真と虚の神様の童話。〜似ていない双子〜 |
遠い昔の遠い遠いとある所に、ある姉妹がおりました。
姉の名前は真実、妹の名前は虚実と申しました。二人は双子でしたが、全く似ていませんでした。
姉の真実は大変真面目で言う事は本当の事しか喋りませんでしたが、妹の虚実は大変不真面目で言う事も嘘ばかりでした。その所為か二人の仲は大変悪いものでした。
妹が笑って姉に話しかけます。
「あたし、姉さんなんて大嫌いよ」
姉は怒って妹に答えます。
「あたしも嫌いよ」
いつもそんな調子でした。けれども二人は離れて暮らしたりはしませんでした。二人は、どんなにお互いを嫌っていても何時でも何処に行くのも一緒に居なければならなかったのです。
村人達は、皆、姉の真実に同情していました。不誠実な妹と何時も一緒にいなきゃいけないのですからね。
「あの姉さんは本当にご苦労なこったな」
ある日、一人の村人が、こう洩らしました。
「なんですって」
妹はそれを聞いて村人に尋ねます。
「ねえ、おやじさん。あんたは、あたしと姉さん一体どちらが好ましいかしら?」
村人は答えました。
「そりゃあ、姉さんの方さね。真面目でしっかりとした真実の方が好ましいよ」
「まあ、随分なお言いだこと」
虚実はくすくす笑って言いました。
「虚実に泣く者は多いけど、真実に泣く者も沢山いる事をご存じ無いようね。真実の残酷さときたら、まるで氷の棘よ。あたしは皆が苦しまない様、ずっと姉さんを後ろに連れているのに、誰があたしに感謝してくれて? あたしが姉さんに傷つけられても皆知らん顔。嗚呼、なんて世間は素晴らしい!」
そう言うと妹は姉を連れて去って行きました。
今日も姉妹は連れだって歩いています。
妹が笑って姉に話しかけます。
「あたし、姉さんなんて嫌いよ」
姉は怒って妹に答えます。
「あたしも嫌いよ」
その時、妹の本当に悲しそうな顔を見た者は残念ながら居ませんでした。
説明 | ||
創作童話。去年くらいにリハビリに書いたもの。 ちょっと死神さんから離れてみましたが系統は一緒。 |
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