IS-W<インフィニット・ストラトス> 死を告げる天使は何を望む |
クラス対抗戦からさらに数日がたった日曜日。一夏はIS学園ではなく、数少ない男友達の五反田 弾の家に遊びに来ていた。今回は遊園地の時みたいにみんなではなく一人でだ。
赤髪の弾と2人で弾の友達がくれたと言う格ゲーをしていると弾が一夏に聞いてきた。
「で?」
「で?って、何がだよ?」
「だから、女の園の話だよ。良い思いしてんだろ?」
「してねえよ」
「嘘をつくな嘘を。お前のメール見てるだけでも楽園じゃねえか。なにそのヘヴン。招待券ねえの?」
「ねえよバカ」
会話しながらも二人の両手はしきりにコントローラーを弄っていた。先ほど謎の腹黒そうなお嬢様を使っていた一夏だが、すぐに使用禁止になった。なんせ波動拳コマンドで『核兵器』が出て一撃で相手を葬ったからだ。いったいこのキャラはなんなんだ?と一夏は思わざるおえなかった…
「それにしても、鈴が転入してくれて助かったぜ、知り合いが少なかったしな」
「鈴か。鈴ねえ……そう言えば、ヒイロはどうした?アイツも同じなんだろ?」
「ヒイロは俺よりさらに特殊なんだけどな…今日は実験があるらしい」
「そうか…あいつにもいろいろ聞きたかったんだけどな…」
「それより、このゲームのキャラ…パンツいっちょの男に幼児体型の女子高生、美男子執事…そして核兵器お嬢様…ってお前の友達って…」
「お兄!!さっきからお昼出来たって言ってんじゃん!!さっさと食べに―――」
その時、どかんと扉を蹴って入って来たのは弾の妹、五反田 蘭。一夏たちの一つ下で現在中三。有名私立女子校に通っている優等生だ。恰好はかなりラフな感じで、兄にどこぞなく似た雰囲気をだしていた。
「あ、やあ蘭。久しぶり、邪魔してる」
「いっ、一夏……さんっ!?」
一夏が来ていることを知った蘭は慌てて隠れ、顔だけを覗かせた。この態度から見て蘭が一夏にどのような感情を抱いているか容易に想像できるだろう。
「い、いやっ、き、来てたんですか……・?」
「ああ。偶々外出許可が出てな」
「蘭、お前なあ、ノックぐらいしろよ。恥知らずの女だと思われ―――」
ギンッ!という効果音を立てて蘭の視線一閃。それを受けた弾は蛇に睨まれた蛙の如くみるみる小さくなった。そして蘭は小声で言い放つ。
「……なんで言わないのよ……」
「い、いや、言ってなかったか?そうか、そりゃ悪かった。ハハハ……」
「……」
ぎろりと再び弾を睨みつける蘭。それにより弾の顔は見事に蒼白になっている。
「あ、あの、よかったら一夏さんもお昼どうぞ。まだ、ですよね?」
「あー、うん。いただくよ。ありがとう」
「い、いえ……」
ぱたんと静かに扉が閉じられ、静寂が訪れる。一夏は何とも言えない状況にされていたのだった…
一方、ヒイロは第3アリーナにいた。本日、先生の許可を得て完全封鎖してある実験を行うためだ。ヒイロはすでにガンダムを展開し実験開始の合図を待っていた。右手にはあのバスターライフルが握られている。
『準備OKです』
「…了解……これより、バスターライフルの出力制限の稼働テストを行う」
『お願いします。ヒイロさん』
「……任務開始」
そう言ってヒイロは空中に浮かんでいるターゲットに向けてバスターライフルを構える。銃口に光が集まり始めるが以前より小さいので制御がうまくいっていると思えた。
だが次におこったのはバスターライフルの真ん中辺りから煙が吹くという事態だった。銃口の光もそれにつられて消えていった。
『あ〜…ヒイロさん…ピットに戻ってください』
「…了解した」
実験はあきらかな結末だった…
「やはり厳しいですね…ジェネレーターからの供給量がものすごいからそれでダメになっちゃうんですね。カートリッジ式ならいけるんですけど…」
とイスに座ってデータを見ながら答える皐月、ヒイロも普段の格好をして後ろから立ってモニターを見る。ヒイロも装置開発にプログラムを組んだがうまく行かなかった。
ヒイロも皐月も原因がわかっていた。ウイングゼロのシェネレーター出力が大きすぎるのだ。それもMSの時よりも。出なければ、ヒイロが組み立てたMS時代のプログラムで制御できるはず。しかし、今できていない現状がここにある。
「……皐月、後は頼む。俺はもうちょっとアリーナで訓練する。まだ感覚に慣れてないからな…」
そう言ってヒイロはモニタールームから出て行った。皐月は驚いた顔して閉められた扉を見ながら
「あ…あれでまだ本調子じゃないんだ…」
と呟いた。
アリーナでターゲットマーカーをサーベルやマシンキャノン、そして借りてきたセシリアが使っているライフルよりはるかに弱いが連射ができるレーザーライフルで破壊するヒイロ。マーカーを100枚破壊するまでの時間で優劣をつけるものである。この訓練はかつて似たようなものでMSに乗っている時は1分以内でできたが今はまだ3秒遅くなっている。ISによって操作は前よりよくなっているはずなのでヒイロは不服に思っていた。
ビーと鈍い音が鳴り、訓練が終わる。タイムは58秒…ヒイロの満足とは言えないがかつての勘と操作が覚えられてきたことを確認できた。
その時ヒイロはついに『奴』に声をかける。
「……いい加減出てきたらどうだ」
そう言われてもまだ出てこない奴に対してヒイロはさらに言葉を言う。
「…第一ゲートから見ていることはわかっている」
「………」
そうして出てきたのは青っぽい髪、瞳はルビーのように赤い。そして、髪の毛が外側に跳ねているのも特徴的でどこか簪に似た少女だった。髪の色、輪郭が似ていて、スタイルはこちらの方がいいが、明らかに関係のあるものだとヒイロは推測した。そこである言葉を思い出だす。
『え、う、んと………。私の……お姉ちゃん。この学園の、…生徒会長。そ、それで…、お、お姉ちゃん…も、専用機……持って……る。で、でも、…お姉ちゃん。専用機、一人で…作った、から』
と簪が言った言葉。ここでヒイロは誰かわかった。
「生徒会長の更識(さらしき) 楯無(たてなし)か…」
「そう。私が2年で生徒会長の更識 楯無よ。初めまして、ヒイロ・ユイくん」
と笑顔で言うが、明らかに作り笑いしているのはわかっていた。
ヒイロは地面に降り、ガンダムを解除する。楯無はニコニコした顔でヒイロを見つめる。しかし、ヒイロは気づいている。この少女から殺気を殺したものが感じられることを。そのためヒイロは楯無の居場所が分かった。
ヒイロは楯無の目を見ながら
「……俺に何か用か?」
「ちょっとね。私と戦わない?歴戦の兵士の力…見せてほしいのよ」
そう言うがヒイロは明らかに楯無が自分に殺意…いや単にボコボコにしたいとしか思っていないと感じた。
面倒なことなのでヒイロは
「…断る。面倒だ」
と去ろうとするがその時ヒイロの顔の横を蛇腹剣「ラスティー・ネイル」がかすめる。ヒイロはそれを知っていての行為だったが本気でやってくるとは…と思っていた。
「………何の真似だ」
「君に拒否権はないのよ…さっさと準備しなさい」
そう言う楯無の顔からはもはや表情と言うものは感じられなかった。
「……いいだろう、ウイングゼロ起動」
そう言ってガンダムを纏うヒイロ。一方楯無も完全にISを展開する。ヒイロの目に楯無のIS情報が表示される。
(ロシア代表機……『霧纏の淑女(ミステリアス・レイディ)』。他の情報はなしか…)
ヒイロはあの機体の見た目…他のISに比べ装甲が少なく、左右一対で浮いているクリスタルに警戒をしていた。地面に置いていたレーザーライフルを拾うヒイロを楯無は見つめる。
楯無もヒイロの事情を知る一人であり、ヒイロの過去を知っている。戦闘の…それも命がけの破壊工作のスペシャリスト…それがヒイロ・ユイである。あることで怒りに支配されている楯無でも同じように警戒を忘れない。
「ルールは先にシールドエネルギーがなくなった方が負けよ」
「…わかった」
そうして待つのは試合を始める動き。長い緊迫とした時間…実際は数秒だがそう感じるのだろう。そして二人同時に動き出したのだった。
「任務開始…内容、敵機の撃退」
ヒイロはその白き翼で高機動戦を仕掛ける。ヒイロとしてはこの戦いできるだけ早く終わらせておきたかった。いきなり楯無の後ろを取り、マシンキャノンを放つ。普通ならここでシールドが働き、シールドエネルギーが減るのだが…
『霧纏の淑女《ミステリアス・レイディ》』の左右一対で浮いているクリスタルから水のヴェールが出てきて、それからマントが展開され防がれた。ヒイロはそれを見て一瞬で理解する。
(水を使った兵器か…マシンキャノン程度の実弾では有効打を与えられないか…なら)
ヒイロはレーザーライフルで攻撃する。楯無はマントをドレス形態に変更し蛇腹剣「ラスティー・ネイル」を持った右手の甲に水の楯を作りガードしながら左手で高周波振動する水を螺旋状に纏ったランスで四門のガトリングガンも装備されている蒼流旋(そうりゅうせん)を形成する。カードしている水のナノマシンがレーザーによる熱蒸発で徐々に小さくなっている。
(早い…すぐに実弾が効かないとわかってビームサーベルやレーザーライフルと言った光学兵器に変えてダメージじゃなく,シールドをなくしに来た)
楯無は蒼流旋(そうりゅうせん)についているガトリングで反撃する。しかし、ヒイロは簡単に避ける。そう…いくら学園最強でも一対一では歴戦の兵士…ヒイロ・ユイにかなわない…これはあくまでも今のような銃撃戦ではの場合だが…
「あの野郎…」
楯無は滅多に言わないような言葉を発した。
―――更識 楯無―――
二年生にして「学園最強」を意味する生徒会長に就任。
学生の身でありながら自力で第三世代型ISを組み上げた快挙。
そして自由国籍取得によりロシア国家代表に任命。
ミステリアスな美貌に加えて豊満な肢体と人たらしと称される程のカリスマ。
まさに才色兼備の彼女だったが、唯一つままならぬことがあった。
それが愛する妹、簪との関係であった。楯無は簪のことが可愛くて可愛くて仕方ない。
ずっと触れていたい…ずっと話をしていたい。ずっと一緒にいたい。そう思えるほど好きなのである。妹のためなら死んでもいいと言うぐらいに…
しかし、年子の姉妹などというものは、否が応でも周囲から比較されてしまうものだ。簪とて世間から見れば優秀な部類ではあるが、姉があまりに規格外すぎて…劣等感を感じざるおえなかった。そうなるとひねくれるか、あるいは徹底的に嫌いになり、違う道を選べばそんな比較などされなくなる。しかし簪は茨の道とも言える、姉と同じ進路を選んだ。比較されるのはもう避けられないようになっていた。
そして…神の悪戯とも言うべき一夏の出現によって、自身のISが未完成のままおかれた状態になったのも楯無は困った。簪は姉…つまり楯無への複雑な感情から、自力で【打鉄弐式】組み上げると言い出し意固地になってしまったのだ。
その全てが楯無の悩みの種であった。簪に嫌われたくないためがゆえに、思い切った行動に出ることもできず、折角同じ学校にいるというのに、入学以来まともな会話もできない。
親友の新聞部の薫子に簪の隠し撮りを大量に仕入れ、会えない悲しみをそれで斬り抜けていた。
しかし、そこにある男が現れた…
ヒイロ・ユイ
簪に『お前の好きにやればいい』と言った男。いままで「無駄だ」や「諦めろ」と言われ続けた簪にとって本当に見守ってくれる人に会えたのは初めてだった。いや…気づいたのがだった。楯無も見守っていたのだがやはり実姉の方が気づきにくいのが妹っていうのだろう。他人の好意ほど気づきやすく、身内の好意ほど気づきにくいものだ。
その後、簪はヒイロになつき始めた。ヒイロに布団をかけたりして挙句の果てはヒイロのためにISのデータを集めて見せたり、ついには『お兄ちゃん』と呼び、膝枕するレベルになっていた。
赤の他人なのに…私の方が簪ちゃんのこと……日に日に楯無のボルテージが上がって行き、そして今日…爆発したのだった。
蒼流旋(そうりゅうせん)で攻撃するとヒイロは必ずビームサーベルを使う。このナノマシンで構成された水はシールドエネルギーで動かしている。つまり再び形成するのにまたシールドエネルギーが必要になるのだ。そしてビームサーベルなどの光学兵器と衝突すると水が蒸発し、再びシールドエネルギーで形成しなければならないので消費を抑えるため実体剣でもある蛇腹剣「ラスティー・ネイル」で攻撃する。ヒイロはそれをサーベルで受け止め競り合う形になる。
お互いに引かない状況。しかし…
「更識 楯無。怒りを俺にぶつけていれば、簪との関係が改善されるのか?」
「!!」
ヒイロはいきなりそんなの事を言った。その言葉で一瞬の隙ができてしまった楯無にヒイロは翼で横腹に振り切り、翼による打撃を食らわせた。反応が遅れた楯無は機体のシールドエネルギーを減らす。
「くうう!!」
楯無は後退しながら蒼流旋(そうりゅうせん)についているガトリングで牽制しながら後退する。楯無は何故、ヒイロが今回の動機を知っていたのか…戸惑いが大きかった。だがあることを思い出す。ウイングガンダムゼロには戦闘において勝つ未来を見せ、そして時には自身や誰かの未来、情報さえも見せるシステムが搭載していることを…
「ゼロシステム…ゼロシステムで私の情報を見たのね!!あなたに何がわかる!!」
楯無は敵意丸出しの言葉を吐きながら、再び接近戦を行う。ヒイロは翼の機動性を最大限に使い、後退しながらレーザーライフルで牽制するがすべて避けられ、「ラスティー・ネイル」から発しられた高圧水流によってライフルが破壊される。ヒイロは再びサーベルを取り出し、再び剣同士が激しく斬り合い、ぶつかり合う
「ゼロが見せたものからはお前の気持ちすべてがわかるわけではない…だが、怒っていても何も変わらない」
「なにも変わらないですって!!簪ちゃんはあなたのせいで変わったって言うのに!!あなたの…あなたのせいで!!」
「だから、怒ってお前から変わることをあきらめるのか?」
ヒイロの言葉の裏にはこのまま簪とにらみあった関係でいいのかと聞いているのだと怒りに支配されている楯無でもわかった。だから楯無は率直な気持ちで返答する。
「いや!!」
「では、探せ。探さなければみつからない」
「何を探せって言うのよ!!簪ちゃんとの仲良くするための方法!?」
「そうだ」
競り合っては離れ、また斬り合おうと接近しぶつかり合う二人。口論もさらに白熱する。
「じゃ!!どこを探せば…どうやったら簪ちゃんと仲良くなれるのよ!?」
「それは、俺にもわからない…だが、泣いていても怒っていてもお前が立ち止っている限り…探し物は見つからない」
そう…楯無は泣いていた。もうどうやったら簪と仲良くできるか分からなくなっていたからだ。時間が解決する…そう言う事もあるがもう楯無は待てなくなっていた。だからの涙だった。
しかし、ヒイロにその言葉を言われ、楯無は完全に怒った。
「なんて無責任なのよ!!これで終わらせてやる!!このアリーナ内にはナノマシンで構成された水を霧状にしてあなたの周りに散布してある!!」
そう言った瞬間ヒイロの周りの湿度が上昇していく。ヒイロはそれが攻撃だと気づき一気に上昇して避けようとする。しかし、
「もう遅い!!清き熱情(クリア・パッション)!!」
ぱちんっ、と楯無が指を鳴らす。その瞬間、ナノマシンを発熱させることで水を瞬時に気化させ、その衝撃や熱がヒイロのガンダムを襲う。水が気化したことで周りは霧が発生したことでヒイロがどうなったか見えなくなってしまった。
だが楯無は勝利を確信していた。本来ならそんなミスを起こさない。怒りによる判断ミスだった。
「ふふ…ふふふふ…あははははは!!」
泣きながら大声で笑う楯無…しかしその霧を切り裂いて、ウイングガンダムゼロは無傷で現れた。
楯無は驚き、反撃しようとするがすでに遅く、アクア・クリスタルを一瞬でビームサーベルにより破壊され、そのままヒイロに体当たりされた状態でアリーナの壁にぶつけられる。そして密着した状態で首元にビームサーベルが付きつけられた。
「ど…どうして…」
「…ゼロは元々大気圏に突入可能のMSだった。それゆえガンダニュウム合金は耐熱にも優れている。また…翼はシールドの役目を持つためさらに硬度なガンダニュウム合金が使用されている。相性が悪かったな…」
そう、ガンダニュウム合金には耐熱性に優れている。なのでヒイロは自身の前に翼を展開して、また上空に行くことで上方向の攻撃量を減らして耐えたのだ。もちろん減らしたことにより機体全体のガンダニュウム合金で防げる熱量に抑えた。
冷静さを取り戻した楯無はこう言う。
「これは…生徒会長やめないとね」
「……そうでもない。この勝負…俺の負けだ」
えっ!!とする楯無。すると情報が送られてくる。
―――ウイングガンダムゼロ 残りシールドエネルギー…0―――
「な…なんで」
「さっきの攻撃でガードできていない部分でシールドが自動発動したんだろ…俺の機体は300しかエネルギーがないからな。…装甲が耐えれても、シールドエネルギーは無理だ」
そう言ってヒイロはピットに帰ろうとする。
楯無はその後ろ姿を見て呼び止めようとする。しかしその前にヒイロは止まり、後ろを向いたまま言う。
「楯無、覚えておけ。…泣いて怒る前に、自分のできる事を精一杯やる事を」
「そうすれば、絶対見つかる?簪ちゃんと仲良くなる方法?」
「絶対に、とは言えない。けれど、行動を起こすことで変わるかもしれない」
そう言ってヒイロはある紙切れを投げる。楯無はそれを掴んで広げる…それはヒイロの携帯の連絡先だった。前に千冬にアドレスを教えるためにとっておいたものだ。
「……お前が探し続けるって言うなら…相談ぐらいなら乗ってやる」
と言って、ヒイロはピットに戻った。楯無は顔を少し赤くして
「一緒には探してくれないんだ…意地悪」
楯無はヒイロの後ろ姿をただただ…見つめていた。
そして、その日の夜。
「お引っ越しで〜す」
「「はい?」」
真耶はいつも通りのにこやかさで一夏と箒のもとに現れた。横には少量の荷物を持ったヒイロもいた。一夏と箒はハモって疑問符を浮かべた。
「はい、ようやく手配できましたので、篠ノ之さんは移動してください」
そう、ようやく部屋の調整がついたからこの部屋はヒイロと一夏の部屋になる。
「そんないきなり!今晩中じゃなきゃいけませんか?」
箒が異議を唱えている。
「えぇ、早めにお願いします。やはり、年頃の男女が同じ部屋と言うのは学園でも問題視されてまして…。なにか間違いが起きたらどうするって言われて…」
「私たちに間違いなど!」
「まぁまぁ箒、落ち着けって。山田先生困ってるんだし。男女七歳にして同衾せず、ってことわざあるし」
「貴様がそれを言うか!いきなり私の裸を見たくせに!」
「誤解を招く言い方するな!あれは事故だ!それにバスタオル巻いてただろ!」
「一夏は私と離れて寂しくないのか!」
と言い争いになっているのをヒイロは呆然と見つめる。
そして…
「先生! 今すぐ部屋を移動します!!」
といつの間にか箒がそんなことを言って、荷物をまとめて出て行った。
「なんであいつは怒ったんだ?」
「…さあな」
ヒイロと一夏はベットに寝ころびながら会話する。
「しかしまあ…これからよろしくな、ヒイロ」
「……ああ」
ヒイロがそう返事を返した時、コンコンとドアをたたく音が聞こえた。
一夏が返事を返しながらドアに近づく。
「はい、箒?忘れ物か?」
そこにいたのは先ほどまで一緒だった箒だった。そして箒の
「ら、来月の学年別個人トーナメントだが……わ、私が優勝したら……つ、付き合ってもらう!!」
「……はい?」
この言葉を筆頭に今後の展開が更なることになることにヒイロたちは気づかなかった。
そしてすでにあの“簡易ベッド”があることに気づいていなかった…
そのまた翌日の月曜、この日の朝はいつもよりも騒がしかった。
「やっぱハヅキ社製のがいいなぁ」
「え?ハヅキのってデザインだけって感じじゃない。私は性能的に見てミューレイのスムーズモデルがいいと思うけど」
「でも高いでしょあれ」
個人でISスーツを用意するためにカタログを片手にあれやこれやと意見交換していた。
授業では学園指定の物を使っていたのだがISというのは人それぞれの仕様に変化するので早いうちから個別のスタイルを確立するためである。
ISスーツは皮下神経の電位差を感知することでISに操縦者の動きをダイレクトに伝える役割を果たすので、有り無しでは有った方がよりスムーズな操縦が可能となる。
と言ってもやはり自分専用って言うのがほしいって言うのも大きい要素ではある。
ちなみにウイングゼロのみ脳波で処理したりするためスーツは不必要なのである。
「諸君、おはよう」
「おはようございます」
「お、おはようございます!」
千冬と真耶が教室に入ると同時に全員が席に戻り軍隊顔負けの気を付けの姿勢になる。
普段の教育という名の調教の結果だろう…
「今日から本格的な実戦訓練を開始する。訓練機のISを使用しての授業となるが各人気を引き締めるように。後ISスーツは個人のが届くまでは学園指定のものを使うように。忘れたら学園指定の水着、それすら無い者は下着で構わんだろう」
本来ここには女子しかいないはずだし千冬なりの発破の仕方なんだろうが男子の前で言うことではないだろう。
そして学園指定の水着とはこの時代ではもうアニメでしか見ることがないとなったスクール水着である。紺色で名札付き。ちなみにヒイロが知り合った少女の学校もスク水である。
「では山田先生、ホームルームを」
「はい。ええとですね。今日は転校生を紹介します!しかも二人です!!」
「「「えええっ!?」」」
クラス中の女子が一気に騒つく。女子特有情報網を掻い潜ってのいきなりの転校生なのだから驚きもするだろう。
「ではどうぞ!」
「失礼します」
「……………」
教室に入ってきたのは男子の制服に身を包んだ金髪の人間と軍服の様に改造された制服に身を包んだ銀髪の左目の眼帯が特徴的な人間だった。
ヒイロはこの二人から目を離せなかった…一夏の護衛として隠していることがあるこの二人を…
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第12話 探し物は… | ||
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