記憶のライダー07 混乱のD/ネガわず記憶(おぼ)える電車王 |
〜聡里Side〜
「俺、参上!」
「とうまがおかしくなっちゃったんだよ!?」
「ちょ、アンタ何がどうしたのよ、目の色まで変わってるわよ!?」
いきなり様子が豹変した当麻くんに驚く美琴ちゃんとインデックスちゃん。
でも、僕はなんとなく予想がついていた。
「いきなり憑依するのはやめてください、モモタロスさん!」
僕がそう言いハリセンで頭を引っぱたくと当麻くんから砂があふれる様に出てきて、
その砂が怪人になった。
「ほ、本当にモモタロスなんだよ!?」
「すっごい、電王のイマジンじゃないの!サイン頂戴サイン!!」
インデックスちゃんと美琴ちゃん、自分が好きなライダーに会って
テンションがうなぎのぼりなのは判るけど、当麻くんを気遣ってあげようよ……
「お、そうか? へへ、俺も有名になったもんだなぁ!」
「とか言ってる場合じゃないでしょバカモモ!」
と、リアル水平飛び膝蹴りがモモタロスに叩き込まれ、モモ悶絶。
放った張本人の少女は当麻くんのほうを見て深々とお辞儀し、謝罪。
「すいません、ウチのバカモモがご迷惑おかけしました……」
「あ、いえそんな事はいいんですが、貴女はだれでせうか?」
当麻くんに言われ、少女は自己紹介をする。
「あ、自己紹介がまだでしたね。私はハナって言います。
この時間に逃げ込んだ『ネガタロス』を追いかけてきたんですけど、
遅かったみたいですね……」
「ええ、ついさっきこの男からメモリを奪って過去に飛んじゃいました。
で、少々嫌な予感がするんですが、飛んだ日付は……?」
「あ、この日付です」
そういいハナさんが見せてきたカードに書かれていた日付は、よりにもよって。
「翔太郎さんたち、ダブルの『ビギンズナイト』……!
まさか、ダブルを『消す』つもりか!?」
その日付は、資料で読んだ翔太郎さんとフィリップさんが始めてダブルに変身した日。
ダブルの『ビギンズナイト』その日だった。
「ハナさん!僕も連れて行って下さい!
デンライナーで過去へ飛んで、ネガタロスを止めます!!」
僕がそう言うと、ハナさんは少々困ったような顔をしていた。
「え、でもチケットがないとデンライナーへは乗れない規則なんですが……」
「ハナくん。それは問題ありません」
そう渋い声を放ち倉庫(だった廃墟)に入ってきたのは、
何を隠そうデンライナーのオーナーだった。
「「オーナー(さん)!」」
「聡里くん、君が『仮面ライダーメモリー』なのですね?」
「はい、その通りです」
僕が言いつつメモリを見せるとオーナーは満足げに頷いた。
「ならば君にはむしろこちらから協力を願わなければならないのですよ。
彼、ネガタロスの持つメモリはわれわれの力では壊すことができません。
しかし、その最後の一押しを君にしてもらいたいのです」
「なるほど……でも、良太郎さんか幸太郎さん、優斗さんではダメなんですか?
彼らの必殺技なら威力は十分だと思いますけど」
「彼らですか……彼らには、別の用があり他の世界に行って貰っています。
別の世界でも、大きな事件が起きているので」
そういわれ、納得。でも、ここで一つ懸案事項が残っていた。
「でも、美琴ちゃんや当麻くんたち学園都市の子供達はどうしましょう。
まさか、この世界に放置しておくわけにも行きませんし」
「その心配は無用です、とミサカは結論から説明してみます」
僕が疑問を言ったとたん、デンライナーの中からもう一人美琴ちゃんが現れた。
いや、彼女は。
「君は、『妹達(シスターズ)』の一人だね?」
「はい。ミサカはミサカ10385号です。とミサカは自分の識別番号を名乗ります」
彼女はどうやら『妹達』の中で10385番目に生まれたクローン体らしい。
「実は、この世界のドーパントが彼女たちの世界に干渉した時に、
ネガタロスが彼女らの世界に意図的に介入したらしいの。
それで『妹達』は自分達の一人が居なくなったのに気づいて、
私達がこの子に教えられて、それで気づいたんです」
コハナさんの説明に僕も納得。ついでにミサカ10385号の頭を撫でてあげる。
「よく知らせてくれたね、ありがとう。
君が居なかったら、過去が変えられてしまう所だったよ。助かった」
そういい10385号を撫でると、なぜか顔を赤らめて顔を背け、
「別に、私はあなたの為にしたわけではなく
お姉さまや上位個体の為にしただけであって。
と、ミサカは顔を背けそっぽを向いてみます」
と、本当にそっぽを向いてしまった。少々漏電してるみたいだけど大丈夫かな?
「そういうわけで、彼女たちは私達が責任を持って元の世界に送り届けます。
でも、こうなったからにはまずネガタロスをどうにか止めないと……」
ハナさんが唇をかんで悔しそうな顔をする。
それはそうだろう。捕まえる目前で目的のイマジンに逃げられてしまったのだから。
「つまり、僕が片ァ付ければ良いんですね?」
語気が少々荒くなった僕の質問に、ハナさんは驚いた顔をしていた。
「とりあえず、僕の攻撃で対応できるなら、やります。多分行けますよ。
僕は今すぐにでも行こうと思います。
そうすれば、この世界も学園都市の世界も、ダブルも助けられますから」
その言葉に、デンライナー組は驚いていた。
「ダブルを救うとは、どういうことですか?」
オーナーの質問に、僕は翔太郎さんたちが現在置かれている状況を説明した。
「成程、翔太郎くんとフィリップくんが異次元に……」
「ええ。しかも助け出すためには、ネガタロスが持っていったメモリを
ブレイクするしかありません。だから、僕も行きます。
いいえ、行かせてください。アイツだけは、今は許せません」
その時、聡里以外の全員が聡里の雰囲気が変わったのを感じた。
当麻は、聡里から黒い気配が湧き上がってきたように見えた。
一歩通行は、陽気だった聡里が自分と同じ(・・)気配を発するのを訝しく思った。
美琴は、今までの聡里が当麻のようだと思っていたが、
この時の聡里は一方通行に良く似ていると感じていた。
インデックスは、本当に自分に食事を与えてくれた聡里かと思わず疑った。
しかし、そんな感情を一瞬で殺し、聡里はデンライナーに飛び乗った。
「……彼にも何かあるようですね。では皆さん。デンライナーへご乗車下さい。
間もなく出発します」
オーナーのその言葉で、その場に居た関係者たちはそろってデンライナーに乗車した。
〜デンライナー食堂車内〜
「うおっ、テレビで見たとおりだ、すっげぇ!」
「オーナーはいつもここでチャーハンを食べてるのね……」←感動
「私もチャーハン食べたいんだよ!」
「ミサカも食べたいっ!てミサカもミサカもチャーハンを注文してみる!!」
「これが、本物のデンライナー……」
上から順に、当麻くんと美琴ちゃん、インデックスちゃん、ラストオーダーちゃん、そして僕の感想でした。
「ようこそデンライナー食堂車へ。 私はナオミでーす!」
「ナオミちゃ〜ん、コーヒーちょうだーい!」
モモタロスさん、飛び跳ねながら早速コーヒーをねだる。
「モモタロスさんたちは戦う準備をしていてください。オーナー、運転は僕が。
方法はメモリに教わります。チケットとパスを貸して下さい」
僕の台詞に頷き、オーナーはネガタロスのチケットが入った電王のパスを貸してくれた。
「ありがとうございます。それじゃ、変身してから行きます」
[MEMORY!]
どうやら、僕が変身するのを当麻くんたちが期待していたみたいだったからね。
サービスサービスっと。
「変っ身」
[MEMORY!]
ガイアウィスパーと共にダブルのメモリ六種のメロディが同時に流れ、
僕は仮面ライダーメモリーへと変身した。
「じゃあ、パスお借りします。少々飛ばしますから、準備していて下さいね」
その台詞を置いて、僕は先頭車両へ向かった。
「これが、デンバード。よし。メモリーメモリ、データ強制インストール。デンライナー」
[MEMORY! INSTALL!!]
ガイアウィスパーと共に、僕の脳内に知識が流れ込んでくる。
「く、あ、頭がッ……!」
頭が割れるように痛むけれど、気にせず『記憶』をインストールし、
僕はデンバードに跨りパスをセットする。
するとデンライナーのフロント部分に日付……
ビギンズナイトの日付が表示され、デンライナーはその時間に向け疾走する……
〜聡里Side Stop〜
〜Wのビギンズナイト当日・ミュージアム所有のビルの対岸〜
「ほう、ここがダブルの始まりの地か……ここを潰せば、俺の目標の一つは終わりだ」
そう言い、ビルに攻撃をしようとするネガタロスだが、
そこにデンバードが走ってきて彼を弾き飛ばした。
「貴様は、いつかの赤鬼か」
「鬼って言うんじゃねぇ! 久しぶりだな俺の偽者! 行くぜ!」
そういい、モモタロスはベルトを巻く。
「変身!」
[SWORD-FORM]
モモタロスの周りをフリーエネルギーが包み装甲が実体化されるとそこには、
『仮面ライダー電王・ソードフォーム(以下電王S)』が立っていた。
「へへっ、俺、参上!行くぜ行くぜ行くぜ……!?」
電王Sが決め台詞を言い斬りかかろうとしたところで、
電王Sの後ろから弾丸が飛んで行きネガタロスに直撃した。
「御託はいい。メモリを出せ」
〜聡里Side〜
僕は、その時物凄く怒りを感じていた。ネガタロスには勿論、自分にもだ。
「御託はいい。メモリを出せ」
その台詞と共に、メモリーマグナムを構えソイツに発砲する。
「消えろ。」
「がっは、貴様!何を「消えろ。」
「消えろ。消えろ。消えろ。消えろ。
消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ……」
無心で銃弾を放つ。
何発も。
何発も何発も何発も何発も。
しかしネガタロスも黙ってやられるだけではなかった。
「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
彼は叫びメモリを取り出したのだ。
[DEMENTION!]
「ソレを、寄越せ」
「誰が渡すか!」
[DEMENTION!]
そして、ネガタロスはそのメモリを使用、
というよりメモリと一体化してしまい新たな怪人、
『ネガディメンション・イマジン(以下NDイマジン)』が生まれてしまう。
NDイマジンは空間そのものを切り取り、こちらを抉り取ろうとする。
電王のデンバードはその空間に飲み込まれてしまった。
「俺のデンバードぉぉぉぉぉ!」
……電王Sが叫んでいるのは、もうお約束で。
「チッ、厄介な。なら、アレだ。
メモリイジェクター、カブトメモリ、イジェクト」
[EJECT! KABUTO!]
そのコールと共に射出されたカブトメモリを空中で掴み、
ロストドライバーMに叩き込む。
「チェンジ!ライダー!」
[CHANGE KABUTO-RIDER!]
僕の声を認識し、僕の姿はカブト・ライダーフォームへ変わる。
「そしてコレだ」
カブトメモリを、ロストドライバーMのアビリティスロットに入れ、発動する。
[ABILITY! CLOCK-UP!!]
クロックアップを発動し、
空間を切り取るのが間に合わないほどの速度でNDドーパントに肉薄する。
『な、なんだと!?』
「片付けるよ、お前」
[KABUTO! MAXIMUM-DRIVE!]
僕はカブトメモリをマキシマムスロットに放り込み、マキシマムドライブを発動する。
「ライダー……キック」
[RIDER-KICK!]
ゼクターから響くあの声を鳴らし、僕の回し蹴りがNDイマジンに叩き込まれる。
「これでメモリブレイクできたか……!?」
そう思った瞬間、NDイマジンが立ち上がったのだ。
「なっ!?」
『アクハ……アクハエイエンニフメツダァァァァァァァ!!』
叫びと共に、NDイマジンが『巨大化』し、
電王のギガンテスハデス・ヘル・ヘブン・アビスが融合した姿が
さらに凶悪化したような姿になった。
「あークソッ!メモリとイメージの暴走か! だったらデンライナーで……」
僕がそう言ったとき、モモタロスさんの叫びを思い出した。
「しまった、コントロールユニットのバイクが無いと、
デンライナーで応戦はできない……っ!」
それに気づき、僕は単身融合ギガンテスに向かっていった。
〜デンライナーSide〜
「ちょっとアンタたち!デンライナーで応戦しなさいよ!
聡里さんが死んじゃうじゃない!!」
デンライナーの外に出てメモリーたちの戦いを見ている助けられたメンバー。
しかし、流石に大型の敵であるギガンテス、
それも融合体相手にライダー二人ではやはり不利らしく相当苦戦していた。
「オーナー!なんとかならないんですか!?
デンバードの代わりになるバイクとかは……!」
当麻が聞くと、オーナーはにやりと笑い、こう告げた。
「では、彼にプレゼントを渡すとしましょうか」
そう言いなにやら懐からリモコンを取り出すと、そのボタンを押した。
すると、デンライナーの最後尾に連結されていたコンテナ車の扉が開き、
中にある『モノ』が見えた。
「これって……」
「とある存在からメモリーに渡すよう言われていましたが、
今まで見つからなかったためずっと牽引していたのですよ。
しかし、今が渡すときでしょう。では、コレを届けに……」
オーナーがそう言うと、皆まで言わせずミサカ10385号が『ソレ』に飛び乗り、
システムに介入しエンジンを始動させた。
「10385号君?」
「ミサカはあの人を助けるためにコレを届けて来ます、
とミサカはフルスロットルで発進させます!」
そういい、ミサカ10385号はライダーたちの戦場へ『ソレ』を届けに駆けた。
〜メモリーSide〜
「クソッ!いい加減ちょっとは消耗してくれ!」
「やっぱデンライナーじゃないとダメだろこりゃ!」
僕とモモタロスさんはいい加減限界が来ている。
そして一瞬足が止まったとき、そこに融合ギガンテスの羽ミサイルが飛んできた!
「「しまった!」」
僕らが万事休すかと思ったその時、
横合いから大きなマシンが飛び出してきてその羽ミサイルを受け止めた。
しかしその反動は大きかったらしく、
乗っていた少女……ミサカ10385号は吹き飛ばされてしまった!
「ミサカ!間に合えぇぇぇぇぇっ!!」
僕はクロックアップまで使用しミサカ10385号の落下地点へ先回りし、彼女を受け止めた。
「10385号!なんでこんな無茶をしたんだよ、君は!?」
彼女はフラフラになっていながら、乗ってきた『ソレ』を指差した。
「貴方へのプレゼントをお届けに来ました……とミサカは痛みを無視して貴方へこれを託します」
「プレゼントって……これは!」
『ソレ』とは、仮面ライダーフォーゼに出てきた支援メカ、
『パワーダイザ−』の色をグリーンクリスタルにしたようなメカと、
その上に接続されたこれもグリーンクリスタルカラーのバイク、
『メモリーボイルダー』だった。
「コレを届けるために、君はわざわざ……。判った。託されたよ。
モモタロスさん!10385号をお願いします!!僕はアイツを止めておきますから、
その間にこのバイクでデンライナーを動かして下さい!!」
そう叫ぶと、僕はメモリーボイルダーをダイザーに似たメカから切り離し、変形させる。
[DIZER-M]
そう音声が流れると人型形態『ダイザーモード』へ変形した。
「これは……フォーゼのと同じように人間単体でも動かせるけど、
ボイルダー系バイクのフロント部とドッキングできるのか。
でも、今はコイツで! 行くよ、『ダイザーM』!!」
その掛け声一喝、僕はパワーダイザーで融合ギガンテスに掴みかかり、
足を掴みジャイアントスイングで投げ飛ばす!
「ガァァァァァァァァァッ!?」
「悪いけど、デンライナーから少々離れていてもらうよ!」
僕も追いかけ、羽ミサイルを回避しつつミサイルを撃ち込む。
「固定武装にミサイルがあってよかったよ!
できればジェットスライガーでもあればよかったんだけど……!」
しかし、それでもやはり火力不足は否めずじわじわと追い詰められてしまう。
そして、ギガンテスの腕で捕まってしまい握りつぶされそうになってしまった。
「しまった、コイツ、離せぇぇぇぇぇっ!!」
叫びながらもがくけど脱出できない。その時、後ろから鳥型ミサイル、
『バーディミサイル』が飛んできてギガンテスの腕を切断した。
それで脱出した僕は、後ろから来るものを見た。
「デンライナー・ゴウカ!」
そう、それはデンライナーゴウカの戦闘用車両四両だった。
「モモタロスさん、10385号は!?」
「安心しろ、ちょっと打っただけだってよ。医務室に寝かせてきたから心配すんな。
行くぜ、聡里よぉ!」
「了解!」
空中にデンレールを生成しつつ走ってきたデンライナーに飛び乗り、
僕は一時デンライナーの運転席に飛び込む。
「モモタロスさん、一気に行きましょう!」
「おう、お前が合わせろよ!!」
電王Sがそういったとき、メモリーメモリからガイアウィスパーが鳴り響いた!
[DEN-O!]
「お?なんだなんだ?」
「これって……! これなら、いける。よし!イジェクト、電王!」
[EJECT! DEN-O!]
その音声と共に打ち出されたメモリ、『電王メモリ』を掴み、電王Sに渡す。
「モモタロスさん、これをメモリーボイルダーのメモリスロットに入れてください。
ソイツで決めます!!」
「なんだか判らねぇが判ったぜ! 聡里、お前はあのロボットに戻っとけ!!」
「判りました!」
僕は運転席から飛び出し、再びダイザーMに乗り込み起動。
「モモタロスさん、こっちはOKです!やっちゃいましょう!!」
「わーったぜ!」
[DEN-O! MAXIMUM-DRIVE!!]
ガイアウィスパーが鳴り響いたとき、周囲に新たに四両の時の電車が現れた。
それは、デンライナー『イスルギ』、『レッコウ』、そして『イカヅチ』の前後車両。
それらの車両がそれぞれ、イカヅチ(前)、レッコウ、イスルギ、ゴウカ四両、
イカヅチ(後)の順で連結し、連結デンライナー『電光石火』になった!
「よっしゃ、行くぜ聡里! クライマックスのクライマックスを見せてやれ!」
「はい! ダイザーM、メモリセット!マキシマムモード!」
[DIZER! MAXIMUM-POWER!]
ダイザーMにメモリをセットしたことによって、メモリのパワーが纏われ緑色に輝く。
そして、デンライナーも電流、光、水流、炎の四つを纏い融合ギガンテスに突撃する!
「行きます!」
「俺達の必殺技!!」
「「メモリーバージョン!!」」
僕とモモタロスさんの叫びが重なり、ギガンテスに直撃する瞬間に
デンライナーが纏っていた四つの力とマキシマムエネルギーを
ダイザーMの右手に纏わせ、デンライナ−の速度を乗せて思い切り叩き込んだ!
そして、叩き込まれた融合ギガンテスは殴られた部分から砂になって消滅し、
その過程でメモリがはじき出されメモリブレイクされた。
「終わった……?」
「ああ、やったじゃねぇか聡里! 俺達の勝ちだぜ!!」
モモタロスさんに言われるけど、全然自覚も何も無かった。
「そうだ!10385号の様子が心配なので早く止めてください!」
僕の言葉に、モモタロスさんは冷やかしてくる。
「なんだなんだ?あの女に惚れちまったか?」
「いいから早くしてよモモさん!!」
やば、ちょっと恥ずかしい。
〜デンライナー医務室〜
「ミサカ!大丈夫!?」
僕が駆け込むと、彼女はベッドの上で穏やかな寝息を立てていた。
「よかった、大丈夫だった……」
思わずその場でへたり込む僕。と、丁度その時彼女が目を覚ました。
「ここはどこですか、とミサカは今自分が居る場所について考えてみます」
よかった、記憶障害とかもなさそうだ。
「ここはデンライナーの医務室。ありがとう。
君が届けてくれなかったら僕らは勝ててたかどうかわからないよ」
僕がそういい微笑むと、10385号はまた顔をそらし、
「貴方のそういうところがいいんですよね、
とミサカは他のミサカとは違う人へ思いを寄せてみます」
と呟いた。
「何か言った?」
「な、何でもありません、とミサカは少々火照った顔を隠しますッ!」
と、布団をかぶってしまった。なんなんだろう。
そして、当麻くんたちがとあるの世界へ帰る時がやってきた。
「それじゃ聡里さん、翔太郎さん、フィリップさん。お世話になりました」
「こうしてお別れ、ってなるとなんだか寂しいわね……」
「さとり、しょうたろう、フィリップ!今までお世話になったんだよ!」
代表で三人が挨拶をしてきた。
「うん、君達も元気でね!」
「お前ら、これから無茶すんな……って言っても無駄だろうな。
死なないようにしろよ!」
「僕も超能力を見られて面白かったよ。いつかまた、会えるといいね」
返事は僕、翔太郎さん、フィリップさんの順。
ちなみにW組はあの後、僕らが帰ってきたとき事務所に戻ってきていて、
翔太郎さんいわく、真っ黒な空間で閉じ込められていたんだとか。
そして挨拶が終わると、彼らの一人が歩いて来た。
「ん、どうしたの?えっと……10385号ちゃん」
「皆さん、聞いてください。私はこの世界に残ります、とミサカは爆弾発言を投下してみます」
本気で爆弾発言だった。
「ちょ、ちょっと10385号ちゃん、どういうこと!?」
「そうだぜ!君の元の家族は!!」
ちょっ翔太郎さんの方は地雷ふんでるって!
「ミサカは軍用の量産型クローンですから家族は居ません」
「あ……悪い、そんなつもりじゃなかったんだが……」
「いえ、ミサカはそれはいいんです。
ですが、このままお姉さまたちの状況が判らないのは皆さん嫌では無いでしょうか、
とミサカは思いやり深いようなことを言ってみます」
その言葉に、僕は少し納得した。
「たしかに、僕らの世界との接触で目を付けられてしまっているかもしれないけど……」
「それに、なにより」
彼女は、一拍置き僕の腕に腕を絡め、こう言った。
「ミサカは聡里さんと一緒に居たいのです。とミサカは自分の気持ちに正直になってみます」
……はい?
なにやらややこしい発言に、一同沈黙。
「私、ミサカ10385号は聡里さんと一緒に居ると、暖かい気持ちになるんです。
またこの感覚を失いたくないとも思っています。ですからこの世界に残らせて下さい。
とミサカは自分でも良く判らない感覚を感じつつ懇願してみます」
いや、あの、ミサカさん?
「でも、体の方は大丈夫なのかい?僕の知ってる話では、君達『妹達』は体が……」
「そちらの心配も無用です。ミサカはあの医師の治療で、
普通の人間ほどには生きられる、と保障された個体ですから。
とミサカは自身の健康を表明します」
あの医師……ってことはあのカエル顔の医師か。なら安心、かな?
「私、ミサカ10032号からもお願いします。
彼女の気持ちはネットワーク全体で感じられる程強いものです。
と、ミサカは彼女を擁護する発言をしてみます」
「私もそう思う!10385号の気持ちはすっごく強いの!これはなくしちゃいけないって思う!
ってミサカはミサカは彼女のために自分の意見をアピールしてみる!」
10032号と打ち止め(ラストオーダー)の援護を受け、僕は流石に折れた。
「10385号の事を一番よくわかってる君達が言うなら、その方がいいんだろうね。
翔太郎さん、フィリップさんもそれでいいですか?」
僕は探偵コンビに話を振った。
「僕はかまわないよ。彼女の意思は尊重してあげよう」
「俺もかまわねぇ。聡里、しっかり面倒みてやれよ?」
翔太郎さん、完璧に面白がってるだろ〜……
「……わかった。これからもよろしくね。
それじゃ、一つプレゼントをあげようか、10385号ちゃん」
「プレゼント、ですか? とミサカは疑問を感じて首を傾げます」
そういい首をかしげた彼女に、僕はこう言った。
「名前だよ。ミサカ10385号じゃ呼びづらいし、他人行儀だしね。
御坂 美夜子(みさか みやこ)。この名前でどうかな?
10385号の『385』から取ったんだけどね。」
僕がそう聞くと、彼女はまた頬を赤らめ、嬉しいです、と返してきた。
「……ありがとうございます、聡里さん」
彼女はそういい、僕の手を握ってきた。
「うん、これからもよろしくね、美夜子」
[と、まあそんな感じにドタバタした終わりになったけれど、]
[彼らは無事学園都市に連れて帰って貰えたみたいです。]
[こっちに残った美夜子は、かなり有能な助手として仕事してくれています。]
[ただ、少々世間一般の常識に疎いところがあって、]
[そのあたりはフィリップさんに似ていますかね。]
[ちなみにあの変態……もとい、犯人は警察に引き渡しました。]
[あんな動機のために世界の危機が引き起こされるなんて。]
[まったく、嫌になっちゃいます。]
[さて、今日も今日とて仕事、しますか!]
「……今回のレポートはこんな感じかな。美夜子ちゃん、コーヒーお願いできる?」
「勿論です、とミサ……美夜子はキッチンへ向かいます」
美夜子ちゃんは有能、冷静、気も回ると本当にいい子です。
そして、学園都市の状況を教えてくれる事もあり、今の事務所には欠かせない存在。
ただ、時々拗ねたようになるのは、どういう事なんだろう?
「コーヒーをお持ちしました、と美夜子はデスクにおいてお伝えします」
「ありがとう、美夜子ちゃん。気が利くね」ニコッ
「……そういうことを無自覚でやるあたり鈍感ですね、と美夜子は少々照れつつ拗ねてみます」
こんな感じ。
でも、こんな日常も、いいかな。と最近は思えるようになってきた。
こんな日常が続くといい、かな。
続く。
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