アナタが嫌いな九つの理由
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「邪魔だな」

 

あなたへの思いが。

 

「邪魔だなぁ」

 

ずっとずっと付きまとう知らない気持ちが。

 

「邪魔、だなぁ…………」

 

嫌いなのに。あなたの事なんて、大嫌いなのに。

 

大嫌いなのに。

 

 

 

【アナタが嫌いな九つの理由】

 

 

 

「アナタ、もしかして美術館にいた子じゃないの!?」

 

ねえ、ねぇ。どうしてあなたがここにきてしまったの?

私、あなたなんかにここに来て欲しくなかったわ。

あなたなんて邪魔なのよ。

 

「女の子一人じゃ危ないわ」

 

邪魔よ。邪魔なの。優しいあなたなんて。

だって、そんなのずるいじゃない。

イヴがあなたを好きになるのなんて当たり前だもの。

 

「あ、あら……? イヴ……?」

 

嫌いよ。嫌いだわ。イヴに好かれるあなたなんて。

私とイヴが外に出たら、イヴは絶対悲しむわ。

私とあなたが外に出たら、イヴはあなたのいない世界を嘆くのよ。

それは、あなたも同じでしょう?

あの時、壊れたあなたを取り戻せたのは、イヴだけなんでしょう?

 

 

 

私じゃ、駄目だったんでしょう……?

 

 

 

「ギャリーのバラと、交換よ」

 

ねぇ……ねえ。じゃあ、どうすればいいの?

初めに会ったのが私ならよかったの?

あなたを助けたのが私じゃないといけなかったの?

だって、おかしいじゃない。友達の作り方、書いてあったのに。

 

どうせあなたはこんな無茶だって断らない。イヴの為に。

そこにいるのが私だったら、あなたはどうしていたかしら。

考えるまでもない事ね。きっと、きっと。

 

「断れるわけ、ないじゃない」

 

あなたはそうは言ってくれないわ。

ああ、どうしてかしら。せっかく大好きな青いバラを手に入れたのに。

涙が、止まらないわ。

 

こんな顔、イヴにも、ギャリーにも見せられない。

だって私は「悪い子」だから。悪い子は、泣いたって慰めて貰えないから。

私は走る。二人が知らない場所に。遠くに。とにかく遠くに。

 

わからないわ。わからないの。どうしてこうなったのか。

イヴと友達になりたくて。その為にはギャリーが邪魔で。

だからギャリーが嫌いで。いなくなってくれればいいと思って。

 

でも。ギャリーがいなくなったって、もうイヴは私を好きになってくれない。

ギャリーだって、私の事を嫌いになったわ。……ううん、きっと最初から嫌いだったのよ。

 

ギャリーが心配するのはいつだってイヴで。

ギャリーが先に名前を呼ぶのもイヴで。

 

「……つき」

 

私だって、はじめの内はいい子だったじゃない。

どうして……どうして、どうして!

いい子はみんなから好かれるって、幸せになれるって!!

 

「うそつき……っ!」

 

そう、書いてあったのに…………。

 

 

 

「…………あは、あははは」

 

 

なんでかな。胸が痛いの。

イヴに嫌われたからかしら。一人ぼっちだからかしら。

……違うわ。違うの。

全部、ギャリーの所為だわ。何もかもギャリーが悪いの。

 

あんな時にまで優しいギャリーが悪いの。

あんな時にまでイヴの事を思えるギャリ―がいけないの。

 

「……ヴばっかり」

 

ずるいわ。……ずるい。

手の中のバラを強く握れば、造花にはない棘が私を刺して傷つける。

でも、おかしいの。てのひらが、驚くほど痛くない。

 

それよりずっと。ずっとずっと、ずっとずっと胸が痛くて。苦しい。悲しい。

「痛い」が「苦しい」のは知ってる。でも、「悲しい」のはなんでだろう。

 

わからない。わからない、けれど。

ギャリーがいなくなったら。この痛みは、なくなるんだろうか。

 

「……………………」

 

大好きな、青色のバラ。大嫌いな、ギャリーの、バラ。

握りつぶすのも、叩き付けてしまうのも。どちらも、なんだか嫌で。

 

「……そうだ、花占い」

 

一枚の掛けもない青いバラは、さぞかしきれいに散ってくれる。

うん、そうしよう。ひらひらと舞う花弁を見れば、きっと、変な痛みも消えてくれる。

 

「悲しい気持ちも、消えるよね。きっと」

 

花弁の一枚をつまんで、一つ、考える。

花占いは、恋占い。

恋は二人でするもので、占いの片方は私でなくちゃいけなくて。

 

じゃあ、もう片方は。

 

「……ギャリー……?」

 

どうしてか。浮かんだ顔はイヴではなく、大嫌いなはずのあいつ。

頭を振って振りはらってみても、浮かんだその顔は決して消えてくれない。

 

ああ、「また」だ。また、知らない気持ちで胸も頭もいっぱいになる。

ちりちりする。ぐるぐるする。わけがわからない。

 

「わからない……けど」

 

どうしてもどうやっても消えてくれないなら、仕方ないから、私の相手をさせてあげるわ。

 

「ギャリーは、私のことが……」

 

花占いは、恋占い。隠れた気持ちも、お花が全部知っている

だから、もし。あなたが私の事を好きなら、仕方ないから私も少しは考えるわ。

 

でも、勘違いしてはけないわ。

「仕方なく」だもの。貴方の事なんて、本当は、……きらいで、嫌いで。

…………そうよ。私は。

 

「好き」

 

誰かの為に勇気を振り絞れる貴方が嫌い。

 

「嫌い」

 

イヴに優しい貴方が嫌い。

 

「好き」

 

見た目の割りに力持ちな貴方が嫌い。

 

「嫌い」

 

イヴを一番に考える貴方が嫌い。

 

「好き」

 

自分より先に誰かを心配できる貴方が嫌い。

 

「嫌い」

 

イヴに好かれている貴方が嫌い。

 

「好き」

 

嘘が嫌いな貴方が嫌い。

 

「嫌い」

 

イヴが大切な貴方が嫌い。

 

「好き」

 

嫌い。

 

「………………あと」

 

きらい。キライ。

嫌いだから、あいつが、私をどう思っていたって。そんなこと。

 

「いちまい……」

 

だから、最後の一枚だって、さっきまでと同じようにちぎれる、のに。

 

「…………」

 

痛い。

 

「……だって」

 

さっきよりもずっと胸が痛い。さっきよりもずっと苦しい。

悲しくて悲しくて、涙が止まらない。

 

「わたし、だって」

 

力の緩んだ手のひらから、一枚だけ花弁の残ったバラが落ちる。

千切れない。千切りたくない。わけがわからない。

 

「きらい……!」

 

ギャリーの所為だ。知らないうちに、ギャリーが私になにかしたんだ。

こんな、こんな。わけのわからない痛みをよこした貴方が。

 

「だいきらいよっ、ばかぁ……!!」

 

嫌いで、大嫌いで。仕方ないの。

説明
最近流行の美術館探索ホラーゲーを以下省略。
金髪の子の花占いを捏造したらハッピーエンドのフラグが見えた。
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