《インフィニット・ストラトス》〜二人の転生者〜
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第二十三話 シャルルの秘密・その壱

IS学園、一年生寮の階段を今僕は登っている。

「えっと……1301号室……ここ、だよね?」

四階に上った所で横に折れてすぐの部屋の表札を見た。そこには1301と表記された札が貼られていた。

そこで僕は少し考えてしまう。恐らく中にいるのは十中八九一夏か秋だろう。それはいいのだがどう入ればいいのか迷っていたのだ。ノックして入る?いや、それだと自分の部屋なのに不自然だろう。声をかける?それも不自然だ。何もせずに入る?それはあまりにも無神経すぎるだろう。「ただいま」と言いながら入る?う〜ん、この中では一番まとも……よし、これで……行くぞ……

「すぅーはぁー……よし!」

僕は深呼吸してドアノブに手をかけようと、手を動かそうとした瞬間――

「どうした?はいらないのか?」

「きゃあっ!!」

突然、後ろからかけられた声に飛び退いて、振り向くと同時に後ずさってしまった。しかし目の前にあったドアに背中をくっつけただけで余り意味はなかった。そしてその声の主は――

「しゅ、秋?」

「……他の誰に見える?」

黒いジャージを着ていて、下の自販機で買ったのか、赤と白のコーラの缶を持っている秋の姿があった。

「取り敢えず入れよ……というのも変だな、これからお前の部屋でもあるんだから。まあ多少散らかってるように見えるかもしれないが我慢してくれ……なんか飲むか?」

秋はそのまま僕の横にあったノブを回し、中に入っていく。少し呆けていたが僕も「失礼します……」と言いながら入っていく。

「とりあえずポカリでいいか。ほらっ」

「え?あっ、とっと……あ、ありがとう」

冷蔵庫の中から取り出したスポーツドリンクの缶を僕に向けて投げたので受けとめる。そのまま秋は椅子に座り、コーラの缶を開ける。炭酸が抜ける心地良くも聞こえる音を立てて開いた缶に口をつけ、一息つくと話し始めた。

「取り敢えず、おれがお前のルームメイトだ。取り敢えず部屋の中のルールを決めようか。まずはベッド。見てもらえばわかるが出口側はもはや俺の私物化となってるから窓側を使ってくれ、もし変わりたいなら変わるが出来ればこのままがいい。次にシャワーだが……どうする?」

「あ、えっと……秋が先でいいよ。僕は汗は余り書きにくい体質だし、汗をかいてもそんなに不快感はないし」

「そうか、じゃあ基本俺が先に使う。だがまあ先に使い時はちゃんと言えよ?

「あ、うん」

そこからの沈黙。僕はベッドに、秋は椅子に座ったままだ。僕は秋の方を見ると秋はすでに机に向かって何かをしている。

「……何してるの?」

僕は立ち上がり、近づきながら言う。

「ん?ああ、新しいISの設計図だよ。今日の授業中に言った通り俺と春華のISは未完成だ。だからそれをより完成に近づけるための設計図を作っているんだ。特に永久機関の安全性、及びその機関から得られるエネルギーの変換機構やシステム、そして武装。しかしこれらは流石にバレれば世界のバランスが再び崩れるから見せれないけどな」

秋はそう言いながらウインドウを閉じた。しかし電源は切らずにそのまま放置して立ち上がり、部屋の外へと向かう。

「何処か行くの?」

「なに、ちょっと春華に預けたものがあってな……それを取りに行くだけだ。その後少し離してくるから一時間ぐらいかかるかな?その間に着替えてシャワーでも浴びてたらどうだ?俺は先に浴びたし。じゃあ行ってくる」

「あ、いってらっしゃい」

そういって秋は扉の向こうに消えた。

「……この部屋には僕一人……ルームメイトは男子でIS開発者……」

僕はそうつぶやき、手で拳を作ると強く握った。

「ごめん……秋……」

僕は電源のついたままのPCに向かい、保存用のメモリを差し込み、PCの情報を漁り始めた。

「……やっぱり、そういうことだったか……」

そう声がした瞬間、僕は立ち上がり、同時に出入りフチのドアを見た。

そこにはドアを開けた状態で立っている、秋がいた。

 

さてさて、どうしたものか……

「……とりあえずシャルル、お前の任務は失敗だ」

「!!」

俺がそういった瞬間、一瞬だがシャルルに反応があった。

「……秋は……やっぱり、知ってたんだね……」

俯きながらも小さく、そう呟くシャルル。

おれは取り敢えずドアを閉めた。この四階には俺とシャルル、あとは夏以外いないのだが他に何があるかわからない。取り敢えず扉を閉めておく。

「知ってた……というよりは知ったという方が正しいだろう。実技の前、あの時はあれ以上の情報は本当に持っていなかった。俺がそれから知ったのは放課後、この部屋に戻ってきてからだ……色々あるだろうけど取り敢えずは座ろうか。PCのデータも……全て消えたしな」

そう言ってPCを指す。

PCの画面の半分ぐらいは真っ黒に染まっており、やがて画面が全て覆われたかと思うと電源ボタンが光を失って、二度と光り出すことはなかった。

「防壁プログラム《((夜の魔術師|ナイト・ウィザード))》。防壁というよりは削除に近いな。ある手順や方法を踏まずにPCの重要ファイルの開示や記録装置を接続した瞬間に発動したように仕掛けてあった。隠してたとはいえ一応ISを開発した一人なんでな、これぐらいの準備は日常的にしてある。まあ半分はシャルルを試したんだけどな……正直疑いたくはなかったんだがな……」

「……そう……」

シャルルはついさっきとは違う、重く、それでいて力がなくなったような足取りで自分のベッドに向かい、腰をかける。

俺も自分のベッドに腰掛け、向き合う。

「……さて、俺のPCで何をしようとしてたか、教えてもらえるかな?」

「秋は……僕が何をしようとしてたかわかってるんでしょ?」

「ああ。しかし俺はそれをシャルルの口から聞きたいんだ。シャルルがどうしてその手段に及んだのか……何が目的だったのか……」

暫くの沈黙……暫くしてシャルルが小さく息を吐き、言葉を紡いだ。

「最初っから、それでいて全部話したほうがよさそうだね……まずは僕の正体から。僕は実は男の子じゃなくて女の子なんだ。証拠はこれ」

そう言ってシャルルは服の上から左脇の下の方を触った。暫くしてシャルルの胸が膨らんだのがわかった。恐らく特殊なコルセットか何かをしているんだろう。

「なるほど。で、男装をしてまでIS学園に入学した理由は?」

「……僕の父さんが経営してる会社は知ってるよね?そしてその会社が今は経営難なのも」

「ああ」

俺は静かに答える。言わずもがな、世界第三位のシェアを誇るフランスの大企業だ。それだけ聞くと経営難とは考えにくいだろうが、ちゃんとした理由があるのだ。

「秋はなんで経営難かわかるよね?」

「まあな。世界第三位、と聞けば聞こえはいいがISのコア数は有限だ。僅か467個という数から考えて世界第三位はそれほど凄いことじゃない。ほかの機業よりかはいい、という程度だろう。しかも今や世界は第三世代型ISの制作が開始、トライアル段階まで入っている。しかしデュノア社は第二世代最後発の《リヴァイヴ》を開発してからそう経ってない、だから時間もデータも何もかもが足りない。しかも欧州連合の《イグニッション・プラン》から除名されてるから急務、ということも響いてるんだろう。しかも政府から予算を大幅カット。次の選考を通らないとデュノア社からはIS制動権利を剥奪……こんなところだろ?」

「やっぱり凄いね、秋は。そこで急遽僕が男装して転校してきたんだ」

「何のために?」

俺はすかさず聞き返す。シャルルは唇を少し噛むがここで俺が折れてしまっては駄目だ。非常と思うかもしれないが自分のやってること、罪の意識を持たせないとシャルルはそのまま泥沼にはまっていってしまう。

「……簡単だよ。広告塔としての役割と……」

シャルルは握りこぶしを作って、震えながらも答える。

「……日本で見つかった特異点――男性としてのIS操縦者との接触、及びそのISのデータを盗んで来いって命令されてるんだ……」

「……その言葉をお前から聞けてよかったよ」

俺は立ち上がりながらそう言う。

「まだ聞くことは結構あるが一息つこう。こういう話ばっかりでも息が詰まるからな、外の空気でも吸うか?」

「あ、うん、そうだね」

俺は窓を開けてベランダに出た。シャルルもコルセットを直して出てきて二人して並んで手すりに持たれる。

「……煙草、吸ってもいいかな?」

「……ん〜、出来れば遠慮して欲しいかな?」

「そうか……仕方がないか」

俺はそう言ってポケットから愛用のゴールデンバットではなく、小さなケース取り出し、その中身を手の甲に少量を置いたあと、鼻の中に入れた。

「それ……嗅ぎ煙草?」

「まあな。これならシャルルが被害を被ることはないからな」

そこで言葉が途切れる。

そろそろ暖かくなってきたとはいえまだ六月だ。夜は涼しい風が吹いている。

「……聞いても、いいかな?……」

「別に構わんが?」

シャルルは遠くの空を見ながら少し思いつめてるような、それでいて悲しい顔をしていた。

「その……僕のやったこと……怒ってる?」

「……半分は、な」

俺のその言葉にシャルルは申し訳なさそうな、それでいて怖がるように俯いてしまった。しかしそれで終わる俺じゃない。

「……でも、もう半分は……ホッとした、というか……安心した」

俺は手すりに背を向けて背中を預けて空を見上げた。ここIS学園は都会とは結構離れているため曇り空でもなければ綺麗な星空が見える。俺はそんな星空を見ながら今度は俺が疑問を投げかける。

「シャルルは何で本当のことを話そうと思った?普通なら簡単にはできないことだ。諦めたにしてもちょっと変だ。黙秘してれば自分が犠牲になるだけでいいんだからな」

「ん〜……まあ、僕は別にデュノア社のために犠牲になる必要性はないし、それに秋なら信じてもいいかなって思ったからだよ」

シャルルは少し笑いながら言う。デュノア社の社長の息子――娘、ご令嬢なのに親の会社がどうでもいい、とはまた変な話だが、俺にはそう話す確証があった。そして恐らくこの後の質問でその答えが出るだろう。

「俺の何処に信じる要素があるのか謎なんだが……聞いていいかな?」

「別に構わないよ……実は少し前――と言っても二、三年位前なんだけどね。僕のお母さんが病気で入院してる時に知り合った日本人がいたんだ。一人はブリュンヒルデ――織斑先生で、もう一人は白銀の長い髪をした男の子でね、どことなく秋に似てたんだ。けど髪の色違うし、その子は両腕に左脚無くて、顔にも包帯してたから別人だと思うんだけどね」

「……やれやれ、意外と世界っていうのは狭いのかもな……」

「え?」

俺はそう呟いて部屋に入っていき、シャルルはそのつぶやきに疑問の声を発する。

「余り夜風に当たるのも良くない、部屋の中に入れ。それと少し待っててくれ。さっきの言葉を証明してやるよ」

「あ、うん?」

シャルルが中に入ったのを確認してから俺は洗面所に入る。やれやれ、まさかこれを使うとは……面倒だがそこまで面倒ではないから、まあいいんだが。

そう思いながら俺は洗面所に置いてあった一つのケースに手を伸ばした。

 

数分後、俺は鏡を見て自分の姿をチェックする。うん、おかしいところはないな。

俺は洗面所から出てシャルルの方を見た。

「……これでどうかな?」

俺は解いた髪を少しなびかせた。そう、真っ白な((白|・))((銀|・))((の|・))((髪|・))をだ。

「……うそ……」

シャルルはそんな俺の姿を只々唖然と見つめることしかできないでいた。

 

説明
どうも、作者の菊一です。
え〜、約二週間ぶりの更新です。しかもさっき出来上がったばかりのホカホカの原稿ですwそのお陰でクオリティが低すぎてちょっとした自己嫌悪中ですw

取り敢えずこれが今現在の自分の全力全開な小説です。読んで感想などを貰えると嬉しいです。ではどうそ〜

報告)あとがきは今回ありません。もう何をかいていいやらわからないので^^;何かあった時だけ書いていこうかと思います^^;
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