《インフィニット・ストラトス》〜二人の転生者〜
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第十七話 乱入者と専用機始動

「な、なんだありゃあ!?」

俺はベンチに寝っ転がってモニターを見ていたら突然の爆発でアリーナ内はパニックになっていた。

こりゃあ確認しない訳には行かねえな……見た限りじゃ空から何者かが侵入したようだったが……

俺は飛び上がり、上を見上げた。すると小さな影が二つ、どんどん大きくなってきている。

「……まさか……!!」

俺はその影が落下してくる何かと分かった瞬間、そこから急いで飛び退き、その何かが地表に激突した衝撃で吹き飛ばされ、地面を転がった。

「ゴホッ、ゴホッ……一体なんだってんだ……」

俺はヨロヨロと立ち上がり、落ちてきたものを見た。そこにあったのは――

「……IS……なの……か?」

黒いカラーをした、《巨大なISらしきもの》、だった。しかも二機。

二機とも大きなサソリのような胴体の両側にガトリングを二門装備し、サソリの胴体同様にそれっぽい多脚、大きな鋏を模ったようなクローに内側には巨大なビーム砲口、目と口がある場所はクローに付いているビーム砲より巨大なビーム砲の砲口が覗いている、そそり立った尻尾の先端にはパイルバンカーが付いていた。そしてそんなサソリの上に人間の上半身のようなものが載っていた。自分の全長よりも長くて巨木の幹のように太い腕についた掌にも大きなビーム砲が付いていた。首と頭はなく、肩と同一化された部分にはセンサーレンズがいくつもついており、全身には姿勢制御とその巨体を浮かばせるためのスラスター口が見て取れる(いや、実際にはホバリング用途なのだろう、この巨体を浮かせるにはそれこそどれだけのスラスターが必要だか)。そしてセンサーレンズが俺を見下ろしていた。

「……てめぇ等……イキナリ落ちてきて眼飛ばしてるんじゃねえよ!!……」

俺がISもどきに少し皮肉を言ってみるが無反応。目的は俺じゃないのか?いや、そんなことはない。ここには俺しか居ないのだから恐らく目的は俺のはずだ。他が目的なら態々ここに落ちてくる意味が無い。有人機ならまだわかるがこいつの形状は明らかに無人機だ……しかし何故俺を狙って……

そんなことを考えていると、突然一本のクローが俺に襲いかかってくる。

「おっと!!」

俺は素早く後ろに下がった。続けざまに幾つものクローを繰り出しながら不気味な多脚の動きで追ってくる。そんなISもどきに俺は後退しながらそいつらの動きを観察し続ける。

最初の一撃が避けられたあと、左からクローの攻撃。俺はそれも後退して避ける。そんな風にクローでの連撃を避けていく。しかしおかしい、こいつらはさっきからクローの攻撃しかしてこない。ビーム兵器を使うでもなく、他の建造物を壊すでもなく(いや、実際被害にあってる建造物は多々あるのだが)……只々只管に俺を追ってクローで攻撃を仕掛けてくるだけ。ビーム兵器を使わない辺り、小手調べか捕獲が目的なのだろう。

「お前は何者だ!何故俺を狙う!何が目的だ!!」

俺は立ち止まり、そいつに問うが無反応。寧ろ攻撃が止まったことが逆に不気味である。

「何か答えろ!」

俺が続けてそう言うがやはり無反応……と思いきや、またクローでの攻撃を繰り出してきた。俺はそれを後方へのバク転で回避する。

今度は二機一緒に連携攻撃でやってきた。まずは前方のISもどきの右クローが斜め上から。俺はそれを頭を下げて避ける。すると今度は俺の後方からもう一機が屈んだ俺を両方のクローで挟もうとする。俺は屈んだ状態を利用し大きく跳躍、回転しながらそいつの真後ろに着地して校舎の方に逃げていく。しかし俺の100m走のタイムと奴の(飽くまで予想だが)100m走のタイムはヤツのほうが二倍近く早く、簡単に追いつかれた。

「くそっ!……こいつ異様に早い!機動力半端ない!くそっ、どうする!?」

俺は途中で方向を変え、寮の方へ走る。途中無数のクローが俺を襲うがそれを避けていく。代わりに電灯が切断され、並木が裂け、地面が抉られ、橋が破壊され、花壇が荒らされ……これじゃ俺が殺される前に学園が滅茶苦茶になるんじゃあ……ISさえあれば……ISさえ……

俺はそこで思い出した、俺の専用機が今、開発室でフォーマットとフィッティングをするばっかりであることを……

「……ある!こいつに対抗する手段が!!……邪魔だぁ!!」

俺が急停止し脇道に入ろうとしたが、その行く手をISもどきが塞ぎクローを繰り出すが、俺はそれをジャンプで避けて、ISもどきの突起を足場に飛び越え、IS開発室へ向かった。

IS開発へ着いた俺はスロットにカードを差し込み、パスワードを入力する。扉が開いた瞬間、素早く中に入り、扉を閉めてロックする。ここはISが爆発したり、暴走した場合用に頑丈な作りである。しかしもって数分だろう。俺は少し息を切らしながら歩き、俺の専用機に制服を脱いで、ISスーツを纏った姿で乗り込む。

「ウインド!起きてるか!?」

『は、はい!?』

少し疑問形なのはこの際置いておこう。

「今ちょっとヤバイことになってる。時間がないから((初期化|フォーマット))だけ先にやる。残りの((最適化|フィッティング))処理は俺が戦闘してる間にウインドがやってくれ!」

『で、でもそうすると私の補助なしでマスターが全てマニュアルで操縦することに!?』

「いいんだよ。どうせ最適化処理が終わらない限りはマトモな攻撃できないんだからな……初期化開始!」

俺はコンソールを呼び出し、ウインドウをどんどん開いては閉じていき、ISの設定を最適化処理がうまくいくように設定していく。そんなことしているうちにも外では二機のISもどきが壁を突き破ろうとクローを振り回しているだろう。

「まだだぜ……」

俺は更に急いでコンソールをいじっていく。自身の頭をフル稼働させて情報処理をどんどん済ませていく。

「よしっ!こっちは終わった!ウインド、装甲を閉じて最適化を開始しろ!」

『わかりました!』

俺の専用機のゲイル・ウイングの前の装甲が閉じ、俺の首から下を灰色の甲が完全に覆った。そして頭に粒子が集まり、形をかたどっていった。それは人の頭を模したものであり、目の位置には黄色に近いオレンジ色をしたツインアイのセンサーがあり、額にはアンテナがV字型に付いていた。

「よし……コード切断!ゲイル・ウイング、出る!」

頭部のツインアイが光を放ったと思うと背面部に付いていたコードが抜け落ち、手足をロックしていた金属部品が次々に外れていく。

俺は扉の前まで来ると立ち止まり、加速体制に入る。

「まだ最適化は終わってないから瞬時加速は無理だが……スラスターを全開にしたらそれなりの加速力は得られるんだぜ……」

俺はそう言うと胸部に装備されたバルカン砲をクローの攻撃で破壊されそうな扉に当てて、破壊した。

バルカンと扉の破壊により周りは爆煙に囲まれ、無人機のISもどきも突然のことで驚いてる。

「よし!いまだ!!」

俺はその隙を逃さず、スラスターを全力開放して目の前にいた一機を無理やり外に押し出し蹴り飛ばす。その反動を利用して空中へ、そこからゆっくりと地上に着地した。

「ウインド、最適化完了までは?」

『あと十五分です!』

短いが……この状況では長いな……

俺が押し出したISもどきは体制を崩したが全然こたえてないようで、すぐに起き上がり俺の方を向いた。よく見ると胴体に付いていたガトリングの砲塔が回り始めていた。

「ヤバイ!!PS装甲緊急展開!!」

俺が顔を覆った次の瞬間、俺のISは銃弾の嵐をお見舞いされた。殆どが当たっているが、それた銃弾は地面などに当たり、土埃を舞わせている。弾丸が発射される音が止み、砲身が慣性で回る音も次第に止んだが土埃はまだ舞ったままだ。

「……今度はこっちの番だ!!」

俺は銃弾が飛んできた砲口にバルカン砲を発射した。すごい数の銃弾が胸部から発射され、装甲に当たる音に混ざって、小さく爆発する音が響いた。次第に土埃が晴れていき、俺から相手が、相手からも俺が見えてくるはずだ。そしてそこに佇んでいたIS姿の俺の装甲はは――

「……どうよ、シールドエネルギーはMAXのままだぜ?」

灰色のISが白いISに変わっていた。胸部に赤と青が目立つが全体を見ると純白といっても過言ではないISがそこには立っていた。

「……まあ最適化が終わるまで持つかどうか微妙だがな……」

《フェイズシフト装甲》……通称《PS装甲》。装甲に一定の電圧の電流を流すことにより相転移する装甲が使われ、灰色の装甲が有彩色化する。そして相転移した装甲は一定のエネルギーを消費することにより、物理的衝撃や攻撃を無効化する効果がある。その効果は実体弾の中では最大の貫通力を有するレールカノンをも防ぐ防御力のため、実体弾では傷一つ付けられない。ただしこの装甲にも弱点があり、攻撃を受ければ受けただけエネルギーを消費するというものだ。また実体弾は防げてもビーム兵器を防ぐことは不可能である(耐熱のお陰で雀の涙ほどではあるが防ぐことは可能)。しかし前者のエネルギー問題は永久機関で完全にクリアしているので問題なかった。しかしその永久機関の稼働率が現時点では半分も行ってないのだ。恐らく最適化処理にIS制御を持って行ってるため永久機関は必要最低限しか稼働させてないのだろう。この状態じゃあ粒子化してある武装を取り出すことも不可能である。

「……まあしょうが無いよなあ……コンバットナイフとバルカン砲だけで残り十三分、持ちこたえてやるぜ!!」

俺はPS装甲を閉じたあと、両サイドの腰についたアーマーから両手にコンバットナイフを装備したあと、スラスターを使って押し出したISもどきの側面へと陣取る。PS装甲のためか実弾じゃ無理と感じたのだろう、クロー内部のビーム砲をこちらに向け発射してくる。俺はそれを紙一重で避けもう一機のISもどきへと誘導し同士討ちを狙うが、無人機とはいえ知能はそこそこあるようでそんなヘマはしない。

「やっぱりな。じゃあまずその気色悪い脚を切断させてもらう!!」

俺は右側面の四本の脚の内、前二本を切断するため、最も強度が弱い関節部にナイフをさしこもうとするが――

「くそっ!意外と硬くて刺さらねえ!!」

刺さること無く、弾かれる。しかしごく僅かではあるが攻撃は通っているようでハンパーセンサーでもほんの少ししか分からないような機動力の乱れが感じ取られた。

「……へっ……一撃で無理なら、連撃に決まってるだろ!!」

俺とISもどき二機の戦闘の決着はそうそう簡単には、つかなさそうだった。

 

「ちょっと、夏お兄ちゃんと鈴さんの試合はどうなったの!?」

アリーナの観客席で試合を見てた私は突如ステージに乱入した《何か》に気を取られてる内に隔壁が閉鎖され、外から入ることも、中から出ることもできない状況になってしまった。これってつまり閉じ込められちゃった状態って訳だよね……

「ちょっと!誰か開けてよ!!」

「まだクラッキングは終わらないの!?」

「うるさいわね!このプログラムをクラッキングして正常に戻すのにどれだけの労力がいると思ってるのよ!?貴方がものの数秒で解除できるなら話は別だけど!?」

う〜ん、非常事態でみんなパニックの様だ。恐らくステージに乱入したのはISだろう。炎と黒煙の中から見えた黒い影……あのシルエットはISを纏った姿に近かった、そして十中八九、どこかの組織の人物だろう。

というかこの状態で専用機持ちってIS展開したら駄目なのかな?この際建物のちょっとの破壊や損害は仕方ないと思うんだけど……うん、冬お姉ちゃんに聞いてみよう!

私は左手の薬指にハマっている金色の指輪のモニターを開いて通信を繋げる。

「もしもし、一ノ瀬春華です。織斑先生、きこえますか?」

『む、春華か、どうした?』

声が聞こえたとたん、モニターの画面に冬お姉ちゃんの顔が写った……後ろで気分を悪そうにして泣いてる山田先生が見えるけど……近くにはコーヒーカップが置いてある。毒でも盛られたんだろうか?

「えっ……とですね、今観客席で観戦してたんですが、どうも閉じ込められちゃって……今の状況を教えてもらえますか?」

冬お姉ちゃんは暫く悩んだ挙句、私に現状を伝えてきた。

『……現在、アリーナの遮断シールドがレベル4に設定されてて扉と隔壁も全て閉まっている、開けるのにかなりの時間を要する。だから救援に迎えんのだ……せめて一機だけでも遮断シールドと観客席に入れればどうにかなるのだが……』

「織斑先生、ISの使用許可って出してもらえますか?」

『む?それは構わんが……まさか春華!!』

私は少し笑うと、こういう。

「それでは日本代表候補生、一ノ瀬春華と専用機《ダウニング・スカイ》、コードネーム《アカツキ》救助活動に移ります!」

『……頼む!』

私は冬姉のその言葉を聴き終わったあと、モニターを閉じた。

「行くよ、アカツキ」

『了解です!』

ダウニング・スカイに使用してあるコアの人格、アカツキが私の言葉に賛同してくれた。指輪に小さくキスをしたあと、粒子を纏ってISを展開させた。

そのISは黄金の光を放っており、薄暗くて非常灯しか灯ってない観客席の中でも僅かに光っていた。

「……さて、背部ユニット《オオワシ》展開……っと、先輩方、扉から退いてください、今から破壊します」

私は扉の真正面に来ると、先輩達や他の生徒達が十分離れたのを確認して、オオワシに装備されている高エネルギービーム砲二門とビームライフル、頭部のバルカン砲を展開させた。

「……いっけぇぇぇーーーー!!!」

叫びながら引き金を引き、これでもかというほどのエネルギーの塊が扉の表面をすごい勢いで焼いていく。やがてジュウゥ……という扉が溶ける音が聞こえたかと思うと、太陽の眩しい光と共に、ビームが空を駆け抜けていった。

「……破壊完了……それじゃあ私はお先に失礼します!」

私はそういうとPICとスラスターを使い、空中に急いで上昇して、アリーナの中の様子を見る。中では鈴さんが衝撃砲で侵入ISを牽制、隙を突いて夏お兄ちゃんが雪片弐型で攻撃という戦術を取っていたが、中々難しいみたいだった。

「オオワシ解除、オオワシは自立機動で私のサポートを、《シラヌイ》装着、これより遮断シールドに突入、突破して詳細不明のISとの戦闘を開始する」

そういうと私は背中のオオワシを外し、代わりにシラヌイという、セシリアさんのBT兵器と同じ、ビット型の第三世代兵器を搭載した背部ユニットを装着した。

私は盾を前面に押し出し、強度が何倍にも上がった遮断シールドへ突入する。

「いっけぇぇぇぇぇぇーーーーー!!……ってあれ!?」

が、私のISはいとも簡単に遮断シールドを通過してしまった。

「お兄ちゃんの言ってた通り、このISの装甲はエネルギー系ならほとんどを無効化、反射しちゃうのか……」

そう、ダウニング・スカイに使われている装甲ヤタノカガミはビーム系のエネルギー兵器を無効化する、それはたとえシールドでも同じということを聞いていたが、これほどとは思ってなかったよ、お兄ちゃん。

「……なんて思ってる暇はなかった!!……お願い!行って!」

私はシラヌイに装備された七基のビットにお願いするように命令すると、全てが直ぐ様、謎のISと夏お兄ちゃん、鈴さんの間に割ってはいろうと、飛び立っていた。

 

「はあ……はあ……くそっ!やっとかっと一体終わりかよ……」

俺はその場で脚がなくなり、身動きが取れなくなっている無人機を見ながらそういった。上半身についていたビーム砲と尻尾のパイルバンカーは脚を攻撃している時ウザかったので切り裂いた。どうも関節や脚しか重点的に固めてあるようで、腕は一瞬にしてザックリと切れた。そうやって一体倒すのに時間にして五分位なのだが、バルカン砲の弾切れにコンバットナイフが二本とも折れてしまったのだ。今現在は手首とつま先、踵に装備されたナイフで頑張ってはいるが使いにくいし奇襲用だから簡単に避けられてしまう。

「……しょうが無い、一個しか弾倉無いんだが出し惜しみは無しだ……」

俺は両手首のナイフを折りたたんで仕舞うと、核エンジンの稼働率が上がってるのを確認して、IS用対物ライフルを展開、構えた。しかしこのライフル装弾数が十発と一発なのだ。弾倉内に十発、銃自体に一発。合計十一発。最適化完了まで八分位残っているのだが持ちこたえれるとは到底考えにくい、何故なら――

「まずはこいつに何発使うかなんだよな……」

俺は地べたを張っているISもどきのクローの根本に一発ずつ、ガトリングに一発ずつ、口の所に一発、最後に上半身の所に一発、一体目のISもどきが再起動して動いたとしても攻撃手段がないように安全を考慮して武装を破壊したあと止めを刺した。

「これで残り五発、普通に考えると持たないよな……まあ、第二ラウンド、始めようぜ?」

俺がそう言うと、届いたのかISもどきが全武装を一斉発射してきた。俺の足止めを狙ったのか脚を狙ってきたが、俺はそれを横に避けてライフルを構える。しかし時間にして一秒もなかったというのに、そのISもどきは既に俺の目の前に来ており俺の左腕と左肩をクローで挟み込んだ。更に巨大な両腕でも掴み、力を込め始めた。どうやら俺の左手を引きちぎって玩具か何かにしたいのだろう。

「そんなに欲しいならくれてやるよ……ウイング、左肩から先の絶対防御カット!」

俺は絶対防御が解除されたのを確認したすぐ後、右手に持っていたライフルの銃口を自身の左肩に当てた後――

「……吹き飛べ!!……」

何の躊躇いもなく引き金を引いた。

反動でよろめくISもどき、そしてそのクローに挟まっていた俺の左腕、俺の肩口から飛び散る赤黒い液体……俺の左腕はものの見事に千切れた。そして俺はその隙を逃さず、ライフルを構え、スラスターを全開。

「……これで……どうだぁぁぁぁぁーーーーー!!!!!」

――ズガンッ!ズガンッ!ズガンッ!ズガンッ!――

俺は奴の懐に飛び込むとライフルを連射、空薬莢が落ちる音とともにISもどきが崩れ落ちる音がした……八分もいらなかったな……

「とりあえず、こいつは返してもらうぜ……」

俺はクローに挟まれたままの左腕を右手で引き寄せ、肩に乗せてアリーナの方を向く。あっちは大丈夫だろうか?まあ春華と冬姉、夏に鈴がいるから大丈夫だとは思うが……

「とりあえず向かってみるか……!!」

その瞬間、まさに俺がPICを使い浮かび上がった瞬間、俺の左脚が尋常じゃない熱と激痛を感じた。二体目のISもどきが最後の力を振り絞ってビームを発射したのだ。そしてそれは絶対防御を貫通し、左脚を直撃、左脚は千切れはしなかったが足は完全に消し飛び、スネの中程から先は完全になく、太ももは無事だが、関節部は完全に変な方向に曲がり、見るも無残な程になっていた。

「……てめぇは……ぶっ殺してやる!!」

俺は地面に足をつき、なんとかバランスを保った。そして――

『一次移行終了!ランチャーストライカー、展開!』

同時にPS装甲を改良したVPS装甲が展開され、俺の背中に深い緑色の武装が展開、右側の背中についてた超高インパルス砲を構え――

「……リミッター解除、目標、前方無人機、ロックオン」

一気に引き金を引いた。

「吹き飛べぇぇぇぇぇぇーーーーーーー!!!!」

銃口からISの大きさに匹敵するという太さの赤色の芯を青い電磁波が覆ったビームが発射され無人機を包み込み、その奥にあった開発室を貫通、その奥の校舎の端のほうを吹き飛ばし、消し炭にしてしまった。

「…………やっべぇ、あとで冬姉に怒られる……」

撃ち終わり、黒く焼き焦げた悲惨な状態の地面から白い煙と嫌な異臭が漂う中、そんなことを考えながら、俺はアリーナの方へ向かった。

 

俺は今鈴と一緒にアリーナのステージに侵入してきた無人機に対峙していた……というよりは正直対峙((し|・))((て|・))((た|・))のほうが正しいだろう。作戦は鈴が衝撃砲で砲撃して当たらなくても隙を作る、その時に俺が突っ込んで斬撃、というシンプルで単純なものだった。しかし単純が故に読まれやすく、相手には一撃も浴びせられないまま今の状況。さらに零落白夜に瞬時加速と燃費が悪く、エネルギーも底をつきかけている。数値にして60……よくてあと一回で尽きるだろう。

「……鈴、あとエネルギーはどのくらい残ってる?」

「180ってところね」

これは恐らく攻撃を想定しない数値だろう、つまりはHPだ。だいぶ削られてはいるが俺よりかはまだ残ってるらしい。俺のエネルギーが少ないのは零落白夜のせいだな、多分。

そんなことを考えてた瞬間、謎のISにロックされた警告、そしてビームの光が迫ってくるのに気づいた。

「!鈴、避けろ!!」

ビームは俺ではなく鈴を狙っていた。しかし鈴は気づくのに一瞬遅れたのか、回避が間に合わない。

「くそっ!!」

間に合え!!

俺は鈴を抱えて離脱するため瞬時加速を使うが鈴を抱えた時にはもうビームは目の前だった。間に合わない、もう駄目か!!

そう想い、目をつぶって激痛を覚悟した……が、その衝撃は何時まで経っても来ない。

「……な、なんだこれ?」

恐る恐る眼を開けると、半透明の壁みたいなものが俺達二人を包んでおり、振り返った目の前には金色の全身装甲のISが浮いていた。

「……((金色|こんじき))の……IS……」

そのISはまるでビームから俺と鈴を守るかのように手を広げ、そこにいた。汚れ一つ無い金色の装甲は日光を反射して眩しいぐらいの光を放っており、後ろ姿だったが何か特別なものを放っているような感じがした。

『大丈夫?夏お兄ちゃん?鈴さん?』

まるで神々しいという言葉が似合うその金色のISからオープンチャネルで通信が入った。そしてそこに映っていたのはよく知る顔の人物だった。

「は、春華!?……え?この金色のISに乗ってるのって春華なのか!?」

『そうだよ〜』

なんとも間の抜けたような声だったが、通信画面の向こうの春華が笑ったかと思うと、目の前のISはこっちに正面を向け、頭の装甲を、ヘッドギアに変えてみせた。そしてそこには長いツインテールをした春華の笑顔があった。

『このISはダウニング・スカイ。特殊な装甲で出来ていてビームやエネルギー系の攻撃ならどんなものでも防いで、反射させることが可能。しかも普通の反射じゃなくて、威力をそのままビームを撃ってきた方向にそのまま返す。だから今のビームもあのISの方向に反射された……んだけど意外と素早いね、避けられちゃった』

春華は『あはは……』と苦笑いしながら言うが、俺は驚いた。何故ならビーム兵器と言えばまだセシリアのブルー・ティアーズ位にしか搭載されていないからである。そう、やっとビーム兵器の実用性が見えてきたところでそれを殆ど無に返すISが出てきたのだ。恐らくそんな時代を先取りできることが出来るのは箒の姉さん、束さん位のものだ。そしてそれに匹敵する人物を俺は最近知った。秋だ。

「……そ、そういえば秋は!?アイツは無事なのか!?」

春華がISで出てきてるのに秋が出てこないということはまず確実に秋の身に何かあったということなんじゃないのだろうか!?

『大丈夫だよ、お兄ちゃんはまだ専用機が出来てないだけだから。恐らくもう少ししたら来るとは思うけど……それまであの((無|・))((人|・))((機|・))相手に持つかどうか……』

全くその通りだ。いくら無人機とはいえ、殆どエネルギーを使い果たした俺と鈴にたとえ春華が加わったとして勝てるかどうか……ん?無人機?

「春華、あのISって無人機なのか!?」

『確証があるわけじゃないけど多分ね。あのIS話してる時には余り攻撃してこないし、動きが単調過ぎる。有人機ならもっと多彩な攻撃方法試してくると思うよ?』

確かに、さっきの鈴への直撃コースのビームだって戦ってる間にいくらでもチャンスはあったはずだ……

『兎に角、確実に停止、破壊を狙うなら全員での一斉攻撃以外ないと思う。但し手段は同じ、まず鈴さんと私で無人機を足止めして、その間に夏お兄ちゃんとお兄ちゃんが止め……こっちのほうがより確実性はあがるでしょ?』

「……確かに春華の言うことはわかる。でもその秋は一体何時になったら来るのよ!?もしかしたら私達が先に倒されるかもしれない!そんな不安要素がある作戦よりは今いる三人で叩くほうが賢明よ!!」

春華の提案に今まで黙っていた鈴が食って掛かる。それもいつもの鈴から考えられないほどの怒りを交えてだ。

「……じゃないと……私は……私は……アイツに……秋に……認められないのよ……」

しかしそんな鈴の声がどんどん小さくなっていく。しかし俺にとって鈴の言ってる意味がわからない。《認められる》、そんなのが秋に必要なのだろうか?何を基準にして《認められる》のか……秋と鈴の間に何かあったのだろうか?

しかしそんな疑問の中、無人ISがしびれを切らしたのかビームを撃ってきた。しかしそれが春華に効くわけもなく、俺と鈴もシールドに守られてダメージを受けない。

『鈴さんはいつもそうだよね……昔からなんでも一人でやろうとして……苛められてた時に助けてもらったお兄ちゃんとも最初は衝突して……仲良くなっても全然変わってなくて……《認められる》っていうのはお兄ちゃんに勝つことなの?』

「え?……」

春華の真剣な眼差しと声に鈴は顔を上げ、春華の顔を見つめなおす。鈴の目は少し濡れており、泣いていたのが分かる。

『私には鈴さんの《認められる》っていう気持ちはわかるよ。でもそれは勝つことじゃなくて、相手を信じて助け合う事じゃないのかな?夏お兄ちゃんはいつかは追いついて勝ちたい、って思ってるけどそれ以上にお兄ちゃんを助けて、役に立ちたいって思ってるよ?』

「そうだぞ、鈴。《認められる》っていうのはわからないけど、友達なら信じあって助け合わないと。対抗意識ばっかりじゃあ近くにいても離れてるようなもんだぞ?」

俺の言葉に鈴は俯いたが、ハッキリとした声が聞こえてきた。

「……そうね……でも、どうすればいいのかわからない……春華……私ってどうすればいいのかな?……」

『取り敢えず、信じてみることから始めてみたら?……信じていたら絶対にそれは叶うから?ほら』

春華は笑って上を指す。俺と鈴は揃って上を見る。そこには巨大なビームでアリーナのシールドを撃ちぬいた白いISがいた。

 

私は春華と一夏の言葉で昔、秋に言われた言葉を思い出した。

『鳳鈴音だろ?俺は一ノ瀬秋葉。よろしくな?』

そいつは中国人だの何だのと苛められていた私を助けてくれた。

―――――

『……別にアンタなんかに助けてもらわなくても私は平気だったわよ』

『嘘つけよ、泣いてたくせに……』

『ッ……!』

パァンッ!

『ってーな!!イキナリぶつなよ!助けてやったのにこの仕打ちは無いだろ!?』

『誰がいつ助けてなんて言ったのよ!!』

『ん?んーー……それもそうだな。じゃあお前が俺を助けてくれよ?』

『はあ?』

『だから俺が困ってる時にお前が助けてくれよ。そしたら俺はお前を信じて、お前が困ってる時に助けてやるからさ?』

『……アンタって、馬鹿なわけ?』

『別にいいだろ?それよりもう放課後だぜ?俺帰るから、じゃあまた明日な、鈴!』

そう言ってアイツは走っていった。

『鈴……か。じゃあアイツのことはアキ……シュウって呼んでやろっと』

そう、こんな感じだった……でもアイツにばっかり助けてもらって、私がアイツの役に立つことなんて無かった……

―――――

「……そうね……でも、どうすればいいのかわからない……春華……私ってどうすればいいのかな?……」

『取り敢えず、信じてみることから始めてみたら?……信じていたら絶対にそれは叶うから?ほら』

春華は笑って上を指す。私は見上げるとそこには白いISが入ってきて、私の前で停止すると顔の装甲をヘッドギアに変えて笑った。

「待たせたな……一夏、春華、それに鈴……さっさとアイツ倒そうぜ?」

……今なら助けられるかな?秋……

 

……とは言え、正直きついな……

俺は背負っているランチャーストライカーを見た。先の戦闘でリミッター解除、シールドを突き破るのにリミッター解除、計二回リミッターを解除してしまい核エンジンの出力が不安定になり、更にランチャーは直さないと使えない状態になってしまった。オマケに――

「な、なあ秋……その状態、大丈夫なのか?」

「……見てわからないか?」

「……案外元気そうね……」

「そういうことだ……」

「「いや!おかしいでしょ!?」」

ハモるんじゃない!!

「ん〜、まあ色々あって左脚と左腕無くなっちまった。まあ腕や足の一本や二本、どうってことはねえよ……それより問題はアイツだろ?」

俺は振り向き、地上に立っている無人ISと向き合う。

「……作戦ある奴いるか?……」

「私と鈴さんが射撃で足止め、お兄ちゃん二人が隙を突いて止め」

俺の質問に春華が答える。俺は鈴と夏を見て言う。

「夏、零落白夜は?」

「あと一回……だが無人機とわかってるなら遠慮はしねえよ!」

「鈴」

「な、なによ!?」

俺はいとこ級置いてから聞く。

「……信じていいんだな?」

「……バッカじゃないの!?私は中国の代表候補生よ?わかったら安心して全力でやっつけなさいよ!」

「……信じてるぜ?よしっ!作戦開始!」

「了解!」

「おう!」

「わかってるわよ!」

俺たちは散開して鈴と春華が攻撃を開始する。俺と夏は少し上空で見守る。

「夏……」

「なんだよ?」

俺はストライカーパックをエールストライカーに変えながら夏に言う。

「俺が無人ISまで運んでやる……お前は零落白夜に集中しろ」

「?……ああ、わかった」

夏はそう言うと俺の肩を掴んで、加速体制に入った。

(なあウインド)

(なんでしょう?)

エネルギーを徐々に外部に出しながら、俺の心の呼びかけにウインドは答える。

(お前はさ……俺のこと信じてるか?)

(当たり前じゃないですか、私がマスターを信じなくてどうすればいいんですか?)

なんとなくだが、ウインドは笑っているような感じがした。

(ありがとう……)

「秋!一夏!今よ!」

「「おう!!」」

俺は瞬時加速を使い、一気に亜音速まで速度を持っていく。

「いっけぇーーー!!」

凄まじい轟音――ソニックブームを起こしながら赤く赤熱した空気を纏い、俺と夏は無人機に一気に近づいた。

 

私と春華は徐々に攻撃する速度を早めていった。奴のビームを潜りながら衝撃砲を奴に向けて発射していく。しかし当たらない。まあそんなことは想定済みなんだけどね。

春華の攻撃も中々当たらない。支援機からのビームとビットでのビーム攻撃、手に持ってるライフルからのビーム……中々当たらないが、全く当たってないわけじゃない。

私は衝撃砲をチャージし始める。そしてタイミングを見極め始めた。

春香からのライフルの攻撃を無事bん気が避けた瞬間……もらった!

最大出力の衝撃砲が無人機を襲い、体勢が崩れた!!

「秋!一夏!今よ!」

「「おう!!」」

その瞬間、赤く燃えながら二人は無人機に突っ込んでいく、それと同時に私と春華は全速力でそこから退避する。

 

……なんだ!?

俺が夏を離そうとした瞬間、目の前に画面が現れた。

ワンオフ・アビリティー……森羅万象!?……

その瞬間、俺の腕に雪片弐型が展開した状態で現れた。そうか……わかったぜ!!

「いっけぇ!!夏!!」

「おおおおおおおおお!!!」

夏が雪片弐型を握り、胴体に横一閃!真っ二つにする。

「これで……おわりだあああああああああああああ!!!」

次の瞬間、雪片弐型を大上段に構えた俺が左右真っ二つにした。俺は地面を滑り、焼け焦げた地面から煙が上がるのを気にもとめず、無人機を見た。

「……敵ISの作動停止を確認……作戦終了……」

そう言い残すと、俺はその場に倒れ、気絶した。

 

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どうも、作者の菊一ですwいや〜この話分けようかな〜って思ったんですけど中々分けられなくて書いてたらこんな長さに><。読みにくいかもですが勘弁して下さいwついでに戦闘はこれで終わりですがこの後確実に一話分エピローグがありますwまあストックないのでかなり掛かるとは思いますがw

その話が終わったらやっとかっとシャル&ラウラ編です!正確にはその冒頭の五反田兄妹のシーンを書きたいだけですがwwあ、その前にキャラと機体説明入れるのでお楽しみにw

 

……実はラウラ編のネタが全然なかったりしますw原作とは少し違う展開にしたいのですが誰か面白いネタややってほしいネタあったら送ってください、参考にしたいと思います><。シャル編は結構決まってるのでおおまかな変更はないですが、細かな要望なら聞きますよ〜。

 

ではまた〜

説明
第十七話です!今回は結構長いですwなんせ文字数が12735文字……その割に全く表現できてないけどねorz
ではどうぞ〜
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インフィニット・ストラトス

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