武装神姫 生まれ来るわたしへ 2
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 初めて神姫センターへ行った日の朝、私が目を覚まし、顔を上げると、カップからコーヒーをすすりながら神姫センターの催事や利用法に目を通しているオーナーの姿が目の前にあった。私のクレイドルはオーナーの机の上、PCのディスプレイの左脇においてある。起動したばかりの私は、ちょうどオーナーを見上げる形になっていた。

 この時間に起きているオーナーを見るのはこのときが初めてだった。タイマー起動になっている為、私はいつも決まった時間に起動する。私が目を開けるとき、オーナーはいつもベッドの中だ。

 目を開けた私はメールをチェックした後、TVをつけ、マスターを起こす。オーナーは寝起きがいいようで、いつもTVをつけるとすぐに目を覚ます。そして、シャワーを浴び、キッチンでコーヒーを淹れ、カップを手に戻ってくる。

 だが、この朝はすでにカップを手に私の目の前にいた。

 「おはようございます。お早いのですね、オーナー」

 クレイドルにもたれたまま声をかけると、オーナーは少し驚いたようにカップを口から離し、顔をわたしに向けた。その目と口元には少し笑みが浮かんでいた。

 「おはよう。なんだか、目が冴えちまってね。神姫をつれて街に出るのは初めてだからかな。なんだか緊張するよ。」そう答えると、笑みを浮かべたままの口にまた、カップを運んだ。「まだ時間は早いけど、一応準備はしておいた。お前の装備一式はそこのケースに入れてある。あと、神姫ネットでバトルロンド参加の登録もしておいたから、お前のほうでも見といてくれ。神姫ネットはログインしてるから、そのまま見られるよ。」顎先でわたしの足先を示すと、オーナーは椅子にもたれ、ひとつ伸びをした。

 「了解しました。」視線を足先にに向けると、クレイドルの先に、いくつかに区切られた半透明の樹脂製のケースがあった。身を起こし、、ケースの上に飛び乗った。両手と膝を突き、中を覗き込む。四つん這いのまま、ケースの上を移動し、半透明の樹脂を透かして装備品を確認していく。暗視ゴーグル、マスク、ブーツ、防具、バックパック、ハンドガン、SMG、ミニガン、ナイフ、すべて揃っている。オーナーの手持ちの武装はすべてケースに収められていた。このときはまだ、バッフェバニー型の純正装備だけだったが。

 装備を確認し終えると、わたしは充足感を覚えた。本能的な充足だろうか。 機械である神姫に本能などあるわけも無いが、武装神姫としてのプログラムが、戦うことを求めている。やはりこれは本能なのだろう。武器を携え、戦場へと向かう、武装神姫としての本能的喜びなのだ。

 「装備、問題ありません」

 立ち上がり、オーナーの顔を見上げる。その顔が少し驚いていた。

 「何故、驚いているのですか、オーナー」

 「普段、表情が変わらないからさ、ちょっと驚いた。」

 気がつかぬうちに表情が変わっていたようだ。だが、どのような表情をしているのか見当もつかなかった。

 「わたしは、どのような顔をしているのでしょうか」

 オーナーに問うてみた。

 「いや、笑顔なんだけどさ。」 オーナーは少し困ったような顔をした。「こう、猛々しいというか、凄惨というか、なんともいえない笑顔だな」

 そのときの感情が顔に出ていたようだった。神姫も感情で表情が変わるということを、わたしはそのとき初めて知った。感情の昂ぶりや、それが表情に出るなど、それまではなかったことだ。

 神姫はオーナーの所有物であり、その命令を忠実に実行するものである。余計な感情を見せてオーナー煩わせることは控えるべきである。わたしはそう思い、行動していた。会話もそうだ。指示への受け答えと報告を簡潔にするだけで、会話らしい会話をしたことは無かった。これも本能だったのだろう、兵士がモチーフの、バッフェバニー型の。

 「驚かせて申し訳ありませんでした。バトルロンドに参加できることが嬉しく、それが表情に出てしまったようです。以後、気をつけます」そういって頭を下げた。

 「別に気にすることないし、直すことも無いよ」オーナーは慌てた様子で、わたしの目の前で手を振った。「今まで表情が変わるとこ、見たことなかったからビックリりしただけ。それに、笑顔が出来るなら、いつもの仏頂面よりそっちのがよっぽどいい」

 「今までの表情はお気に召しませんでしたか。気がつかず、申し訳ありませんでした。データを呼び出し、今後は常時、先ほどの表情をするようにいたしますので、御勘弁ください。」再び頭を下げた。

 「笑顔はいいけど、さっきのは怖いからしなくてい。もうちょっといい笑顔で頼むよ」オーナーは苦笑していた。

 「いい笑顔、ですか・・・」どんな表情なのか、まったく分からなかった。「努力します」

 「頼むよ。じゃ、シャワー浴びてくるから、その間に参加登録のチェックをしといてくれ」そう言ってオーナーは席を立った。

 

説明
ひとまず、本日もアップすることが出来ましたw
なかなか話が進みませんがw
短編のつもりで書き始めたんですが、短編で収まるだろうか

なお、作中での描写は筆者がバトルロンドをプレイしていたときに感じた解釈(妄想)で描いていますので、違和感あるかもしれませんが、そういうものかと、御理解ください

勝手なお願いですが、「ツマラン」の一言でもいいのでコメントなど下さると、励みになりますので宜しくお願いします
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