魔法少女リリカルなのは 〜英雄の魂を持つ者〜 プロローグ
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(何て反応すれば良いんだろうな?)

 

少年の目の前に存在しているのは彼の生活拠点となる真っ赤なガレオン船型の宇宙船『ゴーカイガレオン』。

 

彼、『大海 ソウマ』は俗に言う『転生者』と言うよりも、『前世の記憶』を持っていると言った方が正しいのだろうか?

 

覚えている記憶は微かな前世の記憶と、死後の記憶と言うべきゴーカイガレオンともう一つの『宝』の事についてだ。

 

「入るか…」

 

それ以上考えてもしょうがないと思ってソウマはゴーカイガレオンに乗り込み、置いてある宝箱を開け、その中の一つを手に取るとソファーに腰を下ろしながら、取り出した物を眺めながら前世の最後の記憶を思い出す。

 

(…謝られても逆にこっちが申し訳ないよな…)

 

頭の中に浮ぶのは『すまなかった』と謝る合計34人の赤い戦士達…スーパー戦隊の歴代レッド達と彼等を代表していた初代スーパー戦隊のリーダー『アカレンジャー』だった。

 

話によれば、『レジェンド大戦』と呼ばれるスーパー戦隊の世界…ゴーカイジャーの世界で行われた宇宙帝国ザンギャックと数々の悪から地球を守ってきた34のスーパー戦隊の戦いの際に、彼等がザンギャックの大艦隊を倒した時に力を合わせて使った必殺技の余波が前世のソウマが死ぬ原因を作ってしまったらしい。

 

そして、すまないと思っていても力を失ってしまった彼等には何も出来ないと言う話で有り、精々がこのゴーカイガレオンを初めとするゴーカイマシンとレンジャーキーを必要になった時にソウマの元に来る様にすると言う事らしいが…彼等の世界のゴーカイジャーがどうなるのか非常に気になる所だ。

 

はっきり言って、こっちの物がレプリカで有ると心の底から祈りたい気分で一杯だった。

 

どうでも良いが、自分の持つ前世の記憶については完全に偶然なのだろう。

 

「ったく、オレはどうすれば良いんだよ…? あんた達の力を受け取ったら…家族を殺した奴等の事を…恨めないだろう?」

 

レンジャーキーの一つを握り締めながらソウマはそう呟く。思い出すのは、あの日…両親や兄弟を失い燃え落ちる家から一人だけ助かった時の光景…。形見として彼の手元に残されたのは、両親が自分を逃がす時に渡した青い石だけ。

 

確かに、自分の手の中には家族の仇を討つ為の力が有る。だが、自分の手の中に有るその力の象徴である、それは…とても軽く…そして、とても“オモイ”。

それもその筈だ、それの持つ重みは地球と言う星を、そこに住む多くの人々の命を、平和を守ってきた戦士達の疑う事の出来ない正義の意志と護る為の力、世界の…生命の重みだろう。

 

(オレは…どうすれば良いんだろうな…?)

 

誰にとも無く問い掛ける。戦う為の力は此処に有る。だが、自分にはまだ家族の敵討ち以外に…力を持つ理由が無い。

 

だが、自分の手の中にある力はそんな事の為に使うべき力じゃない事は何より理解している。彼等が地球を守る為、その為に二百人にも満たない人数で大艦隊と戦った事を…こうして握っているだけでも、悪から平和を守る為に彼等が戦ってきた意味が、思いが伝わってくるのだから。

 

全身に感じる疲労と共に力が抜けていく。本来なら、五人で暮していたこの船の広さが寂しさを感じさせる。

この場所(ゴーカイガレオン)に辿り着くまでの疲労が一気に襲い掛かってきたのだろう、そのまま全身を襲う眠気に負け、ソウマはソファーに体を預けながらゆっくりと目蓋を閉じていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フワァ…」

 

ソファーから体を起こしながら伸びをして、外の景色を確認する。疲れに負けて一日以上寝ていたのだろう、既に外は日が沈み夜になっていた。空腹を感じて食べ物を探すが食料は無い様子だった(その際に幾らかの金銭は見つけた。)。

 

「もうこんな時間か。仕方ない、腹も減ったしコンビニで何か買ってくるか…。…何か妙な夢を見た気がするけど…まあ良いか」

 

そう言ってゴーカイガレオンから出かけようとした時、置かれている五つの携帯電話型の変身ツール、『モバイレーツ』の存在に気が付き、その中の一つとレンジャーキーの一つを手に取り出て行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンビニの店員は小学生の年齢のソウマがこんな時間に一人で買い物に来た事に対して怪訝な表情をしたが、それ以外は特に問題も無かった。

 

買った菓子パンを齧りながらゴーカイガレオンへの帰り道を歩いていると、妙な音が聞こえて来る。

 

「(…今のは…)面白そうだな、行ってみるか」

 

そう言いながら、ソウマはその音が響いた場所に向かって走っていくと、

 

「なんだ、あれ?」

 

思わずそう呟きたくなってしまう光景が有った。

 

そこには、ソウマと同じ位の年齢のツインテールの女の子が杖の様な物を持って黒い妙な物体と戦っている光景が広がっていた。

 

「まだ寝ぼけてるのか…オレは?」

 

ピンク色の光の羽根を足に生やして飛んでいる姿など見てはそう思うしかないだろう。…確かに、スーパー戦隊の中にも空を飛ぶ事が出来る者は居たが、あんな魔法の様な真似は…いや、魔法使いの戦隊も存在しているが、あの様な事は出来ないだろう。

 

ソウマが目の前の光景を疑問に思っていると、少女は再び地面に降り、その瞬間、再び黒い物体は少女へと襲い掛かるが、少女の前に現れたバリアに阻まれて動く事は出来ない様子だった。

 

「……なんか、大丈夫そうだし…帰って二度寝するか。ってか、寝て全部忘れよう…」

 

前世の記憶等と言う物を初めとして色々と妙なモノを持っているソウマとしても、目の前に広がっているそれは理解不能な光景だった為に現実逃避する事に決めたのでした。

 

そんな事を思っていると、黒い物体を阻んでいるバリアに皹が入っていく。女の子もそれに対して驚いている様子だった。

 

「チッ!」

 

それを見て自分の考えの浅さに対して舌打ちし、ソウマは少女へと向かって走っていく。完全に皹が入っていたバリアが砕ける前に少女を突き飛ばして、黒い物体から助ける。

 

「ふぇ? 誰?」

 

「ったく、何か面倒な事に巻き込まれたな」

 

目の前に居る黒い物体が自分を敵と認識したらしい事に気が付き、モバイレーツとレンジャーキーを取り出す。それの使い方は完全に理解している。後は使うだけだ。

 

「豪快チェンジ!!!」

 

『ゴーカイジャー!』

 

それによって、ソウマの体は大人のそれと変わらない身長に変わり、その姿を海賊をモチーフとした赤い戦士へと変える。

 

それは別の世界では海賊の汚名を誇りとする五色の宝と浪漫を追い求める35番目のスーパー戦隊のリーダー、

 

「ゴーカイレッド!」

 

高らかに己の名を名乗り、

 

「海賊戦隊、ゴーカイジャー!!!」

 

背負いし戦士達の名を叫ぶ。

 

 

だが、

 

 

「ふぇ、“戦隊”って、一人だけだよ」

 

「“戦隊”って、一人だけじゃ…」

 

「それは、言うな! そんな事は言われなくても、よーく分かってるよ!!!」

 

助けた少女『高町 なのは』とフェレットに変身した少年『ユーノ・スクライア』の二人からそんな突っ込みを入れられたソウマなのでした。

 

気を取り直すように一度咳払いし、改めて、

 

「さあ…」

 

黒い怪物と対峙しながらソウマの変身したゴーカイレッドは手の中に有るサーベル状の武器『ゴーカイサーベル』を上に放り投げ一回転して降りて来た物を受け止め、

 

「派手に行くぜ!!!」

 

ゴーカイレッドへと変身した瞬間に、ソウマの心の中に流れ込んできた戦士の記憶に従い、鍵に宿った偉大なる戦士達の記憶に従い、そう叫ぶ。

 

怪物がゴーカイレッドへと向かって来るが、ゴーカイレッドはゴーカイサーベルを振るい、それにカウンターを打ち込む形で怪物を叩き切る。

 

「オラ!!!」

 

振り返りながら何度もゴーカイサーベルで切り裂く。ゴーカイレッドによってバラバラに切り裂かれ地面を黒く汚す様に地面に落ちた筈の怪物が再生しようと一箇所に集まっていく。

 

「っ!? こいつ、だったら、これならどうだ?」

 

叩ききったはずの怪物が再生した事に気付いて思わず舌打ちしてしまう。素早く新たなレンジャーキーを取り出し、

 

「あの! あれは『ジュエルシード』と呼ばれる『ロストロギア』の思念態です。攻撃するだけでは倒せません! 封印しないと」

 

「そう言う事はもっと早く言え!」

 

何故か小動物(フェレット)が喋っている事に対して突っ込みを入れる事と、フェレットの言う専門用語に対する疑問を放棄しつつ思わずそう叫んでしまう。

 

攻撃しても倒せないのなら、確かに封印するしか無いだろう。幸いと言えば、手元に取り出したレンジャーキーは、比較的特殊な部類に入る為に封印も可能である可能性が有る。

 

「豪快チェンジ!」

 

 

『マージレンジャー!』

 

 

モバイレーツにキーを刺し込み、その姿をゴーカイレッドから別の姿へと変える。

 

新たに変えた姿は同じく赤の戦士、五色の魔法使い『魔法戦隊マジレンジャー』の一人、赤の魔法使い『マジレッド』へとその姿を変えた。

 

「燃える炎のエレメント、赤の魔法使い! マジレッド! …なんてな」

 

フェレットの言葉に対して疑問は残るが今は目の前の相手に集中するべきと意識を正面へと向ける。

 

「おい、『封印しないと』なんて言った以上、封印の手段は有るんだろうな?」

 

ゴーカイレッド改めGマジレッドはフェレット…ユーノへとそう告げて怪物へとマジレンジャーの武器『マジスティック』を向け、

 

「レッドファイヤー!」

 

そこから炎を放ち、怪物を炎に包み動きを封じる。

 

「続いて…これだ! 豪快チェンジ!」

 

 

『シーンケンジャー!』

 

 

新しいレンジャーキーを使い姿を変えたのは、

 

火の力を持った六人の侍達の殿様、『侍戦隊シンケンジャー』の火のモヂカラを宿した赤き侍『シンケンレッド』へと姿を変える。

 

「シンケンレッド! なんてね」

 

変身した姿を名乗ったGマジレッド改めGシンケンレッドは赤いディスクの様な物が付けられた刀『シンケンマル』を何処からか取り出し、

 

「火炎の舞い!!!」

 

刀を振るい怪物を焼きつくさんと炎を放つ。魔法の炎とモヂカラの炎、スーパー戦隊の世界に於いて邪悪を焼き尽くしてきた『火』の力を二種も受けていながら怪物はまだ健在だった。だが、

 

「これだけ受けたら足止めには十分すぎるだろ?」

 

その攻撃の目的は単なる時間稼ぎで有り、倒す事は目的ではない。シンケンレッドへの変身を解除したゴーカイレッドが白い服の少女とフェレットへと向き直ると、

 

「リリカル・マジカル!」

 

既に彼女の方では封印の為の準備は終わっているらしく、

 

「封印すべきは忌まわしき器、ジュエルシード!」

 

その行動は最終段階に入っていた様子だった。

 

「ジュエルシード! 封印!!!」

 

ゴーカイレッドの中にある先ほど変身した時に会得したスーパー戦隊の一つ『魔法戦隊マジレンジャー』についての知識の中にある『魔法』とは違う魔法によって、怪物は桜色の光の帯によって締め上げられ、

 

『Stand by Ready』

 

「ジュエルシード、シリアル]]T! 封印!!」

 

『Sealing』

 

貫かれ、消滅させられ、本体と思われる小さな青い宝石だけを残して消えた。

 

「あれがあの化け物の本体か…」

 

「これがジュエルシード、レイジングハートで触れて」

 

フェレット…ユーノに言われた言葉に従い白い少女…なのはは彼女の持っている機械的な杖『レイジングハート』を翳すと、ジュエルシードと呼ばれた青い宝石はレイジングハートに吸い込まれる。

 

それを見届ける様になのはの服装が変わりレイジングハートと呼ばれた杖も赤い宝石の様な形へと変わる。

 

「あれ? 終わったの?」

 

「そうみたいだな」

 

なのはが実感が湧かない様子で呆けた声を漏らすと、軽く息を吐きながらソウマもゴーカイレッドへの変身を解除する。

 

「はい……貴方達のお蔭で……ありが…と…う……」

 

力尽きた様子のユーノはそう告げた後、気絶する。

 

「あっ、あの!」

 

「ちょっと待て、何か聞こえて…これは、パトカーのサイレンか?」

 

聞こえてくる音を聞いて心の中で溜息を吐く。

 

こんな時間に事件現場で保護される小学生二人…そうでなくてもこんな時間に外に居る時点で十分に補導の対象になる。付け加えて周囲を見てみると…

 

「…拙いなこれは…」

 

ソウマの使った魔法の力とモヂカラの火の力の影響は幸いにもそれ程酷くは無いが、十分に怪物が暴れた後はかなり酷い状況になっている。どう考えても拙い。

 

「あー、そっちの君、急いで此処から離れた方が良いな」

 

「え、う、うん!」

 

「じゃあ」

 

そう言って手を振りながらその場を離れようとした時、

 

「あっ、待って!」

 

なのはに呼び止められるが、

 

「聞きたい事が有るなら午後四時にこの近くの公園で。そこで待っている」

 

それだけ言い残し、ソウマはその場から急いで離れて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく…

 

説明
地球を守った34のスーパー戦隊の魂を受け継いだ豪快な奴等の活躍する世界とは別の世界、35のスーパー戦隊の力は前世の記憶と共に家族を奪われた一人の少年の元に。今、魔法とスーパー戦隊の大いなる力が交差する物語の幕が上がる。
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魔法少女リリカルなのは スーパー戦隊 クロスオーバー 

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