IS~音撃の織斑 十三の巻:兄の任命
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十三の巻:兄の任命

 

Side 三人称

 

ラウラが目覚めたのは保健室のベッドの上だった。体中が痛みで痺れている為に未だ身動きが取れない。

 

「気が付いたか。」

 

「教官・・・・何があったのですか?」

 

そう、ラウラは彼女の暴走の記憶を全く持っていない為、あの後何が起こったのか分からないのだ。

 

「特例であり、機密事項なんだが、当事者だから教えてやる。VTシステムと言う物を知っているか?」

 

「ヴァルキリー・トレース・システム・・・・!」

 

「そうだ。開発は疎か、研究、使用、全てがIS条約によって禁止されている。しかしそれがお前のISに搭載されていた。コアは無事だが、パーツは全て破壊されている。どうやら搭乗者の願い・・・・欲望によって発動する仕組みになっていたらしい。」

 

「私が、望んだから、ですね。」

 

ラウラは自分を恥た。自分の慢心と高慢さが災いして大勢の命を危険に晒してしまったのだから、当然である。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ!お前は誰だ?」

 

千冬の突然の質問に面食らってしまい、答えが出せなかった。自分が何者か、分からないのだ。

 

「わ、私は・・・・・」

 

「分からないのならば丁度良い。お前は今日からラウラ・ボーデヴィッヒだ。存分に悩め、小娘。」

 

そう言い残して千冬は保健室を出ようとしたが、最後にこう言った。

 

「ああ、後、お前は私にはなれないぞ?」

 

そして千冬は保健室から出て行った。

 

「これで分かったろ?お前の過ちが。」

 

突如と形のカーテンで仕切られたベッドから声がした。カーテンを開いたのは一夏だった。左腕には肘から手首に掛けて大きな縫合された傷がある。

 

「とりあえず、無事みたいだな。こっちは左腕がやられてしばらくの間使い物にならなくなっちまったぜ。」

 

「その・・・・すまん・・・・」

 

「まさかあんな物が積まれていたとはな。悪いが((千冬|アイツ))との会話、しっかり聞かせてもらったぞ。何故あんな危なっかしい物がお前のISに搭載されていた?そもそも、気付く筈だろう?お前のISだぞ?」

 

「メンテナンスの時にMSとOSを見たが、そんな物は何も・・・・・」

 

ラウラはどこか落ち込んでいる様に見えた。だが、一夏は彼女の頭を優しく撫でてやって薄く笑った。

 

「良いんだよ。聞いただけだ。お前がお前の意思でそれを搭載しなかった事実確認の為だからな。さて、問題はここからだ。お前は恐らくドイツから何らかの処罰を受けるだろう。不可抗力とは言えVTシステムを発動させたのは事実だからな。まあ、代表候補でいる事に疲れたなら、辞めても良いんだぜ?妹分として面倒位見てやる。さてと、俺はさっさと部屋に戻るかね。」

 

「「「「一夏(さん)!」」」」

 

突如ドアが開いてシャルロット、箒、鈴音、セシリアの四人が転がり込んで来た。

 

「騒ぐな、騒々しい。何の用だ?俺は今から部屋に戻るんだが。」

 

「な、何を言っているのだ!?そんな怪我で部屋に戻るなど・・・・」

 

「ちゃんと休まなきゃ駄目よ!」

 

「そ、そうですわ!不養生は他の疾患にも繋がると聞いた事がありましてよ!?」

 

「いつもの事だ。この程度どうと言う事は無い。人体の治癒能力を舐めるな。長くて一週間で治る。日常生活にも支障は無い。俺が言った事、考えておけ、ラウラ。決めるのはお前だ。」

 

それだけ言うと、一夏は保健室を出た。しばらく行くと、アカネタカが窓ガラスをくちばしで叩いていたので、直ぐに窓から外に飛び出した。そのディスクを音角で再生し、鳴き声が聞こえた。

 

「これは・・・・・バケガニか?まあ、どちらにせよ、倒すだけだがな。」

 

音角で壁を軽く叩き、それを額にかざした。緑色の帯電する炎の竜巻を振り払い、巨大化したアカネタカの上に乗って海辺を目指した。下に人影が二つ見えた。

 

「あれか・・・・」

 

左手に音撃管、背中に音撃弦を背負い、その二人の前に着地する。男女一組で、青と白を基調に細い紐の様な物を頭と腰に巻いた民族衣装の様な物を来ている。

 

「バケガニだな、思った通り。」

 

「「鬼・・・・我が子に食わせてやろうか・・・・」」

 

二人は片手が蟹ばさみになった怪人態に変化した。

 

「そうは行かない。まずお前らをぶっ倒してからだ。」

 

新しい音撃管、断空で空気弾を連続で撃ち出しながら接近した。だがやはり堅い外皮で決定的なダメージは与えられなかった。それでも撃ち続けたが、やはり結果は同じだった。

 

「あー、もう・・・・だったらコイツでどうだ。ハアッ!!」

 

空気弾を撃ち出すと同時に口から鬼火を吐き出した。炎の弾丸が胴体と足を的確に捉えて焼き付くし、童子と姫は苦しみ始めた。

 

「チャチャッとやるぜ。」

 

頭部にそれぞれ鬼石を打ち込むと音撃鳴木枯を銃口に装着した。

 

「音撃射、((大嵐一掃|たいらんいっそう))!!」

 

音撃管を吹き鳴らし、撃ち込まれた鬼石を鳴動させて清めの音を流し込んだ。そして遂に爆発して死んだ。

 

「残りはバケガニか・・・・うっ・・・」

 

左腕に鈍痛が走った。縫合された一部が開いてしまったのだ。

 

「気合いで治す。ふっ!」

 

左腕に力を入れると傷が閉じて行き、出血も止まった。その瞬間、海から巨大な鮮やかな赤と白の体色を持つザリガニの様な物が飛び出て来た。

 

「あれは・・・・アミキリか?!(バケガニの突然変異・・・・これは少し厄介だな。あれは確か飛行能力もあった筈・・・・)」

 

そう思った矢先、背中から二対の羽が高速で羽搏き始め、その風で後ろに吹き飛ばされた。そこで再び鬼石をその付け根に苦心した末どうにか撃ち込む事に成功した。

 

「音撃射、((大嵐一掃|たいらんいっそう))!!」

 

羽を破壊し、苦しむアミキリはバタバタと暴れ回り、その際鋏がまともに荊鬼の体に当たってしまう。

 

「ギイイイイイィィィィィィィイイイイイイ!!!」

 

「ぐああああ!!?」

 

音撃管を腰の自作ホルスターに突っ込み、背中の音撃弦を引き抜いた。

 

「もう怒った。お前ブツ切りにする。」

 

腰の音撃震を雪月刃に取り付けると、刃本体から幾つもの返しが付いた刃が現れた。それでアミキリの鋏を片方切り落とし、顔を放射状の鬼火で焼き尽した。そして下に潜り込んで腹に音撃弦を突き立てて掻き鳴らす。

 

「音撃斬、雪崩嵐!」

 

下から突き刺して音撃を奏でるので体制としては少しキツいが、どうにか清めの音を完全に流し込む事が出来た。

 

「おおおおおおお・・・・・はあ!」

 

最後に一度強く掻き鳴らしてアミキリが爆散した。きしむ体を無理矢理起こして音撃弦を杖代わりに立ち上がった。

 

「あー、しんどい・・・・」

 

立ち上がって音撃武器を回収してディスクアニマル達に運ばせると、自分は部屋に戻った。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

Side 一夏

 

まさかあそこでアミキリが出るとはな・・・・イヤー、油断しちまったぜ。とりあえず変身解除して服も不燃繊維だから無事だ。疲れたな・・・・部屋に戻ると、シャルロットが待っていた。それも少し不機嫌そうにしている。

 

「一夏、保健室出る時言った事、どう言う意味?」

 

「どれの事を言っている?結構いっぱい喋ったぞ?」

 

「だから、その・・・・」

 

すると、再びノックの音がした。この声は山田先生だな。

 

「はい、どうぞ。」

 

「二人共、良い報せがありますよ!なんと、男子用に大浴場が解禁されました!」

 

ほう、それは確かに朗報だ。風呂にも久しく入っていないしな。楽に手足を伸ばせる場所が欲しかったんだ。

 

「そうですか。ありがとうございます。今、使えるんですか?」

 

「大丈夫ですよ。」

 

「それじゃ、俺行って来ます。」

 

俺はタオルと着替えをモテ部屋を後にした。シャルロットも一応男で通さなければならない為、慌てて付いて来た。

 

「ふーーー・・・・あー、いい気分だ。」

 

当然シャルロットは女だから入って来ないだろう。

 

 

カラカラカラカラ・・・・

 

「お、お邪魔しまーす・・・」

 

いや、意外に予想の斜め上を行って来たな。俺はシャルロットがいるであろう方向には目を向けず何も言わなかった。

 

「で、さっきの話の続きだが、俺のどの言葉の事を言っていたんだ?」

 

「ボーデヴィッヒさんに言った事。」

 

ああ、あれか。確かにあれだけ聞けば色々といらん勘違いをしてしまうだろうな。

 

「あれか?お前が思っている様な事じゃない。そもそも俺は恋愛自体に興味が無い。だが、だからと言って俺はソッチ系の奴でもないからな。で?お前はどうするんだ?」

 

「僕は・・・・・ここに残りたい。」

 

「そうか。ならそうしろ。俺は別に何も言わん。」

 

「一夏、体中傷だらけだね・・・・」

 

そう言えば誰にも俺の傷見せなかったな。魔化魍に食われそうになったり童子と姫に吹っ飛ばされたり修行中に怪我したり・・・・

 

「ま、俺も色々あったって事だ。それに、お前もここに残りたいなら、男装するの辞めた方が良いぞ?」

 

体中の筋肉が解れるかの様に体から力が抜けて行った。

 

Side out

 

 

 

 

 

 

Side 三人称

 

そして次の朝、シャルロットは自分として改めて『転校』した。

 

「ちょっと待って!確か昨日は男子が大浴場使ったのよね?!」

 

「そうだよ?別に何も無かったけど。」

 

そう言った矢先、

 

「一夏ああああああああああ!!死ねええええええ!!」

 

教室の出入り口を破壊してISを起動した鈴音が龍咆を全力で撃って来た。だが、何の問題も無くその場に立っていた。と言うのも、彼の前に立っているのは黒いIS。そして搭乗者は・・・・

 

「おお、ラウラ。助かったぞ。」

 

そう、ラウラがAICを展開してその一撃を防いだのだ。

 

「予備パーツがあって良かったな。」

 

「お願いがあります。私を、貴方の妹分にして下さい!」

 

「・・・・・は?」

 

一夏はしばらくの間思考がフリーズしていたが、しばらくして、その一言だけが出た。

 

「私はやはりISを降りて隊の皆を見捨てる事は出来ません。ですが・・・・」

 

「良いぜ。お前はこれから、俺の妹分だ。よろしく、ラウラ。後、鳳、後ろ見た方が良いぞ?無断でIS展開したから反省文は三桁行くだろうな。プラス懲罰トレーニングで。くははははは。」

 

「いや、今回は四桁にしようと思っている。ボーデヴィッヒは被害が広がるのを防いだ為不問とする。文句はあるまい、鳳?」

 

鈴音はギギギギギと油を注さなかった機械の様に後ろを振り向いた。そこには冷血の悪魔が立っていたと言う・・・・・

 

「は、はい・・・・・・」

 

その様な事件があり、ラウラは一夏の妹分となった。

 

(あーあ、俺も兄みたいな立ち場になっちまったなあ・・・・まさか鬼の修行とかさせなきゃ行けないのか?もしかして・・・・あー、どうしよう。これは一旦師匠か、おやっさんに報せた方が良いな・・・・)

説明
姉に捨てられ、魔化魍と戦う猛士の鬼、石動鬼に拾われた織斑一夏。鬼としての修行を積み、彼は何を見る? ISと響鬼のクロスです
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タグ
インフィニット・ストラトス 仮面ライダー響鬼 

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