Masked Rider in Nanoha 十四話 流れる涙と少女達の誓い
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 アースラによる探査にも邪眼の反応がなかった事で一同に本当の安らぎが訪れた。そして喜びはそれだけでは終わらなかった。

 

「何だと?! それは本当か!?」

 

「ああ。私自身信じられんが、どうも邪眼が私のユニゾン機能以外を奪っていったせいかバグの再生は起きる気配がない」

 

 シグナムの声に頷くリイン。そう、リインの中にあったバグ。それが完全に消え去っていたのだ。邪眼がユニゾン機能を奪っていなかった理由は一つ。邪眼ではリインとユニゾンする事は不可能だったためだ。

 しかし、リインは今はユニゾン出来るもののそれもいずれ出来なくなりそうだと語った。ユニゾン機能自体が邪眼の影響か破損しているため、それを修復すると防衛プログラムも復元してしまう可能性があるからだ。

 

 なのでリインは近い内に自分の代わりとなるユニゾンデバイスの製作を考えなければならないとはやてに進言する。だが、はやてはそんな事より確かめたい事があった。

 

「そんなんは後でええ。それで、リインはずっとおるんやな?」

 

「はい。存在する事自体には影響はありません。その……これからもよろしくお願いします、我が主」

 

「リイン。うん……うんっ! これからもよろしくや!」

 

 涙ぐむはやてとリイン。それを見てなのは達にも笑顔と涙が浮かぶ。それを五代と翔一は微笑ましく見守っていた。と、そこで五代は何か思い出したような顔をしてなのはへ近付いた。

 

「なのはちゃん」

 

「ふぇ? 何、五代さん」

 

「あのさ、ちょっとお願いがあるんだ」

 

 五代が話したのはすずかの事。魔法の事を教えて上げてほしいと、そう五代は頼んだのだ。それになのはは戸惑う事しか出来ない。どうしてそれを教えないといけないのだろうと思うなのはへ五代が告げた理由。それに驚くと同時になのはは納得してしまう。

 

 すずか達月村家の人々は五代がクウガである事を知っているのだ。だから魔法を隠す必要ない。それに加えてアリサもなのはやフェイトが何か隠し事をしている事を気に病んでいた事も告げ、二人へ真相を話してあげて欲しいと告げたのだ。

 

 それを聞いてなのはもフェイトも、そしてはやても安心した。共通の友人であるすずかと気の強いアリサ。その二人へ秘密を作る必要がない事を知ったために。

 五代の事を受け入れたすずかならば魔法ぐらい平気だろうし、アリサもその性格を知るなのはとフェイトは魔法を使えると聞いても怖がる事はないと思えたのだ。

 

「あ、それと……」

 

「まだ何かあるの?」

 

「俺、クウガだけどさ。その……怪物かな?」

 

 五代の突然の言葉に驚くなのは達だったが、三人してそれを否定した。例えどんな姿になっても五代は五代だから、と。それを聞いて五代は何か嬉しそうに頷くとサムズアップ。

 

―――ありがとう。その気持ち、絶対無くさないでね。

 

 そう五代は笑顔で告げた。その言い方に不思議そうな表情のなのは達。三人はこの後知る。何故五代がこの時そんな事を言ったのか。何故、自分を例えに出しておきながらどこか誰かを思いやるような言葉だったかを。

 

 そのやり取りが終わったのを見計らって、アリアとロッテが周囲に話があると切り出した。それに誰もが不思議そうにする中、アリアが変身魔法を使った。その姿を仮面の男へと変えたのだ。

 それを見て言葉を失うなのは達。だが、翔一はそれで納得した。あの日見たアリアの腕の怪我。それは自分が負わせたものだったのだと。

 

「ごめんなさい! まさかアリアさんなんて……」

 

「えっ?! いえ、謝るのは私の方だから!」

 

「でも、女の人を傷付けたなんて……」

 

 心から謝る翔一にアリアはむしろ逆に申し訳ない気持ちになっていく。そんな二人を他所に、ロッテは今回の事で自分達が考えていた事を全て話した。グレアム達が考えていた完全封印。だが、それも完全ではなく穴があった。それははやてを犠牲にする事が前提の話だからだ。

 それを計画したのが足長おじさんと思って慕っていたグレアムだと分かったはやてだったが、その優しい気持ちは偽りではなく本物だったと信じている。だからこう言ったのだ。

 

「アリアさんとロッテさんがこうやってリインを助ける事に協力してくれた。なら、それでええ。それに、おじさんもデュランダル渡してくれたいう事は二人と同じ気持ちなんやろし……わたしは許すよ、おじさんもアリアさんもロッテさんも」

 

 そこではやては一旦言葉を切る。既に自身の言葉にアリアとロッテが声を失っているのを見て、はやては心からの笑顔で締め括った。

 

―――そうおじさんにも伝えてくれますか? ほんまにおおきに……って。

 

 それを聞き涙を流しながら頷くアリアとロッテ。シグナム達はそんな二人に対し複雑な心境だったが、最後の戦いで二人がいなければどうなっていたか分からないと思ってもいた。

 だからこそ守護騎士達は何も言わない事にした。自分達が太古に犯した罪。その大きさを考えれば、二人の決断に口を出す事等出来なかったからだ。

 

 そうして、色々と落ち着きみんなでアースラに戻ろうとなった時だった。突然、五代の脳裏に声が聞こえた。

 

”若者よ……”

 

「え……?」

 

 突然起きたあまりの事に五代は足を止めた。それに気付いて翔一が振り返ると小首を傾げた。五代が何か不思議そうな顔をしていたからだ。

 

「どうしたんです?」

 

「いや、今さ、声聞こえなかった?」

 

「声、ですか? いや、何も……」

 

「だよねぇ……」

 

 気のせいかな。そう言いながら再び歩き出す五代。それでも不思議そうに小首を捻っている。それを見た翔一はこれ以上気にしないようにと、疲れたからですよと気を遣う。それに五代も苦笑し、そうだねと頷いた。

 

 だがその瞬間、また五代の脳裏に同じ声が聞こえた。しかも、先程よりもはっきりと。

 

”若者よ、まだ闇は消えていない”

 

(誰……?)

 

 声に出さず、心の中で尋ねる五代。それに返ってきた答えに彼は言葉を無くす。

 

”我は、アマダムと呼ばれしモノ”

 

(嘘……)

 

 アマダムは語る。五代が受けた魔力の雷。それにより、失われていた自我が目覚めたのだと。それに疑問を浮かべる五代だったが、それを察しアマダムはこう言った。古代戦ったクウガが何故姿を変えられる事に気付けたか。それは、自分が教えていたからだと。

 それを聞き五代は思わず納得した。自分がクウガとなった時は碑文などに超変身の事が書いてあったが、それは古代には当然無かったもの。最初のクウガは、アマダム自身からそれを教わっていたと言われ、心から信じる事が出来たのだ。

 

 そして、その自我が失われた原因は長きに渡る封印の影響だとアマダムは語る。ダグバを始めとする全ての未確認達。それら全てを見事封印した古代のクウガ。そのために必要なエネルギーはかなりのものとなるだろうと五代も理解出来たのだ。

 

”あれにより、我はその力の大半を使う事になった。だが、完全には失ってはいなかったのだ。その証拠に、見ただろう”

 

(何を?)

 

”始まりの戦士の姿を”

 

(あ……)

 

 九朗ヶ岳で見たイメージ。あれは、アマダム自身が資質ある者のみに見せるもの。そうアマダムは告げるとこう続ける。伝える力は弱ったが、後少しで完全復調するはずだった。それを邪魔したのがダグバとの戦いで受けた傷。

 アマダムへ軽く入っていた亀裂。そこへ更に加えられたダグバの拳。それを受けていたせいでまた機能が弱まった。そしてその弱ったものを魔力が呼び覚ましたと。それだけ話すとアマダムは五代にこう告げた。

 

”今のままでは、闇の力に飲み込まれかねない。もう一人の王の力を求めよ”

 

(今のままじゃダメ? それに闇の力? ……もう一人の王って、一体誰?)

 

 アマダムの告げる内容に疑問符ばかり浮かぶ五代。すると、その疑問へ答えるように声が聞こえた。しかし、それはアマダムのようでどこか違う声に五代には聞こえた。

 

―――それは、これより誘う場所に……

 

 そう聞こえた時、五代の体が光に包まれる。それに全員が気付き、振り向いたが―――。

 

「五代さんっ!」

 

 間に合ったのは翔一のみ。何とか五代の手を掴もうとし、掴んだと思った時には翔一も光に飲み込まれていた。そして光は周囲へ広がり、その輝きに全員が目を閉じた。

 

 しばらくしてその光が収まった後には、もう二人の姿はなかった。そのあまりの事に誰もが声を失う中、なのはとはやてだけがいち早く叫んだ。

 

「五代さぁぁぁぁんっ!!」

 

「翔にぃぃぃぃぃっ!!」

 

 その悲痛な叫びに答える者はいない。その場に残された翔一のバイク。それだけが、二人がいた証のように残されていた。

 

 この後、アースラやなのは達による懸命な調査が行なわれるものの、二人の居場所どころか痕跡さえ掴めなかった。その一年後、はやては罪を償おうとするシグナム達と共に管理局に入る。それは家族としてシグナム達の贖罪を手伝うだけではなく、翔一達を捜すためだ。

 家族とそのために戦ってくれた恩人。その二人を見つけ出すために。無論、はやてがそんな判断を下したようになのはとフェイトも何もしなかった訳ではない。まず、はやてと共に月村家に行き、五代が旅に出たと誤魔化した。

 

 しかし、それを聞いた瞬間イレインだけがその場を飛び出した。彼女はそのまま五代の部屋へ行き、そこで思いっきり叫んだのだ。

 

「早く終わらせてストンプ見せんじゃねぇのか! この、馬鹿やろぉぉぉぉぉっ!」

 

 今している手伝いが終わったらストンプを見せる。その五代との約束を覚えているからイレインはなのは達が嘘をついている事を悟った。それでもなのは達が好きで嘘を吐いている訳ではないと察し、何か理由があるはずと一人こうして五代の部屋へ来たのだ。

 

 どうしてだと。何故約束を果たせなくなったのかと。ここにはいない五代に向かってイレインは掠れるような声を絞り出す。その目から光るものを流して。

 

 そしてなのは達は親友のすずかとアリサに魔法の事を話し、理解を得ようとした。だが、三人は理解を得ると同時にすずかの秘密も聞かされる事となる。

 『夜の一族』と呼ばれる吸血一族。それがすずかと姉である忍の正体。それを聞いた時、なのは達は五代とのやり取りを思い出した。怪物と尋ねられた際、五代は五代と否定したその言葉。その気持ちを無くさないで。その意味を、想いを思い出して、三人はすずかはすずかだと心から言い切った。

 

 それを聞いて涙ぐむすずかに三人は告げる。五代がそう教えてくれたのだと。それを聞いたすずかは一瞬声を失った後、なのは達が初めて聞くぐらいの泣き声を出した。

 五代はすずかへ約束していたのだ。いつかすずかは自分の秘密をなのは達に話せるようになりたいと願っていた。五代はそれを聞いて、ならば自分の出来る範囲で手を打って手助けするからと返したのだ。

 

 それを話し終わるとすずかの口から五代を呼ぶ声が零れる。それを聞きながら、なのは達は改めて誓うのだった。必ず五代を見つけ出してすずかと再会させるのだと。その気持ちを胸になのはとフェイトもまた管理局で働き始める。そしてその日々で様々な出会いや力、想いを得ていくのだ。

 

 やがて三人の少女は大人へと変わっていく。辛い時に思い出すのは、みんなの笑顔のためにと戦った二人の仮面ライダーの姿。自分達もそれに負けぬように戦う。そう思って日々を生きる三人の知らぬ所で青年達は戻ってくる。それもまた、人知れず人を助ける事になる。

 

 仮面の戦士と魔法少女達の物語は、これから数年後、ミッドチルダにて再開する事となる。

 

 

 ただ木々が覆い茂る無人の道路。そこを一台のバイクが走って行く。彼は仲間達に別れを告げ、世界を守るために旅に出たところだった。

 だが、彼が乗るそれは赤い目のようなライトとアンテナがついた独特のもので、全身は青で染め上げられている。その車体には、おそらく何かの文字なのだろうものが大きくペイントされていた。

 そして何より特徴的なのは、その彼自身。黒いボディに真っ赤な目をした異形の存在。それが彼の姿。彼もまた、世界を救ったヒーローの一人だ。

 

「……ん?」

 

 その赤い目が何かを見つけた。時速にしておそらく五百以上のスピードは出していたバイクが、実に意外な程あっさり減速して停止する。そこから分かるのはこのバイクが既存の技術で創られてはいない事。

 停止したバイクからゆっくりと降り立つ異形の存在。その視線が見つめる先にいたのは―――。

 

「人か……でも、どうしてこんなところに……?」

 

 それは気を失い倒れる五代雄介だった。

 

 古代の戦士は、こうしてまた謎の導きによって新たな出会いを果たす。それは、甦るだろう邪悪な闇を打ち倒すための出会い。

 その戦いに勝利した時、戦士の戦いは変わる。仮面ライダーという名が持つ宿命。それを乗り越えて変えていくために。

 

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 ジェイルラボ内、廃棄所。そこへ龍騎は大きなケースを運んでいた。中身はいらなくなった機械の数々。ジェイル曰く、もう必要ないからだそうで名前すらないらしい。仕方ないので真司は勝手にジェイルの作ったオモチャと言う意味で『トイ』と呼ぶ事にした。

 一つ目のロボットで最初はこれを相手にデータ取りした事などを龍騎が思い出していると、ふと何か目に付くものがあった。それは龍騎が運んでいたものよりは小さいが、人一人くらいは入る事が出来るようなケースだった。

 

 そこに入っていたのは何かよく分からない生物らしきもの。その気味悪さに龍騎はきっとジェイルが昔作った実験生物だろうと思った。

 

「ったく、こういう事するなら創るなよ」

 

 そう文句を言って龍騎は去って行く。龍騎は知らない。それがジェイルのコピー受精卵を入れていたものだと。そして、その気味の悪い生物こそ自身の嫌う戦いを生み出すものだと。この時の龍騎は知らなかった。

 

 そしてこの日も平和なまま時間が流れていく。キッチンで夕食の支度をしているのは真司とディエチ。揃ってエプロンと三角巾を着けているため、どこか料理教室や調理実習を思い起こさせる。そんな二人とは違ってエプロンも何も着けていない人物がいた。

 

「ね、真司兄。今日の晩御飯、何?」

 

「そろそろ寒くなってきたからな。今日は鳥団子鍋だ」

 

「鍋? どういう事?」

 

 真司の横で言われるままに野菜を切っていたディエチ。その質問に真司は笑って説明する。鍋というのは、色々な具材を用意して出汁や鍋汁を張った鍋でことこと煮るものだと。

 野菜や肉、魚を主に使い、他にも色々な食べ方や楽しみ方があるんだと真司は自慢げに語った。それを聞き、セインが目を輝かす。そして真司に早く鍋食べたいとせっつき出すのは当然と言えた。

 

 それを見てセインらしいと思ってディエチが苦笑する。真司はセインに早く食べたければ手伝えと言ってエプロンを押し付けた。セインはそれを反射的に受け取り、面倒だなと言わんばかりの表情でエプロンを身に着ける。

 

「結局こうなるんだもんなぁ」

 

「働かざる者食うべからずって言うからな。じゃ、セインはこれを丸めて団子にしてくれ。ディエチは白菜切り終わったら、今度は大根の方頼む」

 

「うん。面取りっていうのもしておけばいいんだね?」

 

「お、そんな事まで気付けるなら安心だな。さ、今日も美味い飯作るぞ!」

 

「お〜っ!」

 

「お、おー」

 

 真司の号令にノリノリで返すセインと少し恥ずかしそうに返すディエチ。だが、二人共に気持ちは同じ。こんな時間が楽しくて仕方ないのだ。

 セインは団子を上手に作っては真司に見せて、それを誉められる度に得意顔。ディエチも大根を綺麗に面取りし、真司がその手際に感心した顔をしてセインが対抗心を燃やす。そんなキッチンから聞こえる三人のやり取りにトーレ達姉三人が微笑んでいた。

 

 トーレとチンクは将棋ルールでチェスを指し、クアットロはセッテの起動準備関係で何かを操作している。ちなみにセッテの起動に時間がかかっている理由は、固定武装の開発の遅れだった。龍騎から得たデータを基に材質から改良しているために時間が掛かっているのだ。

 

 その事を真司にはジェイル自身が説明済み。どういう生き方を選ぶにしろ、身を守る術はあった方がいい。そして、出来るならそれは負ける事のないようにしておくべき。故に道具には万全を期したいとジェイルは語った。真司が納得したのは、そんなジェイルが最後に言った一言。

 

―――大事な娘達だからね。

 

 その言葉に真司は感動したように頷いてこう返したのだ。納得するまでやってくれと。女の子なんだから身を守る方法はあるにこした事はないと強く思って。それにジェイルも感謝して現在に至る。

 

 だが、クアットロがしている仕事は本来なら調整室でやった方が色々都合がいいのだ。それでも何故か最近はこうして食事の時間近くになるとここに来るようになっていた。

 だからこそ、それを常々不思議に思っていたのだろう。トーレがどう指すかを悩みだしたのを見て、チンクがふとクアットロへ視線を向けた。

 

「それにしても、何故クアットロはわざわざここで作業をしているのだ? ここでやらなくても良かろうに」

 

「いいじゃない。私の勝手でしょ?」

 

「……素直に調整室で一人は嫌だと言ったらどうだ?」

 

 ずばりと告げたトーレの言葉にクアットロの手が微かに止まるも、それを感じさせない速さで再開しそれを誤魔化そうとする。だが、高速戦闘を得意としているトーレにはそれすら見えていた。おそらくクアットロもそれを承知の上だろう。

 それでも誤魔化すところに滅多に見れないクアットロの可愛さを見つけた気がして、トーレは追求を止めた。チンクもおそらく気付いているのだろうが、同じ気持ちなのか何も言おうとしない。ただ、チェスを指す二人の顔が若干微笑んでいるのは仕方ない。

 

 そうしている間にもキッチンの方から食欲をそそる出汁の香りが漂う。それが三人の食欲を刺激する。今にも鳴りそうな腹の音に内心で怯えながら三人は食事の開始を心待ちにするのだった。

 

 

 その頃、ウーノはジェイルと共に妹達の調整を手伝っていた。その手元にはある姉妹の情報がある。ギンガ・ナカジマとスバル・ナカジマという二人の名前が書かれたものだ。

 彼女達は、実はジェイルではない存在が作り出した戦闘機人。そのため、ジェイルは彼女達を『タイプゼロ』と呼んでいた。以前はこの二人を自分の下へ連れてこようとも考えていたジェイル。しかし、現在彼がこの二人の情報を求めるのは―――。

 

「ふむ、異常はないようだね」

 

「はい。局にも優秀な人材はいると言う事でしょう」

 

 二人の状態確認だ。既に二人の事をジェイルはこう思っている。ナンバーズの親戚、あるいは腹違いの姉妹と。故にこうして定期的に情報を送ってもらい、その体に異変はないかを調べているのだ。少しはデータ取りの意味もあるのだが、そこはご愛嬌というものである。

 

 ジェイルはウーノの答えに頷き、視線を書類からモニターへと移す。そこに表示されているのは色褪せたような龍騎の姿。そう、ブランク体と呼ばれるものだ。

 真司の話でライダーは最初この姿だと聞き、ジェイルは早速とばかりにデータ取りをさせてもらっていた。そして、その甲斐はあったのだ。

 

 現在の龍騎のスペックはジェイルと言えどもとてもではないが再現出来ない。しかし、このブランク体ならどうにか再現可能なレベルだと分かったために。

 

「……もしこれを私が量産すれば戦闘機人なんていらなくなるねぇ」

 

「ドクター?」

 

「いや、少し……ね。最近、真司に嘘を吐いているような気がしてくるんだ」

 

「ドクター……」

 

 ジェイルはウーノの声に小さく笑って呟いた。全てのナンバーズの起動が終わって研究が一段落したら真司に全てを打ち明ける事を。

 それを聞いて、ウーノは驚きも怒りもしなかった。ただ、静かに笑みを浮かべて頷いて告げた。それがいいと思いますと。その声は、優しさと喜びに満ちたものだった。

 

 

「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」

 

 全員揃っての食卓。大きな鍋を囲み、それぞれが箸を伸ばす。

 

「さっきから見てたけど、お肉ばかり取ってるじゃない。少しは野菜も食べなきゃ駄目よ」

 

「へ〜い。でも、あたしは育ち盛りだから必要なのは野菜よりも肉だと思うんだよ」

 

「育ち盛りなら余計野菜を食べなさい」

 

「ふむ、この味は中々いいね。色々な物から旨味が染み出しているからかな?」

 

「とか言ってないでジェイルさんも野菜食べろって!」

 

「ああっ! そんなに野菜は必要ないよ! 足りないビタミンは錠剤で補充するから!」

 

 肉ばかり取ってウーノに注意されるセイン。野菜をあまり取らないジェイルへ無理矢理野菜をよそう真司。まるで母親と子供のようなやり取りを交わす二組。そんな賑やかな場所とは違い、静かに鍋を楽しむ者もいる。

 

「ほふほふっ! …………っはぁ〜、これは美味いな」

 

「……この味、この深み。この鍋という料理の真の主役はこれかもしれん」

 

「この豆腐っていう食べ物は中々冷めないね」

 

「そうねぇ。でも、この淡白な感じは好みかも。あ、ディエチちゃん、それもういい温度よ」

 

 チンクは肉団子の熱さに驚きながらもその肉汁と微かに香る柚子の香りに表情を緩め、トーレは大根を口にしその染み出す味に頷いている。クアットロとディエチは豆腐を箸で四等分し冷ましていた。

 

 そんな賑やかで楽しい食事。初めての鍋に全員が満足し、最後の締めは溶き卵を流して少し蒸らした雑炊。全ての旨味が凝縮されたそれは取り合いになる程の美味しさだった。

 ジャンケンで取り合おうと主張する真司とセイン。年功序列と言うジェイルとウーノ。激しい運動をしている者が優先と言い出すトーレとチンク。そして、そんな六人の目を掠めて密かに食べようとするクアットロを止めるディエチ。

 

「だ、ダメだよクア姉」

 

「もぅ、ディエチちゃんは黙ってなさい。私は頭脳労働してるから権利があるの」

 

 だが、そんな悪巧みは必ず露見するものと昔から相場は決まっているので―――。

 

「「「「「「あ?っ!!」」」」」」

 

「ほら! 見つかったじゃない!」

 

 六人が一斉に声を上げクアットロを指差したのだ。それにしまったという表情を浮かべ、クアットロはその場から逃げ出した。それを追う六人。そして一人テーブルに取り残されるディエチ。だったのだが……

 

「……冷めたら美味しくないよね?」

 

 誰に尋ねる訳でもなくそう言い聞かせるように呟いて、ディエチはそっと残った雑炊を自分のお椀へ入れた。そして、それを一口含み後ろへ視線を向けて一言呟くのだ。

 

???幸せ、だな……

 

 その視線の先では、七人がギャイギャイと雑炊の事も忘れて言い争っているのだった……

 

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A's編エピローグ。そしてStSまでの空白期に入ります。五代が出会う相手。それが本編に参加する最後のライダーです。一方、翔一の方はどうなったのかは次回で分かります。

 

真司は完全ほのぼのです。ちゃっかりディエチはみんなに許してもらえます。そう、ディエチなら仕方ないって。

説明
闇が消えた後、残ったのは希望の光だった。
懸念されたリインのバグとの関連性。それも払拭されて完全勝利の感が強まる。
そんな中、予想だにしない出来事が笑顔を奪う。だが、それもまた次なる笑顔を守るための力へ変わるのだ。
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龍騎 アギト クウガ リリカルなのは 仮面ライダー 正義の系譜 黒い勇者参戦 

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