IS~音撃の織斑 二の巻:起動する力 |
二の巻:起動する力
Side 石動鬼
俺の名はイスルギ。本名は五十嵐市。猛士関東支部の特別遊撃班の一員だ。昨日の夜は皆で騒ぎに騒いで飲み食いした所為で、ウチの弟子はまだ寝てる。今は午前九時位だが、修行中ならとっくに起きている所だ。仕方ない、こうするか。縁側に移動させて、冷たい水の入ったバケツを頭の上でひっくり返す。
「どうわあああああああ?!!な、何が起こったああああああ?!」
大慌てだな。朝から騒がしい奴だ。
「騒ぐな、バカ。今何時だと思ってる。」
「あ・・・・」
やっと気付いたか、アホめ。
「鬼として独り立ちしていきなり寝坊とは良いご身分だな。」
「し、師匠だって飲兵衛じゃないですか!肝臓炎でその内死にますよ?!しまいにはトドロキさんとゴウキさんで飲み比べ始めますし!」
「心配はいらない。酒を飲む時にトマトを食っていれば血中のアルコールの数値は下がるらしい。だから肝臓炎になる事は無い。まあ、確かに酔いで頭がガンガンするが、お前も未成年者の分際で飲んでただろう?無駄に酒の味を覚えやがって。酒の味と美味さが分かるのは、三十路に差し掛かる辺りがピークなんだよ。」
俺は間違った事は言っていない。こいつ最初はどうにか断っていたが、一人だけシラフは許さんと泥酔状態のエイキに無理矢理飲まされた。それもかなりの銘柄らしく、五デシリットルでウン十万はする物らしい。
「う・・・」
「今のは酔い覚ましだ。起きたら準備して変身しろ。今回は音叉剣に術を付加する応用技をやる。それが終わったら俺とのスパーリングだ。けど、」
「けど、何ですか?」
「一つ賭けをしたい。そのスパーリングで俺が勝てば、お前は俺の言う事を一つ聞け。お前が勝てば、俺はお前の願いを一つ聞く。」
「え?!まじで?!」
簡単に掛かったな。これなら苦労せずに済む。幾ら独り立ちしたとは言えまだガキだ。
「ああ。マジだ。勝てれば、の話だがな。」
「よっしゃ、勝つぞぉおおおお!!!」
随分とテンションが上がって来たな。さてと。俺達は向かい合って礼をし、それぞれ変身した。やはり一夏が鬼になるとその姿は様になっている。俺は変身に音叉は使わないが、音叉剣にする為に一応持っている。まあ、使っても変身は出来るが。
「さてと、まずやるのが音叉剣への属性付加。鬼幻術を付加する事によって得られる効果は変わる。例えば、((惑|まどい))を纏わせたら、」
そう言って俺は印を結び、刃に指を這わせた。音叉剣に仄かに紫色のオーラが纏われた。よく見ないと分からない程に仄かだったが、それで充分だった。
「相手に幻覚を見せる事が出来る。お前が出来る十八番は、相手の見る位置とお前が見える位置、お前が斬る方向と相手が斬られる方向が逆転している様に見せられるんだったな。」
「はい。後は・・・・鬼火を刀身に纏わせる事でしょうか?」
「そうだ。術をそのまま発動する事は出来るが、変身していない時では発動に時間が少しかかる。だが触媒を使えば、威力は劣るが早めに発動する事が出来る。鬼闘術を纏わせる事も出来るぞ?トドロキも雷撃拳を烈雷に纏わせる事が出来る。一通りの術は教えただろう?それを音叉剣に流し込めば良いだけの話だ。まあ、口で説明するより実際にやった方が実感も湧くさ。お前は努力で伸びる。俺はその努力に呼びかけるだけだ。頑張れよ?いつものアップをやってから始めろ。成果が出たら教えてくれ。まあ、暇なら俺が贈った刀で素振りなり手入れなりしていても構わない。アレも術の付加が可能だからな。ちょっと用事があるから出かけるぞ。」
「はい!」
さてと、俺は一夏の為に鬼の道以外の可能性を残す為の下準備をしに行きますかね。えー、藍越学園の試験会場に行く手続きをする為の書類は・・・あ、これだ。今日中に行けるな。よし。たちばなで活動報告を提出しに行くかね。
Side out
Side 一夏
修行、修行。やはり気が滅入った時や酔いを吹っ切る為には修行と鍛錬が一番だ。簡単な素振りから徐々に形を変えて行く。古流武術に、他の格闘技も混ぜ合わせて演武を行う。演武をしながら体の中で鬼を練り上げて集中させ刀身が発火する様にイメージ・・・・・そして、地面から突き出ている鉄の棒を輪切りにした。刀身は燃えてはいなかったが、熾った炭の様に真っ赤を通り越して白みがかったオレンジ色にぼうっと光っていた。
「成る程・・・・自分が想像した物とは違う物も出るって事か・・・惑いは・・・・何かホログラムの触手みたいなもんが出て来たし・・・・・う?ん・・・・あー、駄目だ。酔いが完全に抜け切ってないから気持ち悪い・・・・」
俺は住んでいる師匠の家の巨大冷蔵庫から生のトマトを取り出してそれを齧った。酸っぱい汁が果肉と共に口の中に流れ込んで来て頭と口内がサッパリした。どうやらトマトと酒は血中のアルコールを減少させる効果があると言う師匠の言葉に嘘偽りはなかったらしい。一つ食べ終わって種をゴミ箱に吐き捨てた。再び修行を始めようとした所で、車のエンジン音が聞こえた。恐らく師匠がたちばなに活動記録を提出しに行くんだろう。あの人時々報告とか書類にはルーズになるからな。
Side out
Side 石動鬼
「ウイーッス、日菜佳。とりあえず今月分の活動報告これに纏めておいたから、よろしく。」
「はいはーい。毎度どうもー。」
俺は日菜佳に活動記録の入ったディスクアニマルを渡した。
「香須実はどこだ?」
「あ、姉上なら・・・」
言い淀んでいる・・・ああ、成る程、そう言う事か。あいつオフだからってまたイブキと買い物に出かけやがったな。おやっさんの目の敵ランキングトドロキと同じ堂々の一位だ。
「そうか。まあ、大した事じゃないから良いんだが。じゃあ、みどりは?」
「いますよー、何でも父上が大事な話があるとかで。」
「分かった。ありがとう。」
俺は直ぐに隠し通路を通って地下の関東猛士本部に着いた。
「うーっす、おやっさん、みどり。」
「「あ、イスルギ君!」」
タイミングぴったりだな。
「どうしたの?」
「ああ、活動記録提出ついでにな。」
「ちょうど良かったよ。君の弟子だから、君の許可無しに話すのも気が引けてね。」
そう言っておやっさんが冷めたお茶を啜った。
「ああ、一夏の事ですか。俺が話しますよ。ただし、みどり。これは誰にも言うなよ。バレたらちょっと面倒な事になる。」
俺の真剣な表情にみどりも頷いた。
「一夏は、俺の弟子で、俺の姓を名乗っているが、あいつの本名は織斑一夏だ。」
「えええええ?!嘘!!」
「まあ、驚くのも無理は無い。俺が数年前にあいつを拾って来て俺の弟子にすると言ったのは覚えているな?あれは、あいつが第二回モンド・グロッソで誘拐された所を俺が助けたんだ。そして弟がこうなっているのに織斑千冬は決勝戦に出た。後々になってそこに向かったらしいが、当然遅過ぎた。俺が行かなければ、位置科は今頃殺された後に骨を粉にされ、存在した事すら気付かれる事はなかっただろう。そしてあいつ自身、目が死んでいた。」
「目が、死んでいた・・・・?」
「ああ。何て言うかな・・・・そう、極端な事を言ってしまえば病んでる奴が今にも高層ビルの屋上から飛び降り自殺する前の表情って感じ。」
リアルに想像してしまったのか、思わずみどりが顔を背けた。おやっさんも渋い表情をした。
「で、今の今まで俺がここまで育て上げた。だが、少し心配なんだよ。」
「確かにね、彼はまだ十六位だろう?そんな子供でなくてもまだ大人になっていない彼に鬼の道一筋ってのはちょっとキツい気がするねえ。」
流石はおやっさん。伊達に二十年以上父親をやってないな、俺の言わんとする事が何の苦も無く伝わっている。
「その通りです。もし一夏が任務中に以前のトドロキみたいに再起不能、もしくは復帰不能な状態に陥ってしまったら・・・・」
そんな事は想像したくもない。俺が手塩にかけて育て上げた弟子が、そんな風に終わってしまうなど。
「だから、その万が一を考えて別の道を・・・可能性を残してあげたいって訳ね?彼の為に。」
みどりもおやっさんの言葉を聞いて俺の言いたい事に気付いた様だ。
「そうだ。だから、俺はあいつに藍越学園の試験会場に放り込む事にした。俺は修行の合間にあいつの脳味噌にエリート大学生レベルの知能を叩き込んだ。腕試しも兼用だよ。他の鬼の皆にも伝えて欲しい。あいつはこの世界を・・・・ISによって激変してしまった世界を嫌っている。当然、この世界を作り出した権化の一人、織斑千冬もな。だから、彼らにも((一夏|あいつ))のブレーキ役にもなって欲しい。当然、悩んでいたら相談にも乗って欲しい。あいつはアレでも結構デリケートで傷つき易いからな。」
説明 | ||
姉に捨てられ、魔化魍と戦う猛士の鬼、石動鬼に拾われた織斑一夏。鬼としての修行を積み、彼は何を見る? ISと響鬼のクロスです | ||
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インフィニット・ストラトス 仮面ライダー響鬼 | ||
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