真・恋姫†無双〜赤龍伝〜第103話「抜け道」 |
真・恋姫†無双〜赤龍伝〜第103話「抜け道」
雪蓮「洛陽を守るために徹底防戦の構えを見せると思っていたんだけど。……洛陽に迫っても動き無し。私、これと同じ状況を知っているんだけど…」
劉備「え? そうでしたっけ?」
穏「あ〜これって反董卓連合の時と一緒じゃないですか〜」
火蓮「うむ。確かにな」
華琳「あの時はすでに董卓軍は撤退していたけど、まさか仲達も逃げたわけじゃないでしょうね」
火蓮「この戦いは司馬懿を討たなければ終わらない。逃がしてしまいましたでは済まないぞ…」
雪蓮「まずは司馬懿の居場所を見つけるのが先決ね。そうなると宮中に誰か忍びこませるのが一番だけど…」
亞莎「洛陽の街なら、旅の商人に身をやつして送り込む事ができるかもしれませんが、さすがに宮廷の中となると生半な事ではいかないはず…」
穏「そうですね〜。何はともあれもう少し情報がないと」
雪蓮「そういえば、秘密の抜け穴の噂を聞いた事があったわよね」
火蓮「確かにそんな噂があったな」
劉備「秘密の抜け穴?」
火蓮「前に洛陽の復興に携わった時に聞いたのだが、何でも宮中に繋がる秘密の抜け穴があるという事だ」
劉備「それって凄いじゃないですか! それで秘密の抜け穴はどこにあるんですか?」
火蓮「さあな。知らん」
劉備「え?」
火蓮「噂を聞いたというだけで、場所も知らんし、実際にあるのかどうかも知らん」
劉備「何だー、そうなんですか」
華琳「話が振り出しに戻ったわね」
?「いいえ。そんな事はないわ!」
劉備「この声って!」
火蓮「詠か!」
まず姿を現したのは詠。次に月。そして――
劉備「愛紗ちゃん!」
夏候惇「季衣!」
夏候淵「流琉!」
華琳「あなたたち、どうしてここに?」
関羽「実は」
劉備「愛紗ちゃーーん!!」
関羽「わっ! と、桃香さま!!」
劉備が関羽に思いっきり抱きついた。
劉備「愛紗ちゃーーん!! 無事で良かったよーー!!」
関羽「ご心配を掛けてしまって申し訳ありませんでした」
夏候惇「季衣!」
季衣「春蘭さまーーっ!! ただいまですーー!!」
夏候淵「流琉もよく無事に戻ってきたな」
流琉「はいっ!」
劉備「愛紗ちゃん、いつ戻ってきたの?」
関羽「戻ってきたのは一週間ほど前です。気がついたら我ら三人は建業に居りまして、そこで孫尚香殿や月たちに会う事できたのが幸運でした」
雪蓮「これでまだ帰ってきていないのは赤斗と冥琳だけね」
蓮華「……」
火蓮「それで、月も詠もどうしてここに?」
月「何か私たちにもお手伝いができないかと思いまして」
詠「ほら、僕たちって洛陽に居たじゃない。それだから、それなりに宮中の事は知っているのよね。それに秘密の抜け穴の事も」
一同「!!」
火蓮「秘密の抜け穴を知っているのか?」
詠「まあね。以前、逃げる時には使えなかったけど、ある場所は知っているわ」
詠は自信たっぷりに応えるのであった。
詠「宮廷にはね、万一の時に備えて、そこから逃げ出す為の秘密の抜け穴があるのよ」
亞莎「なら、そこを逆に辿っていけば宮廷の奥に忍びこむ事が可能」
穏「そこから優れた間者を送り込み宮中を探らせれば、司馬懿の居場所を見つけられるかも」
蓮華「それならば孫家にはこうした任務にうってつけの者がいます。この仕事、その者にお任せいただけませんか?」
暫くして、明命が天幕に呼び出された。
詠「良い? 洛陽を囲む城壁のすぐ外。ちょうどこの辺りに茂みに覆われた小さな丘があるわ」
詠は洛陽周辺の地図を指差しながら説明を始めた。
詠「一説では遥か昔に滅びた王族のお墓って言われているけど、実はその石室にある石棺が抜け穴の出入口になっているの」
明命「それでその秘密の抜け穴は何処に通じているので?」
詠「宮中の庭にある古井戸に通じているわ。でも本来なら、この通路は宮中から抜け出る為のもの。逆に古井戸から宮中に入ろうとすると曲者よけの罠が働くそうよ。行くなら気をつけて行きなさいよね」
明命「はい!」
明命「ここか……」
明命は石室の中にある石棺のふたを開けると、そこには地下へと続く階段があった。
明命「よし!」
灯りを点けると明命は階段を降りていった。
明命「うわーー!」
階段を降り終えると明命は大きな声をあげる。
そこは思っていた以上に広く、豪華な造りの道が続いていたのだ。
明命「はっ! 驚いる場合じゃなかった。早く行かないと」
そう言うと明命は抜け道を進んで行った。
明命「かなり歩いたから、そろそろ出口があっても良いころじゃ……」
薄暗い道を明命は延々と歩く。だが、いっこうに出口は見えてこない。
明命「おかしいな。道を間違えるはずないし……」
?「何処に行く気かな?」
明命が困っていると何処かからか声が聞こえてきた。
明命「何者です!?」
辺りを見渡すも誰の姿も見当たらない。
明命「あれ? …誰もいない。……空耳だったのかな?」
?「いや、ここに居るぞ」
声がした方に明命が振り向くと、目の前に老人が立っていた。
明命「っ!!」
明命は驚き飛び退いた。
老人「そんなに驚く事もなかろう」
男か女かも分からない声で老人は言う。
明命「ど、どなたですか?」
心臓を早鐘の如く鳴らしながら、突如現れた老人に話しかける。
老人「いきなり人の家に入ってきて、何だその態度は?」
明命「家? ここがですか?」
老人「そうだとも。ここは私の家だ」
明命「どうして、こんな所に?」
老人「ここは人が来なくて静かだからな」
明命「そうなんですか。……では、私はこの辺で失礼します」
明命は老人に挨拶を済ませて先を急いだ。
明命「まだ着かないなんて、おかしい。いくらなんでも、もう着いていいはず」
老人と別れてから随分と時間が経ったが、明命は石造りの道を歩き続けていた。
明命(もしかして、出口は外からの侵入者が入り込まないように、どこかに隠されているのかな?」
老人「何処に行く気かな?」
明命「ひえっ!」
明命は飛び退いた。
老人「そんなに驚く事もなかろう」
明命「ど、どうして!?」
先ほど別れたはずの老人が明命の目の前に再び現れた。
明命「さ、先回りをしたんですか?」
老人「いいや。ここは私の家。私が居るのは当然だ」
明命「……すみません。先を急ぎますので」
そう言って明命は走り出した。
明命(どうして? どうして? どうして?)
明命は走りながら何度も疑問を心の中で口にした。
老人「何処に行く気かな?」
明命「なっ!」
先を急ぐ明命の前に老人が三度現れた。
明命「うぅ…」
目の前の老人を警戒する。
明命「あなたは…何者ですか?」
老人「私はただの世捨て人。お前こそ何者だ?」
明命「は、はい! 私は……姓は周、名は泰、字は幼平です」
明命は老人の問に素直に答えてしまった。
老人「それで周泰よ。何処に行く気かな?」
明命「え、えーと……」
老人「何だ答えられんのか? まあ、この先には宮廷しかないがな」
明命「!!」
老人「宮廷に忍びこむ気か?」
明命「……はい」
老人「…………止めておくんだな」
明命「え?」
老人「今あそこには近づかない方がいい」
明命「そういう訳にはいきません。失礼します」
三度、明命は老人と別れて先を急いだ。
老人「また、会ったな」
明命「……そうですね」
四度目の老人との邂逅。
明命「これはあなたの仕業ですか?」
老人「これとは?」
明命「私が何度も何度も、この場所に戻ってきてしまうのは、あなたの仕業ですか?」
老人「……」
老人の無言を明命は肯定として受け取った。
明命「どうして、邪魔をするのですか? もしや、あなたは司馬懿の部下なのですか?」
老人「誰が、あんな魔物の部下なものか」
明命「魔物?」
老人「宮中に居る奴は間違いなく魔物。大地の命を喰らう魔物だ。行けば命を落とす事になるぞ」
明命「…………ご心配ありがとうございます。でも、私は行かないといけないんです」
老人「そうか」
明命「ですので、私を通してください。お願いします」
老人「…………」
老人は黙ったままだった。そして……
明命「えっ?」
いつの間にやら老人の姿は消え、明命が歩いていた道は豹変していた。
豪華だった石造りの壁は、ボロボロになり今にも崩れ落ちそうになっていた。
明命「……これは一体? 今のは……幻?……あっ」
優しい月明かりが前方より差し込んでいる事に明命は気がついた。
明命「…………いつの間に」
自分でも気がつかないうちに、明命は出口近くまでやってきていたのだ。
明命「やっと抜けた」
四苦八苦しながらも、ようやく明命は宮中への潜入を成功させたのだった。
つづく
説明 | ||
秘密の抜け道を通って、宮中に潜入しようとする明命。 抜け道に居たのは…。 主人公も含めてオリジナルキャラクターが多数出てきます。 未熟なため文章や設定などにおかしな部分が多々あるとは思いますが、長い目で見てくださると助かります。 |
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ウン、謎の老人? 怪しすぎ!(きたさん) | ||
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