《インフィニット・ストラトス》〜二人の転生者〜
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第二十一話 俺の正体と俺のIS

 

約十年前――秋・六歳、束さんと冬姉・十四歳

 

「う〜熱いよ〜」

「全くだな。しかし束のやつ、何時までまたせるつもりだ」

現在の季節は初夏、僕と冬姉は束さんに言われて海が見える街まで電車に乗ってきたのだが……如何せんあの人のことだ、ただ単に海で遊ぼう!とかいう理由かもしれない。しかしそれじゃあ何故夏と箒はいないのかと言う事になる……わかってる、あの人が何故僕と冬姉しかおば無かったのか……でも待ち合わせの時間はとっくに過ぎているのだが……

「まあいい、アイツの気まぐれは今に始まったことじゃない。気長に待とう」

「そうですね〜」

「そういえば秋葉、学校のほうはどうだ?もう慣れたか?」

「ええ、結構それなりに楽しくはあります……授業が退屈すぎますが」

「ま、まあお前の場合既に異常なほどの頭だからな。束と過ごしてて結構耐性はついたつもりだたが……まだまだのようだな。しかし束のやることに振り回されて疲れないか?」

冬姉は少し呆れたような苦笑いをしながら笑う。

「そんなことはないですね。寧ろ束さんとそういうことをやってる時のほうが楽しいですよ。色々意見が食い違ったりしますがそれでも最終的には二人の納得行くような形にはなるし、僕のやりたいことが出来る場所と理解してくれる人は少ないですから」

「そうか……ところで宿題はもうやったのか?」

現在夏休み、小学校では算数や国語のドリルが渡される。中学校でも同じらしい。でも中学校は夏休み明けにテストというものがあり、夏休み前にも期末テストというのがあり三十点以下だと補習授業らしい。

「ドリルは貰った次の日に終わりました。あとは自由研究とか工作とか、そんなところが残ってます。自由研究は《宇宙の始まり》っていう題名にしようと思ってます」

「宇宙の始まり、か。どんな内容なんだ?」

僕は立ち上がり、日陰から出ると空に両手を上げ、雲一つない青空を見上げる。

「この地球は殆ど誰もが行ったことあるとこばかりです。でも宇宙は違う、地球の他にも月や太陽、火星や木星、その他いろいろな星があります。僕はそんな宇宙が何故出来て、どうやってそんな星々が出来て、その宇宙が今どうなってるのか、行き着く先には何があるのか……僕はそれを知りたい!だから調べるんです!」

「……だから、今作ってるのか?その為の物を」

「そうですね。まだまだ完成には程遠いですけど……なんとか形にはなりましたよ?」

「そうか……」

僕は上げた手をそのまま額に当てて光で目を焼かれないように守った。その瞬間、陽気な独特の挨拶をする人物がやってきた。

「ちーちゃ〜〜〜ん!!会いたかったよ!!さあ、二人の愛を確かめ合おう!!はぐはぐしよう!!」

ボフッ!という効果音が聞こえるほど冬姉の上半身にタックル並に突っ込んだピンクの長髪にウサミミをした女性――少女が頬ずりをし始めた。

「ええい!束!いいかげんにしろ!!」

冬姉は全力を持ってその少女――篠ノ之束さんを引き剥がすと少し息を荒々しくしていた。そしてその束さんはと言うと――

「も〜、ちーちゃんたら、そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに〜」

なんというポジティブシンキング。そしてこのパターンはかなり長くこの漫才が続くパターンである。しかしこの二人、冬姉は怒りで暑そうで束さんは服装で暑そうだ……服装?水色と白を基調としてレースなどをふんだんに使った《不思議の国のアリス》を連想させる服装だ、しかも長袖。真夏ですよ?

「束さん、待ち合わせ時間をかなり遅れているんですが……とりあえず早く涼みたいです」

僕がそう言ったところでこちらに気づいたようで「やあしゅーくんも久しぶりだね」と言う普通の人からしたら素っ気ない挨拶をされた。しかし束さんに関してはこの素っ気ない挨拶でもかなりいい印象なのだ。何せ赤の他人や興味のない人物には無言だし、話しかけられてもガン無視だったりします……ついでに今束さんが普通に接するのは冬姉、夏、箒、自分、春華ぐらいである。見れば分かると思うが束さんは自分の親すら無視するのだ……結果的に只今勘当状態なのだが中学校までは義務教育のため通わせてもらっているのだが、それ以外は束さんに全く関与しておらず、束さんは一人暮らし状態なのだ。

「挨拶はいいのではやく案内してください。僕と冬姉だけを呼び出したって言うことは……完成したんですよね?インフィニット・ストラトスが?」

「むっふっふ〜、よくわかってるじゃないか。もう微調整が終わっていつでも乗れるようにしてあるよ。しかしそのことを日本政府に話してインフィニット・ストラトス――ISの事を話したんだけどね……信用されなかったよ」

そりゃそうだ、いくら天才といっても何処の馬の骨ともしれない中学女子の言うことを簡単に信じるほど政治家は馬鹿じゃない。しかしこの場合は逆に馬鹿のとる行動だった。何故なら、その中学女子は何をやるかわからないからである。そして予想通り、束さんはありえないことをした。

「だからその力を見せつける為に世界中のミサイル、4682発を日本に狙いを定めて発射させてもらったよ」

束さんは陽気にそう言ったが僕は額に手を当て、大きなため息を吐いてからこう言葉をつなげた。

「……束さん、貴女にはたまに失望しますよ……そんなのをどうやって止めるんですか!?」

「しゅーくん、しゅーくん、そこでISの登場だよ!さあちーちゃん、コレが世界初のIS、白騎士だよ!コレを装着して向かってくるミサイルを全部たたき落としてちょうだいね!」

束さんのこの口ぶりだともうミサイルは発射されたっぽい。だが急げばまだ間に合うかもしれない。僕は持ってきていたPCを衛星に繋ぎ、全世界のミサイルの状況を確認し始めた。

「束、貴様という奴は……」

しかし束さんの陽気な態度を見て怒りが頂点に達したのか、冬姉の声が震えているのがわかった。しかし僕はその冬姉を止める、今は時間が一分一秒も惜しいからだ。

「……たった今衛星からの信号で半分の2341発は止めました。しかし残り半分はもう発射されていて手出しができません。冬姉、お願いですから白騎士に乗ってたたき落としてください。僕がサポートしますので……お願いします」

僕の言葉で冬姉は少し静まり、渋々といった感じで束さんに話しかけた。

「……わかった。束、白騎士を……」

「むっふっふ〜、白騎士展開!……さあちーちゃん、背中を合わせるように装着して……服装をISスーツに変換っと……コレでよし。いつでも大丈夫だよ」

冬姉が白騎士を装着して浮き上がろうとしたが、僕は引き止めた。

「待ってください。武装は恐らくまだ近接だけだと思います。即席ですが試作の荷電粒子砲が僕のPCの中にデータがあるので今からインストールします。このコードを……」

僕はPCから伸びてるコードを白騎士に腕に繋いで、荷電粒子砲のデータをインストールした。

「コレで発射できるはずです。でも注意してください、試作の実験状態なので使用し過ぎるとどうなるかわかりません……お願いです、日本を一緒に守りましょう」

「ああ」

冬姉は頷くと、一気に上空に上がるとミサイルの飛んでくる方向に飛んでいった。

 

「――という訳で束さんと俺が協力して出来たIS、通称白騎士が活躍したのが白騎士事件って言うことです」

現在俺は白騎士事件までの経緯などを話していた。勿論操縦者は《謎の女性》と言う扱いにした。だって言おうとしたら本人の視線で殺されそうなんだもの。

「さて、ここまでで質問がある人……」

いますか?、まで聞く前にかなりの女子生徒が手を上げた。というか下手したら全員じゃないのか?……シャルルまで上げてるし……夏と箒に春華は上げてないか。しかし箒、箒さん?そんな驚愕と怒りと憎しみが混ざったような怖い目を向けないでください、まあ原因はわかっていますが。

「あ〜……それじゃあ出席番号順にいこうか、二組の人からどうぞ」

「はい!二組の出席番号一番!名前は……」

「ちょっと待った!俺にアプローチを掛けるための自己紹介込の質問は受けません。今回は一回目だから許可しますが次の人からは容赦しません。では質問だけどうぞ」

俺はちょっとイラッとした感じでそう言う。それを聞いた女の子たちは残念がったり悔しがったりしたが渋々従うようだ。

「……一ノ瀬くんはIS開発のどの辺に関わったんですか?」

うん、至って普通の質問だ。てっきりもうちょっと変わった質問をいてくるのかと思った、主にプライベート的な。まあ本当にした場合すっ飛ばして次の人だけどな。

「そうだね、主にシステム関連かな。コア・ネットワークの形成とかリミッター、生命維持関連、等々・主にコア関係は自分が作ったかな。勿論作ったのは俺だけど発案したのは束さんだし、俺はそれにちょっと付け加え、改良しながら作った。それでも実際に俺がコアを作った個数はほんの一部の何個かだけ。武装に関連するのは束さんがほとんど一人でやってたよ。武装の展開や収納スペース、銃器関連のシステムなど。まあ半分ぐらいは手伝ったけど」

俺は頭を少し掻きながら答える。ぶっちゃけるとISの組立とコアの生成という実物を作るのは束ね参加一人でやっていた。どうもシステム関係は束さんは苦手ではないのだろうがあまり気がすすまないのだろう。恐らくその辺はあの突っ走る性格からしているのだろう。思い立ったら設計図や計画もなしに即実行!お陰で俺と冬姉は結構振り回されたものだ。全く、馬鹿と天才は紙一重とはよく言ったものだ。

「はい、次の方」

俺は最初の女の子が座ったのを確認すると次の女の子を指名した。

「一ノ瀬くんはその後どういう風に生活してたんですか?」

この質問はプライベートのことを聞いてるのか、それともバレなかったのかっていうことなのか……微妙な質問だ。

「プライベートになるので詳しくは話さないが、普通の小学校時代を過ごして受験を受かって私立の中学校に、でいま現在はIS学園の生徒。隠蔽をしてたからな、知ってたのは僅か数人ぐらいさ。ついでに今こうやって話しているのは何故かって言うと、いずれバレるから。俺と春華のISを調べたいっていう機業とかも出てくるだろうしな……勿論俺が認めない限りは拒否するし武力を持ってくるならこちらも全力で叩き潰しに掛かる。だから皆も俺のデータを取ろうとか考えないように……まあ写真や動画程度なら別に構わないですが。さて、次の方……」

 

そんなこんなでひと通りの質問が終わったところで次に俺のISの事に移った。え?残りの質問?大半がプライベートの事だったよ。微妙なので束さんとの関係とか、束さんの所在とか。所在って……俺が知るわけ無いだろ!寧ろ教えてほしいわ!他には指導してください!とか、コアって作れるんですか?とか、終いには専用機が作って欲しい!だからな……ふざけるな!!指導は別に構わんが現在は身近な人物で俺が認めた、まあ身内の人間だけに限定している。理由は俺自体が人に教える立場や柄じゃないからだ。それに身近に世界最強がいるんだから俺じゃなくてもいいだろうに。コアと専用機に関しては絶対にありえない。そりゃあ俺が認めた人物の専用機に手を加えたりはするかもだが、まず無いな。そもそもコアを限定したのは束さん自体でそれに反すると俺と束さんの戦争規模の喧嘩が始まるからな……無闇に作れない。実際俺の専用機用にしても作らなかったし。他人の専用機を作ることに関してもそうだ。俺と春華の分に限定したのには色々理由があるが、一番の理由は《自分の身は自分で守れ》ということだ。春華は俺の唯一の親族で絶対に守ってみせる、って決めたから専用機を与えたまでだ。あとはこの力をどう使うか、備えあれば憂いなしっていうしな……これだけの力があれば、まあ目に止まった人物ぐらいは守れると信じたい。

「……さてと、次に俺と春華のISについてだけど、コレに関しては俺の口から言える事は少ない。それほどまでに危険な代物だからだ」

俺は一息ついてから話す。

「この二つのISの世代は第五世代。現在各国家で第三世代を開発中であるがそれを確実に超える機体だ。現在はまだ試作段階だから二機しか存在しないし、俺のISに関してはまだ完全体じゃないため第二世代に近い形になっている。第五世代のコンセプトは《永久機関を搭載した全ての状況下でも即時対応出来る強襲モジュール複合体》だ」

俺がそう言った途端またざわめきが起きる。俺はそれを気にせず続ける。

「コンセプト通り、永久機関を搭載して半永久的に稼働が可能になったISが俺と春華のISだが、永久機関はまだ出力が安定しない不完全な代物でとても常人に扱えるものではない。更に永久機関と武装にかなりの領域と拡張領域をも使っても足りないため、ISのシステムを全て拡張領域に回すように設定した。そのためISの補助は生命に関わる重要な場所だけになってる。実際に俺のISを織斑教諭に使ってもらおうか」

俺は右の手首で待機状態の手錠の腕輪になってるウインドに話しかけて解除した後、冬姉の腕に装着させた。

「いいですか、くれぐれも無茶はしないでください」

「ああ、IS展開!」

ジャージを脱いでISスーツ姿になった冬姉が腕を突き出し、ISを展開させる。無事展開は成功し、白、青、赤のトリコロールのストライクに、大型高出力スラスター四基とラジエータープレートを兼用している大型可変翼を持って高機動型戦闘、並びに多重瞬時加速を簡易化する背面装備、《エールストライカー》が装備されていた。

次に俺は一体のターゲットを映し出し、こういった。

「あのターゲットを切り倒してください。武装は何処にあるかわかりますよね?」

「ああ、大丈夫だ……」

冬姉は不思議そうな声を出したが俺は気にせず話し続ける。

「あと、現在のモードは《エールストライク》です。最高速度は亜音速ですから、気をつけて」

「わかった」

俺が少し離れたところで冬姉はPICを起動させて少し浮かぶ。

「くっ!……」

しかしそれは誰が見ても分かる位に不安定な浮かび方だった。

やっと体勢を保ってターゲットの方に向き、背中に装備されたビームサーベルを抜き放とうとするがその動作にも四苦八苦している。

「織斑先生どうしたのかな?」

「さあ?でも千冬姉があそこまで動きが鈍くなることなんて普通は無いんだけど」

後ろのほうでシャルルと夏がそう呟くが俺は何も答えず、冬姉の動作を見つめている。

やがてやっとこさビームサーベルを抜き放ち、恐ろしいほどのスピードでターゲットに突っ込み、危なっかしくではあるが冬姉はターゲットを切り裂いた。

「お疲れ様です、織斑教諭。そのまま戻ってこれますか?」

『ああ、なんとか可能だ』

「じゃあ戻ってきてください」

『わかった』

冬姉とオープンチャネルでそう通信し終わった後、PICだけでゆっくりと俺の隣に戻ってきてISを俺に返した冬姉は、大量の汗をかき、少し肩で息をしており、とてもつかれた様子だった。

「織斑教諭、悪いですが俺のISに乗った感想というか俺のISがどういう物か説明してもらえますか?」

「あ、ああ。秋葉、お前のISは各動作やスラスターの出力は疎かPIC制御やハイパーセンサーまでもがそもそも不完全……いや、従来のものよりか遥かに劣っている。殆ど無いといってもいい。これが束と一緒にISを作った人物が作るISとは思えんぞ。大体想像は付いていたが……コレほどとは」

ジャージを着て少し回復していつもの凛々しさを取り戻した冬姉はそう答える。

「その通りです。ISの基礎とも言えるものすら従来のISより劣っている。じゃあそれらのシステムなどは何処に行っているのかわかりますか?」

「……やはり、お前の言った通り、武装と永久機関に回ってる以外は考えられんな」

冬姉はそう答えながらため息をついた。恐らく俺の作ったISに呆れているのだろう。普通はやり過ぎだ、とか言って怒るのだろうが現在は疲れてて怒る気力すら無くて、呆れたのだろう。

「さてと、まあそういうことだから普通ならマトモな操縦はほぼ不可能なISだけど俺と春華は敢えてそれに乗っている。何故なら操縦できるから。そして操縦が出来ればさっきの模擬戦ほどの攻撃などが可能となる。ということです。さて、コレで終わりなんだけど質問とかある人?」

今度は最後まで言えたが、皆は恐らく質問が無いわけではなく、恐らく呆気にとられているのだろう。予想通り、暫くしてからちらほらと手が上がり始めた。俺はその内の一人を当てた。

「あの……一ノ瀬くんはどうしてそんなISを操縦できるんですか?」

うむ、イキナリ最大の謎で一番答えにくい質問が来たな……う〜ん、理解できるだろうか?

「君は結構前の一組のクラス代表決定戦の俺の試合見てるかな?」

「あ、はい」

いや、何故敬語……う〜ん、下手すると今後俺への対応とか変わるんじゃないのか?

「思い出してもらえればわかるけど、その時乗ってたリヴァイヴが一瞬止まっただろう?あれはリヴァイヴが俺の反応速度やその他の動作に付いてこれなかった。つまり逆に言うISの補助より俺自身の反応が上回ってるんだ。だからISの補助なしでも俺自身の反応などで補えてるって言うことだな。あと適性ランクがSだからISとの同調率がよくて自分の体の一部のように感じてる。それも理由の一部だろう」

俺がそうやって説明している途中、その自体を知らない人物、主に鈴とシャルルは「リヴァイヴが一瞬止まった」ということに驚愕の顔をしていた。恐らく止まる=処理ができなくてフリーズした、ということだと理解してわかっているのだろう。しかし質問が終わっても手を挙げなかった……もしかしてコレはあとで聞かれるパターンか!?いや、別に構わないだけども。

俺はそんなことを考えながら次の子を当てて質問を聞く。

「なんで第四世代じゃなくて第五世代なんですか?」

おおう、これももっともな質問だな。第四世代ならまだしも、それをも飛ばして第五世代だからな。俺は冬姉の方を見てアイコンタクトで「話して大丈夫か?」と聞いたところ、首を縦に振ったので俺はすべてを話す。

「え〜、何で第五世代なのかというと、現在束さんが第四世代を開発してるから。まあだから俺が作ったのを第五世代、というのも可笑しいんだけどな。だから正確には《俺からしての》第五世代型ISといったほうが正しいな。ついでに恐らく第四世代型は七割かそれ以上は完成してるらしい。まああの人は気まぐれだから……本気出せば一週間もかからないと思うけどな」

俺は笑いながら答えるが、話を聞いてる皆はもはや放心状態であった。そりゃそうだ。僅か数十分前までは一般生徒だと思ってた男子生徒が実は世界最強兵器を作った一人で、しかも現行する物を軽々と超える物を作り出していたのだからもう放心するのは当たり前である。

「……一応これだけっぽいけど……あ〜、みんな大丈夫?」

俺は一応確認をとって数人は「ハッ!」と反応したがやはり過半数は放心している。

こりゃ駄目だ。取り敢えずここは指導力がある冬姉に任せよう。そう思って冬姉の方をチラリと見ると「はぁ〜」と大きなため息をついた後手を叩いて目線を集める。

「さあさあ、少し時間を食ってしまったが授業を再開する!専用機持ちは、一ノ瀬秋葉、一ノ瀬春華、織斑、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰、か。各専用機持ちをグループリーダーに、一ノ瀬兄弟は五人、その他は六人グループで実習を行え。時間が押してるから迅速に且つ効率よく行動しろ」

冬姉がそう言った途端、俺、春華、夏、シャルルの方に生徒が殺到した。正確には春華の方は極少数なのだが他の専用機持ちよりかは人気があるのだろう。

「一ノ瀬くん、操縦のコツとか教えて!」

「あの、出来れば篠ノ之束博士とかの話を聞きたいんだけど!」

「ね!ね!さっきの専用機って他の形態とかもあるの!?」

……正直言ってうるさい。そして冬姉の表情がヤバイ、コレは早々に訓練を進行せねば。

「ちょ、ちょっと皆一旦離れて!……まったく、じゃあキミとキミとキミ、あとキミにその隣りのキミ。今指名した五人が俺のグループ。他の人は他の専用機のグループに行ってね。はい、じゃあ始めるよ……」

俺は手っ取り早く適当にグループを決めたが、勿論他の女子生徒は文句を言ったが冬姉の怒声により蜘蛛の子を散らすように、一瞬にして別れた。流石だ。

「さてと……あ、山田教諭、訓練機ください。リヴァイヴで」

「わかりました。はい、どうぞ」

丁度俺の近くにいた山田教諭から訓練機を借りて。グループの五人に向き直る。

「それじゃあ実習の訓練を始めるんだけど、まずは自己紹介でもしようか?名前知らない子もいるし。まずは自分から、改めて、一ノ瀬秋葉です。気軽に下の名前で読んで構わないから。よろしく」

「はいは〜い、一組の相川清香。ハンドボール部所属で趣味はスポーツ観戦とジョギングです!」

この子は知っている。ショートヘアーで少しツリ目で身軽そうな外見と珠未などがマッチしてる活発な女子だ。

「同じく岸里美沙希。趣味は、ん〜、特に無いかな」

「あはは」といいながら頬を掻く岸里さん。長髪の青みがかった髪を箒と同じくポニーテールにしている、ぱっと見日本人らしい美少女なのだが、性格がズボラというか面倒臭がりとなのだ。そしてまさしくその通り岸里さんの机の中身はすべての教科書などが詰まっており信じられない重量なのである(岸里さん曰く《フルアーマー机》だそうだ)。

「三番目は私、鷹月静寐。よく静寝って間違われますが」

この鷹月さんも一組の子だ。結構しっかり者で真面目な性格と裏腹にセンスがいいのか悪いのかよくわからない面白い本を読むのが趣味らしい。え?情報源?のほほんさんから聞いた。そしてそれが四番目の女の子。

「えへへ〜、アッキーと同じ班だ〜。布仏本音だよ〜。てひひ〜」

ピンクに近い赤い肩までしか無いショートヘアーをツーサイドアップテール(だったかな?)にしている少し身長が低くていつも眠そうな感じのそれでいて元気な女の子。寮ではいつも狐か電撃ねずみよろしくピ○チュウみたいなダボダボな着ぐるみ風パジャマ(?)を着ているのだが制服も袖が少し長く、ダボダボしている。だからISスーツのときが唯一手が見える貴重なワンショットである。ついでに性格上放課後は春華と一緒に猫探索している姿をよく目撃する。猫のほうが勝手に寄っていくのだが。

最後の子は二組らしく、俺も知らない子だった。

「ティナ・ハルミトンです。好きな食べ物はスナック菓子です。鈴のルームメイトです」

ふむ、ハルミトンさんか。あの鈴がルームメイトか。さぞかし迷惑してるだろう。騒がしそうで。

「よし、じゃあやろうか。じゃあまず手順を説明するけど、まずは装着、そのあと起動して、歩行。この時歩行し終わった時にしゃがむのを忘れたら次の人が乗れないのでちゃんとしゃがむように。尚忘れた人は織斑教諭の特別カリュキュラムを受けてもらいます。そして次の人は俺が頭を鷲掴みにして運びます。お姫様抱っこなど期待しないように。では相川さんから……」

 

結果は全員が上手く乗りこなした。特に驚いたのはのほほんさんがいつもの姿からは想像もできないような滑らかな動きを見せたことだった。

他のグループはと言うと春華と鈴の所は問題ないのだが夏とシャルルの場所は余り進んでないらしい。男子っていうのは大変だなあ……あ、俺もか。セシリアとボーデヴィッヒに至っては、片や説明が理論的過ぎて理解不可能。片や何も喋らず理解不可能。冬姉と山田教諭がフォローに入るが上手く進んでないようだ。あれは恐らく昼休みギリギリまで掛かるぞ?

『お兄ちゃ〜ん!』

「……春華、無闇にプライベート・チャネルを掛けて来るんじゃない。まあいいが、何だ?」

『えへへ〜、今日お弁当作ったんだけど一緒に食べない?ってお誘い〜』

ほう、春華がお弁当とな。しかしそんな手間を春華がかけるだろうか?俺が中学時代の最初に春華に料理をするように言った時「え〜、面倒くさいよ〜。第一お兄ちゃんが作ったほうが美味しいもん」といって駄々をこねた記憶がある。あの時の春華は可愛かった……話がそれたな。

少しカマをかけてみる。

「……本音は?」

『作りすぎちゃってそれを処理するのを手伝って欲しいの〜』

やはりか……

「お前な、自分が食える量だけにしろと言ってるだろうが。まあ自分が食べる量が多いから計算面倒なのはわかるが……で、何人ぐらいの分量が残ってるんだ?」

『ん〜二人か三人ぐらいかな?』

なるほど……シャルルでも誘うかな?

「わかった、じゃあお昼は屋上で食べるか」

『わ〜い、やった〜!じゃあお昼屋上に集合ね!』

「了解」

さて、問題の終了予定時刻の昼休みまであと十分……

「夏〜、暇だったら模擬戦やらね?」

オープン・チャネルで話しかける。

『うえ!?おま、俺を晒し者にする気かよ!!』

「安心しろ。モード・ストライクのソードストライカーでやるから。さっきのネロブリッツみたいに消えたりしねえよ」

『……ま、まあならいいかな?』

よし、冬姉も何も言わないってことは大丈夫なんだろう。俺と夏は少し離れたところでISを展開する。俺はエールストライクカーからソードストライカーに換装する。背中に大きな対艦刀が二本、両腕にはアンカーとビームブーメランが装備されている近接格闘、対艦戦を主体においた装備だった。

「構えろ、夏」

「お、おう!」

夏は雪片弐型を正眼で構え、生唾を飲んだ。俺は右側に装備されていた対艦刀を外して両手で持つと、ビームを発生させて示現流の蜻蛉――顔の右横に柄が来て、刀身がそのまま真っ直ぐ上に来る――で構えるとその状態から微動だにしない。

「((義経|ぎけい))流じゃなかったのかよ?」

「あれは元々忍術だ。対人戦闘などでは役に立つが剣道や剣術では一割程度しか発揮できないからな、ある人に示現流を教えてもらった」

「へっ……そうかよ……」

俺たちはそう言葉をかわすと再び沈黙の時が流れた。お互い相手の出方を伺ってるのだろう。夏は恐らく俺が動いたところでそこをカウンターで返す腹だろう。俺もそうなのだからここはどっちが先にしびれを切らすかで決まる。そして恐らく夏が先にしびれを切らすはずだ。夏は長いこと待つのに慣れていない。悪く言えば――

「……ハァッ!!」

――気が短いのだ!

瞬時加速で驚異的な速度で突っ込んでくる夏。しかし俺は避けようともしない。いや、まだ余裕で間に合うのだ……

「もらったぁ!!」

夏が振り上げ、上段からそのまま真っすぐ振り下ろす。その衝撃で砂埃が舞う。その中雪片弐型の刀身は蒼白く光っており、零落白夜が発動しているのを告げていた。しかし――

――グラッ……ズドン――

「……まだまだだな」

砂埃の中から出てきたのは、倒れて白式が解除されて倒れた夏と、その((背|・))((後|・))に立っていたISのシールドエネルギーが全く減っていない俺の姿だった。

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

どうも、再び作者の菊一です。

今回は最初の方にちょろっと過去話入れました。前回の予告通り外伝にしなかったわけですが……無理矢理に外伝にして話数を稼ごうかと思ったりしてましたw

次回のお話はシャルルとお昼を食べるお話なんですが……う〜ん、実は書き上がっておりませんwだから今後の進みがどんなふうになるのか自分でもわかってなかったりwこうなるともう小説作家としては終わってるんですがねw

そんなこんなで気長に待ってくださると有難いです。

ではまた

説明
どうも、作者の菊一です。
二十一話。今回はまあ早めに上げれたかな?ということでまあ一安心出来るような出来無いような。しかし次回は凄い遅れる予感w
兎に角どうぞ〜
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コメント
>kumoriさん 誤字報告ありがとうございます。変換ミスの多くがその織斑教諭の変換で困ってます^^;これからも読んでいただけると有難いです!(菊一)
実際に俺のISを折村教諭に使ってもらおうか→実際に俺のISを織斑教諭に使ってもらおうか 誤字報告させてもらいます(kumori)
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