ストライクウィッチーズD 第一話 |
第1話「もうひとりじゃない」
優輝「俺は連合軍本部から派遣されてきた一条優輝だ。階級は一応、中佐だけど、軍属歴はみんなに比べては短いし、こういった部隊に所属するのは初めてだから、色々と面倒を掛けると思うが、よろしく頼む。」
そう言って、優輝は黒板の前に立ち、目の前に居る年端もいかない少女たちに挨拶をした。
あのあと優輝は美緒たちに付いて行き、基地に戻りながら自分の状況を知らせた。
優輝は最近のネウロイの様子を見て、欧州が非常に危険なことになるかもしれない可能性が出て来たので、すぐさま上層部に申し出(脅迫)をして、一番、ネウロイが活発なブリタニアの最前線基地である501へと移動してきたのであった。
ただ、一つ問題があるとすれば・・・・・・
ペリーヌ「お、男が・・・どうして、こんなところに・・・!!」
そう、彼は・・・れっきとした男である。
事実、稀にウィザードという。男性の魔法使いも居るのだが、未だ現在、発見されておらず、古の文献上でしか、拝めない筈の存在であるため、殆どの人々はウィザードという存在を知る者はいない。
現に長く戦場に立っている坂本美緒でさえも、ウィザードと会う所か、耳にもした事が無いのである。
しかし優輝はウィザードでも無いため、なおさら此処に居ること自体が可笑しい。
バルクホルン「おい、ミーナ! これはどういうことだ? なぜ男なんかがこんな所に!?」
ミーナ「ええ、それが、さっき本国から、一条中佐の転属命令がこっちに来ていたのよ・・・・」
バルクホルン「何・・!!」
その言葉を聞いて、バルクホルンは驚きの顔に満たされる。
バルクホルン「だが、そんな男を入れたところで、私たちにとっては、足手まといにしかならないぞ!」
ペリーヌ「そ、そうですわ! 大尉の言う通り、戦闘の妨げにしかなりません!!」
美緒「あっはっはっは! それについては、問題無いぞ二人とも。」
そこに、美緒が大きな声で笑いながら、二人の言葉を鞍替えすように意義を立てた。
エーリカ「問題無いって・・・この人、少佐の知り合いなの・・?」
美緒「ああ、まだ、私が新米だった頃、リバウに来てから、よくお世話になってな・・・何度命を助けられたか・・・・」
シャーリー「へえ〜〜〜、少佐にもそんな頃があったんだな。」
美緒「あのな〜〜、お前たちはわたしを何だと思っている・・・まあ、それよりも・・・ペリーヌ、バルクホルン、優輝さんなら、足手まといにはならん。腕ならわたしが保障する。」
バルクホルン「・・・・少佐のお墨付きなら問題あるまい・・・」
そう言って、バルクホルンは静かに黙った。
しかし、ペリーヌの方は、そのことが逆に気に入らなかったのか、先ほどまで以上に優輝に食って掛かった。
ペリーヌ「い、いくら少佐のお墨付きでも、わたくしは納得できません!!」
美緒「ペリーヌ・・・いくらお前が意義を上げたところで、これは本部からの命令だ。変更なぞ出来ん。それに、優輝さんは軍属歴は短いといっても、お前の上官に当たるのだぞ。」
ペリーヌ「うう、しかし・・・・・」
ミーナ「ペリーヌさん、それ以上はダメよ。」
ペリーヌ「・・・わかりましたわ・・・・」
そう返事をして、ペリーヌも黙って従うことにした。
ミーナ「では、皆さん。それぞれ、自己紹介をしていって下さい。」
ミーナがそう声を掛けると、皆、立ち上がって、二人の前に出て、自己紹介をし始めた。
バルクホルン「・・・ゲルトルート・バルクホルン大尉だ・・よろしく頼む。」
エーリカ「もう〜〜トゥルーデったら、そんな無愛想な挨拶しなくても、ああ、わたしはエーリカ・ハルトマン中尉だよ。ええと・・・・」
優輝「ああ、一条でも優輝でも・・・好きな方で呼んでくれ。」
エーリカ「そっか、じゃあ優輝って呼ばしてもらうよ。」
優輝「ああ、よろしくエーリカちゃん。」
エーリカ「ちゃんって・・・まあいいや、こちらこそよろしく♪」
そう言って、二人は向かい合って、握手を交わす。
エーリカ「ほら、トゥルーデもしたら?」
バルクホルン「私はいい・・・・すまないが中佐。自分は失礼させて貰う・・・・」
そう一言冷たく言って、すぐに背を向けて歩いて行った。
エーリカ「ああ、もうトゥルーデったら、素直じゃないんだから。」
エーリカもバルクホルンに続いて、歩いて行くと次にスタイルの良い子と小柄でまだ、年端のいかない子が優輝に自己紹介しに来てくれた。
シャーリー「あたしはシャーロット・イェーガー大尉だ。よろしく頼むよ一条中佐。」
ルッキーニ「あたしはフランチェスカ・ルッキーニだよん♪ よろしくね優輝♪」
優輝「ああ、こちらこそよろしく。シャーロットちゃんにルッキーニちゃん。」
シャーリー「あはは、シャーロットちゃんか・・・・」
優輝「??? 何か変なこと言ったかい?」
シャーリー「いや・・・なあ・・・」
優輝「????」
シャーリー自身も、まさか自分がちゃん付け呼ばれるとは思っていなかったので、どう反応していいか、分からなかった。
エイラ「ワタシはエイラ・イルマタル・ユーティライネン少尉。で、こっちは・・・」
サーニャ「・・・サーニャ・V・リトビャク中尉です・・・・」
今度は、活発そうな肌が白い白銀髪で長髪の女の子とその子の後ろに隠れている同じく肌が白く、銀髪でショートヘアーの女の子が挨拶してきた。
優輝「ああ、よろしく。二人とも。」
サーニャ「・・・・・!!」
優輝はそう普通に返事を返すと、すぐさまサーニャは会議室から出て行ってしまった。
エイラもそれを追って、会議室から出ていった。
優輝「何だったんだ?」
ペリーヌ「あなたから、変な視線でも感じたのでは。」
そう言って、ペリーヌは優輝に向かって、皮肉の言葉を言った。
優輝「君はさっきの・・・・」
ペリーヌ「・・・わたくしは、ペリーヌ・クロステルマン中尉です。失礼しますわ!」
そう強く言うと、ペリーヌはそくさくと会議室から出て行ってしまった。
優輝「俺何かしたかな・・・・」
リーネ「あ、あの・・」
優輝「ん?」
優輝は自分の名前を呼ばれたので、その方向へと体を向けると、そこに居たのは、まだ、あどけなさが残ってはいるが、体の発育の良い少女であった。
優輝「え〜と、君は?」
リーネ「あ、はい。わたしはリネット・ビショップ軍曹です。」
優輝「了解。リネットちゃん♪」
リーネ「リ、リネットちゃん!?」
優輝「?? 何か変なこと言ったかい?」
リーネ「い、いえ・・・(リネットちゃん・・・・)」
リーネもこんな呼ばれ方、されたのが初めてなのか、どう反応していいかわからず、混乱してしまった。
すると、ミーナからリーネ、芳佳、優輝へと声が掛かった。
ミーナ「では、リーネさん。一条さんと宮藤さんも連れて、この基地を案内させて貰っていいかしら。」
リーネ「は、はい! 了解しました。」
リーネは慌てながら、ミーナに向かって、肯定の敬礼をした。
優輝「それにしても、初めてウィッチーズの最前線基地に来たけど、こんなにも広いとは・・」
芳佳「本当に大きいですね〜〜〜〜」
そう言って、優輝は芳佳と話しながら、リーネのあとに付いて行く。
芳佳「そう言えば、優輝さんって、お父さんの・・・」
優輝「ああ、助手だったよ・・・でも、世間にはあんまり知られてないけどね・・・」
芳佳「えっと、それって・・・どういうことなんですか?」
優輝「いや、ただ単に俺自身が目立ちたくなかっただけさ。」
嘘である。本当は殺し屋だったから、下手に世間にその存在がばれると博士に迷惑が掛かってしまうためで、実際にそういったことが置きたことがあったので、博士の家族や知り合いを危険にさらすわけにはいかないために俺は博士を説得し、自分が博士の助手であることを隠してもらうことにしたのだ。
今思えば、博士には結構迷惑掛けてたな〜〜
芳佳「あの〜〜優輝さんってば!」
優輝「ん! あ、どうした?」
芳佳「も〜〜、さっきから呼んでるのにどうして、返事してくれないんですか!」
優輝「ごめん、ごめん。それで、どうしたんだい?」
芳佳「あ、そうでした。優輝さん。早くこっちに来て下さいって。」
そう言うと、芳佳は優輝の右手を取って、走っていく。
優輝もなし崩しに芳佳に付いて行く。
優輝「・・・・似てるな・・・・」
芳佳「え! 何か言いましたか?」
優輝「いや、何でもないよ。それより早く行こうか。」
芳佳「はいっ♪」
そして、芳佳から連れて来られた場所はあちらこちらに無線機などの機材が置かれた司令室だった。
その先に丁度リーネが待っていたかのようにこちらに顔を向けた。
リーネ「ここは管制塔で、この基地で一番高い所なんです。」
芳佳「ほんと、高くて、気持ちいい〜〜〜〜♪」
優輝「へえ〜〜、島そのものが基地になってるのか。」
リーネ「はい、ドーバー海峡に突き出した島、それがウィッチーズ基地、そしてあれがヨーロッパ大陸、でも大半は敵の手に落ちて・・・」
芳佳「こんなに静かなのに戦争してるなんて・・・」
優輝「戦争か・・・こんなのが・・・」
芳佳「え、どうかしましたか?」
優輝「いや・・・・何でも無いよ」
リーネ「・・・・・・・」
優輝の一言に芳佳は質問するが、優輝はそれを小さくはぐらかす。
そして、優輝の言葉をちゃんと聞いたリーネはただ、無言で俯いてしまった。
その日の午後、格納庫にて
優輝「ふう〜〜、こんな感じで良いだろ」
そう言って、優輝は自身専用のストライカーであるストライクブースターを整備していた。
外では芳佳とリーネが訓練で走っているのが見えたが、まだまだ戦場に出すのは不味いな。
ルッキーニ「やっほ〜、優輝♪」
シャーリー「よお、一条中佐。」
優輝「階級はいいって、シャーロットちゃん。」
シャーリー「こっちも、ちゃんは、いいって、普通に呼んでくれよ。」
優輝「そうか? じゃあ、シャーロット。」
シャーリー「まあ、それで良いや。」
優輝「???」
ルッキーニ「ナニ! この変なストライカー!」
シャーリー「それが一条のストライカーか?」
優輝「ああ、正確に言うとストライクブースターさ。」
シャーリー「ストライク・・・?」
ルッキーニ「ブースター・・・?」
シャーリーとルッキーニは顔を斜めにして、優輝の言葉をそのまま返した。
二人がわからなそうだったので、優輝は説明をした。
優輝「ストライクブースター・・・本来、ストライカーは術式によって、魔力を構成、増大させて、魔法力で出来たプロペラを回すことで、空を飛ぶだろう。しかし、これは、術式なんてものが無いから、単純に噴出させるといったジェット噴射と同じ理由で空を飛んでいるんだ。そしてこいつは、俺の様な魔力とは違った力で動いているんだ。」
シャーリー「魔力とは違ったって・・・じゃあ何で動いているんだ?」
優輝「そうだな。まずはこれを見てくれ・・・。」
そう言った時、優輝の体から白い氣が溢れ出て、オーロラのように輝きだした。
それを見た。シャーリーとルッキーニは目を丸くして驚いた。
シャーリー「何だよ・・それ・・」
ルッキーニ「うわ、何か光ってきた!」
優輝「心力・・俺はこの力をそう呼んでる・・・」
シャーリー「その力って・・・その、魔力とどう違うんだ・・・?」
優輝「一般の魔女よりも数百倍の量がある代わりに固有魔法並びにシールドを張る事が一切できないって所かな。」
その言葉を聞いて、シャーリーとルッキーニは驚愕の表情で驚いた。
シャーリー「おいおい・・・いくら魔力があったて、シールド張れ無いんじゃ意味ないだろ!」
優輝「大丈夫。対策はちゃんとあるから。」
ルッキーニ「対策???」
優輝「これさ・・・はあっ!」
そう力を込めて声を出すと、優輝の右手と左手が白い氣によって、光輝いた。
それを見たルッキーニ楽しそうな物を見つけたかのように優輝の右手を掴み、光った部分を触っていた。
ルッキーニ「わああ! なにこれ!? おっもしろ〜〜い♪」
シャーリー「何だ・・・これがどうしたんだ?」
優輝「二人はネウロイを落とす時に銃弾に魔力を流して銃を撃っているだろう。」
シャーリー「ああ、当たり前だろう。そうじゃなきゃネウロイなんて倒せないからな。」
優輝「それと一緒さ。こうやって、手に心力を籠らせることで、手をシールドと同じぐらい固くして、それをそのまま、攻撃や防御に使っているんだ。」
シャーリー「なるほど、それでか・・・所で話を戻すけど、そのストライカーブースターって、誰が作ったんだ?」
優輝「俺だよ。」
シャーリー「へ・・・・誰だって?」
優輝「いや、だから俺だって。」
シャーリー「ええええええ!!! どうやって、こんなの一から!!??」
シャーリーは優輝がストライカーを作ったことに驚き、格納庫に響き渡る大声で叫んでしまった。
優輝はそんなに驚くことかといった顔してシャーリーを見た。
優輝「そ、そんなに驚かなくても・・・」
シャーリー「いやいやいや、普通驚くって!! そんな知識どこで!?」
優輝「実は俺、元々宮藤博士の助手をしてたことがあってさ。その過程で、自分のストライカーを作ったんだ。」
シャーリー「宮藤博士の助手・・・じゃ、じゃあさ、今度で良いから私のストライカーも見てくれよ! な!」
そう言って、シャーリーは優輝の左手をブンブンと握る。
優輝「落ち着きなって、そんなにしたら・・・!!!」
ガチャッ!!
優輝「あ・・・・」
シャーリー「へ・・・?」
変な音がし、二人の間抜け声が出る。
シャーリーの手をよく見ると、そこには機械でできた左手であった。
優輝の左手があった所をよく見てみると、そこには左腕が肘までしかない優輝の左腕であった。
それを見たシャーリーはブルブルと震えてしまった。
しかし、ルッキーニは逆に気になって無邪気な質問を優輝に聞く。
ルッキーニ「ねえ、優輝の左手どうしたの?」
シャーリー「お、おいルッキーニ! 何聞いてんだよ!」
ルッキーニ「ええ〜〜だってだって、気になったんだもん♪」
優輝「ははは、大丈夫だよシャーロット。聞かれても別に困ってるわけじゃないし。」
シャーリー「でもよ・・・その・・・」
優輝「大丈夫だって・・・それより、それ返してくれないか?」
シャーリー「あ! ああ!」
シャーリーは慌てながら、優輝の義手を返す。
優輝は義手を受け取ると、それを左肘に装着する。
装着した後、掌をグーパーして、ちゃんと可動しているか確認して、二人に向き直る。
優輝「で、ストライカーだっけ? 見ようか?」
シャーリー「い、いや今日はいいや。じゃあ、また後でな。」
シャーリーはそう言って、格納庫から出ていく。
ルッキーニもそれに続いて、出て行ってしまった。
優輝「・・やっぱ、びっくりさせちゃったか・・・・」
その時、格納庫の外からドンッと一発の銃声が聞こえてきた。
優輝はその正体を確かめに格納庫の外へ出ていくと、そこに居たのは美緒と芳佳とリーネの三人で、リーネがボーイズMk.I対装甲ライフルで狙撃訓練をしていた。
優輝の気配に気が付いたのか、美緒と芳佳がこちらに体を向けてきた。
美緒「あ、優輝さん。」
芳佳「優輝さん。」
優輝「訓練の邪魔だったかな・・・・?」
美緒「いえ、大丈夫です。優輝さんも是非見てってください。」
優輝「じゃあ、お言葉に甘えさせて。」
そう言って、出来るだけ邪魔にならないような場所に立ち、リーネがターゲットとしている海の上にある的を見る。
優輝「(あのオレンジの板が的か・・・)」
美緒「よし、撃て!」
リーネ「はい!」
リーネは大きく返事をして、引き金を引く。
ドンッと音が鳴ると、先にあった的の右端に弾が当たった。
美緒「風に流されたか・・・もう少し風を読め!」
リーネ「はいっ!」
優輝「惜しいな・・・あと、数ミリ左にしとけば・・・」
芳佳「ええ! 優輝さんあんなに遠い的が見えるんですか!?」
優輝「ああ、でも美緒ちゃんほどでも無いけどね。」
美緒「よし、リーネ、次だ!」
リーネ「はいっ!」
リーネはそう返事すると、再度、ライフルの引き金を引く。
銃声が響く中、優輝の耳に僅かだが、何かを貫いた様な音が聞こえた。
先を見ると、そこには中心に穴が空いたオレンジのプレートが鎮座していた。
美緒「よし!」
芳佳「わあ〜〜、すご〜いリネットさん♪」
リーネ「これぐらい普通だよ・・・・」
優輝「(・・・これ以上邪魔はしないでおこう・・・)」
優輝はリーネの射撃の腕を見て、特に言う事が無かったので、あとは美緒に任せて、自分は武器と義手の整備をする事にした。
優輝「・・・よし! 出来た、出来た・・・・・ん?」
外を見るともう暗くなっていて、外からは訓練している声が聞こえなくなっていた。
それで優輝はとりあえず食堂に行き、夕飯でも食べに行こうとした瞬間、突然リーネが外から格納庫に入ってきた。
リーネの目元には涙を流した痕があった。
優輝「リネットちゃん・・・何かあったの?」
リーネ「い、一条中佐!! し、失礼します!!」
リーネはそう言うと、すぐ格納庫から出て行った。
優輝は心配しながらも、格納庫の明かりを消そうとすると、今度は芳佳が息を荒くしながら、格納庫に入ってきた。
優輝「よ、芳佳ちゃん!? どうしたの?」
芳佳「あ、優輝さん・・・実は・・・」
芳佳はそう言うと、先程まであった事を話した。
何でも、芳佳は自分に自身が持てないリーネを励まそうとしたが、「最初からできたあなたとは違う!」と言われ、逆に怒らせてしまったらしい。
優輝「そうか・・・あの涙はそういう事か・・・」
芳佳「私・・・どうしたらいいか・・・」
優輝「なら、今度は君の素直な気持ちを言うんだ。」
芳佳「素直な気持ちですか・・・・?」
芳佳は優輝の言葉に頭を傾げる。
優輝はそうと言って、芳佳に話を続ける。
優輝「リネットちゃんは芳佳ちゃんに言われて、自分の思いを君にぶつけたんだ。だったら、今度は芳佳ちゃんが自分の思いをぶつける番だ。」
芳佳「自分の思い・・・・」
優輝「あとは自分で考えることさ・・・じゃあ、俺は先に行くから。」
優輝はそう言い残すと、格納庫から出ていく。
芳佳は優輝の言葉を思い返しながら、自分が今一番伝えたい気持ちを考えるのであった。
そして、次の日の朝、501基地にネウロイの襲撃を告げる警報が鳴り響いた。
ミーナ「監視所から報告が入ったわ、敵、グリット東114地区に侵入、高度はいつもより高いは、今回はフォーメーションを変えます」
美緒「バルクホルン、ハルトマンが前衛、シャーリーとルッキーニは後衛、ペリーヌは私とペアを組め!」
ミーナ「残りの人は私と基地で待機です」
芳佳「了解〜」
リーネ「了解。」
エイラ「了解〜」
優輝「了解した。」
作戦が整うと美緒たちはすぐさまネウロイの元へと出撃していき、芳佳とリーネ、優輝はその様子を見送った。
芳佳「いっちゃったね」
リーネ「・・・そうですね」
優輝「まあ、何も起こらないことを願うまでだな。」
芳佳「今私たちにできることってなんだろう?」
リーネ「足手まといの私にできることなんて・・・・!」
リーネはそう言って、二人の元を走り去っていった。
すると、さっきのやり取りを見ていたミーナが二人の元にやって来た。
ミーナ「宮藤さん、一条さん・・・少し良いかしら?」
芳佳「あ、はい・・・・」
優輝「・・・・・」
優輝と芳佳の肯定を確認したミーナは口を開いて、リーネのことを話し出した。
ミーナ「リーネさんは、このブリタニアが故郷なの・・・」
芳佳「あ、はあ・・・」
ミーナ「ヨーロッパ大陸が堕ちているのは知ってる?」
芳佳「あ、はい・・リネットさんから・・」
ミーナ「欧州最後の砦・・・ブリタニアを護る・・・そのプレッシャーの所為で、リーネさんは実践に出るとダメになってしまうの・・・」
芳佳「リネットさん・・・・」
優輝「・・・・・」
ミーナ「宮藤さんはどうして、ウィッチ隊に入ろうとしたの?」
芳佳「はい、困っている人たちの力になりたくて・・・」
ミーナ「リーネさんが入隊した時も同じ事を言っていたわ、その気持ちを忘れないで、そうすればきっとみんなの力になれるわ」
ミーナは励ましのアドバイスを芳佳に送ると、ブリーフィングルームの方へと戻っていった。
その頃、出撃した美緒たちはネウロイと交戦していたが・・・
美緒「何だ・・・手ごたえが無い。」
ペリーヌ「まさか、陽動!」
美緒「まずい! 基地が!!」
美緒は敵の策にまんまと落とされた自分に歯がゆさを感じながら、基地の方角へと固有魔法の魔眼を向ける。
その頃、基地では、ミーナから事情を知った芳佳がリーネを再び励ますためにリーネの部屋の前へとやってきたのであった。
そんな芳佳やリーネを優輝は心配そうに見守っていた。
そして、芳佳はリーネに自分の思いを彼女に話始めた。
芳佳「リネットさん・・・私、魔法もへたっぴで叱られてばっかりだし、ちゃんと飛べないし、銃も満足に使えないし・・・ネウロイとだって本当は戦いたくない、でも私はウィッチーズに居たい、私の魔法でも誰かを救えるのなら、何か出来る事があるなら・・・やりたいの、そして皆を守れたらって・・・」
リーネ『・・・・・』
リーネは扉の向こうにいる芳佳を追い返そうとせず、ただ芳佳の話を黙って聞いた。
芳佳「だから私は頑張る、だから・・・・」
リーネ「・・・・・・」
ジリリリリリリリリリリリリ!!!!!
その時だった、基地に緊急警報が鳴り出した
ブリーフィングルーム
ミーナ「では、出られるのは私とエイラさん、それと一条中佐だけですね。サーニャさんは?」
エイラ「夜間哨戒で魔力を使い果たしている。ムリダナ」
そう指でバッテン印を作って報告する。
それを聞いたミーナは現状を判断し、優輝をここに残して置いたことを正解だと心の中で確信した。
ミーナ「そう・・・(やはり、念のために一条さんを残して置いて、正解だったわね。三人なら、撃墜できる確立が上がるのも・・・)では、二人とも準備を・・・」
その時、ミーナの声を遮って芳佳が声を上げた。
芳佳「私も行きます!」
ミーナ「あなたはまだ半人前なの。訓練が十分じゃない人を戦闘には出せません。」
芳佳「でも「私も行きます!!」――リネットさん!?」
リーネ「二人合わせれば、一人分くらいにはなります」
ミーナ「あなたまで・・・」
リーネ「私にも守りたいものがあるんです!!」
優輝「(よく、出来ました・・・リネットちゃん)ミーナちゃん。二人は俺が面倒見よう。」
ミーナ「しかし・・・・」
優輝「時間・・・無いだろ・・・♪」
ミーナ「・・・・二人とも、90秒で支度しなさい。」
ミーナは渋々、了解した。
そして、優輝たちはあの後、すぐに出撃し、目標のネウロイが居る方へと向かったのであった。
ミーナ「私とエイラさんが先行するわ。一条さんは二人の事をよろしくお願いします。」
芳佳「はい!」
リーネ「はい!」
優輝「了解した。そっちも頼むよ。」
ミーナは優輝たちにそう言うと、エイラを引き連れて、ネウロイの方へと向かっていった。
そして、リーネが二人に自分の思いを告げた。
リーネ「宮藤さん・・・一条中佐・・・」
芳佳「うん?」
優輝「どうかしたかい?」
リーネ「本当は私・・・怖かったんです、戦うのが・・・」
芳佳「私は今も怖いよ、でも・・・うまく言えないんだけど、何もしないでじっとしている方が怖かったの」
リーネ「何もしない方が・・・」
優輝「リネットちゃん・・・ちょっと良いかい?」
リーネ「何ですか・・・一条中佐?」
優輝「リネットちゃん、・・・・君は戦いが怖いから、自信が無くなってしまうと言った・・・・」
リーネ「・・・・・」
優輝の言葉を聞いてリーネは俯く、だが、優輝は「だけど・・・」と話を続ける。
優輝「もし、自分に自身が無いなら、俺を信じろ。」
リーネ「え・・・・!」
優輝「戦いが怖くたっていい、自分に自身が無くたっていい・・・・だけど此処には芳佳ちゃんや美緒ちゃん、ウィッチーズのみんな・・・そして、俺が居る・・・・!!」
リーネ「・・・・!!!!」
優輝「だから・・・俺たちを・・・俺を・・・信じてくれ!!」
優輝「君は一人なんかじゃない!!!!」
リーネ「い、一条・・・・中佐・・・」
優輝は自分が思う今の思いをリーネの心にぶつける。
そして、その言葉を受け取ったリーネの心は何かの楔が外れ落ちたかのように、軽くなった。
その時、突然、ミーナからの通信が聞こえた。
芳佳、リーネは自身の通信機に耳を通す。
優輝も自身専用のイヤー型の通信機に耳を通して、通信内容に集中する。
ミーナ『一条さん! すみません。取り逃がしてしまいました! 迎撃をお願いします!!』
優輝「了解! リネットちゃん。頼む!」
リーネ「了解しました!」
リーネは先ほどの迷いを感じさせない返事を優輝にすると、こちらに向かってくるネウロイを対装甲ライフルで攻撃し始めた。
しかし、弾はどれも惜しい所で当たらなかった。
リーネ「ダメ・・・全然当てられない!」
芳佳「大丈夫! 訓練であんなに上手だったんだから!」
リーネ「私・・・飛ぶのに精いっぱいで、射撃で魔法をコントロールできないんです・・・!」
優輝「だったら・・・・!!」
優輝はそう言ってリーネの後ろに回り込み、リーネを抱きかかえ、ストライクブースターの出力を上げて通常時よりも噴射させ、リーネの飛行を代わりに支える。
だが、リーネは自分が抱き上げられたことに赤面してしまい、思わず武器を落としそうになった。
芳佳はそれを見て、両こぶしを口元で隠しながら、赤面した。
芳佳「(ゆ、優輝さん、大胆)//////////」
リーネ「いいい、一条中佐!!?? な、何を////////!!!」
優輝「急にゴメンね。だけど、今は目の前の敵を・・・」
リーネ「は、はい!(うう〜〜、ドキドキするよ〜〜//////)」
そして、リーネはライフルの照準に目を通すと、あることを思いついた。
リーネ「(西北西の風、風力3・・・敵即、位置を・・・そうだ! 敵の避ける未来位置を予測して、そこに・・・!)一条中佐!宮藤さん! 私と一緒に撃って!!」
優輝「よし、まかせろ!」
芳佳「うん、わかった!」
優輝と芳佳はリーネの声に返事をすると、合図を待って、自身たちが装備している武器を構え、近づいてくるネウロイに照準を合わせる。
リーネ「今です!」
リーネがそう言った瞬間、優輝の3リボルバーのショットマグナムとM712シュネルフォイアーからの銃口から銃弾が一気に飛び出す。
優輝に抱きかかえられたリーネは引き金を引いてはリロード、引き金を引いてはリロードを5回繰り返し、ネウロイの行動を予測して射撃した。
そして、リーネの放ったライフル弾は見事的中し、ネウロイは最後の五発目でコアを破壊され、バラバラに砕け散った。
芳佳、リーネ「きゃあああ!!!」
優輝「よっと!!」
優輝はすぐさま、二人を砕け散った残骸から守るために身を挺して、覆いこむように守った。
コアが砕け散ったのを確認したミーナとエイラは安心して、ふうっと息を吐いた。
ミーナ「リーネさん・・・できたのね。」
エイラ「へへ、あいつらやるじゃん。」
そして、優輝は安全を確認し、二人をそっと離す。
すると、リーネは撃墜できたうれしさの余り、芳佳と優輝の首に抱き着いた。
リーネ「やった♪・・・やりましたよ宮藤さん♪ 一条中佐♪ 私やりました♪♪!!」
芳佳「ふあああああ!? リネットさん・・・く、苦しい!?」
優輝「よかった♪ よかった♪ おめでとうリネットちゃん♪」
リーネ「あの、リーネです・・・」
芳佳、優輝「え・・・?」
リーネ「二人とも、リーネって呼んでください。みんなからも、そう呼ばれているので。」
芳佳「うん、これからもよろしく♪ リーネちゃん♪」
優輝「俺の事は階級は要らないから、名でも性でも好きな方で呼んでくれ。リーネちゃん♪」
優輝がそう言うと、リーネはモジモジと恥ずかしながら、優輝の名前をゆっくりと静かに呼んだ。
リーネ「ゆ・・・優輝・・・さん/////////」
優輝「うん! じゃあ、帰るとしようか!」
リーネ「はいっ♪♪♪!!!」
そして、次の日のこと
リーネ「芳佳ちゃんおはよう。」
芳佳「おはようリーネちゃん。」
リーネは廊下で会った芳佳に朗らかな顔で挨拶する。そしてその様子を美緒とミーナは少し離れた場所で優しく見守っていた。
ミーナ「どうやら、リーネさん。宮藤さんと仲良くなれたみたいね。名前で呼び合うなんて・・・」
美緒「ふ、まあ仲良くなることはいいことだ、戦場で背中を預けられるのは信頼し合う者同士のほうがいいしな。」
そこに、優輝が廊下から歩いてきて、芳佳とリーネに挨拶するが・・・・・・・
優輝「おはよう。芳佳ちゃん、リーネちゃん。」
芳佳「あ、優輝さん。おはようございます。」
リーネ「!!・・・ゆ・・優輝さん/////////・・・そのあの・・・///////////」
優輝「ん???」
リーネ「//////////お、おは・・・おはよう・・ございます・・・・////////」
優輝「ああ、おはよう。リーネちゃん♪」
リーネ「///////////」
ミーナ「仲良くなりすぎるのもね・・・・・」
美緒「・・・・・・・」
ミーナ「!! 美緒っ!!」
美緒「ど、どうしたミーナ!? 私は優輝さんの事で、何とも・・・!!」
ミーナ「まだ、何も言ってないわよ・・・・」
美緒「///// わ、私はこれから早朝訓練をしてくる!! では/////////!!」
ミーナ「美緒・・・あなたも・・・」
ミーナはリーネの優輝に対する感情の変化に気付き、彼女の予想外の変化に色々な思いを抱いていた・・・・。
その上、親友である美緒までも・・・・・
ミーナ「わたしがちゃんとしなきゃ・・・!!」
ミーナはそう呟くと拳に力を込めて決意した。
もう・・・あんな思いを誰にもさせるわけにはいかないと・・・・・
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