「…で、落ち着いた？」

意外な人物の登場で少々…イヤ、かなり取り乱した一刀、落ち着くまで少々時間が掛かったが漸く落ち着き、孫堅の話に耳を傾ける。

「私が劉表の策によって敗北したのは知っておろう？」

一刀は孫堅の言葉に頷いた。孫堅は劉表軍の待ち伏せに遭い、進軍の途中崖上より岩を落とされそれに巻き込まれ落下し命を落としたと伝え聞いている。そしてその敗戦により孫家は求心力を失い、袁術の客将にまで成り下がっている。いずれは独立する為、虎視眈々と機会を窺っているが…

「だが実際はこうして生きている。それはこの娘達が私の命を救ってくれたお陰だ。」

そういって二人の頭に手を乗せる。

「私達が最初気がついた所は見覚えのない場所でした。暫く歩いていると河があり、上流より多くの兵達が流れてくるのが見えました。その中には自力で上がろうとする鏡華様の姿がありました。最初は蓮華様かと思い、救出しようとしましたが流れの所為もあり中々助け出せなかったんです…」

「ちょうどそこへ華佗が通りかかって一緒に引き上げてくれたの。だけど鏡華様はもうほとんど体力をなくしていて危ない状態だったわ。そしたら華佗が急に針を取り出してなんか叫んで針を刺したら鏡華様の体が光って顔色も良くなりだしたわ。あの時は驚いたわ〜」

「そうこうしていると今度はあの化け物達がやってきたわ。『良い男見っけ〜♪』とか言って…」

その時の事を思い出したのか小喬はげんなりしていた。

「それから私達は鏡華様の療養の為、漢中に行く事にしたの。それから暫くしたら華佗達が重傷の皇帝陛下を連れて戻って来た時にはびっくりしました。更に驚いたのは北郷さんが生きていて、この件に関わっている事でした。私達は連合にいる蓮華様達の下に行こうか迷いましたが、鏡華様は特に動こうともしなかったのでそのままここにいる事にしました。」

身体が治ったのに何で戻らなかったの？と一刀が問えば、孫堅はこう答えた。

「私が目を覚ましその後孫家がどうなったかと聞けば、袁術を頼り客将になっている言うではないか。私が今更のこのこ戻った所でどうしようもないし、それに連合に合流した所であのお子様の顔を見るぐらいなら、ここにいて刻を待ち、独立する時に現れて慌てふためく姿を拝んでやろうかと思ってね。それに華佗達にも恩義もあったからな。」

「で、あんたは今までどうしていたのさ？一応、『アレ』から話は聞いてはいたけど大まかにだからね、あんたの口から直接聞かせてよ」

小喬の問いに一刀は今までの経緯を話していった。

「ふ〜ん。あんたもまあ色々と大変だったのね。でも良かった、雪蓮様達がご無事で。」

「うん、皆元気でやっているよ。早く会えると良いな。」

「そうね。早いとこ袁術の所から独立してもらわないとね。」

「まあ当分は様子見だね。何時でも合流出来るよう準備だけは怠らないようにしないとね。」

「はは、がんばってね。俺は立場上、何も出来ないけど応援してるよ。」

息巻く小喬とそれを宥めながらも、雪蓮達に会える事を楽しみにしている大喬。それを見ながら一刀は良かったこの子達も無事で、と内心安堵していた。

「それにしても最初、この娘達の話を聞いて驚かされたよ。聞いた時ちょっと頭の可哀想な娘かと思ったよ、だが一生懸命に真っ直ぐ話す眼を見ていると嘘は付いてないと思ったが、中々納得できなかった。だが卑弥呼の話も聞いてなんとか…まあ理解したと言うか、そう事もあるんだと無理矢理納得したよ。」

孫堅の言う事も尤もで、まあこんな話し直ぐに信じろというのも無理な話しだ。それは仕方在るまい。と一刀は苦笑していた。

そして再会と新たな出会いを祝して宴が開かれた…

それから滞在中、一刀はこの世界で出会った雪蓮達の話を大喬達に聞かせて過ごし、滞在の期間が過ぎると使節団と共に帰って行った。

そして洛陽に帰ると、動きがあったと報告を受けることとなる…