魔法少女リリカルなのはStrikerS00(仮)−−06 訓練−− |
導入部六話目。
−−訓練−−
新暦75年3月。
いつもどおり、なのはと朝食をとっていた。
「なのは。この辺りで戦闘訓練を行える場所はないか?」
「戦闘訓練?」
「エクシアの修復が完全に終わったからな。機動六課が始まる前に最低でも一度はやっておきたい」
「……刹那君の強さなら必要ない気もするけど」
「そうはいかない。以前は、アースラの訓練室でフェイトやクロノの訓練相手をかなりやったが、四年近いブランクがあるからな。体を慣らしておく必要がある。できれば、なのはにも見てもらいたい」
そう。元の世界に魔法は存在しない。
そして、((MS|モビルスーツ))の操縦に体が慣れてしまっている。
デバイスはエクシアだが、実際に体を動かすのは自分自身。
エクシアの補助で一ヶ月前のガジェットとの戦闘はこなせたが、この先このままでは戦い抜けないだろう。
だからこそ、戦闘訓練は必要なのだ。
「私?」
「なのはは、教導官なのだろう?適任だと思ったんだが」
「う〜ん、仕事の都合がつけば見てあげられるんだけど、ちょっと難しいかも」
そう言いながら、空間モニターを出して、スケジュールをチェックしている。
「一応、公共の魔法練習場はあるんだけど、戦闘訓練となるとちょっと無理かな〜」
「そうか」
「でも、刹那君。真面目だね」
「真面目?俺がか?」
「うん」
「そうは思わないが……しかし、訓練場所がないとなると、やはり機動六課開始後になるか」
「何が?」
「エクシアだ。修復が完了したら見せる約束だった。この前は、フェイトとマリエルに先に見せてしまったからな、その侘びも含めて訓練がてらに「高町ですけど」……なのは?」
しっ!と、人差し指を口元で立てている。
「明後日の午後の予定を少し変更したいんですけど。……訓練場はそのまま貸切にさせてください。……はい。……いえ、私と((友人|・・))で使います。……ありがとうございます!それでは」
「……」
「これでバッチリ!」
とてもいい笑顔でこちらを向くなのは。
フェイトといい、なのはといい。
偶に彼女達の言動についていけない。
(流石です、マスター。見事な策略でした)
(エクシア。お前はいったい何を言っている)
「明後日が楽しみだね。刹那君!」
「あ、ああ」
訓練当日。
今日は朝からなのはと一緒に教導隊へ来ている。
訓練場の使用は午後からだが、俺がここの場所を知らないのと、一度なのはが迎えに戻るのが手間ということで、見学という名目で朝から来ている。
本来なら管理局員でもない限り見学は行えない。
それを押し通したなのはは、教導隊での地位が高いのか、それとも何かしたのか。
そんなことを考えながら、窓越しになのはの教導の様子を見る。
なのはが主に指導しているのは、射砲撃系の魔導師達。
移動方法、立ち位置、射撃魔法の選択、接近戦における対処。
「凄いな。なのはは、毎日こんなことをやっているのか」
《下手をすると、ガンダムマイスターの訓練より過酷かもしれませんよ?》
「……かもな」
午前の訓練が終わり、大きめのバッグを持ったなのはが控え室へ入ってきた。
「刹那君」
「なのは」
「一緒にお昼食べよう?」
「ああ」
「ちょっと、待ってね」
「?」
そう言うと、バッグを机の上に置いて何かを取り出そうとしている。
「食堂があるんだけど、行くと騒ぎになっちゃいそうだから」
「……確かにな。この部屋に来るまでにも、かなり注目されていたからな」
「だから、お弁当を作ってきたんだ」
バッグから二つ箱を取り出す。
「なるほどな。だから、普段よりバッグが大きかったのか」
「うん。もしかしたら、量が少ないかも」
「いや、この後のことを考えると少なめの方がいい」
「そう?」
「ああ」
昼食を終え、なのはの案内で訓練場へ向かう。
「ここが今日使う訓練場の管制室だよ」
ドアの前になのはが立ち、パネルを操作すると、プシュ、と軽い音と共にドアが横にスライドする。
室内に入ると、机が一つと椅子が四脚。
そして、コンソールパネルと外へ通じるドア。
「どんな訓練をするんだ」
「そうだね。いきなり私と模擬戦もいいんだけど、流石に刹那君も体を動かしてからの方がいいだろうから、オートスフィアの撃破かな」
「それは、どういったものなんだ?」
「ちょっと待って」
なのはがコンソールパネルを叩くと、外の訓練場に小さな球体が一つ浮かびあがる。
「あれが、スフィアだよ。外に出てみよっか」
「ああ」
外に出ると、なのはが小石を一つ拾い上げる。
「攻撃範囲に入ると、反応して攻撃してくるの」
そう言うと、小石を投げ込む。
コツン、と地面に落ちた小石に球体が反応し、中央の赤い宝石の様なところから、青い弾が一つ放たれるが外れる。
もう一度放たれ、今度は小石に命中する。
「今はスフィアの行動レベルを最低に設定してるけど、レベルが上がると反応速度、弾速、命中精度も上がるよ」
「なるほどな」
「スフィアの撃破は、魔導師ランクの試験にも使われるものなんだ。説明はこんなところかな。一旦、中に戻ろう」
室内へ戻ると、再びなのはがコンソールパネルを叩く。
「それじゃあ、始めようと思うけど。スフィアの行動レベルはどのくらいにしようか」
「最大で頼む」
「……え?」
「ここを使える時間は限られている。多少無茶でも、短時間で体を慣らさなければな」
なのはの顔が曇る。
「気持ちはわかるけど……」
「なのはが無理だと判断したら止めてくれ。そのあと、少しレベルを下げてやっていく」
「……教導官としては反対なんだけど。刹那君は私の生徒ってわけでもないし、一定期間のなかで成果をあげる訓練でもないしね。いいよ、刹那君の言うやり方をやってみよう?」
「すまないな」
「ううん。それじゃあ、刹那君は外に出てもらえるかな?」
「了解」
なのはの指示に従い訓練場の中央に立つ。
『それじゃあ、スフィアを出すね』
「ああ」
なのはに了承の意を伝えると、空中に小型のスフィアが40機。地上に大型のスフィアが10機。目の前に現れる。
『こっちの準備は出来たよ』
「了解。エクシア」
《セットアップ》
エクシアの言葉と共に光に包まれ、瞬く間に青と白を基調とした鎧を身に纏う。
鎧にひびや欠損は一切ない。
《GNドライヴ及び全兵装に問題なし》
右腕には、従来の刀身の周りに緑の半透明素材が追加された、GNソード改。
両腰には、GNビームサーベル。
そして、左腕には。
「これは、GNシールドか?」
《はい。リボンズ・アルマークとの戦いでは装備していませんでしたが、私の中にデータがあったので復元させました。余計でしたか?》
「いや、防御という戦闘での選択が増えるのは助かる。礼を言う」
《ありがとうございます》
「しかし、若干小さくなったか?」
《はい。シールドを装備した状態でも、二刀流ができるようにサイズを少し変えました》
『…………な…………ん…………こえ……』
途切れ途切れになのはの声が聞こえる。
「なのはからの通信のようだが……状態が悪いな」
《GN粒子による通信阻害が出ていますね》
「何とかできるか?」
《少々お待ちを……》
『刹那君、聞こえる?』
「ああ。聞こえる」
『あ、繋がった。急に通信の状態が悪くなっちゃったからビックリしちゃった。何だったのかな?』
「それは、こちらの所為だ」
『刹那君の?……どういうこと?』
「後で説明する。今は」
『そうだね。刹那君とエクシアの方は』
「いつでもいいぞ」
『では、ミッションT。オートスフィアの全機撃破。制限時間は15分』
(エクシア、補助は飛行のみで頼む)
(はい)
視界の隅に、カウントが出現する。
5……4……
「ガンダムエクシア、刹那・F・セイエイ」
3……2……1……
「ミッションを開始する!」
「刹那君は訓練場の中央に立ってくれる?」
『了解』
管制室から通信で刹那君に指示を出し、コンソールパネルを叩く。
刹那君の実力は知っているつもりだけど、いきなり最大レベルというのは心配。
「それじゃあ、スフィアを出すね」
『ああ』
刹那君から返事を確認して、スフィアを出す。空中に小型のスフィアが40機。地上に大型のスフィアが10機。
「こっちの準備は出来たよ」
『了解。エクシア』
エクシアに合図を送ると光に包まれ、瞬く間に青と白を基調とした鎧を身に纏う刹那君が現れる。
十年前と一ヶ月前に見た時と違い、鎧には傷一つなく、太陽の光を受けて輝いている。
背中の突起物から絶え間なく出ている光も綺麗で、まるで神々しくさえ思える。
暫く、言葉をなくしてその姿に見惚れてしまった。
《マスター》
「はっ。な、なに?レイジングハート」
《((見惚|みと))れている場合ではありませんよ》
「にゃ、なに言ってるの?私は……」
レイジングハートの言葉を誤魔化しながら、刹那君の姿をもう一度見る。
右腕には、折り畳まれている大きな剣。
以前見たのとは違い、金属の刀身の周りには緑の半透明な刃。
記憶が正しければ、あれは射撃も出来る武器だったはず。
左腕には、盾。
「あれが、エクシアが修復された……刹那君達の本当の姿なんだ」
《そのようですね》
「刹那君、準備はいい?」
通信で話しかけたけど、返事がない。
「あれ?聞こえてないのかな。刹那君、聞こえる?」
《マスター。通信障害が起きています》
「え?なんで?さっきまで普通に使えていたのに」
どうしよう。これからって時に故障って非常に困るんですけど。
もう一度、話しかけてみる。
「刹那君、聞こえる?」
『ああ。聞こえる』
「あ、繋がった。急に通信の状態が悪くなっちゃったからビックリしちゃったよ。何だったのかな?」
『それは、こちらの所為だ』
「刹那君の?……どういうこと?」
『後で説明する。今は』
「そうだね。刹那君とエクシアの方は」
『いつでもいいぞ』
「では、ミッションT。オートスフィアの全機撃破。制限時間は15分」
カウントが出現する。
5……4……
『ガンダムエクシア、刹那・F・セイエイ』
3……2……1……
『ミッションを開始する!』
ゼロ!
カウントゼロと共にスフィアから一斉に光が放たれ、刹那君が立っていた場所に巨大な爆煙が発生する。
「ち、直撃!?」
《……いえ》
レイジングハートが否定すると、爆煙の中ならピンクの光が五つ飛び出してきて、小型スフィアが5機破壊される。
直後、刹那君が爆煙から真上に飛び出し、三発放ち、これも全弾小型スフィアに命中する。
刹那君の姿を認識したスフィアが再び一斉に攻撃を開始するけど、上空を旋回しながら回避しつつ右腕の武器から射撃を行い、小型スフィアを次々と撃破していく。
小型スフィアが少なくなった一角を急降下していく。
地上に配置されている大型スフィアが攻撃するけど、回避と左腕の盾による防御をうまく使い分けて、懐に飛び込むと、刀身を起こして大型スフィアに突き刺す。
大型は小型に比べ、防御力が格段に高い。
そのシールドバリアを物ともせず、あっさり撃破する。
そのまま次の大型に向かい、右腕の大剣で切り裂く。
小型スフィアの集中砲火を後方へ滑るように移動し回避する。
再び、刀身を折り畳んで射撃しながら上空へ飛んでいく。
「……誘導制御なしで、あそこまで正確な射撃ができるなんて」
《マスターでも難しいですか?》
「立ち止まってならできるけど、刹那君みたいに回避しながらは難しいよ」
モニターを見ながら、レイジングハートに答える。
制限時間内でのスフィアの全機破壊は魔導師試験でも使われるが、それは廃ビルなどが並ぶ遮蔽物のある場所。
スフィアの攻撃を壁などの遮蔽物で体を隠し、攻撃が止まる隙に破壊することが出来る。
しかし、今刹那が訓練をしている場所は何もないただ広い空間。
遮蔽物は一切ない。
よって、スフィアの攻撃を凌ぐ方法は、回避と防御又は相殺の三択。
どの選択もその者自身の能力によるところが大きい。
スフィアの行動レベルが高いほど、それが如実に現れる。
刹那は回避と防御の二択だが、回避しながら射撃で撃破もしている。
だからこそ、なのはは刹那の実力に舌を巻いている。
上空からの射撃により、小型スフィアの数が半分以下になった時、再び降下していく。
右腕の刀身を起こし、すれ違いざまに大剣を払い小型スフィアを切り裂く。
すると、右腰の後方に向いていた短い棒の様なものが前方に向き、それを左手で引き抜くとピンクの刃が現れる。
「魔力による刃?」
右腕には大剣。
左手には魔力刃と思われる剣。
二刀流となって、大型スフィアに向かっていく。
懐に飛び込んできた刹那君に対して、大型スフィアが攻撃するけど、刹那君は読んでいたかのように体を左に回転させながら回避し、そのまま左手の剣を払って切り裂く。
右腕の大剣を折り畳んで、右手にも魔力刃の剣を持つ。
大型スフィアの攻撃を盾で防御して、右手の剣で突き刺し、最後の大型スフィアを撃破する。
撃破後の硬直に小型スフィアが攻撃をするが、その攻撃を二刀の魔力刃で弾く。
《スフィアの攻撃を剣で弾くとは、とんでもない人ですね》
レイジングハートの言葉は尤もだ。
刹那君は四択目。
普通なら考えないし、実行しない……というより実行がほぼ不可能な行動。
剣による弾丸の処理を行っている。
おまけにスフィアの設定レベルは最大。
あの速度の弾を剣で処理するのは並の反応速度ではない。
そして、接近してスフィアを切り裂く。
スフィアの残りが2機になったところで一度高く上昇する。
そこで、ふと気付く。
「……あれ?」
《どうしました?》
「なんか、刃が短くなる?」
そう、先程までよりも刀身が短くなっている。
魔力を消費しすぎたのかと思ったけど、その考えが違っていたことを直ぐに知った。
小型スフィアの攻撃を回避して、両手の短剣を投げた。
投げた短剣は寸分違わずスフィアを切り裂き地面に突き刺さる。
そして、刃の消えた柄が、カラン、と音を立てて地面に転がる。
『ミッション終了』
刹那君が全機破壊達成の言葉を口にする。
地上に降りて、柄を取りに歩く姿に言葉が出ない。
「……」
《マスター?》
「はっ!お、お疲れ様。刹那君」
『ああ』
ヴィータちゃんやシグナムさんと互角に戦ったことは聞いていたけど……。
正直、これ程とは思わなかった。
射撃精度、回避、防御、剣技。
どれを取っても並外れている。
今まで色んな魔導師を見てきたけど、刹那君ほどの人は居ない。
強いて挙げるなら、フェイトちゃんやシグナムさん達くらいだ。
『なのは、次はどうする?』
「あ、えっと。じゃあ、バリアジャケットを解いて一旦戻ってきてもらえるかな?」
『了解』
管制室の椅子に座って、刹那君と先程の訓練について話す。
「凄かったね。とてもブランクがある人の動きとは思えないよ。射撃精度も高いし、誘導なしでよく回避しながら命中させられるね」
「スフィアは動かないからな。銃口を合わせれば当たる。なのはだって出来るのではないか?射撃は俺より上だろ?」
「出来なくはないけど」
刹那君は簡単に言っているけど、口にするのと実行するのとでは大きく違う。
それに、私は射撃というより砲撃の方が正しいかもしれない。
その後も休憩を入れつつ、スフィアの数を増やしたりして訓練を行った。
そして、思う。
刹那君は元の世界でどんな経験をしてきたのか。
よくよく考えてみれば、私は……私達は刹那君のことを知らない。
同じ、でも違う地球出身だということぐらい。
刹那君は自分の事を話したがらない。
だから、こっちから聞くようなことは今までしなかった。
でも、知りたい。
刹那・F・セイエイという人間を……。
読了おつかれさまでした。
戦闘描写って本当に難しいですね。
文字でどうやって表現したいいのか全然わかりません。
因みに、スフィアはスバルとティアナの試験の時に出てきたヤツをイメージしてください。
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再び魔法少女の世界へ降り立ったガンダムマイスター刹那・F・セイエイ。イノベイターへと変革した刹那に訪れる再会と新たなる出会い。魔法少女リリカルなのはA's00〜とある日常〜(仮)の設定を踏まえたクロスオーバー作品です。読みづらい、誤字脱字等の至らないところが多々あると思います。作者の原作知識は、それほど高くありません。また、オリジナル設定が含まれておりますので、原作を大切にされている方はご注意ください。 | ||
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