天馬†行空 十四話目 同じ瞳
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「――以上が陣割だ。各員の奮闘に期待する」

 

「私と一刀が右翼、玄徳殿達が左翼か……お三方、よろしく頼むぞ?」

 

「承った。我が力、とくとご((覧|ろう))じろ」

 

「鈴々に任せるのだ!」

 

「うん、私も頑張るよ!」

 

 星の言葉に静かな口調で応える雲長さん。

 翼徳さんと玄徳さんもやる気満々だ。

 

「で、作戦なんだが……北郷、頼む」

 

「了解です。えっと、今回の戦は((鶴翼|かくよく))の陣形で臨みます。左翼、右翼は賊と接敵した際、合図があるまでその場に留まって戦闘を行って下さい」

 

「失礼。北郷殿、少しよろしいか? 鶴翼の陣は本来、敵軍が両翼の間に入った時点で包むように動くもの……であるのにその場に留まるとはどのような意図があってのことか説明して頂きたいのですが」

 

 伯珪さんに促され作戦の説明を始めると、雲長さんが怪訝そうに質問をしてきた。

 そちらを見ると玄徳さんも翼徳さんも不思議そうな顔をしている。

 

「いい質問です雲長さん、ですがそれに答える前に今回の討伐の目的について説明しましょう」

 

「え? 目的って……皆を苦しめてる賊を討伐する事じゃないの? 北郷さん」

 

「はい玄徳さん。確かに賊を殲滅する事もですが、今回の討伐の目的は伯珪さんの力を内外に示し、今後賊の発生を抑止し、更に他県からの賊の流入を防ぐ事にあります」

 

 こてん、と小首を傾げる玄徳さんに説明する。とは言え、賊の討伐というのは概ねそういった側面を持つのだけれど。

 

「ですので今回の戦では義勇兵の活躍も勿論ですが、伯珪さんの((白馬義従|はくばぎじゅう))の強さを特に印象付ける必要があるのです」

 

 白馬義従というのは伯珪さん直属で((騎射|きしゃ))(馬上で弓を射る事)が出来る人達を選りすぐり白馬に乗せた部隊の事で、北方の異民族からは恐れられているそうだ。

 

「付け加えるなら、伯珪殿がただの賊を相手にしても有効な策を講じて対処できる人物であると天下に知らしめる意味合いもあるな」

 

「いや子龍、天下は言いすぎだろ」

 

「おや? では伯珪殿は((此度|こたび))の戦、勝つ自信が無いと?」

 

「――そんなわけあるか! お前達とあれだけ話し合って決めた作戦だ、必ず勝つ!」

 

「ならば問題無いではありませぬか。結果は自ずと天下に知れ渡りましょう」

 

 伯珪さんを煽りながらこちらに目配せする星に頷く。

 

「えー、説明を続けますね。現在こちらに向かっている集団は、北平一帯に巣食う主な賊徒が集結したもので数は五千」

 

 一旦言葉を切り、皆の顔を見ると一斉に誰もが頷く。

 

「再確認になりますが、こちらは正規兵と義勇兵が半々の混成部隊三千」

 

 再び皆が頷いた。言葉を続ける。

 

「今までの討伐戦では逃走を繰り返していた賊徒ですが、今回は逃げる可能性は低いかと思われます」

 

「それは、((何故|なにゆえ))?」

 

 視線の先に金の瞳。

 先程とは違い、話の先を促す雲長さんの質問だ。

 

「はい雲長さん、それですが――」

 

 

 

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 実は伯珪さんが義勇兵を募った時点で策の土台は八割方出来上がっていた。

 今までの賊討伐では正規兵のみで事に当たっていた伯珪さんが北平のあちらこちらに高札を立てて大々的に募集を行ったのだから、賊に苦しめられていた民、そして賊徒は太守がいよいよ本腰を入れたのだと思っただろう。

 

 『策』とはこの状況に乗じただけのものだ。

 俺が人手を伝って伯珪さんの本気が感じられるような噂を拡散させる。

 星が少数の部隊を率いて賊のねぐら付近を頻繁に偵察する……攻撃は一切せずに。

 伯珪さんに意見を求められた翌日から行われた賊の不安を煽る為のこれらの行動は功を奏し、一昨日、賊徒の集団を一所に結集させる事に成功。

 一個の集団ならば千にも届かぬ彼等が、((一塊|ひとかたまり))となり今やこちら以上の数に膨れ上がった。

 

 ならば賊徒はどう思うだろうか?

 今までの討伐を掻い潜って生き延びた連中だ、数さえ揃えば「討伐軍なにするものぞ!」と慢心する公算が高い。

 

 ――協力し合った事もなく、ただ自分達の利益しか考えないごろつき達が集まったところで組織化された連携など取れよう筈も無い事に気付かぬまま。

 

 

「成る程……しかし北郷殿、であるならばなおのこと早めの包囲殲滅を為すべきでは?」

 

 そこまで語ると、凛とした声で疑問が投げかけられた。

 

「こちらより数が上とは言え、元が臆病な連中です。いきなり包囲すれば逃げ道を作ろうと必死になるでしょう、それではこちらの損害も多くなります」

 

「あ! そっか、囲むのをわざと遅らせて相手に『まだ行ける』って余裕を持たせておくんだね?」

 

「その通りです、玄徳さん」

 

 ぽむ、と手を叩く玄徳さん……雲長さんもだけど、結構聞き上手な人だな。

 

「わざと包囲しないことで敵主力を速やかに両翼の中に入れる訳ですか。……奴等の意識を正面だけに向けさせない為ですね?」

 

「はい雲長さん、退路がいつ断たれるか……それを常に意識させておきたいですから」

 

「後ろばっか気にしてたら全力で戦えないのだ。北郷のお兄ちゃん、結構お((歯黒|はぐろ))いのだ!」

 

「あ、あはは。鈴々ちゃん、それって腹黒いの間違いじゃ……」

 

「そうとも言うのだ!」

 

 いや、そうとしか言わない。

 ……そして玄徳さん、そこは否定して欲しかった。

 

「一刀が腹黒いのはさて置き、この作戦では伯珪殿に敵主力が集中し過ぎぬよう合図までの間、左翼と右翼の奮闘が求められる」

 

「敵中央の兵を出来るだけ両翼の援護に回させ、頃合を見計らって伯珪さんの部隊が仕掛けます。……それと星、後で話――」

 

「――では伯珪殿、早速準備に取り掛かりましょうか。私はお先に!」

 

「――があるんだけど、って! こら待て星っ!」

 

 突っ込みを言い切る前に脱兎の如く走り去る星……ぅおのれ、最近逃走速度に磨きがかかってやがる。

 

「……大変だなー、北郷」

 

「……ははは。まあ、いつもの事ですよ。じゃあ俺も準備に取り掛かりますね」

 

「頼む。私もすぐに行くから」

 

「((白蓮|ぱいれん))ちゃん、私達も何か手伝えないかな?」

 

「ああ、それなら――」

 

 伯珪さん達の声を背に兵舎へと走る。

 ――さて、さくさく準備しないとな。

 

 

 

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 ――しばらくして

 

「――大陸の情勢が混迷を深め、皆の心に危機感が表れて来ているということでしょう」

 

「ふむ……。確かに最近では大陸の各地で匪賊共が跋扈しているからな」

 

「いったいこの国はどうなっていくのだ……」

 

「民の為、庶人の為……間違った方向には――む?」

 

「伯珪さんお待たせしました! 追加分の物資、配備完了です!」

 

「ありがとう北郷! 助かったよ!」

 

 城門前に整列する兵を前に感想を口にする劉備達。

 星は乱世を憂う三人の言葉から、彼女達の内に宿る真摯な心を感じ取っていた。

 ここにも同志が居たのか……己が志を語ろうとした時、整列している兵達の最後方から走って来た少年の声が響いてそちらに顔を向ける。

 

「ん? 伯珪殿、一刀、追加とは?」

 

「うん、戦支度をしていた時に街の商人さん達から武器と具足の支援があってね」

 

「それで、さっきまで北郷に振り分けをしてもらってたんだ」

 

 急いで走って来たらしく額に浮かぶ汗を拭いながら一刀はそう言うと、満足そうに笑顔を浮かべた。

 

「これは幸先が良いですね」

 

「これで皆も戦いやすくなるのだ!」

 

「白蓮ちゃん、皆に愛されてるんだね!」

 

「やめろよ桃香! こっぱずかしいだろ!!」

 

「いや伯珪さん、玄徳さんの言う通りですよ? ほら、その証拠に商人さん達から激励の手紙も一緒に預かって――」

 

「北郷!? いや、あ、後で見るから! ……もう準備も終わってるし出陣するぞ!!」

 

「ふむ、嬉しい、と素直に口にされてもよいでしょうに」

 

 早口でそう言うと、耳まで真っ赤にして居並ぶ兵の前へと駆けて行く伯珪の姿に、星の口元には優しげな笑みが浮かんでいた。

 

 

 

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「諸君っ! いよいよ出陣の時が来た!」

 

 厳粛な空気の中、軍の先頭に立つ伯珪さんの声が響き渡る。

 

「今まで幾度となく退治しながら、いつも逃走を続けてきた匪賊共! 今日こそは殲滅してくれよう!」

 

 拳を握り締め、天へと突き上げる伯珪さん。

 その熱意が伝わったのか、周りにいる兵の皆も顔を紅潮させて武者震いをしている。

 

「公孫の勇者たちよ! 今こそが功名の好機ぞ! 遠慮は要らぬ! 各々、存分に手柄をたてぃ!」

 

『うぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーっ!』

 

 三千人が上げる((鬨|とき))の声が大地を揺るがす。

 満足そうにそれを聞いていた伯珪さんはおもむろに剣を抜くと、

 

「出陣だ!」

 

 高々と掲げ、出陣の号令を出した。

 

 ――いよいよだ。

 震えだす体とは裏腹に、心は不思議と静かだ。

 見渡す限り、目に映る光景も心なしかいつもより広く感じる。

 

(よし……これなら、いける!!)

 

 身体の震えを抑えるように強く、強く拳を握りこむ。

 ――俺の前には星が居る……なら、何も迷う事はないはずだ。

 意気揚々と城門から出発する兵士達と共に、俺は星と並んで移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

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(――そろそろか?)

 

「雲長様、合図です!」

 

 開戦からここまでおよそ三刻(約四十五分)、纏わり付くように攻め寄せて来ていた賊徒の勢いが弱り始めた頃。

 ぴたりと計ったように伝えられたその報に、愛紗は愛刀を握る手に力を篭め、眼前の賊徒をまとめて薙ぎ払った。

 

「よし! 関羽隊、前進せよ!!」

 

『おおおおおおおおっ!!!』

 

 雄叫びを上げて敵右翼に斬り込んで行く義勇兵の姿を見、次いで味方右翼、本陣と素早く視線を走らせた彼女はこの戦――戦とすら呼べないほど一方的なものだが――が既に決している事に気付く。

 目の前の敵部隊は恐慌をきたす寸前ながら、突破した(ように見えた)味方が公孫賛殿の隊を((降|くだ))すと思っているのかもしれない。

 先程、敵中央よりこちらに来たおよそ二百前後の騎馬隊の援護も彼等を踏み止まらせている一因だろう、彼女はそう((中|あた))りを付ける。

 

 ――だが。

 

「はあああああぁっっ!!!」

 

 どかっ!!!

 

「ぎゃああああーーっ!!」

 

 足元まで届く長い黒髪を躍らせ、彼女は指揮を執っていた男の((下|もと))まで((一足飛|いっそくと))びに距離を詰めると真っ向から((幹竹割|からたけわ))りにした。

 

「鈴々っ!!」

 

「応なのだ!!」

 

 偃月刀を振り下ろした姿勢のまま、間を置かず彼女は義妹の名を叫ぶ。

 果たして、声を上げた彼女の脇を小柄な影が駆け抜けていった。

 見慣れた赤毛の頭を認め、僅かに口元を緩めると愛紗はこちらの部隊と同じく――いや、それよりも早くに動き出していた味方右翼に再度目をやる。

 

 ――合図と同時に一気に包囲を完成させる――

 

 それがあの少年の語った作戦だ。

 

(流石は発案者と言ったところか、速い!)

 

 右翼はいつの間にか敵左翼を陣の内側へ誘導していたようだ。今は隊が二つに別れ、挟み込むように攻勢を掛けている。

 その動きに少し遅れて、義妹の率いる小隊は敵右翼の外側から被さるように突撃していく。

 

 ――そして中央。

 

「あれが音に聞こえし白馬義従か…………凄まじいな」

 

 今まさに、陣の中央、鶴の頭に相当する白い騎馬隊がその((嘴|くちばし))を賊徒に突き刺していた。

 馬を疾駆させながらの((驟雨|しゅうう))の如き騎射、接敵した際の突破力、馬首の返しの早さ、そのいずれもが庶人の口に上る噂通りの……いやそれ以上のものだ。

 賊徒は一連の攻勢の中で頭を討たれたらしく、目に見えて動きが鈍ってゆく。

 逃走しようとする者はあれど、既に包囲は完成しており右往左往するばかり。

 

 

 そして、戦が始まってから一時辰(約二時間)。賊徒は完全に討ち果たされたのだった。

 

 

 

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 緊張したのは開戦前までで、始まってしまえば俺も義勇兵の皆も腹が据わったのか迅速に行動を取れた。

 俺は――えっと交趾の時から数えて――五回目と言う事もあり割と早く落ち着けたのだけれども、凄かったのは義勇兵の皆がちゃんと指示について来られた事だ。

 そのあたりを聞いてみると、星にみっちりしごかれたとの事で「きつかったけど、そのお陰で生き残れましたわ」と、苦笑交じりに頭を掻くおじさんの言葉に俺は納得した。

 

 玄徳さん達の方もちらちらと見ていたけど三人とも……特に雲長さんと翼徳さんは本当に初陣(兵を率いるという意味で)かと首をひねってしまう程の戦いぶりだった。

 雲長さんは彼女自身の武も((然|さ))る事ながら兵の皆を上手い位置に誘導しながら戦っていたし、翼徳さんはあの長い矛を活かす為か先ず一人で突っ込んで行き、討ち漏らした敵を後ろから続く彼女の隊が止めを刺していく、というパターンで戦っていた。

 正直、凄まじいとしか言いようがない。流石はこの時代でトップクラスの武将だと思う。

 玄徳さんは二人とは違い前線には出なかったものの、前の二人の隊の様子をしっかりと見ていて、怪我人が出るとすぐに後送できる態勢を取っていた。

 星はいつも通りの全く危なげない戦い方だったし、伯珪さんの白馬義従も電光石火の大活躍。

 

「おっ、北郷もご苦労さん! 完全なる勝利、だったな。いやぁ、良かった良かった〜」

 

 考え事をしながら歩いていると、後ろから声を掛けられた。

 振り返ると満面の笑みを浮かべた伯珪さんが軽い足取りでこちらに歩いて来る。

 お、他の皆もこっちに歩いて来るみたいだ。

 

「やったね白蓮ちゃん。よっ、さすがっ!」

 

「いやいや。桃香達の力があってこそだよ。ありがとうな」

 

「えへへ、そう言って貰えると嬉しいな」

 

 旧友同士と言う事もあってか和やかな雰囲気で言葉を交わす伯珪さんと玄徳さん。

 その二人とは別に、

 

「しかし……一刀、伯珪殿。最近、何やらおかしな雰囲気を感じないか?」

 

 星が空を睨みつけながらこちらに問い掛ける。

 

「おかしな雰囲気……? どうだろう。私は特に感じたことは無いけど」

 

「と言われても、ここに来てからまだ二週間しか経ってないし…………そうだな……賊の数が多い、ぐらいしか思いつかないかな」

 

 以前交趾に押し寄せた賊でも三百前後、揚州を荒らし回る山越賊でも、多いもので一度に五百前後だった筈。

 あくまで南での、しかも見聞きした情報から判断した俺の基準でしかないが、そこから考えても五千という数は多い。

 これはやっぱり……

 

「北郷殿の言われることは尤もかと。最近は特に匪賊共の動きが活発化しているように感じます」

 

 アレの前触れかも、と考えていると雲長さんが真剣な表情でポツリと呟いた。

 

「雲長殿、お主もそう思うのか……」

 

 どうやら星も同じことを考えていたようで雲長さんの言葉に頷く。

 

「ああ。ここしばらく、匪賊共は増加の一方だ。その者共が街や村を襲い、人を殺して財貨を奪う。……その所為で、地方ではすでに飢饉の兆候すら出ている」

 

「収穫した作物や、いざという時の蓄えを奪われたりするんだから、当然飢饉も起こっちゃうのだ……」

 

 翼徳さんが俯きながら((辛|つら))そうに呟いた。

 

「うむ。それと共に、((西涼|せいりょう))や((遼東|りょうとう))では国境周辺で五胡の影もちらついているという。……何かが起ころうとしている。そう思えるな」

 

「それらが大きな動乱に繋がるかもしれん、か……」

 

「恐らくは……いや、必ず起こると思う」

 

 五胡よりも先に、この国の中から……。

 

「一刀もそう思うか?」

 

「うん。賊だけじゃない。いつか、暴政に対しての爆発が起こるだろうね……きっと」

 

 星に頷く。『三国志』を思い返すまでも無い。

 劉焉の行動、山越の活発化、頴川での県丞の反乱。

 思いつくだけでも乱世の兆候は既に表れている。

 

 ――『大きな乱』が治まった後にでも――

 

 ……別れ際の風さんの言葉を思い出す。

 もう、『黄巾の乱』はすぐそこまで迫っているのかもしれない。

 

 

 

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「……乱が起これば、巻き込まれるのは((無辜|むこ))の民、か」

 

 再び空を見上げ、拳を握り締める星。

 

「この国の行く末……間違った方向には行かせはしない、この私がな」

 

 深紅の瞳に宿る真摯な光。雲南での参戦を決めた時にも見たあの輝きだ。

 

「と言っても……現状、今回の討伐で漏れた残党とかを一掃するのが先だろうね」

 

 北平の主な賊の集団を討伐出来た訳だが、綺麗さっぱりとは当然行かない訳で……。

 

「今回の勝ち戦が近隣の街や村に伝われば残った賊の数も減るだろ。今日よりは楽にいけると思うぞ?」

 

「白蓮ちゃん、油断は禁物だよ?」

 

「わかってるよ桃香。でもな、ウチには子龍や北郷が居るし、今は桃香達も力を貸してくれている。だから大丈夫さ」

 

 玄徳さんの言葉に力強い笑みで応える伯珪さん。

 

「うん! ……あ、そうだ!」

 

 伯珪さんに笑顔で返すと、玄徳さんはこちらにくるりと振り返って、

 

「趙雲さん、北郷さん。私、二人とお友達になりたいな!」

 

 満面に笑みを浮かべ、弾んだ口調でそう言った。

 

「鈴々も、おねーさん達とお友達になりたいのだ!」

 

「私も同じ気持ちです……趙雲殿の志と北郷殿の慧眼に感銘を受けました。我が盟友となって戴けないだろうか」

 

「そう言えば、まだ真名は交換していなかったな……子龍、北郷、私の真名を預かってくれないか?」

 

 翼徳さん、雲長さん、伯珪さんがそれに続く。

 

「ふっ……そうでしたな」

 

「はい、喜んで」

 

「公孫賛、字は伯珪。真名は白蓮だ」

 

「趙雲、字は子龍。真名は星。……今後ともよろしくお頼みしますぞ」

 

「劉備玄徳、真名は桃香だよ!」

 

「鈴々は鈴々! 張飛と翼徳と鈴々なのだ!」

 

「北郷、字はありません。一刀です。これからよろしく!」

 

「我が名は関羽。字は雲長。真名は愛紗だ」

 

 めいめいに名乗りを上げると誰からともなく手の平を重ねあう。

 

「友として、共にこの乱世を治めよう」

 

「ああ!」

 

「治めるのだ!」

 

「みんなで頑張って、平和な世界を作ろうね!」

 

「ああ、頑張ろうな!」

 

「はい、お互いに!」

 

 

 

 ――見上げれば、視界一杯に広がる蒼い蒼い空。

 

 だが、そう遠くない未来……大陸を暗雲が覆うことになる――。

 

 

 

 

 

 しかし、ここにもそれに立ち向かう人達がいる。

 重ねあった手に確かな熱を感じながら、俺は南の空を仰いでいた。

 

 

 

 

 

 

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 あとがき

 

 お待たせしました。天馬†行空 十四話目です。

 賊討伐の先の展開まで書くと長くなりすぎたので、いつもよりもやや短めになっております。

 次回は黄巾の乱ですが、あまり長くはならない予定です。

 

 

 

 

 

 今回、原作の文章と展開を少し変えて話を作ってみたけど、ちょっと不自然だったかな……。

 

 

 

 

 

説明
 真・恋姫†無双の二次創作小説です。
 処女作です。のんびり投稿していきたいと思います。

※主人公は一刀ですが、オリキャラが多めに出ます。
 また、ストーリー展開も独自のものとなっております。
 苦手な方は読むのを控えられることを強くオススメします。

 お気に入り登録が百人を越えました。皆さん、有り難う御座います。ゆっくりな本作ですがこれからもお楽しみ頂ければ幸いです。

 ※5/30 本文を手直ししました。
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コメント
それは判っているのですが、いずれ2人とも旅立ったら白蓮一人になるからね(モブがいるんでしょうが)。まあ次の展開が楽しみです。(陸奥守)
>陸奥守さん 黄巾の乱での星は白蓮の下に留まっています。こちらでは……さて、どうなるでしょうか?(赤糸)
>アルヤさん 星と一刀の取る道にもよりますが、そこまで派手な展開にはならない筈です……多分。(赤糸)
>summonさん 「事前に練られた作戦」「戦える一刀」がプラスされた過剰戦力。さすがに統率も取れない賊徒では勝負になりませんでした。(赤糸)
>量産型第一次強化式骸骨さん さて、どうでしょうか? ですが現状では星は勿論のこと、一刀も桃香寄りであることは否定しません。(赤糸)
しかし原作どおりの展開になると白蓮はぶられるんじゃないか?星か北郷のどちらかが残れればいいんだけど。(陸奥守)
真名の交換も済みましたね。これから始まる黄巾の乱の行方やいかに!(アルヤ)
まさに完勝といったところでしょうか。お見事です!(summon)
桃香たちと友になりましたか。これは桃香たちが仲間になるフラグなのだろうか。(量産型第一次強化式骸骨)
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真・恋姫†無双 北郷一刀  天馬行空 

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