夢の世界 |
――――――人は夢をみる。
誰もが寝ている間に見ている空想の世界。
例外で見ぬものも存在はするものだし、ましてやその夢が望んだものとも限らぬ存在。
その夢を、一人の少女はその夢を誰よりも楽しみにし、少女は夢を自由自在に見、操ることができた。
ある日、少女は夢で自分が今現在、夢を見ているということに気がつくことを体験し始めた。
最初は喜び、自分の食べたいものを出して食べたり、遊びたいおもちゃを出して遊んだり、ゲームをやったり。
どれもこれも自分の望みどおりの形で出てくるその夢は、まさに天国であり、自分だけの世界だった。
……けれどもそれも束の間というものか、少女は寂しく思い始めた。
どれだけ望むものを出せていても一人はあまりにも寂しい。
だから少女は”人”を望み、自分の世界に取り入れた。
一人でなくなった少女は喜び、話し合い、遊び、”自分が望む娯楽”を満たした。
時には相談したり、一緒にゲームをしたり、自分の世界で走り回ったり。
楽しい時間を過ごしている時、少女が生み出した人は突然、一つの提案をした。
「もっと人を増やして楽しもうよ!」
少女はもちろん賛成した。
二人だけでは少し飽きガチになっていたのもあるし、一人増やしたことでこんなに楽しいのなら、たくさん増やせばもっともっと楽しいのだとそう思い込んで。
少女は20人もの人を生み出した。
最初は楽しかったのだが、やがては問題が始まった、喧嘩を始めたのだ。
人数が増えてしまったのが原因で、お互いの意見が合わないことが起こり始めていた。
主な原因は遊び場の取り合いやゲームの取り合い、話の意見の食い違いと様々ある。
少女は一人一人に家と遊び場を提供することにした、そうすれば喧嘩が怒らないじゃないかと思い込んだ。
……けれども意外とそう望まぬ結果にはならないもので、たしかに喧嘩は起こらなくなったけれども誰もお互いに関わることがなくなってしまった。
今度に少女はルールを設けることにした。
お互いに会い、話しあったり、特定のメンバーで遊ぶ時間を設けたのだ。
もちろん一部、「面倒くさい」「一人がいい」との声もあったが、少女は無理を通してルールを付けた。
ある時、一人が提案をした。
「もっともっとたくさんの人を作って街を作ろうよ!」
同じゲームばかりやっていて飽きたのが原因で、新しいことをしようという提案の果てに生まれたのが「街を作る」という提案だった。
少女は建物を増やし、人を増やし、夢を広げた。
少女はいつしか、自分の望むことを忘れ、街を作り上げていくことのみを考えていくようになっていた。
街は大きく広がっていった。
家ができ、人が住み、店ができ、人の夢が生まれた。
……その夢も、全てが全て、綺麗な夢とは限らぬし、怖い夢もある。
ある少年は怪盗を夢見、人の物やお宝を盗んだ。
一部の子供からしたら夢のようだが、他の人から見てみたらなんとも酷い嫌がらせにしかならない。
ある男は殺人鬼を夢見、人を殺して他人の夢を奪っていった。
住民の一人が望み提案した。
「もっとルールを強くしてよ、これではみんなの夢が壊れてしまうよ!」
少女は強くルールを作った、お互いがお互いを壊してしまわぬよう、自分の街が壊れてしまわぬよう。
そうしていくうちに、人が増え、街が大きくなり、やがては大きな国が幾つもできた。
自分を中心とした国ももちろん、人々が自分の作ったルールの中に囚われながら廻り始めた。
少女は自分の国を見て喜んだ、こんなにも広い国を自分が作ったのだと。
……時は過ぎ、やがては大きな惨事が起きた。
国がお互いにルールを作り、他国と食い違い、それは争いとなっていった。
何度も、何度も止めようとした。しかし少女は止めようとも止まることはなかった。
それは自分の夢のはずなのに、それぞれの国やその国々にいる人々が持っている夢が勝り、全てを炎の海へと誘い始めた。
止めようと頑張りはしたが、止めが効かず、そして攻めることへためらいのある支持により自分の国は押され始め、やがては少女へ刃を向けられることになった。
少女は断頭台にて首をはねられることになる。
少女は死に際につぶやいた。
「この世界を作ったのは私よ、何故あなた達は私を殺すの? 自分たちの夢は私の夢よ、どうしてこんなことをするの」
人々はこう返した。
「どうしてこんな世界を作ったんだ! どうしてこんな夢を作った!」
少女は降ろされていく刃の中、一つ、振り返ってみた。
(私の夢ってなんだったのかしら……)
そうして、少女の小さくて大きな夢は壊れてしまった。
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オリジナル小説です。 | ||
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