真恋姫無双 〜蜂蜜姫の未来〜 第14話
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この作品は恋姫無双の二次小説で袁術ルートです。

オリ主やオリキャラ、原作キャラの性格改変やオリジナルの展開などもあります。

 

そういうのが許せない、特定のキャラが好きな方はスルーしてください。

※一刀アンチ作品ではありません。

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第14話

 

袁紹一行が美羽たちのもとへ訪れる一週間ほど前の南陽の街外れ。それなりの身分の人物が住むと思われるしっかりとした造りの屋敷は、袁術の客将預かりとなっている孫策たちの住まいである。

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その屋敷の中庭にある四阿。そこでは定期的に孫家の主な人物が集まり、さまざまな話し合いが行われていた。そして、呂範が袁術軍に加わった頃を境にその話し合いは頻度を増していた。

 

「いまは誰が動いてるの?」

「うむ。幼平に動いてもらっている。猫さえ絡まなければ、あいつは優秀だからな」

「策殿。何故、最近になって袁術の周囲を調べようなどと思ったのじゃ?」

「ん〜、勘よ」

「勘ですかぁ?」

「ええ、私の勘。それだけで動く理由には十分でしょ?」

美しい笑みの中に獰猛な光を宿す瞳が美しい曲線を描く。

 

実はあの賊討伐の一件以降、孫策は呂範に会うたびに奇妙な感覚に陥っているのだった。それを言葉にこそしないが、周瑜や黄蓋、陸遜はそんな主の様子を敏感に感じ取り、袁術たちに勘ぐられない程度に水面下で色々と行動を起こしていた。

 

「そうは言うがな、あの男に向けて放った草の者たちが、誰一人として我らに有益な情報を持ち帰る事が出来なかったんだぞ。分かった事といえば得物が大剣であること、袁術軍の武官兼文官として働いている事、真名を呼んでいるのが袁術、張勲、紀霊の三人だけということぐらいだ。正直なところ、これ以上調べても何も出ないと思うのだが?」

孫策の向かいに座る周瑜は、これまでの調査結果からこれ以上は無意味だろうと促すが当の孫策は納得していないようで、周瑜に対し唸るだけである。それを見ていた黄蓋が助け船を出した。

 

「穏よ、お前の方はどうなのじゃ?」

「そうですねぇ〜。こちらもあまり良い報告と呼べるものはないんですけど、気になる事が一つだけ。どうも呂範さんは近々旅に出るみたいです」

「……は?」

「穏、私の方にはそのような報告は上がってなかったが……」

孫策は目を丸くしながらもその言葉に興味津々といった様子を見せ、周瑜は初耳の報告に少々訝しむような視線を向ける。

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陸遜の話をまとめるとこうなる。

近頃袁術軍内部で新しい部隊の編成が行われていたらしいのだが、それ自体は別段不思議なことではない。新しい将が加入したのだからそのための部隊を組むのは当然と言える。

呂範が直接指導している姿も何度か確認していたが、一昨日に呂範がしばらく南陽を離れる事になるという報せが、潜入していた間諜から伝えられた。

予定では、十ヶ月から一年程度かけて各地を回り色々と見聞を広めたいということらしい。

しかし孫家の面々にはそれを袁術が許したという事の方が衝撃が大きかった。ここ最近の袁術は呂範と兄と呼び慕い、何処に行くにも呂範を連れて歩くという姿が城で見受けられた。そんな袁術が、約一年もの間呂範と離れる事を認めたという事実に驚く。

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「どうやら呂範さんの目的は幽州にあるようです」

「なんでわざわざあんな北方の片田舎に行くのよ?」

「袁術軍の同盟相手が欲しいみたいですよ〜」

「なるほど。確かに幽州には白馬を操る将がいたような気はするが……」

「むう、白馬長使じゃったか?名前は思い出せんが……」

「たしか〜降参さんでしたっけ?」

「いや、流石にそんな残念な名前ではなかったと思うが」

「もう!そんな名前も思い出せないようなのはどうでもいいわ!とにかくあの男が一年近く居なくなるってことなんでしょ?これってさ好機なんじゃない?」

「まぁ、あの男が袁術のもとへ来てから色々とこちらに都合の悪い事が起き始めているようだしな。これを機にこちらも動き始めてみるのもいいのかもしれん」

孫策の発言により名前も思い出せない片田舎の武将は隅に追いやられ、現在の問題に目を向け直す一同。

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哀れ、降参さん。

「誰が降参さんだ!私は「伯珪様、お静かに願います」だ!」

部下に名乗りを邪魔されてしまうとは…………。

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「ねぇ、他には何かないの?」

「そうだな。さして重要な事ではないだろうが、近々袁紹が南陽にやってくるらしい」

「ほう、何用じゃろうな?」

「どうせ気まぐれでしょう。気にするほどのことではないかと」

だがこの袁紹の来訪が呂範の予定を大幅に狂わせることになるとは、このとき誰も予想だにしなかった。

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明命視点

 

 周泰、字は幼平、真名を明命は袁術の城内にてある任務を遂行していた。

 

 私は今窮地に追い込まれています。対象者を監視していたのですが、そこへ思わぬ刺客が現れたのです。

 どうすれば良いのでしょう?ここで声をあげてしまえば、気付かれる恐れがあります。

 

 しかし、私の理性はすでに崩壊寸前。

 

 本能が訴えます。

 

 全力でお猫様をもふもふしろ!と。

 

「お猫様〜、もふもふです!素晴しい毛並み、艶、肌触りです〜」

 なんという幸福感でしょう。これ以上の幸せなんてあるのでしょうか。いいえ絶対に無いと断言できます。

 

「あの……」

 どなたでしょう?この至福の時を邪魔するとは無粋な方ですね。

 

「もしもし?」

 ああ、もう!うるさいです。お猫様がいやそうな顔をしてるのが分からないんでしょうか?

 

「あなたは何処から入ってきたんですか?」

 ああ、お猫様が去って行ってしまいました。私とお猫様との至福の時を邪魔するなんて。

 

「ふむ。あなたは一体どなたで袁術殿の城内で何をしているんですか、と先ほどからお聞きしているのにお返事が無いという事は、問答無用で斬られても文句はないという事でよろしいですね?」

「へ?」

「おや、口がきけないわけではないようだ。ではもう一度だけお聞きします。あなたは一体どこの誰で、ここで一体何をしているのでしょうか?」

 もしかしなくても非常にまずい状況です。監視対象に見つかり、あまつさえ刃を向けられるというこの現状。切り抜けるためには、一体どうすれば……、そうだ!

 

「えっとですね、ここにとても美しいお猫様がいると耳にしたのでぜひ一目見たいと思いまして……」

「私の質問の答えになっていませんね。私はあなたがどこのだれかをお聞きしたはずですが?」

「はぅあ!?そうでした。私は猫好きの関項といいます。荊州からの流れ者でして、今はある豪族の用心棒として働いている者です」

「へぇ。ここまで無傷で来る事が出来るとは、豪族ごときの用心棒にしておくにはもったいない腕前ですね。どうでしょう?私の下に来る気はありませんか?」

「申し出はありがたいのですが、なにぶんその方に恩義がありまして。丁重にお断りさせていただきたく思います」

「そうですか、残念です。ではその方にお伝えください。こちらに牙を向けるつもりであれば容赦はしないと」

「何の事か分かりませんけど、そう伝えれば分かるのですしょうか?」

 震える唇を気取らせないよう慎重に言葉を紡ぐ。私の素性がばれていたのか、それとも単なる揺さぶりかはまだ判断できません。

 

「ええ、十分に意味は伝わると思いますよ。最近の袁術殿を良く思わない方は多いですから。おそらくあなたが世話になっている豪族も同じでしょうし」

「そうなんですか。必ず伝えましょう。では私はこれで失礼します」

「お気をつけてお帰り下さい。それと今度いらっしゃるときは、しっかりと正門からおいで下さいね」

 去っていく周泰を大地は笑顔で見送っていた。

 

 気づかれていた?いつから?

 

 これで、警戒心を持たれてしまいました。これでは隠密失格です。

 

 それにしてもさっきの言伝はどういうことなのでしょう。もし孫家が離反の時を伺っているのが知れたのだとしたら、早急に対策を考えなければいけなくなります。でも、もし先ほどの言葉が虚言だとすれば行動することで危険が及ぶ可能性もあります。

 

 今出来る事は、何もしないということだけでしょうか。

 

「……はぁ、憂鬱です」

 屋敷へと帰る道すがら、小さく溜息を吐いた明命。その背後には……。

 

視点アウト

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大地視点

 

「にしてもあの女、相当うまく気配を絶ってたな。猫がいなかったら気付けなかったかも知れねぇ。まったく、厄介だな……」

 大地はこれまで送り込まれていた隠密の数をほぼ把握しており、それらに対して必要以上の情報を与えないよう細心の注意を払っていた。これは大地自身の隠密修行での経験をもとに、気配の察知に敏感になっているためである。孫家の隠密は確かに質が高く良い訓練を積んでいるのだろうが、それでもまだどこかに無駄な動作が見え隠れする事がある。大地が監視されている事に気付いたのは、そういった点からだった。

 しかし先ほど出会った人物は動きにこれといった無駄がなく、大地が全神経を集中させてようやく違和感を感じるかどうかという程のものだった。達人とは言わないまでも上級者と言って差し支えない腕前だろう。

 そんな人物にマークされているとなると、今後の自分の行動にかなりの制限をかける必要が出てくる。おそらく自分の計画は少なからず漏れていると考えていいだろう。だが、今はそんな事よりも重大な事がある。

 

「ま、まずは奴の素性を調べるのが先か」

 あれほどの人物を従えられる豪族が、そこらにいるとは到底考えられない。となればほぼ確定なのだが、あまり憶測でものを語るのを良しとしない大地はとりあえずあとをつける事にした。

流石に周泰とはある程度の距離を取ってはいるが、見失うようなヘマはしないし気づかれるつもりもない。

 

「にしても、こうも簡単に後ろを取れるとなると逆に不安だな。まさか罠とかじゃないよな?」

 それなりの人物だと考えて十分すぎる距離をとったつもりではいたが、ここまで順調となると少々拍子抜けだった。

 

「まぁ、このまま進めば孫家の屋敷に一直線だが、果たしてどうなるかな?」

 分かりきっていることに対して、自分の気持ちが高揚するのを感じる。この事実があれば、孫家を袁術のもとから遠ざける事も出来る。もしくは孫権と孫策を入れ替えて、こちらに孫権を留め置くのも良いかもしれない。とにかくやれることはいくらでもある。

 それらストレスの種が減るのは大地にとって大歓迎だ。ただでさえ、袁家の膿を取り除いたばかりで((瘡蓋|かさぶた))も出来あがっていない袁家の懐には、孫家という爆弾が潜んでいるのだ。その爆弾処理が早い段階で行われるにこしたことはない。

 

「いやぁ、まさかこんなにうまくいくとはな。これも日頃の行いが良いからか、な〜んてな」

 軽口を叩く大地。尾行は上手くいき、確かに孫家の屋敷に入って行くのが見えた。これだけで絶対の判断が下せるわけではないが、確実な証拠として判断材料の一角を担うことはできる。そうなれば孫家を追い込むことは、今よりも容易になるだろう。

 

 その後、城へと向かう大地の足取りは随分と軽いものになっていた。

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 だが、その明るい気分を台無しにする出会いが迫っている事を大地は知る由もなかった。

 

視点アウト

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 大地がその日の報告書を七乃に提出した数日後、あの三人が南陽を訪れた。

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あとがき

 

ということで、三人がやってくる数日前の話でした。

 

孫家は大地が邪魔なんです。まぁ、美羽がまともになったら人民を解放するための反逆という大義名分を失いますしね。

明命が隠密として優秀なのは「猫」という要素が絡まない場合です。隠密として一流なのは変わらないんですけど(笑 

大地がちょっと黒いかな、と思ったりもしましたけどこの位で丁度いいのかも……。

 

軍師加入までもう少しかかるのが痛いですね。内政を立て直すのは七乃には向いてないし……

 

でわでわしつれいします

説明
袁紹たち来訪の数日前の孫家と大地君です。

それではどうぞ
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コメント
ちょっと落ち込みすぎでしょ、明命。尾行に気付かないなんて。それともあれで誤魔化せたと思ってたのかな? 軍師については仕官が見込めないなら探しに行かないといけないですからね。少なくても麗羽たちが帰るまでは無理か。(量産型第一次強化式骸骨)
現段階で袁術領の政治どうなってるのだろう?(陸奥守)
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