IS~音撃の織斑 八の巻:新たな想い人 |
八の巻:新たな想い人
Side 三人称
まだ朝が白み始めた朝。一夏は整備室で自分のISの作成に勤しんでいた。深夜遅くに搬送が完了したので、早速それを全て整備室に運んで組み始めたのだ。本音からある程度のアドバイスを貰ったのでどうするかはある程度分かる。そして小暮耕之助の直筆資料・メモも搬送されたパーツとコアに同封されていたので、武装作成の作業などもスムーズに進んだ。
「よし、こんなもんか。((OS|オペレーティングシステム))と((MS|マニュアルシステム))は読み込ませたし、ハイパーセンサーも感度良好だ。武装も出来たし、楽しみだな?。」
楽しそうに専用ISの組み上げに勤しむ一夏を一人の少女が見ていた。肩に少しかかる位の長さで内側に跳ねた水色の髪の毛をしており、目は決して悪くないが眼鏡をかけている。
「おい。そこでこそこそ隠れてないで出て来いや。いるのは分かってる。」
どこから取り出したのか、レーザーポインターにサプレッサーを取り付けたベレッタを取り出して、彼女がいる辺りに向けた。
「更識簪、だったか?幼馴染みの布仏から聞いている。あいつがお前を手伝っていると。」
これ以上隠れていても仕方が無いと悟り、簪と呼ばれた彼女は一夏の目の前に姿を現した。
「まず、謝る事が二つあるな。一つ目は先程銃を向けてしまった事。少し気が立ってるんだ。女学園に男唯一人って言うのもかなり肩身が狭くてな。もう一つはそれよりもっと重要だ。俺の所為で専用機の開発を遅らせてしまって本当に済まない。」
一夏は深々と頭を下げた。実はこの事実は小暮が送った資料の後ろに張り付いていた手紙に事細かに書かれていた。
「日本の代表候補生だから俺より優先されるべきなのに。と言うよりIS委員会の代表って言ってたデブに分け隔て無く接しろって言ったの聞こえなかったのか・・・?」
「そう・・・貴方、ISの組み上げ・・・・」
簪は一夏の組み上げ途中のISを見つめた。
「ああ。俺のは政府から支給された奴でな、データ収集が目的らしい。どんなバグが入っているかも分からん物に乗りたくはない。それに、俺は新たな力を手に入れるなら、それを根本から理解して扱える様になりたい。今でこそスポーツ競技の道具として見られているが、これはれっきとした兵器だ。これ一つがあれば余裕で人なんか何万人も死ぬ。だから無理を言ってバラしたままのパーツとコアだけを届ける様に言った。まあ、初心者なんで倉持技研の知り合いからの資料と布仏のアドバイスを元手にやってるんだが、所々難航してな・・・・コアバイパスとスラスターの配線と位置付けの事がイマイチ分からん。」
「そう・・・・」
それだけ言って、簪は踵を返して整備室の別棟に戻って行った。それからも朝食を食べに行くまで一夏はコアバイパスとスラスターの問題と格闘していた。
Side out
Side 石動鬼
俺は現在たちばなでお茶を飲んでいる。今いるのはヒビキ、イブキ、トドロキ、カブキ、 日菜佳、みどり、そして俺だ。
「それにしてもIS学園ですか・・・・肩身の狭い思いをしてるんでしょうね。」
イブキが緑茶を啜ってそんな事を言った。
「まあ、それは本当に人によるな。」
カブキは団子をほおばりながら尤もな意見を言う。
「そんな事無いわよ。IS学園って言ったら女の園よ?イバラキ君カッコいいんだし、彼女の一人や二人連れ帰って両手に花状態するんじゃないの?」
「それは無いな。あいつは女に対する免疫はあるが、あまりそう言った事に興味が無いみたいだ。それもその内変わると思うが・・・・」
そんな母親の様なみどりの意見を否定した。
「でもみどり曰く、人は自分の弱い部分で恋をするらしいぞ?俺にはそんな弱さが無いって言うんだよ。俺強いもん。」
その事をまだ根に持っていたのかお前は?随分前の話だろうが。
「ああなっちゃったのってイスルギさんの所為なんじゃないですか?修行の事になったら本当に鬼になるんですから。」
「うるさいぞ、日菜佳。お前はトドロキとの仲を進展させろ。」
俺の事をからかった日菜佳に言い返して、彼女はトドロキと共にしどろもどろになる。
「まあともかく、イバラキが((学園|向こう))で頑張っている間俺達もこっちで頑張るっすよ!」
トドロキが話題を強引に戻し、意気込んでそう言った。
「そうですね、僕達が先輩としてしっかり手本を見せてあげないと。」
「そうだな。あいつを見てると昔の俺を思い出す。」
ヒビキが懐かしそうに言う。こいつはもう三十路は過ぎる所だ。
「確かにあのときお前は自分の力で短期間で鬼になれたが、あいつはお前とは違う。」
「確かに、弦、太鼓、管の音撃全部を習いたいって言う鬼は早々いないからね。イスルギ君以外で初めて聞いたわ、そんな人。でもそれだけ鬼になる事に対して真剣だって事が改めて伝わってくるわ。」
一夏、お前感謝しろよ?こんなにお前の事を心配してくれる大家族なんて早々いないぞ?猛士の関東支部全員が、お前の家族は、全員お前を見守っている。負けるなよ?
Side out
Side 一夏
とりあえず昨日の決闘騒ぎと早朝のIS組み上げが収まって教室にいる。
「はい、皆さんももう知ってると思いますが、一年一組の代表は五十嵐一夏君が勤める事になりました。あ、一繋がりでなんか良いですね。」
はいはい、下らんボケは良いから・・・
「それより五十嵐君聞いた?転校生の事。」
「いや、全然。そもそもウチのクラスに来る訳じゃないだろう?別に良いだろう、構わなくても。」
「だよねー、クラス代表は専用機持ちが((一組|ウチ))と四組だけだから楽勝だね。」
「その情報古いよ。二組も専用機持ちが代表になったの。悪いけどそう簡単に優勝はさせないわ。今日は挨拶も兼ねて宣戦布告って訳。久し振りね、一夏。」
また俺の記憶に無い((奴|女))が現れたな。俺はフラグ建築士では断じてない筈なんだが・・・・
「悪いがお前、俺を誰かと勘違いしていないか?俺はそんな目立ちたがりの友人を持った覚えは無いし、初対面の相手にそんな風に馴れ馴れしく呼ばれる覚えも無い。」
「な、何言ってんのよ?!まさか幼馴染みの顔を忘れた訳じゃないでしょうね?!鳳鈴音よ!!」
「だからお前なんか知らないと言っているだろう?どうしても知りたければ、織斑先生にでも聞くんだな。」
この会話、さっさと切り上げなければ後々面倒な事になる。ってか帰れよ、こいつ。
「それより、お前が来る前に二組の代表はもう決まっていたと俺は記憶しているんだが?」
「か、替わって貰ったのよ!専用機持ちの方が勝率高いし!」
「替わって貰った?替わらせたの間違いじゃないか?確かに、専用機の方が勝率は高い。性能と操縦者の技量もある。それは認めよう。だが、お前は、一般生徒の苦労を考えた事があるのか?一体どれだけ苦労してクラス代表までこぎ着けたと思っている? 今すぐそいつに謝りに行け。お前は言うなれば人の苦労をぶち壊しにしたんだぞ?」
「うっさいわね!」
「うるさいのはお前だ、馬鹿者。」
スパアァァン!
景気の良い音と共に((黒き鉄槌|出席簿))がそいつの頭に振り下ろされる。
「ち、千冬さん・・・・!」
スパアァァン!
「織斑先生だ、馬鹿者。とっとと教室に戻り、入り口を塞ぐな。邪魔だ。(一夏の事は後で話してやる。)」
最後に何か言っていた様だが、また篠ノ之みたいに私を思い出させてやる、みたいな事を言わなければ良いが。そう言えばオルコットの姿が見えんな。
「織斑先生、オルコットの姿が見えませんが、何かあったんですか?」
まあ、もしかしなくても原因は俺だろうけど。
「オルコットは代表候補生としての能力を疑われていた為、一旦本国に呼び戻された為欠席だ。」
そして授業が開始した。あーあ、クラス対抗戦前には俺のIS仕上げておかなきゃな・・・・・また布仏辺りを頼るか。
side out
side 三人称
授業が終わって昼休み時、
「待ってたわよ、一夏!」
先程のツインテールチビがラーメンの入った丼を乗せたトレーを持っていた。
「だから俺はお前なんか知らないと言っているだろう。それと頼んでもいないのに待つな。麺が伸びるぞ。後券売機の前に立つな、邪魔だ。」
俺はカツ丼定食を買って空いている席に座った。
「ねえ、本当にどうしたってのよ?!本当に私の事を忘れたの?!」
「忘れたんじゃない。知らないと言っている。それより、元クラス代表には謝ったのか?」
「ええ、謝ったわよ!これで満足!?」
「ああ。でも結局お前がクラス代表なんだよな・・・・」
「そうよ、悪い!?」
一々突っかかって来る奴だな。こいつもまた半殺しにしてやろうか?
「あんた、クラス代表を決める為に訓練機で代表候補生に勝ったって聞いたんだけど、本当なの?」
「俺は一組のクラス代表だからそれ位((演繹|えんえき))出来るだろう?俺はこれから整備室に行く。時間も惜しい。」
止められる前に振り切って整備室に向かった。そして再び作業を開始した。クラス対抗戦までに間に合わせる事が出来るか・・・・?流石に訓練機だけでまたあんな風に立ち回るのは無理だ。おまけに相手方のISのタイプも武装も分からない。同じ物だけでどれだけの間戦えるか・・・・
「いっちー。」
「おお、布仏。」
「また組み上げ作業?頑張るね?。」
「まあ、流石にクラス対抗戦で訓練機使うなんてのは格好がつかないからな。出来るだけ早くに仕上げたいんだ。お前は更識簪の手伝いだろう?」
「そだよ?。かんちゃんもいっちーと同じ位頑張り屋さんなんだよ?。」
そりゃそうか、自分の専用機を組み上げてるんだからな。お互い苦労するな。
「ああ、後こう言っちゃ悪いかもしれないが、あいつちょっと根暗な感じがある。何でだ?」
「う?ん、それはちょっとね?私からは話せないよ?。」
「そうか。いや、悪いな、俺の方こそ不躾にいらん事聞いて。」
今夜は徹夜だ確定な。
Side out
Side 三人称
一方その頃、鈴音は職員室にいる千冬を問い詰めた。何故一夏があそこまで変わってしまったのか、何故自分の事を覚えていないのかと。
「落ち着け。一夏がああなってしまったのは、偏に私の所為だ。数年前、第二回モンド・グロッソがあったのは知っているな?」
「はい。」
「決勝戦間際で、一夏は何者かに拉致された。だが、私はそうとは気付かず決勝戦に出てしまい、優勝直後にドイツ軍からその通達が来た。私がその場所に辿り着いた頃には、一夏の姿はもうどこにも無かったのだ。だが、テレビで彼がISを起動したと言う事が発覚して、私は驚きもしたし、嬉しくもあった。私の弟が生きていると言う事がこれではっきりしたのだ。だが、一夏は織斑の姓を捨てたと言い、私に対して向けられたのは、嫌悪と侮蔑だった。当然の結果だな、姉である私が助けに行かずに一夏の隣にいた男が彼を救ったのだから。」
千冬は自虐的な笑みを悲しそうに浮かべ、自嘲する。
「そん、な・・・・」
鈴音は涙を堪えながら辛うじてそう言った。
「私の知り合いの篠ノ之も、お前の事も、忘れていても不思議は無い。織斑の姓にまつわる記憶と過去の全てを一夏は捨てたのだ。思い出させようとしても無駄だぞ。今のお前では相手どころか障害にすらなりはしない。あいつは代表候補生を五分以内に倒せる程の実力を身につけている。あいつは、格段に強くなった。そして、どこか、恐ろしい。」
(あの千冬さんが・・・・震えている?!そんな・・・)
鈴音は内心驚いていた。世界最強と言われていた女が己の弟に対して僅かながらに恐怖心を抱いているのだ。
「分かったら教室に戻れ、もうすぐ授業が始まるぞ。(一夏、お前は、本当に全てを忘れ去ったのか?もし私がISなどに携わらなければ、お前は私の元から離れずに済んだのか・・・・?)」
説明 | ||
姉に捨てられ、魔化魍と戦う猛士の鬼、石動鬼に拾われた織斑一夏。鬼としての修行を積み、彼は何を見る? ISと響鬼のクロスです | ||
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sideはいらない、あと途中で行の位置を変えて書かれると読みにくい(yasu) | ||
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