おいでませ! 木之子大学・部室棟へ♪ 第3話 鏡音リンのぶっちぎり模型
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(103号部屋 模型研究部)

 

 ガチャ!

 

 升太は今度は元気良く、レンから貰ったバナナ鍵を使って103号部屋の扉を開けた。

 

升太:たのもー!!!

テト:(道場破りか)

ミク:あれ? この部屋、ちょっとだけシンナー臭がしますね

升太:な、なに! ここではそんな“いかがわしい”活動をしているのか!

レン:違いますよ。“塗料”のにおいです。ここでは“模型”、主にプラモデルを研究しているので、プラモデル用塗料の臭いがするのは仕方ないんです。確か換気は十分に行っていたはずなんだけどな・・・

 

部長の鏡音リン(以下、リン):お客さん、ごめーん! ラッカー塗料とエアブラシ使ったから換気が間に合わなくて。すぐ強力換気するから、そのまま奥に入ってきて下さいな

 

升太:は、はぁ(なんか、また変な部活に変な部長な予感がする・・・・)

 

 一行は部室の奥の部屋にぞろぞろと入っていった。

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(103号部屋 模型研究部・製作部屋)

 

 ブーン

 

 そこは見事に“モデラーのアトリエ”と言った製作部屋だった。“ブーン”とうなって回っている大型の換気扇1機、エアブラシセットに塗装用の塗装ブース2機、乾燥用の大型ドライブース1機、工作テーブル2台、そしてテーブルには各種塗料、塗装筆類、精密ピンセット、ニッパー、カッター、ヤスリなどの工具がゴロゴロとあり、さらにプラ板やプラ棒、パテ類、接着剤など、プラモデル製作に必要な物は全部揃っていた。

 

ミク:さすがモデラー部・・・もとい、模型研究部、本格的ミクね〜

 

 しかし、升太は違う所を見ていた。完成品を飾っておくガラス棚の中の作品である。

 

升太:こ・・・・・これは・・・・・・

リン:お! 私の作品に興味があるのかな、挑戦者君?

 

 テーブルの椅子がくるっと回って正面を向いたのは、頭で結んでいる白くて大きいリボンが目立つ、幼く見える女の子だった。

 

升太:あの・・・・これ全部“ロードローラー”だと思うんですが・・・・・

リン:珍しいでしょ。私はこの国でも片手で数えられる位しかいない“ロードローラー専門のモデラー”なのよ? まぁその珍しさもあって、製作だけでなく、その魅力なんかの研究もやっているんだけどね

升太:いや、大学の部活で“模型部”ってのは珍しくないんだけど、なんで、そんなにロードローラーが好きなんですか?

リン:きみ〜、あの魅力がわからんのかね〜♪ 確かに製品キットは凄く少ないから、ガレージキットとかフルスクラッチ(完全手製)モデルになることが多いんだけど・・・

升太:まぁそうでしょうね。模型屋さんでも見たことないですよ

リン:あの黄色で無骨なスタイル! おじさんの汗が染みついていそうなシンプルなコクピット! 重いローラーが物語る重厚感! 速度追求をしていなくブレーキのついてないその特殊性! はぁ、どれもなんて素敵なマシンなのかしら・・・。ぶっちぎりで素敵な重機・・・・・はぅぅぅぅ・・・・・・・

升太:(あーーーー、今度はまた輪をかけて変な部長さんだよ・・・・・・)

 

リン:じゅる・・・あ、ごめん、挑戦者さんでしたね

升太:はい、墓火炉 升太と申します

リン:私は、模型研究部部長の鏡音リンだよ。レンの姉貴。そしてこの隣のおねえさんが、部員兼助手のローラさんです

ローラ:ローラです、宜しくね

升太:あ、どうも

リン:さて、升太さんは挑戦者なわけなので、早速だけど、勝負して貰います。ルールは知っているよね

升太:はい、勝つまでやり続けるんですよね。で、勝負方法はなんなんですか?

 

リン:私をうならせる、ロードローラーキットを作ることです

升太:は?

リン:ここにある工具はアマチュアからプロまで、誰にでも適用できます。工具が悪かったの理由は無視します。『弘法筆を選ばず』です

升太:(弘法って、それ、“プロは工具を選ばない”って意味じゃ・・・・)

リン:とはいえ、フルスクラッチでは時間がかかって仕方ないから、ベースは市販キットを使ってOKです。それを“オラ改造”して、オリジナルのロードローラーを作って見せて下さい

升太:“オラ改造”って、もしかして、あのロボットアニメのプラモデルを改造する手法?

リン:お! 君、もしかして、モデラー!? 嬉しいね〜。昔ここに来て一発通過した『不羅藻 凶士郎』って人以来だね、一発で通じたの

升太:はぁ、まぁ、遊びレベルですが、ロボットのプラモデルは作ってました。でもエアブラシは使ったことないんですけど

 

テト:ここではそれは通用しないって何度も言っているでしょ!

リン:うーん、エアブラシじゃないと綺麗に作れないんだけど、まぁ、いいわ。今回は筆塗装だけの完成品でOKにしておくわ

升太:有り難うございます

 

テト:(・・・やはりおかしい・・・。“律”が狂ってきている・・・・)

 

 リンは自分のテーブルへ升太を案内させた。

 

リン:あの倉庫にあるのが、買い置きの“ロードローラーの製品キット”です。あそこから選んで、私のテーブルで作って下さい。そうそう、大体は時間をかければいい物が出来るけど、それじゃきりがないから、最高延長時間を“2時間”とします。時間から考えて、キットパーツの全塗装は無理だから、改造部分だけとか、必要な所を見極めて、テキパキ進めてね

升太:うーん、最大2時間か。こりゃ本当にテキパキやらないといかんな

リン:では始めて下さい

 

 チーン

 

 リンはベルを鳴らした。試合開始である。

 

升太:さて、ベースキットは何にするかな・・・・

 

 升太は倉庫に移動し、キットを探し始めた。現実世界で本当に売っているのか、怪しくなるような“品数”だった。

 

升太:2時間で完成出来るものだったら、小型で簡単な物じゃないとダメだな

 

 升太はじーーーっとキットの山を見ていた。すると、良さそうな物を見つけた。

 

 『300円シリーズ みんなの重機“ロードローラー”』

 

升太:これでいいか。パーツ数も少ないし、成形色も黄色で塗装不要だ

 

 升太はキットを持ってきて、テーブルで箱を開け、ランナーに付いたままのパーツを広げて、説明書とにらめっこした。

 

升太:うん、ベースはシンプルだ。座席とタイヤとローラーは塗装して、あとはそのまま素組するか

 

テト:へぇ〜、さすがロボットのキットを改造までしていた経験があるわね。結構、テキパキしているじゃん

ミク:これは期待できるミクね

テト:なるべく“カレ単独”でクリアーして貰わないと、律が狂って仕方ないからね・・・・

レン:え?

テト:あ、いやいや、なんでもない。とにかくカレには頑張って貰わないとね

 

***

 

升太:よし、座席はブラウン、タイヤは艶消し黒、ローラーは個性を生かしてクロムシルバーでどうだ!

 

 塗り塗り

 

升太:よし、乾燥したな。なら、組んで置いたパーツを合わせて・・・・・

 

 パチッ パチッ

 

 テーブルには小さなロードローラーのプラモデル完成品が乗っかっていた。

 

升太:よし、とりあえずベース完成か。さて問題の改造パーツだけど・・・・

 

 升太はパーツ取り用の山のようなプラモデルに目線を移した。

 

升太:うーん、ロボットのオリジナル改造ならいろいろ手があるけど、ロードローラーだろ? これで“個性を出す”ってどうすれば・・・

 

 升太はプラモデルの山の前で腕組みをして、目線をキョロキョロさせて考えていた。

 

升太:さすがにロボットアニメのパーツを取り付けるのはなぁ・・・・。でも個性は出るか・・・。うーん。今回は時間をかけないで、彼女の“寸評”の感じを掴むために、簡単に仕上げるか

 

 升太は、戦車のキャタピラパーツと、同じく戦車キットの“ジェリ缶”(ガソリン缶)パーツを数個取り出し、適当な色で塗装して、ロードローラーに取り付けた。

 

***

 

升太:よし! 完成!

リン:出来たみたいね。時間は1時間、早かったね

升太:とにかく“どういうのが個性”なのかさっぱり解らないから、時間ももったいないし、簡単な“オラロードローラー“を作ってみました

リン:出来上がった時間も考慮に入れて、評価するから、安心して。では、どんなかな〜♪

 

 そこに置いてあったのは、側面に戦車のキャタピラパーツが取り付けられており、後部にジェリ缶が数個張り付いてる、戦車みたいなロードローラーだった。普通の人が見ると、またもや“よくわからない何か”になってしまうのだろう

 

ミク:うわ〜、シュールミク

レン:ボクが見ても、造形的には個性だらけだと思うんだけど・・・・

テト:戦車のロードローラーか、結構やるわね。さすがに“砲身”は付けなかったみたいだけど

 

升太:ロードローラー戦車試作一号機“TP-01 マスター一型”です! どうでしょうか?

 

リン:・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ボツ

 

升太:!!!!

ミク:え〜、オリジナル感があって、いいミクよ!!

レン:そうだよ姉貴! なかなか造形的にオリジナルじゃないか!

テト:テトもいいと思うけど。時間の短さは考慮しないんでしょ?

 

升太:あ、あの、次もあるので、寸評をお願いします

 

リン:では寸評を語るわ。まず、地面をゆっくり走る”重機”と、同じく地面をゆっくり走る“戦車”って、同じコンセプトの車両のパーツを1つにしても、オリジナリティがないのよ。造形的な“姿”は珍しいと思うわ。でも、“ロードローラー”って重機の無骨さを突き抜けるアイデアがないのよ、これには。ジェリ缶とかキャタピラでは、ちょっとアイデアとしては乏しいのよね

升太:うっ・・・・・鋭い・・・・・

 

リン:短時間完成品だから、出来とかはオミットしているから、その分、“アイデア”を重視しているのよ。でもローラーのクロムシルバー塗装はいい感じだと思う。次作ってきた時でも評価するよ

升太:ごっつあんでした

リン:まぁ一人だとアイデアが偏ってくるよね。どういう理由だか知らないけど、ミクさんと弟がいるから、みんなにちょっと相談してみるといいわ。次の挑戦が決まったら、私を呼んでね。テーブルにいるから

 

 升太とミクとレンとテトとローラは、奥の談話室に移動して、作戦会議をすることにした。

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(103号部屋 模型研究部・談話室)

 

テト:あのローラさん? 向こう側のあなたがこっちに入っていいの?

ローラ:ええ、リンさんが許してくれました。いい物が作れるなら、それくらいいいって

ミク:力強い味方ミク!

升太:さて、みんな、次で決めようと思うんだ。こういう“創作”系って、経験が多いほどいい物が作れるけど、1回に2時間もかかっていると、そう何度もチャレンジしていられないと判断したんだ

ミク:そうミクねぇ。この塗料臭の中での長期戦はキツいミクね

レン:それに作るのがロードローラー系1個だけだから、厳しいよね

テト:まぁ、私としては、ここでくたばっても、進んでも、どっちでもいいんだけど、個人的には“苦労して先に進んで欲しい”のよね。ここの“律”って、そういう物だったんだから。カレの挑戦以降、狂い始めているのよ。“律”が

升太:そうは言っても、俺の都合もあるんだよ。それにミクさんとかレンさんとか、この部のローラさんにも協力してもらっているし、テトの都合は飲めないよ。次で決める!

テト:へーへー、頑張って下さいませよ

 

升太:さて、次の挑戦だけど、僕がまたやるよ。いいね?

ミク:ミクはプラモデル作れないミク

レン:僕は造形のアイデアを提供するだけしかできないな

ローラ:私はリンさんの“趣向(好み)”を提供するくらいです

テト:私はまぁパシリでもやらせて貰うよ。みんな、なんか飲む?

 

ミク:ミクはネギジュース

レン:僕はバナナジュース

ローラ:私はピーチジュースで

升太:僕はサイダーにしておくよ

 

リン:あ、ごめん、私のみかんジュースもお願いします!

 

テト:ははは、わかった、調達してくるよ

 

 テトだけ廊下に出て、自動販売機コーナーに向かった。

 

(部室棟・1F廊下・自動販売機コーナー)

 

 ギー、ガチャン、ギー、ガチャン・・・・

 

テト:・・・ふん、みんな楽しそうなんかじゃないんだから・・・・。私は小悪魔死神、あいつの命を預かっているんだから・・・・・・・ふん・・・・・・

 

 テトは人数分と自分の“グアバジュース”を買って、談話室に戻ってきた。

 

***

 

(103号部屋 模型研究部・談話室)

 

テト:はい、これ

 

 テトはジュースを各自に渡した。

 

升太:有り難う。飲みながら会議しようか

 

 プシュッ!

 

升太:じゅるる、ごくん。じゃあ、作戦会議を始めるね。ローラさん、とにかくリンさんはこの勝負では“アイデア”を重視しているんですよね

ローラ:そうです。適切な時間をかけて綺麗に作るのはモデラーの鉄則なんですが、この勝負では短時間ですから、綺麗さよりアイデアを重んじます

 

 書き書き・・・

 

升太:うん、わかった。でも、さっきみたいに、“同じコンセプトの同じ種類の物を掛け合わせる”のはだめだったよね。ということは、“あり得ない組み合わせ”でないとダメだと思うんだよ。ということで、“突飛なアイデア”を出していこう!

ミク:突飛なアイデアミクね〜。“ロードローラーはゆっくり走る”ものだから、いっそのこと“速く走るマシン”なんてどうミクか?

升太:“速く走る“か・・・

 

 書き書き・・・

 

レン:う〜ん、そもそも“ローラーで地均し”する重機だけど、速く走るのなら、“ドリフト走行”なんてできたらどうかな? リアルじゃ絶対無理だけど

升太:ドリフト走行か・・・

 

 書き書き・・・

 

ローラ:そうですね〜、ドリフト走行できるなら、某86みたいに、せり上がるヘッドライト“リトラクタブル・ヘッドライト”なんてどうかしら

升太:リ、リトラクタブル・ヘッドライト・・・・・

 

 書き書き・・・

 

テト:ふん! いっそのこと、“飛んじゃった”らいいんじゃないの!?。飛行機みたいにブーンって!!!

升太:と、と、飛ぶか・・・・・

 

 書き書き・・・

 

升太:・・・・うん、かなり無茶なアイデアが出てきたから、いい感じに煮詰まったと思う。よし! これで2時間ぎりぎりまで使って、造ってみるよ!

 

ミク&レン&ローラ:頑張れー!

テト:ふん・・・

 

 升太だけ製作部屋に移動した。

 

***

 

(103号部屋 模型研究部・製作部屋)

 

升太:リンさん、作戦会議終了です。これから製作を始めます

リン:あら、やっぱりあなたが造るんだ。OKよ

升太:それと今回は2時間丸々使うので、時間をはかっていて下さい

リン:おお! それは楽しみだわ。わかった。ストップウォッチではかっているよ

升太:では、始めます

リン:頑張ってね

 

 カチッ!

 

 リンはストップウォッチのスイッチを押して、時間を計り始めた。

 

***

 

 ・・・

 

パチッ パチッ・・・・・・・

 

升太:よし! これでここは完成!

 

 塗り塗り・・・・・

 

升太:よし! ここは乾燥待ち!

 

 カチカチ・・・・・・

 

升太:よし! ここは可動するな・・・・

 

 ・・・

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 カチッ!

 

リン:はい、2時間終了! 製作は終わった?

升太:は、はい。完成しました

リン:おお! 凄い! 本格的に造るって割に2時間で本当に出来上がったんだ。これは楽しみだぞ!

 

 103号部屋の全員が、完成品が置かれているテーブルに集まった。何故か白い布がかぶせてあった。

 

ミク:? なんで布をかぶせているミクか?

升太:いや、小技で申し訳ないけど、やっぱり“インパクト”を重視したから、その、こう、布がパァっと無くなるときの感覚を利用したいと思って

リン:まぁ、こういうエフェクトは良く使われるから、評価には加味しないわよ

升太:いいです。でも“加味したくなる”意味合いもあるので

リン:?

 

升太:では、ベールを脱ぎますよ! ジャーーーーン!!

 

 升太は白い布を上に付いていた紐を引っ張って、取り払った! そこに現れた完成品とは!

 

 スポーツカーの後輪をはかせてあり、ホイールも高速車仕様になっていた。上の天井はスポーツカーを意識して取り払われていた。ヘッドライトはリトラクタブルライトになっており、升太が可動ツマミを押すと、せり上がってきた。

 

 そして後ろには5つ目の大きなタイヤが付いており、なんとここはツマミを押すことで下に降りて、後輪ではなく、このタイヤの回転で“ドリフト走行”できるようになっていた。

 

 しかし、そういう物より、全員が真っ先に目に入れたのは、ボディ側面に付いていた、

 

 『大きな翼』

 

 であった。それも戦闘機キットからパーツ取りした物。よく見ると、ボディ後方には、“ジェット噴射口”が2つ付いていた。

 

升太:リンさん、どうですか? 試作2号機『TP-02 空飛ぶロードローラー』です!

 

リン:こ・・・・・こ・・・・・・これは・・・・・・・・・

升太:・・・ごくっ・・・・・

 

リン:合格です! 素晴らしいアイデアよ!

升太、ミク、レン:やったぁ!

テト:ふん・・・・・変なロードローラー・・・・

 

リン:寸評です! この重機には全く意味がない“リトラクタブル・ヘッドライト”、ロードローラーなのに、ブレーキペダルとターボチャージャーユニットとミッションが組まれていて、何故かオープンカー仕様で天井がないわ。そして足周りは高速スポーツカー仕様、なのに、銀色のローラーはちゃんと付いているこのミスマッチさ! あげくに5つ目の車輪で無理矢理ドリフト走行可能!

テト:ほんと、変なの・・・・

リン:でも、それは100点だったら30点程度よ。残り70点は、なんと言っても“翼で飛ぶこと”よ!

テト:え!?

リン:地均しする重機なのに“飛ぶ”、この考えられない所から来るアイデア!! 素晴らしいの一言よ! 完璧なアイデア造形物! 満点で合格です!

 

 升太は思わず、テトを抱きあげてしまった!

 

升太:ありがとう!! テト!! 君のアイデアのおかげだ! 本当に有り難う!

テト:ちょ・・・・・・ちょっと!!!

升太:あ・・・ごめん・・・・

 

 升太はテトを降ろした。

 

テト:・・・ふ、ふん! あ、あんなアイデア、誰でも出せるよ! わ、わたし、べ、別にあんたを助けたいからアイデア出したんじゃないんだから! ひ、独り言よ! そう、独り言!

 

升太:・・・・・それでも嬉しいよ。本当に有り難う。本当に

 

 テトは真っ赤になった。

 

テト:ふ、ふん。みんな助け合っていたし、私だけ何もしないってわけにはいかないじゃないの! 今度は絶対に何もしないんだから!

升太:でも、結果的とはいえ、“今まで助けたことがない記録“が、これで切れちゃったね

テト:・・・あ!・・・・い、いいのよ! ちょっとくらい変わったって! もう絶対助けないんだから!!

升太:ふふ・・・可愛いなぁ

 

 テトは更に真っ赤になった。

 

テト:も、もう! からかわないでよ! あんたなんか、2階の3人にやられちゃえばいいのよ! ふーんだ!

 

 ダッダッダッ

 

 テトは先に部屋から出ていった。

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ミク:ミク〜、あの二人、恋愛関係のイニシアティブも逆転しちゃったミクね

レン:そうだねぇ、升太さんの方がイニシアティブを握っちゃったね

ミク:それにしても升太さん、だんだんパワーアップしてきたミクね。なんというか“いろいろ強く”なって来たミクよ

升太:ありがと、ミクさん

ミク:さすがミクが惚れた男ミクよ。これからも宜しくミクね

レン:僕も宜しく

升太:僕こそ、これからも宜しくね

 

リン:そして私もね

 

升太:え!? まさか弟さんに引き続き、リンさんも!?

リン:あなたをみていたら、これから先のこのゲーム、どうなるか、興味がわいてきたわ。ここはローラさんに頼むから、私も連れて行ってよ

升太:あ、いや、構わないし、ミクさんとかレンさんの事もあるから、テトも文句言わないと思うけど

リン:よし! 決まり! これから宜しくね

升太:こちらこそ、有り難うございます!

リン:じゃあ、とりあえず勝ったということで、これね

 

 リンは升太に、いつもの通り、勝利品を渡した。それは、二つの鍵だった。

 

リン:矢印マークの黄色の鍵は、ここから2階へ上がる階段にある“防火ドア”を開く鍵。そしてもう1つのミカンマークが付いた鍵は、2階の咲音メイコさんの部室を開ける鍵です

升太:どうも

リン:んじゃま、行きましょうか! ローラさん、後お願いね

ローラ:気を付けて行ってらっしゃい!

 

 ぞろぞろぞろ

 

 こうしてローラ以外の全員が退室して、1階の廊下に出て、2階へ上がる階段の前、防火ドアの前に来た。

 

(部室棟・1F廊下・防火ドアの前)

 

 そこにはテトが半分ベソをかいてたたずんでいた。

 

テト:・・・・リンさんも一緒に行くことになったみたいね・・・・

升太:無問題?

テト:別にいいよ。じゃあ、鍵でここを開けて、2階へ進むよ。言っとくけど2階の部は強いんだぞ!

升太:覚悟の上だよ

テト:ふ、ふん! そんなカッコつけたって、格好良くないんだから!

升太:なんじゃそりゃ? ま、いいや。とにかく2階へ上がるよ

 

 ガチャ ギーーーー

 

 こうして一行は開いた防火ドアをくぐり、階段を上がって、2階へと足を運ぶのだった。

 

(続く)

 

CAST

 

主人公・墓火炉 升太(ぼかろ ますた)=升太:とあるボカロマスター

 

案内役の死神小悪魔・重音テト:重音テト

 

料理研究部部長・初音ミクさん:初音ミク

技術研究部部長・鏡音レンさん:鏡音レン

模型研究部部長・鏡音リンさん:鏡音リン

 

料理研究部部員・プリマさん:Prima

技術研究部部員・亞北ネルさん:亞北ネル

模型研究部部員・ローラさん:Lola

説明
○ボーカロイド小説シリーズ第8作目の”おいでませ! 木之子大学・部室棟へ♪“シリーズの第3話です。
☆初めて、ボカロキャラ以外の“ボカロマスター”を主役に、UTAUのテトをヒロインに持ってきました。
○ノリはいつもの通りですが、部室棟という今までと違った場所での対決をメインにしているのがウリです。
○部室棟や大学のモデルは、私の母校です。
○リンちゃんの模型研究部での模型対決です。但し、とある物限定なんですが…
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Vocaloid ボカロ小説 マスター 重音テト 初音ミク 鏡音レン 鏡音リン 海外組 亜種 

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