緋弾のアリア 白銀の夜叉
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           第三話   三者の交渉 深まる疑問

 

 アリアに奴隷になれと言われた俺は驚きと共に苛立ちを感じていた。 こいつの事情を知ったからには放ってはおけないと思った俺が馬鹿だったぜ。 やっぱこいつはあいつを殺した奴を突き止めるために利用する奴だという事にしとくか。 キンジも呆然としている中、

 「ほら! 飲み物ぐらいさっさと出しなさいよ! 無礼な奴ね!」とアリアは言ってきた。

 無礼なのはてめえの方だろが。

 心の中で俺は毒づくがそんな事はお構い無しにアリアは訳の分からないコーヒーを注文してきた。 エスプレッソは分かるがルンゴやドッピオ、カンナの砂糖なんてどういうものかさえも分からねえ。 キンジが渋々インスタントコーヒーを持ってくるがアリアの反応は「これ本当にコーヒー?」である始末。 こいつインスタントコーヒーも知らねえのかよ、世間知らずだな。

 「今朝助けてくれた事には感謝してる。 それにその・・・お前を怒らせるような事を言ってしまった事は謝る。 でも、だからって何でここに押しかけてくる!?」とキンジは聞くが

 「分からないの?」とアリア。

 「分かるかよ」と更に言い返すキンジ。 そりゃ当たり前だろ。 初対面なんだから。

 「竜也はどう?」

 「俺は結構前からおめえの事については調べて知ってるぜ。 だがキンジが知らねえのは無理ねえだろ。 今日初めて会っただけなんだからよ」

 「竜也を見習いなさいよキンジ。 あんたならとっくに分かってると思ったのに。 普通初めて

会った相手でもどんな相手なのか調べるのが武偵のセオリーでしょ? でもそのうち思い当たるでしょ。 まあいいわ」

 よくねえよ。 初対面の奴の事をいちいち調べてたら時間がどれだけあっても足りねえだろが。

 「おなか空いた。 何か食べ物無いの?」とアリアは急に話題を変える。 人様に食い物の出させるなよ。 ここは庶民社会なんだから貴族社会の事は何一つ通用しねえよ。

 「ねーよ」

 「無いわけないでしょ。 あんた普段何食べてんのよ」

 「食い物はいつも下のコンビニで買ってる」と問答するキンジとアリア。

 ええ、キンジの奴いつもコンビニ弁当かよ。 栄養のバランスが悪くなって闘いに響くぞ。

 そしてアリアはもう夕食の時間だから食べ物買いに行くと言った。 こいつ人の家で飯を食う気かよ。 キンジの奴早く帰って欲しそうな面してんな。

 「ああ、それと・・・ねえ、そこに松本屋の『ももまん』売ってる? あたし食べたいな」

 キンジはありえないという顔をしてる。 確かにな・・・・・

 

 

 俺の分は自炊すると言って金を渡してパックのご飯を自分達の物と一緒に買ってもらうことにして俺はキッチンに入り豚肉を入れた野菜炒めを作りちょうどできた頃にキンジ達が帰ってきた。 キンジはハンバーグ弁当、アリアはうわさのももまんをなんと七つも買った上にすでに五つ目まで平らげていた。 そんなにうまいのか? ま、好物は別腹(べつばら)って言葉もあるし気にするのはやめとくか。

 「神崎!」とキンジは早く帰れという意味を込めて強い口調で言うが

 「アリアでいいわよ」とスルーされる。

 「じゃアリア。 そもそも奴隷って何だよ。 どういう意味だ」

 「強襲科(アサルト)であたしのパーティに入りなさい。 そこで一緒に武偵活動をするの」

 俺はこいつがさっきの奴隷って言葉を取り消すならいつでも入ってやるかと思った。 だが

 「ハァ? 何言ってんだ。 俺は強襲科が嫌で、武偵高で一番マトモな探偵科(インケスタ)に転科したんだぞ。 それにこの学校からも、一般の高校に転校しようと思ってる。 武偵自体辞めるつもりなんだ。 それを、よりによって日常的に死ね死ね言うトチ狂った所に戻るなんて、無理だ」とキンジ。

 ちょっとイラッとするな。 確かに日常的に死ね死ね言われるのは俺も嫌だがそれ程悪く言うこたねえだろ。 にしてもこいつ、武偵を辞めるのか。 あんな力があるのに・・・ ん? さっきから気になってたが今のこいつには朝のような雰囲気が感じられねえな。 こいつ本当に強いのか? そんな俺の疑問も嫌がるキンジなどどこ吹く風というように

 「あたしには嫌いな言葉が三つあるわ」

 「聞けよ人の話!」

 「『無理』『疲れた』『面倒くさい』。 この三つは、人間の持つ無限の可能性を自ら押し留める良くない言葉。 あたしの前では二度と言わないこと。 いいわね!」とアリアは一方的に言って一方的に話を打ち切った。 さらに

 「キンジと竜也のポジションはーーそうね、あたしと一緒にフロントがいいわ」と勝手にポジションまで決めやがった。 ちなみにフロントとは戦国時代の合戦で言う先陣にあたる。 負傷率がダントツだが俺にしてみりゃ真正面から敵にぶち当たれるから問題ねえ。

 「よくない! そもそもなんで俺なんだ!?」とキンジはさらに拒絶するが

 「太陽はなんで昇る? 月は何故輝く?」と関係のない事を話すアリア。

 「キンジは質問ばっかの子供みたい。 仮にも武偵なら自分で情報を集めて推理しなさいよね」と呆れた口調で言うアリア。

 子供みたいなてめえに言われたかねえよと心の中だけで言う。 そういうてめえはキンジがそこまで武偵を拒絶して辞めたがる訳を調べるんだろうな。 だがキンジは調べねえと思うな。 今日限りでもう会いたくはないみてえだから。

 「とにかくだ! 二人とも帰ってくれ! 俺は一人でいたいんだよ!」とさっきよりも強い口調で言うキンジ。 

 俺は邪魔したなとだけ言い残して玄関に向かうがアリアはまあそのうちねと聞く耳無し。 

 「そのうちっていつだよ」

 「あんた達が強襲科であたしのパーティに入るって言うまでよ」

 「俺はてめえが奴隷って言葉を取り消したらいつでも入ってやるぜ」

 「じゃあ竜也って奴だけで組んでくれ! 絶対に俺は入らねえ!」

 「あたしにはもう時間が無いのよ。 もし探してたのがあんた達だとすれば・・・」 そこまで言うとアリアは顔をわずかに曇らせる。 ああ、アリアのお袋のことか。 すぐにアリアは表情を元に戻して俺たちを睨み

 「とにかく! パーティには二人とも何が何でも入ってもらうわ。 うんと言わないならーー」

 「言わねーよ。 ならどうするつもりだ。 やってみろ」

 「言わないなら、泊まっていくから」

 え!? 男子寮に女が泊まるのか!? なんつーこと考えてんだよ。 そこまでして、俺はともかくさっき見ただけ本当の実力も分からねえキンジをパーティーに入れるつもりかよ。 アリアは朝の体育倉庫のやつでキンジに目をつけたんだろうけど今のキンジの様子を良く見てちっとは疑いを持たねえのかよ。 

 「ちょ、ちょっと待て! 何言ってんだ! 絶対駄目だ! 今すぐ帰れ!」

 「うるさい! 泊まってくったら泊まってくから! 長期戦になる事も想定済みよ! 言っとくけど竜也。 あたしは奴隷って言葉、取り消す気は無いから」と互いに問答するキンジとアリア。

 俺はムカッとして「じゃあ朝言った決闘で俺が勝ったら奴隷って言葉を取り消すって事でどうだ?」と提案し、アリアが承諾したので俺はキンジの部屋を出た。 そして自分の寮に帰ろうとするが急にキンジが部屋から出てきた。 何があったと聞いたら、

「急にアリアが出てけとか頭冷やせとか言って追い出したんだ。 俺のセリフだぞ」と愚痴を聞かされた。 確かにな。 じゃあほとぼりが冷めるまで俺の部屋来いよと誘った。 強襲科寮なのでキンジは嫌がったが一人部屋だから安心しろと言ったら渋々了承した。 俺は部屋に帰るとシャワーを浴びて手縫いの赤い水干形の防弾・防刃・防火和服に着替えた。 まあ犬夜叉の着ている火鼠(ひねずみ)の衣と同じ色と形をしているとだけ言っておこう。 これは武偵高の防弾制服よりも防弾性が高く装甲貫通弾(アーマーピアス)でも簡単には貫けないし2000℃の炎からも着ている者を守れる優れものだ。 それに制服の時も腰に差している本来天草宗家の人間に受け継がれる予定だが俺が受け継いだ事で天草家から疎まれる原因となった刀、これも犬夜叉と同じ鉄砕牙と勝手に呼んでる神の愛『DIA AMO』を腰に差し直す。 こうしていると何故か落ち着くんだよな。 ずっと昔からそうしてるみたいで。 何だよその格好とキンジにジト目で言われたが気にするなと言い、何故武偵を辞めたいのか聞いたが

 「そんな事はお前に関係ないだろ!! お前からも言ってくれよ! 俺は武偵を辞めるんだ! あんなトチ狂った所に戻ってあんな訳の分からねー奴と一緒に武偵活動なんてしたくないんだ! 俺はこのまま一人でいて三月に武偵を辞めて一般高に転校したいんだよ!」と激しい口調で言い返される。

 そんなキンジの様子になんか気まずさを感じてもう聞かない。 漫画でも読んで時間潰せと言った。 言われたキンジは一冊漫画を取り出して読んでいたように見えたがあるページにきた時に本を閉じた。 何かまずいものでも書いてあったのか? キンジが閉じた本を見るとタイトルは『犬夜叉』だった。 犬夜叉って名前に何故か懐かしいような感じがするが、キンジが閉じたページを見る。 するとそこは犬夜叉の仲間の一人の弥勒が同じく犬夜叉の仲間の珊瑚に

 「もし、奈落との闘いが終って、風穴の呪いが解けて、私が生きていたら・・・その時は私と共に生き・・・私の子を産んではくれぬか」とプロポーズするシーンだった。 俺は犬夜叉以外の登場人物、特に日暮かごめと桔梗に懐かしいような感じが強い。 最近は懐かしさを顕著に感じるようになってきた。 それは置いといてなぜキンジは目を背けたんだ? 結構いいシーンじゃねえか。 こいつもアリアと同じように恋愛なんてくだらねえと思ってんのか? かなり気恥ずかしいが、それ程悪いもんじゃねえぞ。 考えているうちにキンジは部屋から出て行った。

 

説明
恋人を失い、誰も信じられなくなった主人公がアリアたちとのふれあいで本当の強さを得ていく。
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緋弾のアリア 犬夜叉(技・主人公の容姿・境遇) 

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