そんな俺としては女神の護衛役を引き受けるか否かの決定はもう少し日数が経ってからにしたかったのだが……世界は俺にそこまで優しくはなかった。
仕方が無いので俺は現在分かる範囲でメリットとデメリットを脳内で挙げて、それによって判断することにした。現状から時間は皆無に等しい、ヨシッ!サクッと決めてしまおうじゃないか!!
■メリット
・グリーンハートとお近づきになれる。
■デメリット
・護衛役となることで私生活が縛られる可能性がある。
・他大陸へ渡ることが困難になる可能性がある。
・イヴォワール協院長が身近にいる。
………ウン、あれだ…、デメリットが酷すぎる。1つ目と3つ目も十分に手厳しい問題ではあるが特に2つ目が極めて重大で、俺との再会を待ってくれているノワールに迷惑をかけてしまう、それだけは非常に困る!せっかくラステイションで培った彼女との信頼を裏切ってはいけない…!!
「決めました…、協院長さん。」
「…うむ、それで返答は如何に?」
俺の態度の変化に気付いたのか協院長も先ほどまでと打って変わり真剣な表情を取る。そう、それはまるで俺が教会へ初めて訪れた際に見た、悠然とその場に佇み、長年の経験を積み重ねてきた貫禄のある姿。そのイヴォワール協院長が俺の次の一言に全神経を向けている気さえする。
そんな彼に俺は臆せず堂々と言い放ったのだ。
「今回のグリーンハート様の護衛の任、謹んで辞退させて頂きます。」
………………
「本当にあれで良かったの?」
「アレって言うと?」
「もちろんさっきレンが協院長と話していた内容についてよ。」
教会を出て宿屋へと向かっていう最中、アイエフが俺に声をかけてくる。今日はねぷねぷ達と共に街の各店を歩き巡り、最後の最後で教会のイヴォワールとの一コマ、その結果結構な体力を消耗していたこともあり、今日は無理をせず残りの時間を宿屋でゆっくり過ごすことに決めたのだ。俺のこの後のスケジュールを3人に話すと、彼女らも俺と似た理由で同じように宿屋に戻ることを決め、元来た道を4人で戻っている現状である。
「結構あっさり決めたように見えたけど。」
「確かにそこまで深くは考えなかったかな。しかしこれでも俺はそれなりの理由があって協院長からのお誘いを辞退しているんだぞ?ただ漠然とそれとなく選択したわけではないさ。」
「…もしかしてノワールさん絡みが理由?」
「まぁ、そうだな。もちろん他にも理由は幾つかあったけど。」
「愛されてるわねぇ〜彼女さんも。こりゃねぷ子やコンパに勝ち目はないんじゃない?」
俺の左右を挟み込んでいる二人にアイエフが話を振った。左腕にはねぷねぷが引っ付いて、必要以上に身体を俺に寄せてくる。対して、右側ではコンパと手を繋いで近距離を保っていた。両側に可愛らしい女の子が二人、それも肌が触れ合う距離にいることもあって、俺は女の子特有の優しくて甘い香りにもはや撃沈寸前。あぁ…これぞ桃源郷…、両手に花というものか…。
「そんなことないです!今までも必死になってレンさんにアピールしてたですし、今だって手を繋いでポイントを稼いでいるです!必ず勝機はあるです!!」
「私だって負けてないもんねぇ〜!むしろ私なんてお兄ちゃんと目と目が合ったその瞬間からフラグ立てちゃってたからね、ノワールさんには絶対に負けないよ!」
俺がいる目の前で二人は何故そこまで暴露しちゃうのかね…、お兄さん反応に困っちゃうよ…。
俺が苦笑している横でねぷねぷとコンパは言い争いを続けていた。「ねぷねぷは私のことをライバル視してないですか!?」「コンパは…圏外かな、次回また挑戦してね♪」「ねぷねぷヒドイです〜!!」なんかカオスってる…、ウン!見なかったことにしよう!!
そもそも現世で彼女いない暦=年齢だった俺が異世界に来たからと言って、何人もの女の子達とよろしくやる程甲斐性は無い。であれば俺とパートナーを組み、あまつさえ俺に接吻までしてくれたノワールを誰よりも大事にしたいと思うのは当然の考えだ。ハーレムを目指す前に一人を攻略する!二兎を追う者は一兎を得ずの心構えなのである!……あってるのかな、コレ?
「もしこれでもレンさんが振り向かいのだったら最終手段です!」
「コンパその話詳しく!!」
「ねぷねぷもこれを聞いたらきっと驚いてしまうですよ……、その最終手段とは『無理やりレンさんにキスしちゃう大作戦』です!レンさんの隙を突いて押し倒してそのまま唇にぶちゅっとキスしちゃうです。これでレンさんと私との既成事実が完成、もう引くに引けない状況というわけなんです!」
「コンパ…恐ろしい子!これはライバルと再認識しなくちゃいけないみたいね…。確かにレンさんのハートを動かす為にはそのくらいの行動を起こさなきゃ駄目かも…、私だったらどうしようかな?とりあえず全裸?」
「二人とも少し落ち着け。それにキスだったらこの前一度だけノワールとしたぞ?」
「「「……え?」」」
「…ん?三人共どうかしたか?」
「………。」
「………。」
「レン逃げた方がいいかも…。」
沈黙、俺は彼女の沈黙が理解出来ずにいたが、アイエフの最後の言葉で直感で危険を察した。神は言っている、この場に留まっていたら『死』であると。
硬直する二人を他所に俺は彼女達の手を引き剥がしていく。その後一人その場でクラウチングスタートを決め込めんだ。フッ…今日は風が騒がしいな…、俺の身体が疼いてきやがるぜ…!
3、2、1…ドン。
「じゃあまた今度ね!」
駆けた…、俺は宿屋へ向かって脇目も振らず全速力で駆けた。ただ闇雲に持てる最大の力を振り絞って走った。それしか今の俺には出来ないと理解していたから。
俺の走るスピードは最早音速の域、誰も追い着けるわけが無い…、そう思うはずなのに後ろを振り返るとそこには般若の顔をした二人が俺に手を伸ばせば届く距離にいるような気さえするのだ。
後ろを振り向いたら死ぬ…、後ろを振り向いたら詰む…!!
「俺は……死なないぃぃ〜!!」
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