「悪に堕ちたら美少女まみれで大勝利!!」紹介SS
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 俺の名は十王正人。正義に抗う悪の組織おしり団の参謀だ。

 

 ウン。

 

 出オチじゃないよ、こっちは充分に本気です。

 

 いつもだったら正義と戦ったり正義と戦ったり姉と戦ったりしてる俺だが、幸いと言うかなんと言うか、ここ最近は大きな抗争もなく平和そのものだ。

 

こうした穏やかな日には、俺も心置きなく組織運営の雑務に没頭できる。資金運用とか、装備品の補充とか、そうした細々な事柄を処理するのは参謀であるオレの務めだ。

 

 仕事が一段落つき、コーヒーを補充するために台所へ向かうと、途中の大広間で佐藤さん、鈴木さん、田中さんの三人がゲームに興じていた。

 

「佐藤です」

 

「鈴木だ」

 

「田中だよぉ」

 

 佐藤さん、鈴木さん、田中さんの三人は、元々は別の組織に所属していたものの、色々あっておしり団に移籍してきたベテランの悪人だ。三人とも三十路に入った人生経験豊富な大人で、俺みたいな高校生の若造が参謀なんかやれるのも、あの人たちみたいな大人が陰で支えてくれるから。

 

そんな三人が、広間でゲームに興じていた。

 

「……オラオラッ! ……寝ろッ、寝ろッ! 何のために特殊攻撃+2付けてると思ってんだ!? ……………………よぉし寝た! 鈴木、爆弾だ!」

 

「承知した! ……オイ田中、今から爆弾置くぞ? オレたちが退避するまで撃つなよ? 散弾撃つなよ!? 絶対撃つなよ!?」

 

「はいはいオッケ〜」

 

 あぼーーーーーーん。

 

「「田中ァーーーーーーーー!」」

 

 実に楽しそうだった。

 

「田中テメェ誰がそんなドリフ的なことを期待した! ああもう死んじまった! キャンプに戻っちまった!」

 

「佐藤と同じく!」

 

「あははは……。撃つな撃つなは撃て、がお笑いの常識〜。………………あ、ちょうど今のでモンスターも死んだ。剥ぎ取っちゃお」

 

「田中ァァァァァァ!?」

 

「何やってんだ田中ァァァァァァ!?」

 

「剥ぎ取っていいのは剥ぎ取られる覚悟のあるヤツだけ〜。……ザクザク、あ、天鱗出た」

 

「田中死ねェェェェェ!」

 

「死ねや田中ァァァァァァァ!」

 

 本当に楽しそうだな。俺は仕事が多くてゲームとかあんまりやれないんだけど、あんなに熱狂できるほどたのしいものなんだろーか?

 

「……お、なんだ参謀じゃないか」

 

 やばい見つかった。

 

「いいところに来た。参謀も一緒にゲームやろうぜー。やっぱ狩りは四人で行かないとな」

 

「いやダメですよ。俺まだ仕事が終わってないんですから。……各ナワバリからの定時報告、今日中に目を通しておかないと……」

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「何言ってんだガキのくせに! 若いうちに遊び倒しておかなくてどうするの!?」

 

 大人になっても遊び倒している佐藤さんたちから言われても。まあとにかく強引に携帯ゲーム機をもたされる俺だった。

 

「……仕方ないなあ。でも俺、ゲームとかあんまやったことないですから、隅っこで笛吹くぐらいしかできませんよ? それでいいですよね?」

 

「そんなこと言って、いつの間にか最前線でモンスターの頭殴りまくってるよね参謀」

 

「そろそろ『参謀頼りがいありすぎワロタwwwww』てスレが立つな」

 

 超絶不本意な評価がきた。

 

 何故俺に頼りがいがあるのか? 自分で言うのもなんだが、世界中俺より無能なヤツは探してもそうそういるもんじゃない。俺自身、自分が無能すぎて無能すぎて、もういい加減にしろってぐらい愛想が尽きたからこそ、こうして悪の組織に身を置いているのに。

 

 

   *    *   *

 

 

 クエストが始まって、笛でモンスター殴りまくって二回ほどピヨらせた頃だった。

 

「……そういえば、佐藤さんたちから今週の悪の活動報告、まだ聞いてなかったんですけど」

 

「ん、そういやまだ言ってなかったっけ?」

 

「せっかくだから今してくださいよ。ゲームやりながらで時間の節約にもなりますし」

 

「几帳面なヤツだな参謀は。でもまあ無駄がないのはいいことだ」

 

 活動報告というのは、当然悪の組織として、どんな悪いことをしてきたかという報告だ。俺は参謀として組織メンバーの行動を把握する立場。定期的に聞いておかねばならない。

 

「じゃあ、まず佐藤さんからお願いします」

 

「ん、三丁目の竹道さんが膝痛めたっていうんで、様子見てきた」

 

「……次は、鈴木さん」

 

「小学生が遠足で山登るって言うから引率してきた。快晴でちょうどよかった」

 

「………………、田中さん」

 

「役場から町おこしの相談受けてきたよぉ。とりあえず聖地化を提案しといた」

 

 ………………。

 

「一応確認しますけど、俺たちって悪の組織ですよね?」

 

 悪って言えば、法を無視する犯罪者たちで、市民を恐怖のどん底に落としいれたり、破壊と殺戮を振りまいたりするんじゃないのか? まあウチはそこまでスケールの大きな組織じゃないんだけれども、少なくとも独居老人の訪問介護とかボーイスカウトもどきとか町おこしとか、ボランティアのすることであって悪の組織の仕事じゃねえだろ。何やってんのアンタら?

 

「正義がやらないことをするのが悪なんだよ?」

 

「なんとなく深いことを言わんでくださいよ!?」

 

「仕方ないと思っておけよ参謀。今日び小学校の遠足もな、登山中にクマとかイノシシとか出たら教師側の責任問題だ。ボディガードは付けたいってのは人情だろ。悪の組織ならクマぐらい倒せると思っているんだアイツらは」

 

「悪の組織買い被られてる!?」

 

 昼間っからゲームしてるダメな大人と思いきや、けっこう地域から頼られている佐藤さんたちである。悪としてははなはだ間違っている気がしないでもないが。

 

「そう言う参謀は最近何やったの?」

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「え?」

 

「そーだぞ、オレたちばっかに報告させて不公平じゃねえか。参謀もちゃんと自分がどんな悪の活動やったか発表してみ?」

 

 悪の組織に不公平も何もないと思うんだが。まあいい、それで佐藤さんたちが満足するなら別に発表してもいいよ。俺の悪事。

 

「……そうですね、今週やったのは資金の調整で、現団員やOBからのカンパ、アザゼルバンクが出してくれてる援助金とかの合計を出して、どこにいくら割り振るとかを計算し、アジトの維持費を捻出したり、正義との戦いで破損した装備品を補充したり、余ったお金を貯蓄に回して有事に備えておいたりしました。それと、ウチに来るカタギさんからの相談も、大体パターンが読めてきたんで、対応マニュアルでも作って団員に配布しようかと思ってるんですよ。その草案作りですかね。あとまあ正義の組織の監視も引き続きやってますし、あわよくば組織内の勢力争いとか利用して内部分裂とか起こさせたいとも思ってるんですが、まだそんな段階じゃないですよねー。ウチはまだ地盤固めるだけで精一杯ですし。そーいや今月、アジトの光熱費が先月より二割高かったんですけど、原因わかりますか? …………って、どうしたんです?」

 

 気づくと佐藤さんたちが携帯電話を取出し、何かを打ち込んでいた。

 

「……ウチの参謀有能すぎワロタwwww、と」

 

 内輪ネタでスレ立てんでくださいよ。

 

 

    *   *   *

 

 

「ところでさ、唐突に話は変わるけど、なんでウチはおしり団っていうの?」

 

 ホントに唐突に話題転換したな。

 

「どーいうことですか?」

 

「なんでウチはおしり団、なんて組織名にしたのか? ってことだよね」

 

そうですよね、悪の組織としては若干凄味の足りない組織名ですよね。イヤ本当は若干どころじゃないんですけど。それどころか変な方向にインパクトたっぷりの名前なんだけども。

 

 おしり団の参謀を務める俺ですら、よくこんなネーミングセンスの組織に入ろうと思ったなって当時の自分を助走付けて殴りたいレベルだもの。

 

「でも仕方ないじゃないですか。団長が付けた組織名なんですから」

 

「団長さんなー」

 

 そう、団長さんなんですよ。

 

「しかし団長さんはなんであんなにお尻が好きなの? 前世からの業(カルマ)?」

 

「団長、おっぱいは蛇蝎のごとく嫌ってますよ?」

 

「そういえば団長さんがモリガンのお尻に頬ずりする場面はよく目撃するけど、おっぱいには見向きもしないよね。モリガンおっぱい大きいのに」

 

阪神ファンが巨人嫌いみたいな心理か……?

 

 ことほどさように団長の尻好きは凄い。なにせおしり団団長なのだから。三度のメシより女性のお尻が好きで、趣味は野外に出てのマンウォッチングならぬお尻ウォッチング。都内数万人の女性のお尻をデータ化してランク付けし、発売されるアイドル写真集には必ず目を通してお尻を吟味している。「タ○リ倶楽部はOPが本編」と断言してはばからない人だ。

 

 そもそも、おしり団を立ち上げたのだって「悪の世界の頂点に立って、世界中の良いおしりと友だちになる」という、何を言ってるのかわからねーと思うが、俺もよくわからない動機からなのだ。今でもよくわからない。

 

 でも、団長がおしり団を立ち上げなければ、俺は佐藤さんや鈴木さんや田中さん、それにスカディさんやモリガンさんとも出会えなかったわけだし、そこを思うと無碍に団長のことをアホの子扱いできないのだが……。

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「そういえば団長さんはどうしたの? 姿が見えないけど?」

 

「買い物に行きましたよ。スカディさんやモリガンさんと一緒に」

 

「どーりで静かだと思った。何買いに行ったの? パンツ? ブルマ? 尻タレ写真集の新刊?」

 

「それだったらスカディさんもモリガンさんも付いていかんでしょ。単なる夕飯の買い出しですよ」

 

 買い物というだけで尻ネタに結び付けられてしまう。悲しいけどコレが団長なのである。

 

「それいいの参謀? スカディちゃんもモリガンも、せっかく参謀のハーレム要員なのに、団長さんに取られちゃって」

 

 ちょ、待てやコラ。

 

 誰が誰のハーレム要員か? たしかにウチにはレベルの高い女の子が多いけど、それはただ単に団長がお尻好きだから、団長の好む尻の子は必然的に美人揃いってことで、ん? てことは団長のハーレムってことになるの?

 

「スカディさんもモリガンさんも素敵な女性であることは認めますし、仲間として大切に思ってますけど、そこに恋愛感情が絡むかというと別問題ですよ?」

 

「ほう……じゃあ参謀は、スカディちゃんに対してもモリガンに対してもアバンでチュールな感情をもちあわせてはいないと?」

 

「当然です」

 

 と俺は佐藤さんの詰問をかわす。

 

「フッ……、その硬派な物言いやよし! しかしそう思っているのは参謀本人のみではあるまいか!?」

 

「どっ……、どういうことですか!?」

 

 つーかなんだこの会話のノリ?

 

「そう……、たとえばモリガンのことはさておき、スカディちゃんについてだ。オレはあるとき、スカディちゃんに請われて買い物に付き合った」

 

「ちょっと待って佐藤くん」

 

「むしろオレはそっちの方を厳しく追及したいんだけども」

 

 佐藤さんが自爆したことによって、田中さん鈴木さんの糾弾の矛先が佐藤さんを向いた。

 

「佐藤くん? 石抱くのと水に沈むのとどっちがいい?」

 

「なんで初っ端から拷問モードなんだよ!? 違う、違うの! オレはただスカディちゃんをスポーツ用品店に連れてっただけ!」

 

「スポーツ用品店?」

 

 鈴木さんたちはマジで親指潰し機やら持ち出すので、佐藤さんは必死で弁明する。

 

「スカディちゃんはまだこの辺の地理に明るくないからな。オレはただ案内を頼まれただけだよ」

 

 スカディさんはスポーツ少女だからな。

 全身が引き締まっていて筋肉しなやかで、ブルマやスパッツの似合うスポーツ尻と団長から評価を受けているぐらいなのだ。

 

「なんか、ランニング用に新しいスポーツウェアが欲しいだのなんだのと」

 

「なに? 一式揃えたの? 金もってんなあ最近の女子高生は」

 

「んにゃ、オレが買ってやったんだけども」

 

「田中、親指潰し機セット」

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「待って待って待って! いいじゃん別に服くらい! オレも後輩にいいとこ見せてやりたいの! 田中だって参謀に携帯ゲーム機買ってやったじゃねえか!」

 

 おかげで俺は一日五時間も狩りにつき合わされてるわけですが。

 

「……話がすっかりそれちまった。でだ、スカディちゃんがスポーツウェア買おうってときに、青と白の二種類があったんだよね。それで彼女は青を選んだ」

 

「ほうほう」

 

「何故かって聞いたら、『正人中尉の好きな色ですから』と……!」

 

 …………。

 

 場が沈黙に包まれた。皆さんコメントを必死で探していらっしゃるらしい。

 

「あ……、愛されてるね参謀?」

 

「そうか、参謀は青が好きなんだな。初めて聞いた」

 

「いえ、別に好きじゃないですけれど」

 

「「「誤情報じゃねーか!?」」」

 

 俺の真実表明に一斉のツッコミであった。

 

 ただ、青か白かと言えば、俺は白が圧倒的に嫌いなのでスカディさんの選択は消去法的に正しい。白は正義の色だからな。何が好きかより何が嫌いかで自分を語る男、俺。

 

「ふむ……、でもアレ、青のスポーツウェア……?」

 

「なに参謀、その思わせぶりな独り言? 死亡フラグ?」

 

「イヤ死にませんよ!? 『そうか犯人はアイツか!』って言ったら、そのアイツが背後に立ってる流れじゃありませんよ!? ちょっと思い出したことがあるだけですよ!」

 

「よかろう聞こうか」

 

 なんでそんな態度偉そうなの?

 

「……いや、アレは昨日か一昨日だったかな、俺が部屋で書類仕事してたら、いきなりスカディさんが入ってきたんですよね」

 

「うんうん」

 

「それで、俺の隣に座って、何を喋るでもなくじーっとしてるんですよね」

 

「うん?」

 

「二、三時間ぐらいしたら、また何も言わずに出てったんですよねスカディさん。一体何がしたかったのかなーって」

 

「う……ん……」

 

「で、今思い返してみたら、その時着てたのが青いスポーツウェアではないかと」

 

「「「アホかァァァァァァァ!!」」」

 

 え? なに?

 

「参謀アホかァァァァァァァ!」

 

「参謀はアホだなァァァァァァァ!」

 

「参謀で、しかもアホォォォォォォ!」

 

 何故か一斉大ブーイング。何がそんなに佐藤さんたちの逆鱗に触れたの?

 

「わからんのか参謀ぅ!? スカディちゃん! それ完璧に! オメーに新しい服見せに来たってことじゃねえか! 参謀、スカディちゃん帰ってきたらホメとけよ? あの時の服綺麗でしたーって全力でホメとけ!」

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「ホメろっても、スポーツウェアとか言いつつ、その実ただのジャージですよ? どうしたってホメようが……」

 

「いいからやれー! 絶対やれ―!」

 

 なんでこの人たちは本人以上に必死なんだろう? 彼らの人の好さはたまに想像を絶するところがある。

 

「……ったく、参謀は頭いいくせに、なんでこんなに女心に疎いのか?」

 

 頭よくないですってば。

 

「この分だとスカディちゃんだけじゃなくてモリガンにもなんかしてるんじゃないのか?」

 

「参謀の場合、何かしたことより何もしてないのが問題だと思う」

 

 何故モリガンさんのことまで話題に上るのか?

 

 モリガンさんは、先ほども言ったように団長、スカディさんとともに買い物に出ていて不在だ。というか、モリガンさんが夕飯の買い出しに出て、団長とスカディさんがそれに付いて行ったと言う方が正しい。

 

モリガンさんは家事スキル高いからな。アジトの炊事洗濯、掃除に繕いものすべてを引き受けているのだ。

 

「……そのモリガンで、最近気になることがあるんだけど」

 

 田中さんが、ボソリと語りだした。

 

「ウチのアジトってさ、家庭や学校の事情で家に帰れない団員のために、基本開放してるじゃない? それで共同生活しながらゴハン作ったり掃除したり。裏庭に菜園作ったりボランティア活動したりしてるんだけど……」

 

「半分近くが悪の組織の活動じゃないですよね?」

 

「中でも参謀とモリガンは、まったく帰らないでアジトに住み込んでるじゃない? もはやアジトが実家みたいな?」

 

「……俺とモリガンさんは、家庭の事情が色々ありますから」

 

「でね、ボクがたまに夜勤明けで、ここでゴハン食べさしてもらうときに気付いたんだけど。参謀とモリガン、夫婦茶碗使ってるよね?」

 

「ん?」

 

 佐藤さんたちの視線が、俺に集中した。

 

「……夫婦茶碗ってなんですか?」

 

「そこからか!?」

 

 なんか凄い世間知らずを見るような目で見られてしまった。だが夫婦茶碗という単語は残念ながらオレペディアには登録されてない。語感からするに親子丼の亜種だろうか?

 

「あー、茶碗、茶碗ねえ……。ああ、アレのことか」

 

 とりあえず、この居心地悪い注目を回避するために、なんか喋ろう。

 

「深い意味はないですよ? 俺もアジトに住み込むようになって専用の食器とか必要かなーって思ってたら、ちょうどよくモリガンさんが買ってきてくれたんです」

 

「ほうほう」

 

「構わん続けろ」

 

「……モリガンさんも気を使って、これでいいですかー? って見せてくれたんですよ、前もって。俺も食器なんかに拘るタチじゃないですから、いいよー、って答えておいたんですけど……」

 

「……参謀、一つものを尋ねるが、お前がいいよー、って言ってモリガンはどんな反応した?」

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「頭の周りを迦陵頻伽が飛んでましたね」

 

「極楽に住むという霊鳥が!? どんだけ舞い上がってんのモリガンは!? もういい、正解を言ってしまいなさい田中!」

 

「いい参謀? 夫婦茶碗ってのは、いわば新婚さんがイチャイチャするために使うイベントアイテムの一種なの。モリガンは、それを使って参謀と疑似新婚さんプレイを楽しんでたわけだね」

 

「……それだけじゃないぞ、オレにも一つ言わせろ」

 

 鈴木さんが強引に話に割って入る。

 

「参謀が今着てるそのシャツ、なんかやけに出来がいいよな?」

 

「そうですか? モリガンさんが用意してくれたんですけども……」

 

 ざわ……! ざわ……!

 

 なんかざわざわ言い出した?

 

「……おい参謀、ちょっとそのシャツの裏見せろ」

 

「え!? なんですいきなり!?」

 

 なんか無理やりシャツ脱がされた!?

 

「……やっぱり! どこ探しても洗濯表示タグがついてない!」

 

「つまりは手縫いか!」

 

「モリガンが『ミシンが欲しい』とか言い出すから、おかしーと思ったら!」

 

「マジか鈴木!? 結局オレら全員後輩に何かしら買い与えてるじゃねーか!? つーか参謀、何気なくモリガンに衣・食・住握られてる!?」

 

「ひそかに赤ちゃんの靴下とか編んでそーだよ! 怖っ!」

 

 そしてシャツを返された。

 

「皆さんちょっと大袈裟すぎじゃありません?」

 

 俺とモリガンさんはアジトに寝泊まりしている。つまりは共同生活してるんだから、女性のモリガンさんに、ある程度生活でお世話になるのは仕方がないことだろう。

 

 しかし、それが新婚さんプレイとやらに即座に繋がるかと言えば、そんなことはない。モリガンさんに毎朝お味噌汁を作ってもらったり、パンツを洗ってもらったり、同じお風呂のお湯につかったりしても、それが新婚さんプレイだと安易に決めつけられるだろうか、いやない。

 

「そんなことはないぞ参謀。たとえばだ、ここに佐藤という男がいる」

 

「なんだよいきなりオレに?」

 

「コイツは中学時代から懇意にしている女の子がいながら、硬派だケンカだとバカなことに拘って進展を怠ってるうちに、ついには別の男に取られて彼女は結婚してしまったんだ」

 

「鈴木は何オレの過去を赤裸々に暴露してんの!?」

 

「まあ彼女は結婚生活がうまくいかず一年ほどで出戻ってきたんだが、それでもまだコイツ踏ん切りつかないの。前夫との離婚調停にメチャクチャ相談のってやったり、自分ちの豆腐屋に無理やりカフェテラス開業して料理好きな彼女に任せたりしてるのに、なんでプロポーズぐらいサラッとできんのか!? お前と同級生ってことは彼女ももう三十の大台だろ? もういい加減安心させてやれよ! 恋愛にも鮮度があるんだぞ!?」

 

「何参謀を教え諭すと見せかけてオレのことディスってんだよ!? 違うだろ!? 参謀が女心にまるでアストロンだから忠告してやろうって回でしょここは!?」

 

「だから年長のお前が範を示して……」

 

 なんか俺という存在を置いてきぼりにして、佐藤さんと鈴木さんの内紛が始まった。それを見かねて残る三人組の田中さんが……、

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「それを言うなら鈴木くんだって大概だと思うけどなー。」

 

……と武力介入。目標を駆逐する。

 

「うぐっ!?」

 

「知ってるんだよボクは? 鈴木くんが前の職場の女上司さんのことまだ忘れられないってことを」

 

「うぐぐぐ……」

 

 田中さんの介入によって沈静化するかに見えた戦況。しかし何故か、助けられたはずの佐藤さんが田中さんの背中を撃った!?

 

「田中こそ美香ちゃんに謝れ!」

 

 誰やねん、それ?

 

「がはっ!?」

 

 田中さんが吐血した!?

 

以降、三人は互いの出方を窺うように沈黙してしまった。

 

「……この話題はもうやめにしようか?」

 

「そだねー」

 

「もう一クエいこう。五体連続クエやろう」

 

 男たちは不毛な戦いを避けた。

 

 

    *   *   *

 

 

「……さて、そろそろ終わりも近づいてきましたので、まとめに入りたいと思います田中くん」

 

「……はい、ではまとめてください佐藤さん」

 

「……うむ、今回のまとめ。ウチの参謀がこんなにハーレム体質なわけがない!」

 

だからハーレムじゃねえですって。

 

「まあ、そのハーレム要員たるスカディちゃんやモリガンも目下団長に取られてるわけですが」

 

 ハーレム要員でもねえっつってんだろうが佐藤さん。

 

 でも団長は、世界中の素敵なお尻と友だちになるためにおしり団を立ち上げたのだから、おしり団の女の子は全部、団長のものってことでいいんではあるまいか?

 

 と思っていたら、窓の外から山彦のごとき声が響いてきた。

 

 ……りー。

 

 ……しーりー。

 

 ……おーしーりー。

 

「あ、団長帰ってきた」

 

「あれで団長さんってわかるところが凄いわな」

 

 しかし認めたくはなくともアレが若さゆえの団長なのである。俺は早速団長の出迎えに向かう。

 

「じゃ、皆さんゲームはここまでということで」

 

「うーい、団長さんの相手よろしく頼むわ」

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 佐藤さん、鈴木さん、田中さんとはここで別れた。

 

 玄関まで行くと、すでに戸をガラガラと開けて、団長がご帰還あそばしていた。脱いだ靴を揃えもせずに、俺へ向けて駆け寄ってくる。

 

「正人さん、正人さーーん!」

 

「お帰りなさい団長……ぐぶえっ!?」

 

 団長、ただいまの挨拶代わりに腹タックルかますのやめてください!

 

 今、俺のお腹に抱きついているのは、小学生みたいに小柄な女の子。身長は一五〇センチ程度しかなく、人が見れば本当に小学生としか思わないだろうが、驚くことなかれ、これでも俺と同じ高校一年生。

 

 この子こそ悪の組織おしり団の団長・伊佐波美なのである。

 

「団長、帰ってきたらまず『ただいま』でしょ? それに靴はちゃんと揃えて……」

 

「見てください! 帰り道で、よさげなおしりの人にエンカウントしたのですよ! 思わず写メっちゃったのです! パパラッチなのですよ!」

 

 ……団長、相変わらずお尻に懸ける目端のよさは半端じゃありませんな。でも団長、芸能人や公職の人ならともかく、普通の人を許可なく撮影するのは肖像権の侵害ですよ。 イヤでも悪の組織なんだから、そんなこと無視しても全然OKなんですけど、そんなことじゃなくてね?

 

 などという俺の葛藤など意に介さず、団長は写メを映したガラケーをグリグリ俺に押し付けてくる。

 

「ホラホラ、ホットパンツがよく似合いそうな、ピッチリ小尻なのですよ! あまりにいいお尻なので拉致ってお友だちになろーとしたら、スカディちゃんとモリガンさんにストップさせられたのです!」

 

「それはスカディさんとモリガンさんナイスプレイ。……てか、その二人は一体どちらに?」

 

「冷蔵庫に肉やお野菜やアキバで買った冷やしパンツを入れるために勝手口ルートに分岐したのです。私だけが、この特上おしり写メを正人さんにごしょーらんさせるために正面突破なのですよ!」

 

 そんなに気を使ってもらわなくてもいいんですがね!?

 

 大体この写真のお尻だって、キュッと引き締まった感じで言えば、スカディさんの方が数段上じゃないですか。ボリュームではモリガンさんの足元にも及ばないし。あの二人の尻を見飽きたぐらいの箸休め的な意味合いではいいかもしれないけど、それ以外のケースではあえて取り上げるまでもない尻だと思いますぜ。

 

 と心の中で思ってる自分がキモかった。団長による洗脳は着実に進んでいた。

 

「ま…、まあとりあえず団長、中に入りましょう。モリガンさんたちが帰ってきたからにはもうすぐ夕食でしょうから、大人しく待ってましょうね」

 

「ハイです! 待ってる間に今日蒐集してきたおしり画像をカテゴリ別に整理するのです!」

 

「そうですね、でもその前に外から帰ってきたんだから手を洗いましょーね」

 

 そんな感じで、俺たちおしり団の日常は過ぎていくのだった。こんな平穏な日がずっと続けばいいなあ、とは思うけど、また明日からは正義とかと血みどろの戦いを繰り広げることになるに違いない。

 

                             END

 

 

 

 

説明
ご存知の方、大変ご無沙汰しております。のぼり銚子です。
TINAMI様ではもう随分小説を書いていなくて、ときたま応援メッセージを下さるユーザーの方にも申し訳なく思っていたのですが、今回、やっと近況を報告することができます。

このたび、HJ文庫さまでライトノベル作家としてデビューすることが決まりました!!

作品タイトルは『悪に堕ちたら美少女まみれで大勝利!!』
HJ文庫さまより絶賛発売中です。ペンネームは岡沢六十四と改めています。
今回は、応援メッセージをくれたり作品にコメントをくださったユーザー様へのお礼も兼ねて、本編の紹介SSを掲載してみました。
これを読んで、本編にも興味をもってくだされば幸いです。

「悪に堕ちたら美少女まみれで大勝利!!」は、正義の組織と悪の組織が戦う世界。
主人公の正人は、正義の組織の司令の息子として生まれますが、ある理由で正義の組織に入ることができず、何度試験を受けても不合格になります。
自暴自棄になった正人は、真逆の悪の組織に入団、そこで出会った仲間たちとともに正義と戦う、というお話です。

詳しくは、これから始まる番外編でご確認ください。
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コメント
デルタ様>お財布に余裕ができた時にでもよろしくお願いします!(のぼり銚子)
なるほど!このラノベぼ作者でございましたか!いや、アニメイトで表紙見たとき衝動で買いそうになったのですが・・・・・・お金がなくて・・・・・・泣く泣く手放した奴でした・・・無理してでも買えばよかった(号泣(デルタ)
ありがとうございます。引き続き、読んで楽しんでいただけたら幸いです(のぼり銚子)
久しぶりにのぼり銚子さんの作品読みに来たらデビューしてたとは、おめでとうございます。今度買わせてもらいます。(赤嶺)
小説買いました・・・お尻ww(匣)
コメントありがとうございます。ここまで来れたのも皆様のおかげです。これからもよろしくお願いします。(のぼり銚子)
  マ  ジ  で  !? ちょ、探してくるww(弌式)
…よし、探しに行こう!(断金)
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