SFコメディ小説/さいえなじっく☆ガール ACT:20 |
「ダメだよ夕美ちゃん!夕美ちゃんが逮捕されたらビンボーな僕には保釈金なんて払えないし、弁護士もオススメ版の国選弁護人しか来てくれないから減刑は難しいよ」
「そ、そんな止め方があるか?っっっ!!」
夕美が持つ、しょーもないボケにはツッコミを入れずにおられない大阪人のDNAが反応した結果、夕美は脱力してその場へヘナヘナとくずおれていた。
(ほんまやでー。やっとられんわー………)白目をむきながら耕介も遠のく意識の中でツッコミを入れていた。
「…ほづみ君?????????…ほんまに、あんたって人は…三年ぶりに帰ってきてもちょっとも変わってへんねえ…」
「そう?僕的には毎日アップデートしてるんだけどね、ははは………先生、大丈夫ですか」
「ああ…げほげほげほ。き、きれいな光に包まれた花畑に懐かしい人が見えた…あれ、おばあちゃんやったんかな…」
夕美はもういちどため息をつく。
「そやけど…あたしはどないしたらええのん?父親が地球を滅ぼそうとしてるマッドサイエンティストやったやなんて…」
「…こらっ!誰がマッドサイエンティストや!しかも地球を滅ぼすて、なんちゅうことゆうんや。そんなことして何になる………た、確かに、ごほほほ。か、核爆弾並みかそれ以上の破壊力を発揮できる薬やけど、別に俺かて世界征服を企んでンナもんをこしらえたんと違うぞ。もちろん人助けのためや。」
「えっ。」
「ただし、個人的な人助けであって、スーパーヒーローみたいな公共性の高いモンとは違うだけや。」
「公共性て、公衆便所やあるまいし。だいたい核兵器みたいなアブナイもんでどんな個人的な人助けができるっちゅーんや!?」
「いや、核兵器は俺の失言や。核エネルギー、そう、核エネルギーや。原子力発電所。よーするに核と刃物は使いようという話でやな…」
「そんな極端なたとえがあるかいな!」
「いや、ほんまやで。アインシュタインかて、なにも大量殺人兵器を作りとおて相対性理論を考えてたんとちゃうと思うで。そんな例はナンボでもあるわ。ノーベルのダイナマイトとか、ライト兄弟の飛行機とか、ゴダードのロケットとかやな」
「せやけど結果的に原爆は」
「その通りや。作った本人にそのつもりが無うても、使うヤツによってはそういう結果も出てくる。せやから、この薬は完成しても世には出さへんてゆーとんのや。」
「あっ…せ…せやから………?」
ようやく、夕美は耕介の言わんとすることが飲み込めた。
「使われへん…ゆうこと………?」
「そういうこっちゃ、わかったか。そら、お父ちゃんも何遍もお前と同じ事、考えてみたよ。けどな、薬を使うた超人救助隊なんて、昭和のマンガやアニメなんかにはよおあったネタやけど、現実に当てはめてみたら無理な話やわな。」
「………」
「そんな悲しい顔するな。しゃあないねん。人間にはええヤツもおれば悪いヤツもおる。救助隊のためにと与えた薬を悪用するヤツも必ず出てくるんや。それも権力者の側からな…」
夕美はしばらく考え込んでいたが、ふと頭を上げた。
「………………あ」
「わかってくれたか」
「まだやわ」
「まだ?」
「あたし、ご飯まだやった…なに、お父ちゃんらだけでラーメン食べたん。ずるい」
「ゑ。なに、いま時分(じぶん)、何ゆーてんねんな。だいいち、そーゆー話題とちゃうやろが」
「ああっ。あたしってば、帰ってきてから着替えもしてへんやんか。あかん。お風呂入ってくるわ。そや、洗濯もせな」
「は。はあ………」
ばたばたと浴室へ走っていった夕美の後ろ姿を見送り、さっきまで殺人事件が起こりそうな剣幕だったとは思えないくらい、あっさりと場面転換してしまって、耕介は呆然とするしかなかった。
「ほづみ君…」
「はい?」
「今更ながらやねんけど、つくづく、娘って難しいノオ」
「いつの時代も父親ってそーゆーものみたいですよ」
「いつの時代も?」
「はい」
「ほづみ君がそーゆーとホンマ説得力あるわ」
「ははは。見聞の経験値だけは高いですからね」
「ほな訊くけど、こういう時はどないしたらええと思う?」
「それは分かりませんよ。あいにく僕には可愛い娘もいないし、そもそも先生よりずっと年下ですから。」
「ずっこいなー。」
「はは。………う」
その瞬間である。耕介にはほづみの身体が一瞬だけブレたように見えた。
「どないしたっ!?」
「なんだろ…まさか?この感じは…」
「そんな!? せやかて、放出したばっかりやないか。臨界点に達するまでまだまだなはずや!」
「え、ええ。違います。もちろん僕のじゃない。でも、たしかにマナの…気脈の動きですよ、これは…それも、とてつもなく巨大な」
「巨大な気脈………地脈からくる波動の影響か」
言うが早いか、すこし揺れた。地震である。まあ、日本では珍しくもないし、いま耕介や夕美たちが住む地域は火山帯も近いので尚更である。
入浴中だった夕美もこうしたことには動じない性格なので、揺れる湯船の水面を見て「またか」と思った程度だった。
だが、須藤家の庭先…といっても裏手の森と呼んだ方がふさわしいような山の中で腰を抜かしている少年がいた。
メディア部部長の三宅亜郎である。
結局あのままあきらめきれず好奇心に負けて夕美の家が建つ山へ分け入ったのだが、正規の道をたどらずに野道山道をたどってきたために道に迷い、大汗をかきながらようやく山頂へたどりついたのだった。
山といっても丘のバージョンアップ版程度だろうと思ってナメていたが、日が沈んでみると意外に気温が下がってくる。
体育の授業もなかったから予備に着る体操服のようなものもない。
(うぶぶっ。こりゃあ…ちょっとヤバイかも。は、は………)くしゃみをしかけていた矢先の地震だった。
〈ACT:21へ続く〉
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毎週日曜深夜更新…のはずが、どうも月曜休日だと狂ってしまって失礼してます…。 フツーの女子高生だったアタシはフツーでないオヤジのせいで、フツーでない“ふぁいといっぱ?つ!!”なヒロインになる…お話、連載その20。 |
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