年の差カップル
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 少しウェーブで茶色みのある癖のある髪の毛の細かい所を指先で弄りながら

私は鏡を見ていた。

 

 小学生の女の子を子供に持つ30台の平凡な主婦。それ以下でも以上でもなく

平凡な人生を送っている。だけど、それに対しては何の不満も持っていない。

 

 良くも悪くもない。これが幸せなのかと言われるとそうなのかもって感じだ。

 

「ふぅ・・・子供も学校に行ったし・・・一息吐こうかな・・・」

 

 テレビをつけながら用意したお茶を啜る。テレビでは毎日同じようなネタで

盛り上げようとするニュース番組。専門家も頑張ってるように見せて同じ事を

言っていてやや退屈気味である。

 

 その時、玄関口からインターホンが鳴り響く。私はゆっくりと立ち上がって

扉を開けると、顔見知りの赤の他人がそこにいた。

 

 その他人はメガネ越しに私を無表情で見つめてくる、女子高生であった。

黒髪の三つ編みでいかにもな真面目さんって感じの外見。それが平日のこの時間に

いることに私は心の中で少し驚いていた。

 

「学校はどうしたのよ」

「創立記念日で休み」

 

「あっ、そう・・・」

「うん」

 

 追い出せる理由がなければ私は彼女を追い出すことはできない。

彼女も何か目的があって、ここに来たのだろうから、無下に断れないだろう。

 

 なにせ、うちの子と出会ってから仲良くしているのだから、もう友達以上の

感覚でいるのだ。私も・・・彼女も・・・。

 

「ちょっといい?」

 

 私がやや躊躇っていると、彼女は淡々とした口調で私に問いかけてきた。

メガネが地味で、彼女の鋭い目つきと合わせてえらい攻撃的に感じられた。

 

「なに?」

「お菓子作ってきたんだけど」

 

「ふぅ・・・そうね。お茶していく?」

「悪いわね」

 

 そう言わせようと、言葉を選んでる割にその態度である。絶対悪いとは思っていない。

私はそう思っていた。友達以上なら、喜んで中に入れればいいじゃない。

と、思われがちだが、彼女の態度や言葉が友達とは違う、言葉にできないようなことを

含んでいるような気がして、最近は少し怖く感じていた。

 

 興味のでないニュース番組を消して、紅茶を淹れ彼女の座るテーブルの上に置いた。

彼女が作ってきたのは手作りのクッキー。良い匂いが私の鼻をくすぐる。

 

「今日もよくできてるわね」

「それは好きな人のことを思えばね」

 

「あのさ・・・その好きなって・・・」

「ん?」

 

 好きなという続きでいえば普通は友達と続くだろうけど、この子のニュアンスは

それとはまた違うような気がしてならない。だから、どういう気持ちで言ってるのかを

聞いてみたかったのだ。

 

「どういう意味なの?」

「うーん・・・」

 

 向かい合ってお茶をしている中、ちょっとした緊張が巡っている雰囲気で、

彼女は冷静な表情のまま、少し言葉を詰まらせた後、こう言い放った。

 

「恋愛という意味・・・でよ」

「は・・・?」

 

 私は女で相手も女である。恋愛という言葉で成立するのだろうか。

という、所謂常識と呼ばれるものを脳に刷り込まれた私は思わずそう返す。

だけど、それと同時に今まで味わったことのない感覚が私の体の中で走り過ぎていく。

 

「・・・」

 

 絶句する私に向かい合っていた彼女は身を乗り出して、私の胸を服の上から

そっと掌を当てるように優しく触ってきた。

 

「ここ、ドキドキしない?」

「そ、そんなこと・・・」

 

 何だか心が覗き込まれてるみたいで気持ち悪い感じ。

 

「今、幸せ・・・?」

「し、幸せよ・・・?良い旦那も子供もいて・・・」

 

 昔から憧れていた生活をしている。幸せでないはずがない。特別問題もなければ

平和な日々を愛しているといっても過言じゃない。だけど・・・。

 

 彼女に聞かれて、ふと私の人生に電気が走るような衝撃的な感動がないことに気づく。

恋愛らしい気持ちというのも今の旦那だけしか相手がいなかったから、その気持ちが

どういうのかなんて、考えもしなかった。

 

 だけど、どうだ。幸せというにはすぐに揺らぐこの気持ち。

彼女に直接触れられていないのに、私の胸はドキドキという音が徐々に高鳴っていくでは

ないか。思えば、私の子がよその子にいじめられて泣いてた時も真っ先に助けにきてから

もう、意識していたのかもしれない。

 

「幸せなのに、何でそんな切ない表情をするの?」

「子供のあんたにわからないでしょう・・・」

 

「わかるよ、好きな人が満足しているように見えないんだから」

「・・・」

 

 むちゃくちゃな言い分だけど、何だか言い当てられた気分になり、少し動揺すると

彼女は私に対して、気持ちの経緯を話してくれた。それは、私が最初彼女に対して思った

時と同じ状況だった。

 

 私の子がからかわれていたときに、思わず助けに入って、その意地悪な子供たちを

追い払った後に私と会って言葉を交わしている内にいつの間にか好きになっていた。

そういう風に語る彼女。語る内に徐々に目元が潤んできて、熱っぽい表情に変わる。

 

 それが何だか色っぽくて可愛らしかった。生まれて初めてこれが恋の心かもしれないと

思えた。気持ちが強くて熱くてそして、切ない感情。

 

 近づく顔と顔に向こうから近づいてきて、私の唇に重ねる。だけど、嫌な感じはしない。

むしろ、私の体が興奮するように反応するくらいである。

 

「ん・・・んぅ・・・!」

「ふぅ・・・ん・・・」

 

 興奮する二人の息遣いの音が少し漏れて逆に厭らしい音となって響き渡る。

キスの音、漏れる声。それらがとても厭らしく感じて、でもどこか愛おしい。

だけど、その後に手が服の中に入ろうとしていたから、我に返った私は軽くその手を叩く。

 

「調子に乗るんじゃないの。ガキが」

「ちぇ〜。ダメか〜」

 

 ふざけたことに対して残念がる子供のよう。だけど、目を見ると本気なのが

伝わってくる。どうして、私だったんだろう。他にも良い子はいるだろうに。

 

「一目ぼれだから仕方ないよ」

 

 そうなのだ、仕方がないのだ。私も似たような理由で彼女をどこかで求めていたから。

それに、無理して否定しようとしても。私の子を妹のように可愛がる彼女を拒絶できない。

旦那も、彼女を信頼してくれている。何一つ、悪いことはないのだ。

 

「だから、もっとしない?」

 

 そう思ったけれど、先にいったのは彼女。高校1年の子に手を出すのは私の方が

抵抗がある。

 

「もう少ししてからね」

 

 子供を言い聞かせるように伝えると、普段見せないようなむくれて恨めしい表情で

私を見つめる彼女に今まで見せていた大人びた姿はもう無くなっていた。

 

「まったく。そんな可愛いとこもあるのにね」

 

 思わず笑ってしまう。優等生そうに見える彼女も一人の女の子というわけだ。

主婦と女子高生で年の差はあるけれど、中身は大してそう変わらないものだった。

好きあうには年齢は関係ないようだ。

 

 旦那と二股かける形にはなってしまうが、あまり後ろめたい気持ちはなかった。

初めて恋に、刺激のある経験を味わってしまったのだから、手放す気もない。

そんな、スリルのある楽しい日々が私を待っていると考えるだけでワクワクするものだ。

 

「今日はキスまで」

「わかった・・・」

 

 そうして、他人なのに家族と同じような不思議な女の子との新たな過ごし方によって

私の人生に鮮やかな彩りを飾るのであった。

 

 

説明
眠い時に浮かんだのをだらだら書いたもの。少しでも楽しんでもらえれば幸いです。
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