真・恋姫†無双 外伝:風の流るるままに その4
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季節は春。

 

うららかな午後。暖かな陽射しが降り注ぎ、シャツ1枚でも平気そうだ。

 

「……」

 

実際に、脱いだジャケットはベンチの背もたれに掛け、その上に両腕を置き、空を見上げる。青い空は澄み、終わりなど見える筈もない。

 

「空が青いのは、オゾンの所為ですよ、おにーさん」

「……」

 

そして、その雰囲気を台無しにする少女が1人。

 

「なに言ってるのよ、風。一刀様なら、そのくらいご存知に決まってるじゃない」

 

いや、2人。

風と呼ばれた少女は、俺の身体の右側にもたれ掛かり、言葉を交わしながらも、うつらうつらと舟を漕いでいる。

風と呼んだ少女は、俺の左側に座って背筋をピンと伸ばし、それがこの世の真理だと言わんばかりに告げる。

 

「なぁ……」

「なんですか、一刀様」

 

左を向いて口を開けば、満面の笑みで応える。その頬は、朱に染まり。

 

「なんで、こんな事になってるんだ?」

 

隣に座るは、猫耳フードの少女。一言で言えば、惚れられた。

 

 

 

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※※※

 

話は数日前に遡る。

 

「――――それで、今日は何処に行くんだ?」

 

昨年の秋口に、なし崩し的に同居――決して同棲ではない――をする事になった少女・風と共に街を歩く。

 

「折角のお休みだから、おにーさんとデートにでも行きたかったのですが、日用品が少々不足しておりましてー」

 

小さなショルダーバッグからメモ帳を取り出す風。歩きながら覗き見れば、ティッシュペーパーや洗剤など、確かに日常的に使用する消耗品のリストが書かれている。

 

「おかーさんからメールで、今日は近所のドラッグストアでセールをしていると教えてもらいましたので、おにーさんに荷物持ちをして貰おうかとー」

「それは構わないが……」

 

こうして一緒に出掛けるのも、共同生活を円満に進める為だ。それ以外の意図は、断じてない。

 

「ついでに、1週間分の食材も買っておこうかとー」

「まぁ、風の料理が美味いのは確かだからな」

「おにーさんたら、本当の事を言っちゃって……仕方がないですねー。今日はおにーさんの好きな肉じゃがにしてあげます」

「風の和食は美味いからな。楽しみだ」

「隠し味は秘密ですよ?」

「こっそり教えてくれてもいいんじゃないか?」

 

俺の言葉に、風は握る手にぎゅっと力を籠めて口を開く。

 

「もう、おにーさんたら……隠し味は、風のおにーさんへの愛情です」

「こりゃ、一本とられたな」

 

HAHAHA!(SE)

 

そんな仲睦まじい会話を繰り広げつつ。

 

………………………………って、そうじゃないだろ。

 

 

 

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5箱詰めのティッシュを2つ右手に、洗剤やら何やらが詰まったビニール袋を左手に。さらに食材のたっぷりと詰まったエコバッグを肩に掛け、俺は風と歩く。

 

「…………買い過ぎじゃないか?」

「おにーさんは力持ちですのでー」

 

受け流された。

 

「せめてティッシュは持ってくれてもいいんじゃないか?」

「風は箸より重い物は持った事がないのですよ」

「じゃぁ、風の学生鞄には何が詰まっているんだ?」

「それはホラ、思春期の乙女らしく、夢と希望と、あと恋心が詰まってます」

「意外と軽いんだな」

「重い恋愛がお好みでしたら、ヤンデレ味を出してあげますよー」

「却下で」

 

そんな会話を繰り広げつつ、家路を歩く。まだ、正午にもなっていない。休日という事もあり、繁華街は人で賑わい、皆がそれぞれの余暇を楽しんでいる。そんななか。

 

「――――――おや?」

「どうした?」

 

風が、足を止めた。視線は少し先に向いている。

 

「風のクラスメイトを発見しました」

「よし、別の道を行こう」

「あそこの猫耳少女です。風の旦那さんです、って自慢してもいいですか?」

 

人の話は、ちゃんと聞こうな。

 

「まぁ、よいではないですか。風だって、思春期の女子ちゅ……げふんげふん、女子●●生なのです。友達に彼氏を自慢したい気にもなるというものですよ」

「何故言い直し……いや、そうだな。風は●●生だもんな」

 

ビルの影に黒スーツが見えた。ツッコミはやめておこう。

 

「じゃぁ、少しばかり寄り道ですねー」

「仕方がないか……って、アレ?」

「どうされました?……おやおや?」

 

どうせ風の学校で噂が立ったとしても、俺の素性まではバレやしないだろう。風だって、そのくらいは弁えているはずだ。

そんな事を考えながら再び風の級友に視線を向ければ、気になる光景が目に入る。

 

「……ナンパですかねー?」

「かもなぁ」

 

見れば、風のクラスメイトは、チャラそうな男2人に話しかけられていた。遠目で見てもなかなかのレベルだと分かる少女だ。ナンパされるのも、別段不思議な事ではない。だが。

 

「あらら、腕を引っ張られてますねー」

「最近のナンパは強引なんだな。まぁ、風の押しかけ女房っぷりは強引のレベルを遙かに通り越していたが」

「おぉ……ついにおにーさんも、風を女房と認めてくれたのですね……風の瞳からは涙が溢れそうです」

「はいはい……って、そうじゃないだろ」

 

そうじゃない。アレはどう見ても、ナンパの域を超えている。

 

「明日桂花ちゃんが学校を休んでも困りますし、助けに行きましょーか」

「以外と風も薄情だな」

「何を言っているのですか。風の心はカスピ海よりも深く、新宿のビル群の隙間から見える空よりも広く、浅間山よりも大きいのですよ?」

「物理的な形容でなければ、頷いてやろう」

 

って、そうじゃねーよ。

 

「おにーさんも、大概にトラブル体質ですねー」

「そのトラブルの1つが自分だって理解してるか?」

「さぁ、風のお友達を助けて、風の評価を上げに行くとしましょー」

 

そういう事になった。

 

 

 

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「――――放しなさいよっ!」

 

ビルの間の路地に連れて来られた少女――桂花というらしい――が抵抗するも、見た目大学生くらいの年齢の男の腕力に敵う筈もなく、腕を捻り上げられる。

 

「いいじゃねーか、ちょっとくらい。俺達とカラオケにでも行こーぜ?」

「誰がアンタ達なんかと行くもんですか!

 

物陰に隠れて見ていれば、どう見てもナンパどころではない。

 

「カラオケは嫌なの?じゃぁ、ビリヤードとかボーリング?俺、マジ上手いぜ?」

「だから、アンタ達と遊びに行くわけがないって言ってるのが分かんないの!?ほんっと、男ってのは馬鹿ばっかりなんだから!」

 

断られても気丈に誘う男だったが、もう1人はそうでもないようだ。

 

「なぁ、もういいじゃねーか。さっさと黙らせて、ヤっちまおうぜ」

「なんだよ、お前も気が短いな。女がノって来なきゃつまんねーだろ?」

「俺は無理矢理ヤるのが好きなんだよ」

「うわ、えげつねぇ」

 

下卑た笑いを浮かべる男たち。どうしようもないな。

 

「おにーさん、そろそろ助けに行かないと、桂花ちゃんの貞操がピンチですよ?」

「わかったよ」

「頑張ったら、風がご褒美をあげましょー」

「はいはい」

 

風に促され、俺が出て行こうとした、その時だった。

 

「とりあえず、黙らせとくか。オラっ!」

「きゃぁっ!?」

 

ジタバタと暴れる少女の頬に、平手打ち。乾いた音が、路地裏に響いた。

 

「え……」

「いいからテメーは黙ってヤラれてりゃいいんだよ。オラ、こっち来い」

 

彼女も、まさか殴られるとまでは思っていなかったのだろう。痛みすら感じられずに、呆けている。

 

「……おにーさん」

「なんだ、風」

 

風が、俺の袖をぎゅっと握る。

 

「風が許可します。ゴールデンボールの1つや2つ潰すくらいにやっちゃってください」

「任せろ」

 

なんともえげつない。だが、俺も同じ気持ちだった。

 

 

 

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「放してっ……お願いだから、放してよ……」

「いきなり大人しくなったな」

「まぁ、ヤりやすくていいんじゃね?」

 

涙目になる桂花と、クズの笑いを浮かべる男2人。俺は音もなく彼らに近づき、がしと2人と肩を組んだ。

 

「よぉ、何やってんだ?」

「「……へ?」」

 

彼らからすれば、相当に驚きの瞬間だったことだろう。何せ、気配を感じる暇もなく、肩を掴まれたんだからな。

 

「何やってんだ、って聞いてんだよ」

「ひぃっ!?」

 

ゆっくりと言葉を切りながら、肩を握る腕に力を籠める。腕の先から、ギシギシと骨が軋む音が聞こえてきた。

 

「さて、警察にでも行こうか、クソガキ共」

「もう110番はしているので、そのまま抑えていてください」

「流石は風だ。仕事が早いな」

「妻ですのでー」

 

後ろからやって来た、風が声を掛ける。

 

「だいじょぶですか、桂花ちゃん?」

「風…どうして……」

「にゅふふ、風は色々と一流ですのでー」

 

5分と経たずに警官が到着し、未遂とはいえ現行犯でチャラ男共を逮捕する。風は友達に付き添い、俺も一応風の保護者として、警察署まで同行するのだった。

 

……………………保護者、だよな?

 

 

 

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少しばかり時は流れ、場面は本日の朝。

 

「という訳で、今日はおにーさんとデートです。風の心はトランポリンの如くに何度も跳ね、幸せを噛み締めながら――――」

「誰に説明してんだ?」

 

明後日の方向を向いて独り言を口走る風に若干の恐怖を感じつつ、俺は彼女と2人、街を歩いている。

 

「最近、思うところがあるのですが」

「どうした?」

 

ふと、風が俺を見上げてきた。俺も立ち止まり、風の話を聞く体勢になる。

 

「困ってる女の子を助けてフラグを立てるとか、漫画でもゲームでも使い古されてると思うのですよ」

「…………」

 

それって、俺の所為なのか?

 

「もっとこう、新しい出会いの方法を模索しなければ、読者は離れていってしまいますよ?」

「だからって、異次元の発言を繰り返すのもどうかと思うんだが……」

「でも、ページを稼ぐには、あと10行分くらいは喋らないといけません。ネタを思いつかないくせに、上手く間をもたせようとする書き手にも問題があると思うのですけどねー」

「とりあえずオチも何も思いついてないのに書き始めるからこうなるんだよ」

「これで3行……いえ、風のこの台詞で4行は稼げました」

 

たまに、風が電波を受信する事はあるが、これは流石にやり過ぎだろう。

 

「とっとと次に行けばいいのにな」

「でもでもー、どうでもいいページがスクロールなしで終わるのも切なくないですか?」

「そりゃそうだけどさ」

 

そんなメタメタな会をしながら歩いていると、聞き覚えのある声に呼び止められた。

 

「どーせそんな流れだろうと思ってました。ほら、ちゃっちゃとフラグを回収してくださいー」

「新ヒロインが出るからって、投げ遣りなのもどうかと思うぞ」

 

そろそろ終わりにしないと、コメント欄がこのページに対するそれだけで埋まりそうだ。

溜息を吐きながらも、俺は背後を振り返った。

 

 

 

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「一刀様っ!あぁ、一刀様、一刀様ぁっ!!」

「ぐほぉっ!?」

 

振り返った瞬間、俺の名を呼ぶ声と共に衝撃が腹を襲う。

 

「こんなところでお会い出来るなんて、これはもう運命です!今日は何をしてらっしゃたんですか?お散歩ですか?よろしければ、この桂花が一刀様のお散歩のお相手を致しますが、いかがですか?えっ、よろしいので!?ありがとうございます!でしたら、今日はブライダルの見学など――――」

「いい加減にしなさい、この猫耳花畑野郎」

「――――痛っ!耳を引っ張らないで!?」

 

散々捲し立てられたところで、風が桂花の猫耳フードを引っ張った。

 

…………え、あれって本物なの?

 

「……あー、死ぬかと思った」

 

鳩尾にまだ鈍い痛みが残っている。腹を摩る俺を放置して、風と桂花は言い合いをしていた。

 

「おにーさんは風の旦那様なので、手を出さないでください、この泥棒猫さん」

「なに言ってるのよ!風はまだ●●生じゃない。その年で旦那を持てるわけないでしょ」「桂花ちゃんこそ何を言っているのですか。風の親も認めた、いわゆる許婚というやつです」

「親って、あのいつも電波を受信してる人たち?」

「人の家族を指してアンテナ野郎とは酷い言い草ですねー」

 

言ってない。

 

「――――とりあえず、落ち着けお前ら」

「はいっ!」

「はいー」

 

桂花は元気よく、風は横槍を入れられて不満たらたらに返事をする。

 

「人の視線が痛いから、まずは別の場所に行こうか」

「畏まりましたぁ」

「そですねー。桂花ちゃんはともかく、風は人に見られて感じる変態さんではないのでー」

 

何故かうっとりとした表情で返事をする桂花と、どこから取り出したのかわからない飴を舐めつつ返事をする風。

 

逃げてしまいたい。

 

 

 

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※※※

 

そんなこんなで、商店街を抜けて公園まで来たわけだ。いつだか風が日射病にかかっていたベンチに座る。右に風、左に桂花と逃げられない。

 

「――――で、これからどうしようか?」

 

ぐだぐだと過ごす事、どれほどか。途中、会話を切り上げて買ってきた飲み物もなくなっている。風は緑茶、桂花は紅茶のペットボトルを抱え、俺の足下にはコーヒーの空き缶が置いてある。

 

「そろそろ帰りましょうか。夕飯の準備をしなければなりませんしー」

「あら、風は家の手伝いがあるのね。でしたら一刀様っ、これから私と夜のデートに行きませんか?」

「甘いですよ、桂花ちゃん。風がご飯を作る相手は、おにーさんなのです。よって、桂花ちゃんは1人寂しく家に帰ってください」

 

あぁ、めんどくせぇ。

 

「ずるいわよ、風!私も一刀様のお宅に伺ってもいいですか?」

「駄目です。うちには既に桂花ちゃんがいますのでー」

「なに訳の分からない事言ってるのよっ」

「これがもう、わがまま放題のダメダメちゃんで、風もおにーさんも困ってるのです」

「意味がわからないわっ――――」

 

ここまで書いて、そういえば猫の名前が桂花だったと思い出した。

 

 

 

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あとがき

 

 

猫の名前に関する※禁止な。

 

という訳で、だいぶ前に書いたのを発見したので、続きを書いて投稿。

 

もう、ねw

 

やっぱり変に登場人物を膨らませるとめんどくさいわwww

 

そんなこんなで、またいつか。

 

バイバイ。

 

 

 

説明
そんなこんなで、お久しぶりです。
もう、グダグダ。

ごめん、間違えて2回投稿してもうたorz
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コメント
>>IFZ様 してないと思いたいw (一郎太)
なんだ、ただのヤンデレフラグもとい√に突入しただけか。(IFZ)
>>氷屋様 ソフ倫に囚われてしまったか……(一郎太)
>>腐ったパン様 やっちまったぜ(一郎太)
>>ma0様 桂花→一刀のデレは違和感があるんだが、華琳様がいないとそうでもない件について(一郎太)
あれ?S学生だとお(ガシッ)あれ?ちょ・・・はなせ〜〜〜〜〜〜〜!(ズルズル)(氷屋)
空が青いのはオゾンのせいではなく、光の散乱ですよ〜(腐った食パン)
風も桂花も最高に可愛い! そして、桂花に手を上げてんじゃねぇよクズ二人(# ゚Д゚)(帽子屋)
>>アルヤ様 そこそこ広くて高くて深いのだと思いますよ(一郎太)
>>M.N.F.様 さーせんwww(一郎太)
>>motomaru様 もともと没ネタだったので、収拾がついていない……(一郎太)
>>叡渡様 誰もやらないのを書くのは難しいのだよ(一郎太)
>>アロンアルファ様 わかんないですw(一郎太)
>>たこきむち様 あざっす!でも名前を間違えている件についてwww(一郎太)
>>summon様 なのかなぁ……(一郎太)
>>一丸様 落ち着けw(一郎太)
>>azu様 さーせんorz(一郎太)
>>ファイズ様 明命は猫ネタで終わるからなしでw(一郎太)
相変わらずソ○倫怖ぇ。あと微妙なサイズだな、風の心。(アルヤ)
<(?ヮ?)> 「新ヒロインが出るからって、投げ遣りなのもどうかと思うぞ」(M.N.F.)
あったらすぃいいいいいい(motomaru)
まさかのデレ桂花wなに、このままどんどん増えるの?(アロンアルファ)
やっぱ一朗太さんのシリーズ物は全部好きです!!(たこきむち@ちぇりおの伝道師)
え?あの猫耳って本物なの…(summon)
風が素敵です!!風が素敵です!!風が素敵です!!風が素敵です!!・・・・・・(無限ループ)・・・・・ハアハア・・・・・いつも通り、楽しく読ませていただきました。続きや他の作品を楽しみに待ってます。・・・・・風が素敵です!!(一丸)
二重投稿めずらしいですね・・・あのページに触れさせない為の一郎太殿の罠だと思ったのに・・・(azu)
桂花が一刀のことを様付けとはこれは天変地異の前触れか?私はてっきり様付け+猫関連で明命かと思いましたよ・・・(ファイズ)
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