IS《インフィニット・ストラトス》 駆け抜ける光 疑問の戦い |
次の日の一時間目と二時間目は学園祭の催しを決めることになった。なんというか……騒がしいのである。アムロさんの言った通り、女の子はこういう行事には異様にテンションが上がるもんだと実感する。
「やっぱりここは織斑兄弟を上手く使わないとさ! せっかく内のクラスに男子二人いるんだし」
「織斑兄弟は我がクラスの財産であるっ!」
「それを有効利用しようとして何が悪い!?」
「俺達は物じゃねぇぞ!」
えええええっ! と言う女子の衝撃波ボイスが教室に響く。確かに夏兄の言う通りです……。僕達は物じゃありません! え〜、ここまで上がった提案と言えば――
織斑兄弟とポッキーゲーム。織斑兄弟と王様ゲーム。織斑兄弟と○○○。
わぉ……どうしても僕達を表舞台に出したいみたいだね。この際、表舞台に立つのは我慢するのしてもさ、これはないだろう。特に最後の何?
「こんなの誰が喜ぶんだよ!? そもそも恥ずかしくて出来んわ!」
「大丈夫! この学園全員が喜ぶこと間違いなし!」
「恥ずかしさなんてやっていけば吹っ飛ぶよ!」
「光輝っちは賛成だよね!?」
「絶対に嫌! こんなのないよ!」
このままだと勢いで僕達の意志に関係なしに決まってしまいそうだ……一番頼りになるお母さんは先に職員室に帰ったし……ここは山田先生を頼るか。
「山田先生はこういうのは止めた方がいいと思いますよね?」
「わ、私に振るんですか!? そうですねぇ……ポッキーゲームとか面白そうじゃないですか?」
おいぃぃ! そこで賛成ですかぁ! なんということだ……でも良く考えてみれば山田先生は天然故に賛成してしまうという考えもあった。これは本当にヤバい。
[――この子たちは恐ろしいな……僕には耐えれない]
「もうどうにでもなれや……」
「俺達の未来は……」
僕達は首をがっくし落として目の前の現実から逃げようとしていた。しかし、周りの女子がそれを許しては――。
「ほぅ……メイド喫茶か。まぁこんな予感はしていたがな……提案者は誰だ?」
「ラ、ラウラです……」
二時間目が終わった職員室にて、僕と夏兄はクラス委員長、副委員長として催しの報告に来たのだ。なんかお母さんの様子がおかしいけど……?
催しはお母さんもさっき言った通り、なんとメイド喫茶に決まったのだ! これなら僕と夏兄は執事服で済むのだから不幸中の幸いという奴ですね! ラウラさんありがとう!
「くっ、あははっ! あいつがか!? あのボーデヴィッヒがか? あいつ変わったじゃないか!」
いきなりお母さんが大声で大笑いし始めた。ちょっと、ここ職員室ですよ! 夏兄もこんなお母さんはあまり見ないのだろう、キョトンとしている。周りの先生も一斉に見ている。みんなお母さんの反応にビックリだ。
「あはははっ……ん、んっ。じゃあ内のクラスの催しはこれで決まりだな。あまり羽目を外し過ぎないようにな。さて、ここからは個人的なことだが――」
笑っていたお母さんだが周りの視線に気づいていつも通りに戻った。そして真剣さが増す。ここからはふざけじゃないか……。僕と夏兄はそれを感じて身を固くする。
「二人とも放課後の話になるんだが、織斑兄、お前は生徒会室に行け。更識がお前を呼んでいる。で織斑弟は第一アリーナに来い。いいな、二人とも?」
僕達は了解し、職員室を後にした。教室への帰り道、夏兄は言う。
「生徒会長か……一体今度は何の用なんだ?」
「どうだろうね。でも夏兄、会長は凄い実力の持ち主だよ。この学園でもほとんど感じることのできない程のプレッシャーなんだ」
「そうなのか? 唯ものじゃないって言う感じはしてたけど……分かった。警戒しとくよ」
「これで全員か。今回は坂本の自然発生したIS「Ξガンダム」についての話だ」
今日の放課後、第一アリーナのピットには僕、エリスさん、紗英先輩、お母さんの四人がいる。お母さんの話しはこうだ。
今日の朝に紗英先輩にΞガンダムの事を相談されたお母さんはISを預かり、調べてみることにした。しかし、分かったのは名前だけでそれ以外の情報はロックされて見れないと言う。そこで模擬戦を行ってΞガンダムの性能を見たいとのこと。
「坂本から聞いたが、光輝とリムスカヤはΞガンダムのことは聞いているんだな?」
「そうですね。でも紗英ちゃんはこのISを使うことには賛成なの?」
確かにエリスさんの言う通りだ。紗英先輩はISを使うと凶暴化してしまうと言っていた。今はけっこう落ち着いたらしいけどね。
紗英先輩は俯いて考えている。そしてエリスさんの質問に答えた。
「あたしは、使いたくありません。ガンダムって従来のISより強いんでしょ!? それに暴走してしまうあたしが使ったら……」
[確かにガンダムの性能は専用機のISですら凌駕する。使い方を間違えば人を傷つけてしまう。だが、それを――力を上手く使いこなすことも大切だと思う]
「力……ですか?」
[そうだよ。君がそのガンダムを手に入れたのも何かの縁だと思うし、もし君が暴走したとしてもこの子たちが絶対に止めてくれる]
「……みんなが?」
紗英先輩はこうなってしまう自分が嫌だからISを極力使いたくないのもあるけど、周りの友達に迷惑をかけてしまうからなんだろうか? でも紗英先輩――
「紗英ちゃんは心配し過ぎなんだよ。もっと頼って欲しいなぁ」
「エリスさんの言う通りですよ先輩。僕達は先輩を必ず助けます。もっと僕達を信用して下さい……」
「二人とも……織斑先生、あたし……IS使ってみます!」
先輩は勇気を振り絞ってISを使うことを決意してくれた。その瞳は確かなる意志を感じたよ。凶暴化がなんだ! 先輩は先輩ですっ!
「分かった。それではさっそく始めようか……坂本、無理だけはしなくていいからな」
「大丈夫ですっ! 今のあたしなら根拠はないけどそんな気がするんです」
「そうか……光輝かリムスカヤ、坂本の相手をしてくれないか?」
さて、どうしようか? Ξガンダムと直接戦った方が良い模擬戦にもなるし、もちろん見学でも良い経験になる。エリスさんはどうしたいんだろ?
[光輝、Ξガンダムの性能を直接感じたいんだがお前が相手をしてくれないか? 無理にとは言わないが……]
「そういえばアムロさんも知らないガンダムでしたよね? 分かりました。僕が紗英先輩の相手をします」
「光輝ちゃん、よろしくおねがいね♪」
「じゃあ私はピットで見学か。二人の戦闘が見れるなんて良い参考になりそうだし、楽しみだね♪」
「じゃあ光輝、坂本の相手を頼む。坂本、すまないな……」
ISを纏った僕は先にアリーナに出ていた。さて、後は紗英先輩が来るのを待つだけか……。
[光輝、今回は紗英もそうだがΞガンダムの事も情報不足だ。油断せずに気を引き締めていこう]
「分かってます。いつも以上に警戒しておきますよ。僕はΞガンダムより先輩の性格変化の方が気になってしょうがないんです……」
[あぁ。だが、彼女なら力の使い方を間違えないと思う。もし間違えたとしても僕達が止めればいいんだ]
アムロさんとそんな話をしているとピットにいるであろう紗英先輩の感覚が変わった! 強いものと戦いたい意志と守りたい意志を感じる。これが紗英先輩なのか?
「いくぜぇぇ!」
凶暴化? した紗英先輩が叫びながらアリーナ内にやってきた。いつもの先輩とは考えれないような叫び声だけど先輩なのか変わりないはず。
Ξガンダムは全体的に各装甲がHI-νやZZに比べて大きいイメージだ。だが、額にVアンテナがあるのがガンダムであることを印象付けている。ガンダムタイプなのは分かるけど、装甲とか細かい部分が違う気がする。
――RX-105 Ξ(クスィー)ガンダムと判定。推進機構にミノフスキークラフトを装備しており、空中戦闘を得意としている。右手に持っているビームライフルは従来の物より倍の初速を誇り回避は困難。肩部メガ粒子砲、両腕部と両脚部にミサイルユニットを装備。更にファンネルミサイルを搭載しており実弾系のオールレンジ攻撃が可能。尚、Ξガンダムに展開しているシールドエネルギーは特殊で大気の干渉を減らしており、機動性、運動性はISの中で一番を誇ると思われる。その代わり、受けるダメージの量が通常のISより多い。
[ミノフスキークラフトを搭載しただと? まさかΞガンダムは未来のMSか!]
ハイパーセンサーが感知したΞガンダムの性能に驚くアムロさん。こいつは性能が桁違いじゃないか? 火力も半端じゃない上にスピードもある……恐ろしいガンダムだ。
「どうしたんだよ光輝ちゃん、何をそんなに驚いてんだ? さっそく模擬戦を始めようぜ!」
性能にアングリしていた僕に先輩が呼びかける。この口調は普段の先輩から想像もできないよ……。
「貴女は本当に紗英先輩なんですか!?」
「あたしは紗英であって紗英じゃない! そんなことよりさっさとこのISの性能を味わいてぇんだよ。行くぜぇ!」
紗英先輩? はこっちに真っ直ぐ突っ込みながらビームサーベルを左手で抜刀、構えてくる。そのスピードが異常に早かったがなんとか回避に成功した。しかし、瞬間加速並みのスピードだったけどあれがΞガンダムにとって普通なのかな?
「良い反応だなぁ。さぁ楽しもうぜ!」
「待ってください! 先輩だけど先輩ではなってどういうことですか!?」
「んなことたぁ今はどうだっていいだろ。戦いに集中して楽しませてくれよ、光輝ちゃん!」
[光輝、今はこの戦いに集中しろ!]
話も聞いてくれないなんて……。僕はフィンファンネルを全基展開させて先輩に向ける。相手がそうなら僕だってもう容赦しない!
「行けぇ! フィンファンネル!」
「こいつがビット兵器かっ。やってくれるじゃねぇか!」
まだ先輩はISを使いこなせてないのか動きが直線的で攻撃が当たりやすい。でも見る感じからしても移動スピードが常に瞬間加速に近いものだ。それ程Ξガンダムはスピードに特化したISなんだな。
「やっぱり強い奴と戦うとテンションが上がるな。じゃあこっちもファンネルミサイルで反撃だ!」
先輩はそう言うと、回避しながらファンネルミサイルを展開させてファンファンネルに向かわせる。ミサイルの動きは悪くフィンファンネルで撃ち落としていく。それでも先輩は展開し続けて壊そうとする。
[やはり空間認識能力が低いか。セシリアよりも酷いな……]
アムロさんがそんなことを言っている。なんというかもうちょっと良い言い方はなかったのだろうか? 僕自身だってニュータイプの能力が無かったら今みたいに動かせるわけじゃないと思うし……。
僕はフィンファンネルの攻撃を止め収納する。先輩はその行動に驚いたのか動きが止まっていた。
「どうしたんだよ光輝ちゃん?」
「いや……なんか先輩に悪いなって思いまして」
「余計なことしなくてもいいんだよ! でも今回は礼を言うぜ……ミサイルファンネルの操作って難しいし、頭痛もするし助かった!」
「慣れたら大丈夫ですよ! じゃあビット兵器無しってことで続けますか?」
「おう、そうしようぜ! じゃあさっそく行くぜぇ!」
先輩が接近しながらビームライフルで牽制してくる。回避できるけどやっぱり初速が早い……! タイミングが少しでもずれたら当たるな……。出力はZZの方が上か。連射性能はこっちの方が上。ビームライフルもスピードタイプなのか。とことんですなぁ。
僕もビームサーベルを抜刀し先輩に向かう。でも先輩はサーベルを戻してこっちにくる。一体何をするつもりだ? 次の瞬間、先輩は僕の真下に向かっていく。思わず動きと止めてしまった僕を先輩は見逃さなかった。
「こんな攻撃を受けたことはあるかな!?」
「まさか!」
なんとバックパックに装備してあるサーベルラックからビームの刃が真下からでてきた! ギリギリで反応出来た僕はなんとか回避成功! しかしまぁこんな攻撃をしてくるんなんて先輩って凄いな……。
「ちぇ〜やっと光輝ちゃんにダメージを与えれたかと思ったのに……」
「いやいや、今のはビックリしましたよ。危なかった〜」
「じゃあ再開といきますかぁ!」
『そこまでだ! 二人ともピットに戻って来ていいぞ』
アリーナにお母さんの声が響く。もしかしたら先輩が無視して続けるかと思ったら――
「先生がそういうなら終わるしかないか……ありがとな光輝ちゃん! 始めはちょっとテンションあがって話聞けなかったのは許してくれ」
「え、だ、大丈夫ですよ。それじゃあ今答えてください。貴女は紗英先輩なんですか?」
「そうだよ。でも正確には紗英を守る為に紗英が作り出した人格――紗耶っていうんだ。紗英は無意識にあたしを作り出したからあいつはあたしの事を知らないんだ」
「無意識……」
「じゃあ戻ろうぜ光輝ちゃん! まぁISを使う時しかあたしとは話せないけどよろしくなっ! 紗英の事、裏切らないでくれよな!」
そう言うと紗英――じゃなくて紗耶先輩はピットに戻っていった。口は普段の先輩からしたら悪いけど、素直な人なんだな。全然、凶暴化してないじゃん。というかテンションが上がっているだけだと思う。
[さて、僕達もピットに戻ろうか光輝]
「そうですね。アムロさんは紗耶先輩の事どう思います?」
[……紗英を守る為に紗英自身が無意識に作り出した人格って言っていたな。唯とユリみたいな感じはなかったし、大丈夫だと思うよ]
「な、なんで夏兄と生徒会長がここにいるの!?」
「いや〜生徒会室に言った後に盾無先輩に連れられてここに来たんだよ。そしたら模擬戦が始まったばかりだったから見てたんだ」
「んふふ〜そゆこと♪ それと会長は止めてよ。『盾無』か『たっちゃん』って呼んで欲しいな」
ピットに戻って見れば夏兄とあの生徒会長がいたのだ。どうも僕と先輩の模擬戦を見ていたらしい。
「光輝くんってなんでそんなにたっちゃんを警戒するのかな? 良い人だよ♪」
「さすがエリスちゃん♪ 分かってるじゃない〜」
そういってエリスさんに後ろから抱きつく生徒会長。屋上で会った時とはまた違う感覚だよね。何なんだこの人は……。
「光輝ちゃん……盾無ちゃんと仲良くしてね。あたしからもお願い!」
「って紗英先輩がそこまで言う必要はないでしょ!?」
「そんなこと言わないで! 親友だからこそ仲良くなって欲しいの!」
「分かりましたから! あの、か、顔が近いです……」
「約束だからね光輝ちゃん♪」
だって近付いてきて懇願するんだから断るわけにもいかないでしょ!? まぁちょっとずつでいいよね。
「まぁ……この前みたいなことはしないで下さいね盾無先輩」
「さぁどうかなぁ♪ まぁよろしくね♪」
この人といたら凄く疲れそうだよ……極力避けようか。だって証拠に夏兄の顔がさっきから死にそうなんだもん……。
その日の夜、紗英は盾無の部屋で話していた。もちろん、今日の模擬戦でのことだ。
「どうだったΞガンダムは?」
「う〜ん、けっこう光輝ちゃんを追いこんでた気がするんだけど……見ているだけじゃあまり分からなかったなぁ」
「今回の戦闘データから見る限りではΞガンダムは光輝君やエリスちゃんのガンダムも凌駕しそうな感じよ」
「そう……だね。強いのは凄いけどそれで誰かを傷つけたくないな……」
紗英は不安に思う。ISを纏っている時だけ身体の自由が利かないなんてどう考えてもおかしい。紗英はずっとそれが怖いっていうのは紗英の中にある。
「でも、今日は怖くなかったよ。エリスちゃんや光輝ちゃんがあたしを止めてくれるって言ってくれたから――」
その言葉が紗英自身に勇気をもたらした。紗英にとっては最高で最強の言葉である。
そんな紗英を盾無は抱きしめる。高校一年の時、ある事件で紗英は一人ぼっちになった。そんな中、盾無が紗英の前に現れた。盾無を通じて紗英の周りには友達が増えていき、今では事件に関わった生徒とも仲良くなっている。
「あたし、これから変われるかな?」
「そうね。紗英ちゃんがそう努力すれば変われるわ。一人じゃ怖くても仲間がいれば大丈夫でしょ?」
「うん……あのね、光輝ちゃんといるとすっごく落ち着くの。何でかな?」
「それは、彼がそういう人間だからよ」
盾無は千冬から光輝の事を聞いていた。さすがに過去のことは話さなかったが光輝がどういう人間かを聞いたのだ。会って話してみればまさにその通りだった。光輝には周りを落ち着かせることが出来る能力がある。能力といえば聞こえが悪い気がするが、とにかく落ち着くのだ。
「そうなんだ……盾無ちゃんが言うんだからそうなんだね」
紗英は本当に盾無に感謝している。自分を救ってくれた恩人。今では親友とも言えるべき自慢の人だ。この二人の絆は生半可なことでは切ることは出来ない。それほど信頼し合っているのだ。
盾無は愛おしそうに紗英の長い髪を撫でる。
「ん〜、盾無ちゃんに撫でてもらうのは気持ちがいいなぁ♪」
「んふふ、ありがとね♪ 紗英ちゃん、そろそろしちゃう?」
途端に紗英の顔が真っ赤になる。それはもうリンゴみたいに真っ赤に染まってることでしょう。紗英はホントに小さな声で「うん……」と答える。
盾無が紗英を優しくベットに押し倒して――。
説明 | ||
学園祭の催しも決まり千冬に報告する一夏と光輝。千冬から放課後にそれぞれに指示され、そこへ向かう。 | ||
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