投票用紙
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「長門に投票してくれ。」

 

キョンは一枚の投票用紙をハルヒに差し出した。 何の投票用紙かはキョンの指で隠されている。

 

「何の投票用紙? 見せてみなさい、何隠してるのよ」

「秘密だ。 書いたら教えてやる」

「駄目よ、今時そんな手口の詐欺は無いのよ。 引っかかるのは、よっぽどの馬鹿ね」

「後生だ、頼む! お前しか頼める奴が居ないんだ!」

 

ハルヒは、あまりにも熱烈に頼むキョンに心を動かされそうになった。 ただ、内容が気になって

どうしても躊躇してしまうのだった。

 

「……条件があるの、明日はあたしと二人で不思議探しに行きましょう」

「二人でか? 皆で行けばいいじゃないか」

「ほら、今までは大人数で行っていたから見つからなかったかも知れないし……」

「……OKだ。 しかし、デートみたいだな」

「馬鹿キョンとで、デートって調子に乗るんじゃないわよ! べ、別にあんたじゃなくてもいいんだから!」

 

真っ赤になって挙動不審に陥った彼女の心の中は、誰の目から見ても明らかだっただろう。

――ただ一人の男を除いて。

 

「そうか、対価だからな。 了承した」

 

油断したキョンの手から用紙を奪ったハルヒは、間髪入れずに顎に良いパンチを入れた。

彼女の手に堅く握られた紙には、≪彼女にしたい女子≫ と書かれていた。

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超短編
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