IS~音撃の織斑 七の巻:戦闘、開幕
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Side 一夏

 

決闘当日、第三アリーナで俺はラファールを纏っている。感触は悪くない。PICもハイパーセンサーの感度も良好だ。武装も必要な物は全て((拡張領域|パススロット))に満杯ギリギリまで詰め込んだ。

 

「五十嵐君、時間ですよ。」

 

山田先生の声が((解放回線|オープンチャネル))から聞こえて、俺はカタパルトから射出された。既にアリーナ上空ではオルコットが待機していた。ブルーティアーズ。イギリスの第三世代型か。見るからに射撃戦に特化している様に見えた。あのバインダーと・・・腰のスカートの部分が怪しいな。気をつけるか。どんな敵だろうと油断せずに挑むべし、だったっけ。

 

「さてと、始めるぞ。」

 

「最後のチャンスをあげますわ。貴方の負けは自明の理です。泣いて謝れば許してあげない事もなくってよ?」

 

((安全装置|セーフティーロック))が外れた。攻撃して来るな、そろそろ。

 

「知るか。お前のそのプライドをズタズタにして分からせてやるよ、格の差って奴を。五分でな。」

 

「そう、でしたら、お別れですわね!」

 

引き金が引かれて青いビームが放たれる。俺は何の苦も無くそれを避けながら最後に((瞬時加速|イグニッション・ブースト))で懐に潜り込んだ。チョロいな、この程度鬼の修行に比べたらなんて事は無い。

 

「イ、((瞬時加速|イグニッション・ブースト))ですって?!何故貴方の様な素人が・・・?!」

 

「訓練積んだら素人じゃなくなるんだよ!!」

 

そう言って俺は主武装のスナイパーライフル スターライトmk III を手から蹴り上げて奪い取り、野球のフルスイングよろしく力一杯何度も叩き付けた。シールドエネルギーは二百程減少したが、吹っ飛ばされた勢いは死んでいない。地面に向かっている所で俺は両手のマニピュレーターの指部分の間全てにブレッドスライサーをコールして全て時間差をつけて投げつけた。当然どれも当たらないが、それで良い。当たっても当たらなくてもその場に広がりさえすれば良いんだ。

 

「近接武器を投げて当てようとするなど、笑止ですわ!」

 

拉げたスターライトとは別の予備を((展開|コール))したオルコットが自信を取り戻したのか、元の高飛車な態度に戻っていやがる。じゃあ、見せてやるよ、俺の戦い方をな!再び((瞬時加速|イグニッション・ブースト))で近付き、再び向きを変えて下から急接近した。言うならば、((二重瞬時加速|ダブル・イグニッション・ブースト))って所か?

 

「今度は((二重瞬時加速|ダブル・イグニッション・ブースト))?!貴方は一体何者なんですの?!」

 

「お前を倒す奴だよ。それより黙ってないと舌噛むぞ?!」

 

「え?きゃああああああ?!ぐうっ?!」

 

俺はそのまま足の部分を掴んで振り回しながらアリーナのシールドバリアーに叩き付けた。背中から叩き付けられた所為で酸素が肺から一気に押し出されて、呼吸困難に陥った所を再び地面に投げ落とす。投げ落とした所で両手に大型ハンドガンを((展開|コール))して持っている弾を全て撃ち尽くす。相手のシールドエネルギーはかなり削れた。特にシールドバリアーにあれだけ強く何度も叩き付ければ、絶対防御も発動するし、操縦者にもダメージは伝わる。俺のシールドエネルギーはまだ九割弱。今度は両手に打鉄の近接ブレードを両手に構えて接近した。オルコットが射撃武器しか使わない事から射撃武器しか使えないと断定した。たとえ近接武器が使えたとしても大した事は無いだろう。

 

「もう許しませんわ!お行きなさい!ティアーズ!!」

 

腰のバインダーから四つのパーツが外れてそれぞれが自立行動しながら俺に向かってビームを撃って来る。俺はその攻撃を全て特殊コーティングを施したブレードで弾き、ブレード一本をビット一つに叩き付ける事で、もう一本は投擲で落とす。地面すれすれに飛行しながら俺はブレッドスライサーを回収し、鉤爪の様に振るいながら接近した。向こうのエネルギーも少しずつ減少して行っている。やはり第三世代は燃費の悪さが問題だな。そしてブレッドスライサーを投げつけて移動した所で、五十九口径重機関銃、((砂漠の狐|デザートフォックス))をコールして弾幕を張った。これの連射速度は半端じゃないから残りのビットも問題無く落とせた。反動は、まあ対した事は無い。向こうの残存シールドエネルギーは三割弱ないし二割強。五分の内残り時間一分で勝負をつける。

 

「ここまで善戦するとは感心いたしますわ。ですが勝利を最後に掴むのは私です!」

 

「言ったろ、お前は五分で負けるって。だから勝たせるわけにはいかない。」

 

((瞬時加速|イグニッション・ブースト))で移動しながらも接近した。

 

「残念ですが、ブルーティアーズは六基ありましてよ!!」

 

腰のスカート部分から弾道ミサイルが二基飛び出して俺に向かって来た。やっぱりな。何か仕掛けがあると思ったら。俺はすぐさまブレッドスライサーと打鉄の近接ブレードを回収し、それを拾っては投げ、拾っては投げを繰り返してミサイルを俺に届く前に破壊した。破片、爆風、そして熱でシールドエネルギーを少し持って行かれたが、問題は無い。残っている近接武装を全て投げつけた後、最後に残っている武器、グレネードを取り出して投げつけ、避けられる前にコールしたハンドガンで爆破させた。

 

『勝者、五十嵐一夏!』

 

ブザーが鳴って俺の勝利が確定した。全く、とんだ茶番だったぜ。俺はISを解除されたオルコットを運んでピットにある簡易ベッドに寝かせると、ラファールを外した。

 

「山田先生、時間はどれ位ですか?」

 

『え、えーっとですね・・・・四分五十二秒です。」

 

「分かりました、ありがとうございます。(八秒前・・・・及第点と言った所か。)」

 

まあ、何にせよこれで勝った。

 

Side out

 

 

 

 

Side 三人称

 

「織斑先生、凄いですよ、彼!こんな戦い方思い付きもしませんでした!近接武器を投げナイフみたいに投げるなんて!それもアリーナに突き刺したままで!!」

 

真耶は見た目の所為もあってどこか中学生がはしゃいでいる様に見えなくもない。だがそれ程までに一夏の戦い方は皆の予想の斜め上を行ったのだ。

 

「確かに、あの戦い方は不思議だったな。だが効果的だ。」

 

千冬も素直に一夏の戦闘センスと場慣れした反応に感心し、驚いていた。動きもとても素人とは思えない程なのだ。

 

「あれは近接戦闘が不得手のオルコットに対しての専用対抗策だ。ああやって大量にアリーナに置いておけば一々近接武装をコールする時間を省略する事も出来る。相手が射撃型特化なら使われる心配も無いだろうしな。だが、多少アグレッシブな所があった。絶対防御を強制的に発動させる様に攻撃するのが最も手っ取り早いが・・・・」

 

「確かにあれはやり過ぎですね。オルコットさんのISのダメージレベルがギリギリBに留まっている状態です。ビットも全機破壊されてしまいましたし。それに、何で私にどれだけ時間が掛かったと聞いたんでしょう?」

 

「分からん。だが、まだ終わってはいない。もう一人戦う相手が残っている。」

 

「え?他に立候補した人がいるんですか?」

 

「ああ。あんな事があったから言い出せなかったのだろう。篠ノ之が立候補すると言って来た。」

 

「ああ、あれは・・・確かにオルコットさんも言い過ぎましたけど、五十嵐君もやり過ぎですよ。」

 

真耶は不機嫌そうに顔を顰める。確かにあの様な行動は国際問題に発展しかねない事件だ。

 

「まあ、だがこれでオルコットが大人しく引き下がってくれれば良いのだがな。あそこまで完膚無きまでに敗北を味わったのだ。山田君、二回戦の発表を。」

 

「あ、はい。えー、次は五十嵐一夏君と篠ノ之箒さんの二回戦を開始します!」

 

Side out

 

 

 

Side 一夏

 

「おいおい、どう言う事だ?!推薦されたのは俺と立候補したオルコットだけの筈だろう?!まさか・・・・あいつか・・・・!!」

 

いい加減にしつこい奴だ。コイツはもうマジでフルボッコにしてやる。いい加減に諦めを付けて貰わないと。一々ウジウジしてたらこっちも迷惑極まり無いんだよ。俺はラファールのシールドエネルギーと武器の弾薬を補充、大量のブレッドスライサーを外して代わりにスモークグレネードと普通のグレネードを大量に入れた。もう鬼畜だと呼ばれ様が構わん。叩き潰す。準備が済んで俺はラファールを装着、カタパルトに乗って再びアリーナに射出された。

 

「お前もいい加減しつこいな。」

 

「一夏、私の事を思い出してもらう!」

 

「強引な奴は嫌いだし、迷惑なんだよ、そう言う事!」

 

試合開始のブザーが鳴ると童子に俺はスモークグレネードを投擲、辺り一帯が煙に包まれた。そして時間差でグレネードを投げ入れる。

 

「なっ・・・?!卑怯だぞ!!正々堂々と戦え!!」

 

「戦いに於いて正々堂々も糞もあるか!良いか、本当の戦いの渦中では、ルールなんて物は存在しない。悔しければ、俺を打ち倒してみろ!篠ノ之箒!」

 

それだけ言うと俺は煙の中にいる篠ノ之に向かって二丁のデザートフォックスを向け、((円状制御飛翔|サークルロンド))で煙の周りを移動しながら弾雨を集中的に浴びせ続ける。だが、続ける内に段々面白くなくなって来たので、直ぐに煙の晴れていない真っ只中に着地した。そしてブレッドスライサーと近接ブレードを一本ずつ構える。

 

「さあ、敵はここにいるぞ。討ち取りに来い。俺はここだ!!」

 

俺は大声でそう叫んだ。

 

「あああああああああ!!」

 

その瞬間、上から篠ノ之が打鉄のブレードを振り下ろしながら現れた。

 

「掛かった。」

 

俺は後ろ向きに((逆瞬時加速|リバース・イグニッション・ブースト))を発動して後退し、篠ノ之が降りて来る地点に再びグレネードを投げ放った。

 

「なっ?!うわあああああああ?!」

 

爆発。そしてブザー。

 

「今日のお前の教訓だ。正々堂々勝負を挑んで来ない奴はごまんといる。俺は気分次第だがな。お前は俺と対峙するに値しないと言う事だ、覚えておけ。そして二度と俺に拘ろうとするな。」

 

それだけ言うと俺は篠ノ之もピットの簡易ベッドに運び、ラファールを外してすぐ部屋に戻って冷たいシャワーを浴びて専用機のコアとパーツが届いていないかチェックした。

 

「まだかよ・・・まあ時間はかかルッツって足しな、小暮さんも。気長に待つとしますか。」

 

Side out

 

 

 

 

Side 三人称

 

そしてその夜、

 

「五十嵐君、クラス代表就任おめでとー!!!」

 

クラッカーが幾つか鳴って食堂では一夏のクラス代表を祝うパーティーが開かれていた。

 

「ワザワザ済まないな、ここまでして貰う必要無いのに。」

 

「良いのよ、気にしないで。初の男子なんだから持ち上げなきゃ、ねー?」

 

「「「「「ねーーー!」」」」」

 

ここに来て一夏は初めて女子の団結力の強さ、連携、手際の良さが恐ろしくなった。

 

(まあ、これでこのクラスもある程度は女尊男卑は撤廃されただろうな。まあ、これはこれで良しとするか。)

 

「はいはーい、ちょっと通してねー。どうもー、五十嵐君。新聞部の黛薫子です。とりあえずクラス代表になってIS適正者二人、それも一人は代表候補生を破った感想を一言!」

 

一夏はここまでくればマスコミにもみくちゃにされる心配は無いだろうと思っていたが、どうやらここにもいた様だと思って内心己の不注意を呪った。

 

「まあ、勝ってしまった以上は全力でやる。そして今日の俺をまた超えなければならない。」

 

「おお?、良いねー。これは捏造せずに済むよ。」

 

「捏造するなら聞かないで下さい。」

 

こんな調子で、夜が更けて行った。

説明
姉に捨てられ、魔化魍と戦う猛士の鬼、石動鬼に拾われた織斑一夏。鬼としての修行を積み、彼は何を見る? ISと響鬼のクロスです
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コメント
なんかかなり読み辛くなってるけれど、なんかあったのかな?(神薙)
なんか読みにくいな今回……(yasu)
某所で読みましたが、こちらの方が面白く感じます。ただ、所々誤字脱字が有りますので、念のために見直した方が良いかと思います。(西湘カモメ)
タグ
仮面ライダー響鬼 インフィニットストラトス 

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