ポケモンになってしまった俺物語 1 |
(……強く、強くなろう。負けないためにも、捕獲されないためにも、自分が自分でい続けるためにも)
……なんて決意したものの、そう一日や二日で強くなんてなれるものじゃない。
力とは飽くなき努力とか、弛まぬ情熱とか、そういうものを含んだスポ根的特訓に励んだりして、汗水たらしながらも艱難辛苦を乗り越えてようやく手に入れることのできるもの(若干偏見あり)。
それは摩訶不思議パワーで満ち溢れるポケモン世界だって同じこと。
むしろ、こういう世界だからこそ努力すればするほど伸びていくというものだろう。
アニメのサトシ君のピカチュウだって……まぁ、若干桁が違うとは思うけど。
初期の力がぜってぇ初心者用ポケモンの域を逸脱してるもん。
漫画のレッドが持っているピカチュウは……うん、あれもある意味サトシ君のピカチュウ以上のチートポケモンかもね。
なに、“100万ボルト”って? ピカチュウ一匹の力じゃないにしてもあれは伝説レベルの力だろ? 一ピカチュウが使っていいような技じゃないってjk。
……それでも自然現象で起きる雷と比べるとかなり低いボルト数らしいけど。
ん? となるとポケモンが使う“かみなり”って一体どれだけのボルト数があるんだろう?
かりにも“かみなり”なんだし、かなり高いのは当たり前として……あれ、もしかしてボルト数で言うと“100万ボルト”は、超えてたり?
うぅん、そこら辺がどことなく曖昧なんだよなぁ、この世界って。
……おっと、どんどん話が脱線してるな。
ここで話を元に戻すが、まぁ、そんなチートキャラ的存在の奴らだってなんだかんだと、かなりの努力をしていたようだし。
実際にサトシ君やピカチュウは強くなることに精力的で、事あるごとに特訓に特訓を繰り返していた。
あそこまで強くなったのには確かに才能もあったのだろう、かといってその才能に胡坐をかくことなくさらなる特訓に励んだ結果があの力なのだろう。
それを知っているだけに同じピカチュウとして、物語とかではよくある才能の差による下手な嫉妬心を抱くことも今の所ないようだ。
とりあえず、俺が今後強くなるために特訓するにあたり、まずは自分の今の力を知らないことには何をどうしたらいいかもわからない。
今現在、俺がどんな技をどの程度の威力で使えるのかを調べてみる必要がある。
◆◆◆◆◆◆
<電力測定>
……と、いうわけで、まずピカチュウと言ったら電気タイプ。
電気タイプの初歩って言ったら“電気ショック”でしょう。
そこで俺は、手近にあった木目がけて電気ショックを放った。
『……はっ!』
……放った
『……ほっ!』
……放とうとした
『……ふぬぅぅぅぅ!!!!』
………放てなかった(三段活用?)
手を目標の気に向けて伸ばし、力んで声を上げるも電撃のでの字も発生することなくそこには虚しい空気が漂う。
遠くから聞こえるポッポの鳴き声がどこか俺をバカにしているようにも聞こえ、腹立たしさ以上にどこか無性に恥ずかしくなってくる。
(……はぁ。てか、今更だけど……どうやって“電気ショック”なんて出すんだ?)
本当に今更な話だが、まずそこからわからない。
そもそも俺は今まで人間で、突然ピカチュウになってしまったのだ。
まだこの体のこと何も知らないのに、いきなり力を使おうにも使えるはずもないか。
いろんな二次創作では、転生憑依したオリ主たちが何の不都合もなく普通にその体が持っている技を使っているからもしかしたらって思ってしまったが、どうやらそれは無いらしい
まぁ、どうやら今俺には、憑依する前のこの体の記憶ないようだし、それもしょうがないと思える。
頭で覚えてなくても体で覚えてるものじゃないのかって?
俺もそう思ってたんだけど、それがそうでもないらしい。
理由? そんなの今現在俺が使えないからという以外にないだろう?
他の作品じゃオリ主がいろいろ考えて考察とかあるかもしれないけど、はっきり言って俺にそんなの期待するのは損ってものだぞ?
残念ながら俺はそこまで頭の回転がいい方じゃないし、どっちかっていうと頭で考えるより感覚で覚えてきた派だ!
ゲームだって説明書なんて読まないね! 実践して覚える派だもんね!
……なんかまた脱線した気がするが、まぁいい、本題に戻ろう。
最初にどのようにして電気を使うことができるか、いやそれ以前に自分の中の電気の力を感じ取ることからか。
こんな時に役に立つのがアニメ知識というか漫画知識というか。
以前見たポケモン図鑑の情報を記憶の中から探り出す。
(えぇと、確かピカチュウは両方の頬に電気袋というものがあり、そこから電気を放出したりするんだったっけ?)
それを思い出し、両方の頬を手でプニプニと弄る。
……何気に気持ちいいな。
そういえばアニメで「ピカチュウは頬に電気袋がありそれをいつも使うから頬が疲れやすいので、時々マッサージをしてやるといい」とタケシが初めのころに憧れていたらしいポケモンブリーダーの女性が言っていた気がする。
それを思い出しながら、電気袋を意識しながら頬を弄っていると、パチパチと頬を電気が僅かに流れるような感覚を覚えた。
(ん、これか?)
これが自分の体にある電気を感じたというものだろうか。
一旦マッサージを止め、その感覚を思い出しながら頬に意識を向けていく。
すると、さっきまではわからなかったが、そこに先ほど体感した感覚と同じものを感じる。
(……これなら、いけるか?)
電気袋から電気を外に放出するイメージを持ち、先ほどと同じように木に向けて“電気ショック”を放った。
すると、先ほどは何も起こらなかったというのに、今度は頬から電気が放出され、電撃となり目標の木に向かって飛んで行き……目標よりかなり下の方ではあったが確かにあたった。
(……あぁ、なるほど。これが電気を使うという感覚か)
自分の体を電気がはしるわけだから、何かしら体に刺激のようなものがあるのではと思っていたが、特にそのようなものはなく電撃を飛ばすことができた。
確かコミックか何かで、ポケモンの技をポケモンが受けるとダメージを受けるか特殊効果に陥るかでしばらくすれば自然に、または治療すれば治るが、人間が受けると副作用が起きることもあり下手をすれば一生治らないことにもなりえるとか、そんなことを言っていたような気がする。
俺はその時ダメージ故にと思っていたけど、もしかしたらポケモンの放つ火や水や雷や氷とかって自然で存在するものとは違う、なにか別のエネルギーによってできているものなのかもしれない。
だとしたら、自分が放つエネルギーによって作られたものだから、自分の体に影響はないということにも、とりあえずはうなずける。
……まぁ、それがわかったからどうした、ということもないわけだけど。
電撃の当たったところを見てみると、その部分が少し焦げているのがわかった。
まだ力に慣れていないからかもしれないが、あまりにも予想していたものより威力が低かったことに少なからず残念に思ってしまう。
が、それは比べる対象が悪かったとしか言えないだろう。
俺が比べる対象にしていたのは、先ほど考えていたサトシやレッドのピカチュウだったからだ。
他にもいろいろとピカチュウは出てきたが、俺が覚えているピカチュウはだいたい似たり寄ったりの電撃の威力を持っている気がするため、どのピカチュウを対象にしても同じだろう。
……まぁ、流石にやっと力を使うことができるようになっただけの俺が、あのピカチュウ達と比べること自体間違いだったか、と少し反省をする。
(“電気ショック”は、とりあえずできたけど命中率も威力も低い。“電気ショック”でここれじゃ“10万ボルト”も“かみなり”も覚えるのに苦労しそうだな。これは要練習だな)
電気技が俺の技の要になるだけに、練習の大半は力の制御にあてなくては、そう考えつつ自分がさっき電撃を当てたところを火事にならないようにと土を念入りにこすり付けておいた。
<体力測定>
さて、次に俺自身の身体能力がどれほどのものかだな。
電気技だけで勝てるほどこの世界は甘くはない。
いろんな技を駆使し相手を翻弄し、決めに電気技を持っていくというのが妥当だろう。
そしてピカチュウで電気以外にも特徴的なもの、それは素早さだ。
アニメとかでも、よくそのスピードをもって相手を翻弄しているところが見られた。
(……ってなわけで、ちょっくら走って来るか)
・
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……走り終えて分かったこと。
まず、人間の時に学校で体育の時間でやっていた50m走を行った。
大体の距離のところに目印をつけ、そこを目指して全力疾走……したのだが、これもおよそのタイムなのだが、なんと
……10秒前後
(……いや、おかしいだろ? なんで50mを10秒前後!?
人間の平均より遅いってどんだけ!? 100mを走ってんじゃないんだよ!?
いや、かりに100mだとしてもそれは人間のレベルでそれなりにすごいってレベルだよね!?
仮にも俺ポケモンだよ!? 素早さで定評のあるピカチュウだよ!?
流石にこれはないだろ、こんなスピードじゃそこらにいる野生ポケモンに出会っただけでフルボッコだよ!?
いくら電気使えるって言ったって相手の攻撃喰らいっぱなしだったらピカチュウじゃ即ノックダウン確実だよ!)
トレーナー相手にどうこう以前に野生でも生きていけるかわからないという状況に目の前が真っ暗になりそうになった。
流石にこれは何とかしなくては、そう思って考えてみると、ふと思い出したことがある。
(そういえば、ピカチュウって二本足でも歩けるけど、基本走るときって4本足だったっけ)
そう、俺は体はピカチュウでも中身は人間、人間の時の癖で2本足で走っていたのだ。
これじゃいくら早さに定評のあるピカチュウでも早く走ることはできないだろう。
だってピカチュウの足、短いんだよ? いくら頑張って走ったってたかが知れるというものだ。
本来4本足で走るポケモンが二本足で走るなんてなんていう暴挙だよ、これじゃ速く走ることなんてできなくて当然だ。
まぁ、ロケット団のニャースという前例がいるにいるが、別にニャースみたいにわざわざ二本足じゃなくてはいけない理由なんて俺にはない。
……てか、そう考えてみるとニャースってかなりすごい?
と、いうわけで今度は4本足で50mを走ってみた。
すると、4本足という今までとは違う走り方で違和感とかがあるにはあるのだが、それでもおよそ5秒ほどで走ることができた。
体の記憶がないとはいっても、もともとの体のつくりが4本足で走るようにできているのだ、違和感があろうとも2本足の時より早く走れるのは当たり前か。
4本足で走ることに慣れていき、この違和感を取り払うことができればさらに早く走ることができるようになるだろう。
<結果>
今まで行ってきた測定の結果から、俺のこれからしばらくのトレーニングメニューは、自らの電気能力を制御することと、このピカチュウという体での動作に慣れることに決まった。
今のままでは弱くても電撃が使えるといっても、まず相手にあてることができずそこらにいるようなポケモンにもほぼ高確率で負けてしまうことは目に見えている。
(……やっぱり、強くなることは簡単じゃないな)
説明 | ||
1話です。 一話一話じっくりやっていこうと思っているので進行的には遅くじれったくなってしまうかもしれませんがどうかご容赦を。 ……といいつつ、時たま、またはかなりの頻度で過程が省略されてたり、一気に場面が飛んでしまうこともあるかもしれませんが、そこは私の力不足ゆえに表現しにくいまたは内容が思い浮かばなかったためと理解していただければと。 こんな作者ですが、どうぞ今後ともよろしくおねがいします。 |
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