ボケ娘に告白されました! 一葉レイの告白
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「さぁ、飲んで!」

「いきなり、なんだよ?」

 科学室につくなり、俺は変な薬を幼馴染の一葉レイに渡された。

「飲んで!」

「だから、なんの薬だよ?」

「飲めばわかる!」

「飲む前に教えろ!」

「教えたら飲まないでしょう!」

「教えられなくっても飲まねーよ!」

「私の言うことが聞けないの!?」

「いつ、お前の命令を聞かないといけない身分になった!?」

「幼馴染でしょう!」

「関係あるか!」

「私の入浴を見たじゃない!」

「ガキの頃の話だ!」

「一緒に夜をすごしたじゃない!」

「それもガキの頃の話だ!」

「結婚式だって開いたし!」

「それもガキの頃のごっこだろうが!」

 しかも、俺は嫌だっていったのに、泣き出すから無理やり……

「なら飲んでよ!」

「なぜだ!?」

「実験くらい、付き合ってくれてもいいじゃない、この薄情者!」

「あぁん、誰が薄情者だって?」

「いひゃいいひゃい!」(痛い痛い!)

 両頬を引っ張った。

「付き合う付き合わないの境界線があるわ!」

 頬を開放されるとレイは真っ赤なほっぺをスリスリさすった。

「今日、開戦?」

「野球じゃない!」

「強化しない」

「強化せんじゃない!」

「なにか貸してほしいの?」

「今日、貸せじゃない!」

「お金は不自由してないよ」

「俺もしとらん!」

「ちなみに私の貯金は一億円」

「マジ!?」

「発明の特許うがあるから、もっとある」

「お前、本当に天才だったんだな?」

「私は者を破壊しないよ!」

「それは天災だ!」

「明智光秀だといわれている」

「それは天海!」

「龍玉」

「それは武道会!」

「踊りのパーティー」

「それは舞踏会!」

「舞のゲシュタルト」

「それは舞倒壊! 無理やり間違えるな!」

「無理やり街がL型?」

「だから、強引過ぎるわ!」

「ゴーイングマイウェイ?」

「英語にするな!」

「うぅ〜〜……」

「クッ……」

 メガネの下の目が涙目になり俺はたじろいだ。

「な、泣いても飲まないぞ」

「うぅぅ……」

「の、飲むから、泣くな!」

「はい!」

 やっぱり、嘘泣きか。

「クソ。だから、甘いって言われるのか!?」

 薬を飲んだ。

(イチゴ味!? 本当に甘い!?)

 爽やかな喉越しの薬を飲み干し、フラスコから口を離した。

「ぷはぁ!」

 薬じゃなく、ジュースなら、どれだけよかったか……

「じゃあ、早速、実験!」

 パチンッと指を鳴らした。

「はいは〜〜い、モエちゃんですよ〜〜〜♪」

 科学室の奥の机から現れた少女に俺は冷たい目をした。

「誰だ、この娘?」

「実験に付き合ってくれることになった、転校生の因幡さん」

「因幡萌絵っです!」

 ビシッと敬礼する因幡さんに俺はため息を吐いた。

「で、この娘でなにをするんだ?」

「どう、因幡さん?」

「無視するな!」

 因幡さんは俺の顔をジロジロ見た。

「私の彼氏と同じでハンサムさんだけど、私の好みじゃないな〜〜♪」

「じゃあ、実験は成功!?」

「でも、結構、好きだよ♪」

「じゃあ、失敗か」

 ため息を吐いた。

「なんの実験してるんだ?」

「怒られないうちに帰るね〜〜♪」

「また、付き合ってね?」

「らじゃ〜〜♪」

 敬礼しながら帰る因幡さんを見送り、俺はレイの頭を鷲掴みにした。

「俺を無視するな!」

「無視したんじゃない。因幡さんの話を優先したの!」

「同じだ!」

「全然違うよ! 私の中じゃ、実験>君>その他になってるから」

「実験のほうが上かよ!?」

「じゃあ……実験>君=私>その他」

「自分より実験が上かよ!?」

「科学は自己犠牲の世界だからね」

「そんな世界否定しろ!」

「科学発展のためにどれだけの偉人が名前を残せず散ったか」

「知るか!」

「私の名前もいずれ、教科書に」

「人を実験台にする奴が教科書に載ってたまるか!」

「医学の発展のために、罪人を平気で実験台にした医者は多いよ」

「それは昔の話だ!」

「今もわからないよ?」

「恐ろしいこというな!」

「大丈夫! 今は君の話を優先するから!」

「今、ここには俺しかいない!」

「私がいるよ!」

「屁理屈こねるな!」

「ヘリに靴?」

「屁理屈だ!」

「ヘリック・ツー」

「どこの外国人だ!?」

「歌手っぽいね?」

「ブルースを歌ってそうだな!」

「死者にささげる」

「それは鎮魂歌(レクイエム)だ!」

「乗ってるか!?」

「イエーイじゃない!」

「一人でツッコミしてて疲れない?」

「疲れるわ!」

「大丈夫! 君は一人じゃないから!」

「格好いいこというな!」

「私、格好いい?」

「うんなわけあるか!」

「じゃあ、可愛い?」

「ああ、可愛いぞ!」

「そこは否定しなんだ……」

「そもそも、話し合いの席じゃ、自分の存在は数に入れないのは常識だ!」

「ガスに入れない?」

「爆破させる気か!?」

「芸術だね?」

「偉人に謝れ!」

「Easy?」

「簡単じゃねーよ!」

「大口を叩く?」

「それは啖呵だ!」

「五・七・五の七・七!」

「それは短歌!」

「怒りっぽい人」

「それは短気!」

「短い期間」

「それは短期!」

「川の水が勢いよく落ちる」

「それは滝!」

「晩成?」

「それは大器!」

「おみくじの一番悪い奴」

「それは大凶! もうかなり、無理があるぞ!」

「無理を通して」

「通りを引っ込めるな!」

「ねぇ、なんか、アイスが食べたくなっちゃった」

「話を変えるな!」

「私、テキスト効果のないアイスが食べたい!」

「バニラアイスだと言え!」

「私の中だと、最近のオススメアニメはやっぱり、ゲーム王と戦う先駆者と決闘を極めたものと闘魂かな?」

「それ、全部じゃねーか!?」

「十分間アニメって素敵だよね?」

「それは激しく同意だが、今は違う!」

「じゃあ、どういう意味?」

「俺の質問に答えろ!」

「嫌!」

「怒るぞ!」

「……もう怒ってるじゃない」

「怒らせてるんだろうが!?」

「……女の子に嫌われる薬」

「ふざけるな!」

「ほら、怒った〜〜〜!」

「怒るわ!」

「だから言いたくなかったの!」

「もう飲んじまったぞ!」

「失敗したんだから、いいじゃない!」

「いいわけあるか!」

「いいんだもん!」

 また涙目になるレイに俺は言葉を失った。

「そもそも、なんで、そんな薬、作った?」

「私以外の女の子に嫌われてほしいからよ!」

「俺に恨みでもあるのか!?」

「あるわけないじゃない!」

「じゃあ、なぜ作った!?」

「私のためよ!」

「お前になんの得がある!?」

「ありまくるよ!」

「なんで!?」

「それは……」

 ごにょごにょと口ごもった。

「わ、私の将来のためよ!」

「お前の将来のために俺を犠牲にするな!?」

「してないわよ!」

「じゃあ、なぜ、そんな薬、作った!?」

「私のためよ!」

「同じことを言うか!?」

「うひゃひゃひゃひゃ!?」

 口の端を引っ張られ変な悲鳴を上げるレイに俺は怖い顔をした。

「二度とそんな薬作らないと誓うか!?」

「うむむ!?」

 口を引っ張られながらも、必死に抵抗するレイに俺はムカッとした。

「うぅ〜〜……」

 涙目になるレイに俺は手を離した。

「もう、いい、俺の負けだ!」

「そうだよ! 君は私の」

 ギロと睨んだ。

「……」

 涙目で拗ねた。

「それより、そろそろ、朝の授業が始まるぞ!」

「もうそんな時間?」

「そろそろ、九時だ」

「髪を梳かすアレ?」

「それはクシ!」

「パーティーのときに使う」

「それはクジ!」

「哺乳類最大の?」

「それはクジラ!」

「日本を壊滅させた怪獣?」

「それは放射能怪獣!」

「美女をさらって、タワーに登る」

「それはゴリラ!」

「超機械生命体!」

「動物戦争!」

「老人の交流場」

「銭湯!」

「船の一番前」

「船頭!」

 突っ込む気にも失せ、俺は科学室のドアを開けた。

「じゃあ、俺も行くが、お前も遅刻しないうちに行けよ?」

「うん! また、昼ね?」

「ああ、また、昼な?」

 ドアを閉めた。

 

 

 昼休みに入ると俺は科学室に向かって歩いていた。

 科学室の前まで来ると俺は軽く身だしなみを整えた。

 一息入れ、ドアを開けた。

「飯、買って来たぞ!」

「そこに置いといて」

 振り向きもせず、フラスコの中の薬を調合するレイに俺は呆れた。

「薬の前に飯を食え」

 レイの首根っこを掴み、無理やり違うイスに座らせた。

 レイの顔が不満そうにムクれた。

「家畜じゃないんだから、もっと別の運びかたしてよ」

「たとえば?」

「お日様抱っことか?」

「焼け死ねと!?」

「お雛様抱っこ!」

「三月三日限定抱っこか?」

「おひたし抱っこ!」

「食うのかよ!?」

「あう〜〜……」

 なぜか涙目になるレイに俺は購買で買ってきたパンを並べた。

「いいから、飯を食え。今日は運良く、カツサンドが買えたぞ!」

「等分の取れるものが食べたい」

「等分?」

「知らないの? 甘いものに含まれる栄養分だよ!」

「それは糖分だろうが! ワガママ言ってないで食え!」

「うむぅ!?」

 カツサンドを無理やり口に詰め込んだ。

「あうぅ……うむぅ……うむむ」

 顔を真っ赤にして、口に詰められたカツサンドを飲み込んだ。

「ぷはぁ……」

 大きく息をし、俺を睨んだ。

「酷いよ。カツサンドを口に突っ込むなんて!」

「ワガママ言う奴はこれで十分だ」

「私だって、食べものを選ぶ権利ぐらい」

「そういう立派な口をいうのはこの頭か?」

「いたたたたたた!? 頭、グリグリしないで!?」

 某カスカベ主婦の必殺技を繰り出しながら、俺は手を離した。

「それよりも、カツサンドうまかったか?」

「味なんか、わかんないよ!」

「じゃあ、もう一つ、やる」

「あ、ありがとう」

 カツサンドを食べ、もぐもぐと租借した。

 なんだか、小動物っぽくって可愛いなと微笑ましくなった。

「カツサンドうまいか?」

「うん」

 コクリと頷くレイに俺もタマゴサンドを食べた。

「それ食べたい……」

「ほれ」

 レイの口に食べかけのタマゴサンドを咥えさせた。

「うぅ〜〜ん♪」

「お前、タマゴサンド好きだったっけ?」

「君の持ってるものが一番好き!」

「そっか」

 頭を撫でた。

「ねぇ、そっちの袋のも食べさせてよ!」

「ああ、これね?」

 購買で買ってきたデザートのメロンパンを取り出した。

「網目パン!」

「間違ってないが、食う気がなくなるな?」

「窒息するの?」

「空気がないじゃない!」

「気の根っこ?」

「それは茎だ!」

「ケーキに入るお菓子?」

「それはクッキーだ!」

「絵を描く道具?」

「それはクーピーだ! いい加減にしろ!」

 メロンパンを半分、千切り、レイの口に詰め込んだ。

「たく。昼も落ち着いて食えないのか?」

「うるさいもんね君は?」

「貴様のせいだ!」

 メロンパンを食べ終えると俺はレイの調合した薬のフラスコを取った。

「で、今度はなにを作ってたんだ?」

「媚薬」

 フラスコを叩き壊した。

「なに作ってるんだ!?」

「媚薬だけど?」

「だから、なんでそんなものを作る!?」

「私のためよ!」

「媚薬がお前のなんのためになる!?」

「……」

「黙るな!」

「言ったら、実践してくれる?」

「するわけないだろう!」

「じゃあ、また作る」

「作るな!」

「味は保障するわよ」

「味の問題じゃない!」

「液体じゃなければいいの?」

「いいわけあるか!」

「じゃあ、なにがいいの!?」

「存在が悪いんだ!」

「毒じゃないんだから、問題ないでしょう?」

「ある意味、毒だ!」

「全然、違うわよ! これはある意味、健康薬だし!」

「未成年が飲むものじゃない!」

「アルコールはないよ」

「アルコール以上に危険だわ!」

「良薬口に苦しだよ!」

「薬も過ぎれば毒になるだ!」

 ため息を吐いた。

「もう昼も終わりそうだし、薬を片付けて帰るぞ!」

「昼寝する……」

「おい!?」

 ひざの上に寝転がるレイに俺は大声を上げた。

「昼休みが終わりだす時間で昼寝する奴がいるか!?」

「朝、早かったの……」

「知るか!」

「五時に古いアニメがやってて、どうしても見逃せなくって」

「ああ、あるな、そういうの?」

「不調続きの科学者の話だった」

「それは飴の名前が主人公のアニメだな?」

「その次は龍玉が放送してた」

「名作だな?」

「その次は「やってやるぜ」が決め台詞の続編アニメだった」

「見たのか?」

「新聞を見て、即、消した」

「観なくってよかったな」

「次は秘孔をつくアニメだったな?」

「明らかに真ん中のアニメを見てもらうつもりでチョイスしたな」

「つまらないアニメはいつの時代もつまらないもんね?」

「人気アニメの続編だから、不人気の癖にえらい優遇っぷりだよな?」

「世の中、アレがゴミだといえるほど、面白い名作ロボットや、ネットで流れてるロボット小説がたくさんあるのにね?」

「ネームバリューだけで優遇されてるアニメだからな」

「そうしてたら、八時を過ぎてた」

「アレ、八時を過ぎてた?」

 確か、俺がここに来たのも八時ちょうどだった気が……

「お前、いつから学校に来てた?」

「最初からいたよ」

「だから、どこで寝てた!?」

「ここ」

 レイのほっぺたをギュムッと引っ張った。

「俺、言ったよな? 科学室を私室にして寝るなと!?」

「どうせ、私しかいない教室なんだから、いいじゃない?」

「いいわけあるか!」

 寝ているレイを無理やり起こした。

「いいから起きろ!」

「起きたらご褒美くれる?」

「やるか!」

「なら、このままミイラになる」

「王様きぶんか!?」

「ご褒美〜〜……」

「ああ、もう、俺の負けだ!」

「勝負にならなかったね?」

 殴りたい衝動を抑えた。

「で、なにがほしいんだ?」

「キ、キスとか?」

「魚のリクエストか?」

「……」

 レイの顔がブスッとなった。

「寝る」

「結局寝るのかよ!」

「君が悪い」

「なんでだ!?」

「鈍感……」

 震える手を無理やり押さえ込み、心を落ち着かせた。

「今、寝ると、午後の授業をボイコットすることになるぞ?」

「暖房に使う?」

「それはボイラーだ!」

「ガキ大将の歌声」

「それはボエーだ!」

「クジラ」

「ホエール!」

「車の足」

「ホイール!」

「誕生日に食べる」

「ケーキ!」

「今の不安定な情勢」

「不景気……」

「失礼な奴」

「不敬!」

「ご両親」

「父兄!」

「女のおまわりさん」

「婦警!」

「おなじこと言って飽きない?」

「お前が言わせてるんだ!」

 満足そうにレイの顔が緩んだ。

「私は全科目免除されてるから、大丈夫!」

「俺は許されてない!」

 レイの頭をどけようと手を伸ばした。

 ズボンに歯を立てられ、離れられないようにされた。

「後、三時間だけ」

「学校が終わるわ!」

「いいじゃない。今日は終末だし」

「週末だ! 勝手に世界を終わらせるな!」

「最後に男と女が残るよ」

「それはラグナレクだ!」

「ゲーム?」

「神話だ!」

「眠むたい……」

「だから、寝るな〜〜〜〜〜!」

 遅刻した。

 

 

 放課後、俺はレイに会うため、科学室へと向かった。

 アイツは変な奴しか友達がいないから、俺が見張ってないとなにをするかわかったものじゃない。

 前なんか、自作でレールガンを作って、校舎に穴を開けたし……

 フォローするのが大変だった……

「うっひゃぁぁぁぁぁぁ♪」

「おわぁ!?」

 科学室から、いきなり、暴走機関車のように男が飛び出した。

「工藤じゃないか……アイツ、なにしてるんだ?」

 工藤はレイが目当てで科学部に入部したモテモテ男だ。

 もっとも、動機が不純なせいか、部室には滅多に来ない幽霊部員でもある。

 他にも部を掛け持ちしてるらしいが全てが女子目当てで入部してるというのだから、立派だよ。

 でも、なんで、アイツ、暴走機関車のように飛び出したんだ。

「こんばんは!」

 科学室に入ると見事に散らかっていた。

「工藤になにをしたんだ?」

「工藤? アレって、工藤って言うの?」

「ここの部員だぞ」

「嘘つかないでよ! 男子の部員は君以外いないじゃない!」

「いや、俺は部員じゃないんだけどな……」

 俺と工藤を勘違いしてる……

 哀れ、工藤……

「ところで、さっきの無礼者、君の知り合い?」

「いや、同級生だが」

「部員でもないくせに君をよそ者扱いして悪口を言ったんだよ」

「いや、俺がよそ者なのは本当なんだが」

「よそ者が私の大切な人を悪く言うなんて、許せるわけないよ!」

「いや、工藤は立派な科学部員なんだが」

「だから、開発中の興奮剤を飲ませてやった!」

「飲ませるな!」

「いい実験体だった」

「で、この惨状か?」

「反省してる」

「そもそも、なんで、そんなものを作った?」

「私のためよ!」

「もう聞き飽きた」

「興奮作用を抑えれば、ちゃんとした媚薬になるのよ!」

「だから、なんで媚薬!?」

「私のためよ!」

「その文句は飽きた!」

「仏教?」

「それは文殊!」

「下町の食べ物?」

「それはもんじゃ!」

「水にぬれると力が抜ける宇宙人」

「それは藤子作品!」

「怪盗を裏切る」

「それは不二子!」

「日本一」

「それは富士山!」

「近所にそんな人がいたな?」

「それは藤(ふじ)さん!」

「太極拳が使えるらしいよ」

「知るか!」

「ちなみに太極拳は健康法で直接戦闘力には足されないよ」

「死っとるわ!」

「でも、動きを早くするとちゃんと拳法になるらしいけどね」

「そうなのか?」

 って、違う。

「そもそも、お前、本当になにが作りたいんだ?」

「世界中の女の子が君を嫌ってくれる薬よ!」

「だから、なんで、そんなものを作りたがる!?」

「私のためよ!」

「いい加減にしろ!?」

「君のためでもあるんだよ!」

「だったら、俺のためにホレ薬でも作れ!」

「世界中の半分以上の人口は女性よ!」

「だから、なんだよ?」

「男の子、選びたい放題じゃない!」

「俺は例外だ!」

「じゃあ、問題無いね、嫌われ薬、飲んでよ!」

「例外と飲むとは別だ!」

「じゃあ、飲んでよ!」

「い・や・だ!」

「飲んでくれれば、君の一生は安泰だよ!」

「結婚できない身体になるわ!」

「それがいいの!」

「本気で怒るぞ!」

「ふん!」

 涙目になるレイに俺はこれ以上の言葉を失った。

「いいもん。絶対に完成させてやるから」

 頭痛い……

「マジメな話、お前はなにがしたいんだ?」

「私の将来よ!」

「だったら、マトモな研究をしろ」

「マトモじゃない?」

「嫌われ薬のどこがマトモだ!?」

「ホレ薬を作らないあたり、マシじゃない!」

「ホレ薬のほうがマシだ!」

「人の意思を捻じ曲げる薬よ!」

「嫌われ薬も同じだろう!?」

「全然違う!」

 また、泣きだすレイに俺は頭を押さえた。

「もう夜になったし、帰るぞ」

「ここに泊まる」

「お前、また……」

 イジけモードに入る幼馴染に俺は困り果てた。

 こうなるとイジでも動かないからな。

 俺が折れるしかないのか。

「夕飯、買ってきてやるよ!」

「付き合ってくれるの?」

「一人にすると本当に薬が完成しそうだしな」

「今年中には絶対!」

「させるか!」

 バンッと教室から出た。

「まったく、アイツは……」

「アレ、君じゃない?」

「白鳥? お前、まだ、学校にいたのか?」

「副会長が仕事を終わらせるまで帰らせないって言うから」

「自業自得だな!」

「違うわよ!」

「オリエンテーリングでもめてるだろう?」

「なんで、知ってるの!?」

「外に駄々漏れだったぞ、お前たちの痴話ケンカ」

「ケンカじゃないもん!」

 頬を膨らませる白鳥に俺はバカバカしくなった。

 こんなバカと付き合う義理もないし、さっさと飯を買いに行くか。

 もう一人のバカの飯を買ってやらないといけないしな。

「今日も一葉ちゃん、泊り込み?」

「泊まり込みって、お前、知ってるのか?」

「一葉ちゃんの薬が完成したら、分けてもらう約束だからね♪」

「お前も嫌われ薬がほしいのか?」

「なんのこと?」

「レイの研究の話だが?」

「アレ?」

「どうした?」

「確か、彼女が作りたかったのは……なんだっけ?」

「もういい。バカはさっさと生徒会室に帰って、副会長と乳繰り合え!」

「べぇ〜〜だ!」

 なんで、アイツに彼氏が出来て、俺には彼女が出来ないんだ。

 

 

 とりあえず、コンビニでアイツが好きそうなものを金が足りる分だけ買った。

 散々、甘いものをねだられたので、デザートにケーキも買ってやった。

 コンビニのケーキだが、最近のは結構、イケるぞ。

 科学室の前まで戻ると俺はちょっとだけ、身だしなみを整えた。

「よし」

 ドアに手をかけた。

「飯買ってきてやったぞ!」

「あ……?」

 涙目になっているレイに俺はビックリした。

 買ってきた食糧を投げ捨て、レイのもとへ走った。

「どうしたんだ、泣いて!?」

「やっと帰ってきた……」

「帰っ……?」

 大声で泣き出した。

「全然、帰ってこないから、逃げられたと思った〜〜……」 

「飯、買いに行くっていったよな?」

「五分以上も待った〜〜!」

「たかが五分だろう?」

「二十一分十二秒も待ったもん!」

「細かいわ!」

「怒鳴られた〜〜〜!」

「あ、いや、怒ってないから、泣くな」

「だって、怒鳴った……」

「いつものことだろう?」

「いい子になるから、嫌いにならないで〜〜!」

「嫌ってないって!」

「だって、怒ってる……」

「別にお前のことを嫌って怒ってるわけじゃない!」

「本当?」

「本当だ!」

「じゃあ、私と結婚してくれる?」

「するか!」

「やっぱり、私のこと嫌いなんだ〜〜!」

「だから泣くな!」

 俺が泣きたくなる。

「他の女の子のところに行っちゃメ!」

「いかねーし、いねーよ!」

「嘘だ! さっき、科学室の前で生徒会長と仲良く話してた」

「あんなバカと付き合うくらいなら、蛙と付き合ったほうがマシだ!」

「私は蛙以下なんだ〜〜〜!」

「だから、違うって!」

「蛙じゃないもん!」

「お、おい、くっつくな!」

「くっつかないとどっか行っちゃう!」

「いかねーよ!」

「だって、さっきまで外にいたもん!」

「飯を買いにいっただけだ!」

「ご飯なんかいらない!」

「なにむちゃくちゃ言うな!」

「あうぅ〜〜……」

「おい、どうした!?」

 いきなり眠りだすレイの身体を受け止めた。

「なにが起きたんだ?」

 眠ってしまったレイに俺は顔を仕替えた。

「こう黙ってれば可愛いのにな?」

 チョンッと頬を突っついた。

 

 

 朝が来るとレイはすでに起きていた。

 よく見るとテレビがつけっぱなしだった。

『やってやろうじゃん!』

 観るだけで苦痛になるアニメが流れており、テレビを消すため、いやいや起きた。

「おはよう」

「おはよう」

 薬の調合のため、こっちを見ないレイに昨日のことを聞いた。

「お前、俺がいない間になにをした?」

「薬を自分で試してた」

「自分で試したのか?」

「君が嫌がるから」

 それは嫌がるわ。

「でも、睡眠薬になっちゃったみたい。飲んでから記憶が無い」

「なにを作ってたんだ?」

「素直になれる薬!」

 口をふさいだ。

「ち、違う! 素直になる薬じゃなく、嘘がつけなくなる薬」

 また、口をふさいだ。

「隠し事が出来なくなる薬……じゃなくって!」

 自分で自分に突っ込む姿って、新しいな……

「うむぅ〜〜……」

 口を開けば、ドンドン、ドツボにハマると理解したのかレイは口を押さえたまま、そっぽを向いた。

 俺はちょっと可愛いなと思い、頭を撫でた。

「まぁ、薬が完成するまで付き合ってやるよ」

「……じゃあ、一生完成しなくってもいいかな?」

「なにか言ったか?」

「うぅん……別府(べっぷ)に」

「別にだろうが!」

 本当、コイツ、なにが考えてるんだ?

説明
次回から、過去の登場人物を主役に戻します。
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コメント
>ywxhffrom341さん、コメントありがとうございます!考えてみれば、工藤みたいなケダモノに興奮薬を飲ませたら、そっちのほうが危険な気がしますね?(笑)(スーサン)
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