鋼の錬金術師×テイルズオブザワールド 第六三話 |
それは、世界が生まれる前
レムや、シャドウが生まれる前
ずっと、ずっと昔の話。
世界樹も存在しなかった昔の話。
ある、大きな山の途中にある小さな小屋で
長い髪とピンク色の髪の、ボロボロのワンピースを着た
女の子が一人、暮らしていました。
『……………』
普通の、ただ小さな女の子。
力も、知恵も、お父さんもお母さんもお兄ちゃんもお姉ちゃんも居ない女の子でした。
女の子は、いつも落ち葉や池のお水を飲んでいます。たまに、キノコが生えていたらそれを食べます。
キノコは、御馳走でした。
木の実は、もっと御馳走でした。
お腹いっぱいじゃないと、冬の日は生き延びられません。
ずっと、孤独でいなければいけないので、寒くて寂しくてかないません。
寂しいって何だろう。
女の子は、寂しいという感情が分かりませんでした。
『おい!化物が来たぞ!』
『ちょっと!あの子に近づいちゃ駄目って言ってるじゃない!!』
『こっち来るな!街から出ていけ!!』
女の子には、友達が居ませんでした。
ちょっとくらい、優しくしてくれる人もいません。
『良いかい?君はこの街に来ちゃいけないんだ。君は私達の中には居られないんだ。だから、ここに来るんじゃない』
かけられた中で一番優しい言葉は、この言葉です。
女の子は、何も知りません。
何も知らないまま、ずっと山の奥の小屋で、一人葉っぱにくるまって眠るのです。
どうして、自分は一人なんだろうと思った事はありません。
どうして、あの人たちは皆で行動しているんだろう。とは思った事があります。
その人たちの事が、良く分からなくて
一晩中、混乱した事もあります。
私は何なんだろう。
私は、どうして嫌われるんだろう。
それが分からなくて、女の子は泣きました。
ずっと、ずっと小屋の中で泣きました。
泣いて、女の子は一晩中寝れませんでした。
ある日、今日も起きて朝ごはんを食べに行きます。
道の草は、今日は綺麗な色をしています。
お花です。お花は結構美味しいのです。
女の子は、お花を摘んで籠に入れる作業に入りました。
今日は、とてもお花が良く咲きます。
だけど、取ってしまうとすぐ無くなってしまうので、有る程度は残しておきます。
池のほとりには、特に沢山生えています。
お魚さんが、池の中で泳ぎ続けています。
このお魚さんを捕れる力があれば、女の子も少しは栄養的な生活をおくれます。
だけど、女の子は草の味しか分かりません。
それが、食べられるものだとはカノンノは想像もつきませんでした。
なので、気にしないでお花を摘んでいると、誰かの歌声が聞こえました。
どこか聞いた事の無い声で、聞いた事の無いフレーズです。
何だろう?そう思いながら歌声の鳴る方へと走りました。
歌声のある方へと近づくたび、お花がだんだんと無い所へと行きます。
女の子は、この場所はあまり好きではありません。
ちょっとだけ嫌な気持ちになって、前を向くと、
そこには、男の子が居ました。
男の子は、池の水を手でバシャバシャさせて、歌を歌っていました。
その姿は、女の子は初めて見ます。
そして、ちょっとだけ恐怖心が湧きました。
それと同時に、好奇心が女の子の中に湧きあがりました。
男の子は、女の子の姿に気づきます。
目が合った瞬間、女の子は驚き、花を落としてしまいます。
同時に、花の入った籠は湖の上に落ちて、どんどんと女の子から離れて行きました。
『あっ……』
それを見て、女の子は少しだけ悲しくなります。
男の子は、それを見て湖の中へと入って行きました。
だんだんと沖に流される花を追って、花の籠を掴んで、女の子の元へと歩みました。
『はい。』
男の子は、笑顔で女の子に花の入った籠を渡しました。
渡された時、女の子はじっとお花の方を見ました。
その後、男の子の顔を見ました。
この時、女の子は混乱しました。
どうして、私以外の人が、私に優しくしてくれるのだろう。
この後、何があるのだろう。
その後が、とても怖くて
女の子は、籠を奪ってそのまま逃げてしまいました。
『あっ………』
その時、男の子が女の子を見つめたまま、動く事をしませんでした。
追いかけもせず、そのまま見つめていました。
家に帰った女の子は、奪った花の籠を抱えながらガタガタと震えました。
あの男の子が怖くて、そのまま家の端で怯えていました。
怯えたまま、今日一日は終わってしまいました。
三日後、もうそんな事を忘れているかのように、女の子はお花を摘みに行く作業を始めました。
今日は、久しぶりにお花を摘みに行こうと池に行きました。
二日間、ずっと怖くて池に行けなかったのですが、今日は行こうと決心したのです。
そして、池に辿り着くと、
また、あの歌声が聞こえました。
『………!!』
また、怖くなって
その場所から、逃げてしまいました。
家に帰った時、しまったと女の子は思いました。
まだ、ご飯を摘んでいなかった。
今日は、雑草だけ食べて過ごそうと思いました。
1ヶ月後
女の子は、また池の方へと行きました。
今まで、散々考えて
あの歌声は、害のある物には見えなくて
もう一度、聞いてみようと思う気になったからです。
今日はお花を摘みません。
だけど、我慢できなくて美味しそうなお花の一つ一つは摘んで行きました。
そして、あの歌声のある方へと進みました。
だけど
今日は、あの歌声はありませんでした。
池の水が囁く音しか聞こえません。
いつもの、森の光景です。
歌声が聞こえなくて、少しだけホッとした女の子は、
その場所のお花を摘む作業に入りました。
『………また会ったね』
奥から、声が聞こえました。
あの歌と、同じ声
顔を上げると、見た事のある顔
あの、少年の顔だった。
『………っ!』
女の子は、何も言えず
何も分からず、あたふたして
とりあえず、身を守る為に手に持っていた花を男の子に差し出した。
それを、男の子はじっと見て、
しばらくして、男の子は笑いだした。
その笑いの顔は、女の子は初めて見る表情だった。
一体、何の感情の顔なんだろうと女の子は疑問を持った。
『名前は?』
男の子から言われて、女の子は少しだけ戸惑った。
誰かから、名前を尋ねられたのは初めてだった。
自分には、名前が無かったから。
小屋の中に、一冊の本から
”カノン・ノスタルジア”という題名を見て、そこから自分の名前を取って答えた。
『………カノンノ』
『カノンノ……。綺麗な名前だなぁ。』
少年はそう言って、金色の瞳を更に輝かせた。
その目を見て、カノンノは吸い込まれそうになった。
『僕の名前は、エドガー・マルス・エルリックって言うんだ。皆からはエドって言われてるよ。』
金髪の少年
金色の瞳
赤いチョッキを着た彼は、とても綺麗な身だしなみをしていた。
『で、そのお花は僕にくれるのかな?』
エドガーがそう言うと、カノンノは、手に持っていた花を更にエドガーに突き出した。
すると、エドガーは少しだけ驚き、のけ反った。
だが、
『ありがとう』
そう言って、カノンノの手に触れて、花を受け取った。
初めて受けた体温が、カノンノには新鮮だった。
新鮮で、とても温かかった。
『僕からは、これをあげるよ』
そう言って、エドガーは一枚の板を差し出した。
それを受け取ったカノンノは、それが何か分からなかった。
『ビスケットだよ』
ビスケット
その名前を聞いた時、カノンノは少しだけ”美味しそう”と思えた。
一度、口に運んでみると
超激な甘さと、気持ちの良い触感がカノンノを口から包み込んだ。
『……美味しい…』
『あ、初めて笑った』
初めて食べる美味しい食べ物に、カノンノは微笑んだ。
その微笑みを見て、エドガーは嬉しそうに笑った。
『君、とっても面白いね。』
『………?』
面白い
その言葉が、カノンノには分からなかった。
『ねぇ、また明日も会えるかな?』
エドガーがそう言うと、またカノンノの手を握った。
その温かい体温に、カノンノはまた微笑みを隠せなくなる。
『………会える?』
『会う?』
『…………うん。』
カノンノが頷くと、エドガーは無邪気に微笑んだ。
『じゃ、決まり!』
そう言って、エドガーはカノンノの手を引いて、池の周りを回るように走った。
『一緒に遊ぼう!!』
その唐突な走りに、カノンノは理解が出来なかった。
『僕たち、もう友達だからさ!!』
友達と言われ、カノンノはその言葉の意味が分からず混乱したけれど、
何故だか、嬉しいという感情が芽生えた。
それから毎日、カノンノとエドガーは出会いました。
一緒にご飯を食べたり、一緒に泳いだり
一緒に遊んだり、一緒に鳥を追っかけたり。
お花を摘んだり。
歌を歌ったり………。
『だからー♪僕たちは手をつないで歩こうよー♪』
そんな日を毎日送って、一ヶ月が経ちました。
『世界はぁー♪愛で溢れているのだからぁーさぁー♪』
いつも、同じ歌を歌って、
たまには歌詞無しのイントロだけを鼻歌で歌ったりしたけれど、
その歌が、カノンノは気になって仕方がありませんでした。
『…………ねぇ、エド…』
『ん?』
ある、歌詞の部分が、気になってしょうがなかった。
『”愛”って………何?』
『愛?』
エドガーは、そんな質問をされて、少しだけ困った顔をした。
『んー…愛は………。お父さんとお母さんから貰ったり、友達から貰ったり…。何と言うかー。』
『……私は、お父さんもお母さんも…居ない。』
『じゃぁ、僕が君に愛を送ってるんだよ。』
そう言われて、カノンノはエドガーの顔を見た。
そして、首を傾げた
『………愛?そんな物、見えない……』
『そりゃぁ見えないよ。愛に、実態は無いんだもん。』
カノンノは、首を更に傾げた。
『実態が…無い?』
『うん。でもね、それはどんな物よりも嬉しくて、誰もが欲しがる物なんだよ。』
『欲し……い…?』
エドガーは、カノンノの手を握った。
『ほら、こうして手を繋いでいる間も、愛は貰ってるんだよ。』
『…………?』
カノンノは、再び首を傾げた
『分からないかもしれないけれど、こうして流れる愛も、君にとってずっと大切な物に変わっているんだよ。』
エドガーは、満面の笑みをカノンノに見せた。
『そしてそれは、永遠にずっと、君の中に残る物なんだ』
永遠にずっと
『私の…中に………?』
『そう。ずっと、ず――っと』
そう言われても、カノンノは一体何の物なのか分からなかった。
ただ、少しだけむず痒い物なのだと感じた。
『だから、ずっと大事にしてね。僕も、君から貰った物をずっと大事にするから』
そう言って、エドガーはポケットから何かを取りだした。
それは、大きな花の髪飾りだ。
決して豪華とは言えないが、とても可愛らしいシンプルなデザインだった。
それを、エドガーはカノンノの髪に飾り、
微笑んだ。
『これが、ある例の実態のある愛かな。』
そう言って、エドガーは綺麗になったカノンノを見て少し照れくさそうな顔をした。
水に映る髪飾りをした自分を見て、カノンノは新しくなった自分を発見して
とても、とても嬉しくなった。
『……っ!?』
嬉しいを表現する為に、カノンノはエドガーに抱きついた。
抱きつかれたエドガーは、どうする事も出来ず、そのまま固まってしまった。
『………ありがとう。』
そう、カノンノは呟いて、感謝の言葉を述べた。
『………うん。』
エドガーはそう返事をして、カノンノを抱き返した。
毎日会い続けた。
ずっと、ずっとエドガーと会い続けるうちに、
カノンノは、エドガーが居なければ何も考えられない女の子になりました。
そして、そんな女の子になってから一年後
エドガーは死にました。
カノンノの目の前で
頭に、矢が貫いて
その場で、倒れていました。
カノンノは、何が起こったのか分からず、ただその場所で立ちつくしていました。
『こいつで最後か?』
弓を持った男の人は、そう質問しました。
『ああ。どの道、関係無くても殺すんだろ?』
『命令だからな』
『へいへい』
男たちは、何事も無い、何もしていないかのように澄ました顔で話し合いをしていました。
カノンノは涙を流していました
涙を流しながら、じっと動かないエドガーを見ていました。
鉄の音が聞こえ、こちらに視線が集まります。
だけど、カノンノはそれが分かりません。
今は、苦しくて、悲しくて、何も分からないからです。
乾いた音と共に、カノンノの頭は衝撃を食らいました。
小さい鉄の様な物が、頭に打ちつけられたのです。
瞬間、辺りが真っ赤になりました。
血が、そこらに飛び散って、肉も飛び散りました。
カノンノは
カノンノは
エドガーの手を握って
ただ、泣いて
エドガーを殺した奴らが
憎くてたまらなくて、
真っ赤になった視界の中で、エドガーを殺した者を探しました。
見つけた瞬間、もうその人たちは私に興味を失くしていました。
だけど、私は
こいつらを殺したい。
殺したい
殺したい
殺したい
殺したい
殺したい
殺したい
殺したい
殺したい
殺したい
『えっ』
瞬間、男の人の頭は弾け飛びました。
『えっ?えっ?』
もう一人の男の人は、混乱していました。
私は、足に力を込めて
歩き出しました。
『えっ?えっ?えっ?ええええええ?』
もう一人の男の人の首は、ベキベキに折れ曲がって、だんだんと下に向いて行きます。
ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる回って、
最後には千切れて、地に落ちました。
カノンノは怨みました。
私を、迫害してきた人間たちを
エドガーを殺した、人間たちを
そんなに、私の事が憎いのなら
私も、貴方達の事を憎もう。
そして殺そう。
憎いの向こう側は、殺意
殺意のままに、私は動き回ろう。
私は
足を動かし
人間を、探した
そして
見つけた
だから
殺した。
見つけた
だから
殺した
見つけた
だから
殺した。
見つけた
だから
殺した
殺した
殺した
殺した
殺した
殺した
殺した
殺した
殺した
殺して、何日か経った。
目の前に、一人の少女が震えている
見た目は、私よりも年下だ。
少女が、母を背中に隠して怯えながら守ろうとしている
死んだ母を、守ろうとしている。
私は、そんな女の子を
殺した
だから、どうという事でも無い。
死ね
人間は死ね
そんな憎悪が、私の中に流れてきた。
女の子の頭がはじけ飛んだ。
頭の中の中身が、そこらじゅうに散らばっている。
その瞬間
完全に人間の気配が消えた事を実感した。
全てを殺した後、私の中は
空しい
いや
まだ、憎しみが残っていた。
まだ、殺したい
人間は
人間は
全て、多くの人間を、殺した。
私は、殺した。
人間の中身が、嫌と言うほど分かった。
中に、何が入っているのか、何が詰まっているのか分かった。
私は
目の前の少女の死体に触れた。
そして
情報を
人間の情報を
具現化して、その場で作り出した。
そこに、何も知らない生命が出来上がった。
この子の名前は何にしよう。
そうだ。
ドクメント…って、名前にしよう。
私は、私のドクメントを自分の血から作り出し、
地面に埋めた。
沢山、沢山埋めた。
そこに、何か綺麗な物が生えてくるように。
すると
そこには大きな樹が生えてきた。
私の近くには、
ドクメントが、新しく形を作っている。
細胞分裂
それらを繰り返して、数を増やそうとしている。
奴らは
また、人間になるのだろうか。
ああ。
そうだ。
だから、私はこの生き物に私のドクメントを飲ませた。
正しくは、私のドクメントから生まれた樹の汁を飲ませたのだ。
だから、こいつを私は繋がっている。
こいつが死んだら、私はこいつの分まで生きながらえる。
こいつの魂が、こちらに来る。
この樹に集まり、私の栄養分となる。
この樹の、栄養分にもなるのだ。
そうだ。
人間を苦しめるには
これが、一番良いだろう。
私は、これでとても長く生きながらえる事が
永遠に生きる事が、出来る。
『愛ってね、永遠にずっと君に残る物なんだ』
彼は、そう言った。
エドガーは、そう言った。
だけど
何が永遠に残るのか、私には分からなかった。
彼の言った意味が、もう私には分からなくなっていた。
だから、
私が、永遠に生きる
永遠に生きて、私が彼の言ってた”愛”になる。
私が、”愛”になってやる
永遠に私が
私だけが生き残る
そうすればきっと、彼の言った『愛』の意味が分かると思うから。
永遠に残るなら、きっと私の中にも永遠に残るから。
絶対に消えさせてはいけない。
例え、私がどんな者になろうとも、生きなければならない。
『愛』を、ずっと残しておく為にも。
永遠に
長い月日が流れ、カノンノはもうエドガーの笑顔も分からなくなりました。
顔も、名前も、忘れてしまいました。
世界樹と繋がっている人間
死ねば栄養分となる人間
それも、もう何度も数が増え、そして消えていき
そして最後には、全部殺していく
それを、何回繰り返したでしょうか。
繰り返したでしょうか。
エドガーの顔も、名前も忘れて
『……………』
≪××ってね、永遠にずっと君に残る物なんだ≫
自分の目的も、何なのか分からなくなりました。
だけれども、カノンノは生き延びます。
永遠に、生きようと願います。
目的は、もう頭の中に残っていないのに
『永遠に…永遠に………』
ただ、そう呟いて
世界樹の中で
ずっと
〜バンエルティア号〜
『…………』
アンジュは、すずから渡された手紙を読んでいました。
『…………』
その手紙を、バンエルティア号の船員全てに響き渡るようにはっきりと声を出して答えました。
ほとんどの者が、信じられない様な顔をしています。
それも無理はありません。なぜなら
『エドからの手紙……』
『………出てってすぐさま手紙よこしたと思ったら、何なのよこれ』
エドから送られた手紙
その内容は、信じようにも信じたくの無い内容だった。
『後二日……二日だと!?』
『人類の滅亡まで……もう48時間も無いってのかい』
『いえ、すずがこの手紙を貰ったのは機能だから、後24時間も無いね』
『しかも……』
ほとんどの者が、不機嫌そうに愚痴を言っていた。
それらは全て、最後の文に書かれた文字に対してだ。
『”やばいと思った奴は逃げろ、できるだけ遠く”……って、何だこれ?』
『どの道、世界樹は人類を皆殺しにしようと考えてるんでしょ。じゃぁ何の意味も無いじゃない』
『……それより、新しい生活の事は、書かれてないのか?』
全員の意見は、同じだ。
誰も、逃げようとは思っていない。
『……そうね。ライマの騎士団になったからには、どんな生活送っているかとか興味あるのだから、ちょっとくらい書かれていても良いのにね。』
『………そんな事言っている場合ですか』
ここ最近、カノンノは暗い子となってしまった。
イアハートは、有る程度明るくなろうと努力をし
パスカも、世界と戦う為に特訓をしているのに
カノンノだけが、部屋に引きこもってただ絵を描いているだけの生活を送っている
『大丈夫だろうか』と心配そうにクラトスはアンジュに行ったが、
『貴方こそ、義手はなれたのかしら?』とアンジュは逆にクラトスを心配した。
『とにかく明日、その時はその時よ』
アンジュは、そう笑顔で皆に顔を向けた。
震える手で、手紙を持ちながら
その震える手を見て、誰も何も言えなくなっていた。
当然だ。この中の誰かが、死んでしまうかもしれないのだ。
一番、心苦しいのはアンジュなのだと誰もが分かっている。
だから、誰も口出しはせずに
『………』
ただ、無言で俯いた後
掛け声を上げて、気合いを入れる仕草をした。
『…………』
その中で、その気合いを無視をして窓の外を眺めている者が居る。
マスタング大佐だ。
彼は、窓の外の向こうに居るエルリック兄弟を想像しながら、今までの思い出に浸っていた。
『…………ふっ。』
その後、あまりロクな思い出が無いなと心の中で皮肉りながら笑った。
〜???〜
日が昇った。
長いと思われていた日が昇って行った。
怪しく、そして美しい陽だまりが世界樹を包み込んで
陽の陰と鳴る陰が、大きく国を包んだ。
『んあ?ああ……朝か……』
男はそう言って、背伸びをすると、街の外に出た。
井戸の水を組み上げ、歯を磨く準備をしているのだ。
歯を磨き、水を含み、水を捨てる。
歯磨きを終えると、次に家に戻り、薪を割った。
薪を割ろうと、斧を手に持つ。
すると、後ろから人影があった。
『お?』
振り向くと、隣の家の友人だった。
『おおマーク。お前も今、眼が覚めたのか。』
『ああ。今日は特に忙しい日となりそうだからな。世界樹がこう、陽を美しくさせちゃあな。』
そう言って、二人の男は笑いあっていた。
瞬間、
『キャッ!』
女の小さな悲鳴が、男の目の前で鳴った。
『ん?何だ?』
良く見ると、小さな女の子が男を見て怖がっている。
自分の姿を良く見ると、まだ斧を持っていたのだ。
『ん?ああ。そうかそうかこれ持ってちゃぁな。』
そう言って、男は斧を地面に置いた。
『大丈夫だよ穣ちゃん。別に取って食おうって事はしねぇ。』
そう言うと、小さな女の子は、じっと男を見つめて答えた。
『………そぉ?』
『そぉさ。別に俺は悪い人間じゃないからな。』
そう言って、友人二人と笑った。
すると、気が緩んだのか、小さな少女は笑顔になった。
『本当?』
瞬間、少女は物凄い早さで斧まで走り、そして広い、
男の首と友人の首を狩った
『良かったぁ。』
身体じゅう血まみれにさせながら、斧を持って少女はにこやかに微笑んだ。
男と友人は、目の前の状況で何が起こったのか理解せずに死んだ為、まだ笑顔のままだった。
首だけが。
身体は、重力に従うように地へと這いつくばるように倒れた。
瞬間、また女性の叫び声が聞こえた。
今度は絶叫だ
『うるさい』
少女はそう呟くと、また物凄い早さで駆け寄り、叫んでいた女性の首を狩った。
『お―――い!行っくよ―――!!』
少女が叫んだ。
瞬間、所々から男性と子供と女性の絶叫が聞こえる。
街の中に
国の中に
奴らが入ってきたからだ。
そう、奴らが
人間を殺す為に世界樹から生まれた、”ディセンダー”という奴が
世界樹から、何人も何十人も何百人も何千人も
ぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろと
『さて、仕事しようぜ』
そして、全員が人間を殺そうと、武器を手に取った。
〜ライマ国騎士団城 国境〜
城で囲まれた国
昨日までは、こんな城は存在しなかった。
だが
それは、今気にする所じゃない。
『ええと……、ここから先がライマ国か?』
大きな剣を持った勇士が、ライマ国の城の前でそう呟いた。
『そうなのら!ここがライマ国の国なのら!』
『……言ってる意味が分かんねぇが……』
勇士は、背中に担いでいる剣を鞘から引き抜き、城の前で構えた。
『ここがライマ国ってんなら、俺らの配属場所だ』
そう言って、次に後ろ振り向いた。
『よしっ!お前ら準備は良いか!?』
『まかしっときんさい!』
『うらら!』
『やってやるぜ!!』
勇士の後ろの者は、やる気満々の声で声を上げた。
『よし!じゃぁ今日から仕事開始だ!!』
そう言って、勇士は再び前を向いて城の方を見つめた。
『行くぜぇ!!』
瞬間、
大きな爆発音と共に
勇士は吹き飛んだ。
『………え?』
爆発と共に出来た爆風と砂煙が薄れていくと
勇士は、巨大な砲丸に潰されていた。
辺りに、内臓や骨などが散らばっている。
『えええ〜〜!?』
『勇士様ぁぁあああ!!』
『………来たぜ。ディセンダ―だ』
ゲーデはそう、横に居るラザリスに向けて言葉を放った。
『……なんとも、人間よりも……その』
ラザリスは、目の前で剣を振り回し、杖を持ち術を唱える姿を見て、
嫌悪感溢れる顔で、呟いた
『……醜い存在だな』
『ごもっともだ』
そう言って、ゲーデは錬金術を発動し、完全にその者達を殺しに掛った。
『うぉお!!』
この攻撃で、多くのディセンダ―が死に、多くのディセンダーの手や足が千切れた。
『あああああああああ!!ああああああああああああああああああ!!』
『醜い悲鳴だな』
そう言って、ラザリスも攻撃に移る
『ぐぅ……何故だ!何故こいつらはこんなにも計算外な攻撃をする!!』
『愚かが』
ゲーデは、大きな声で疑問の声を出した奴を殺した
錬金術で
『貴様らも人間を恨んでいるのだろう?!眼で分かるよ!!どうして人間達の側に付こうとするの!?』
一人の女魔法使いがそう言った。
『ああ?』
その愚問に、ゲーデは舌打ちをしながら答える
『それ以前に、お前らが邪魔だからだよ』
そう言って、ゲーデは女魔法使いの首を魔術で引き千切った。
『砲弾の音だ』
エドはそう言って、屋上の外から国の向こう側を見た。
そこには、ほとんどが同じ服を着ている
人間と限りなく似ている奴らが、そこに居た
殺しに来た
人間を、とうとう殺しに来たのだ。
『………来やがったか……』
その光景を見て、エドは
拳がガタガタと震えていた。
『……兄さん?』
『何だエド、怖いのか』
スタンが、腕を組みながらエドを睨みつけた。
『うっ…うるせーな…。武者ぶるいだよ』
『おいおいおい。強がんなよエド』
『うるせぇな!!気持ちを整理してんだから!大人しく……』
エドがそう言ってルークを見ると
スタンも、腕を震わしていた。
『……いっとくが、俺のこの震えは、武者震いじゃ無えぞ……』
そう言って、腕を組むのを止めず、ただ震えていた
『何回も人間が滅亡されて、滅亡できる奴らの前に俺達は居るんだ。これで怖くない奴が居るわけ無えだろ……』
『…………』
その言葉に、エドは何も言い返せずに居た。
『だけど、俺達は戦わなくちゃいけないんだろ?そうだろ?』
『………じゃねぇと、誰が戦うんだ……』
エドがそう答えると、スタンは笑顔になった。
『そうだ。その返事が聞きたかった。』
そう言って、スタンは剣を抜いた
そして、屋上の外へと飛び降りた。
『おっおい!!』
『ありがとよ!!』
そう言って、スタンは地へと降りた。
そして、着地し
ディセンダーの前に立った
『お前らの為に……俺達人間を一人も殺させやしない!!』
スタンがそう言うと、ディセンダー達は砲丸の周りに集まり、そしてスタンの方を見た。
『……アンタ達が、勇士を殺したんだな……』
『………そんな奴が、私達の目的を阻む理由など無いのら!!』
そう言って、そこに居るディセンダー全員が武器を取り出し
スタン一人に対し、攻撃態勢に入った。
『うおおおおおおおおおおおおおお!!!』
スタンは、意気込みをし、
彼も戦闘態勢に入った。
『スタン!!』
更に上から、一人の少年が降りる
『ルーク!』
『様を付けろ!!』
そう言って、剣を引き抜き、ディセンダーに対して戦闘態勢に入る
『俺も、助太刀してやるよぉ!!』
そう言って、スタンとルーク
更には、その場の近くに居た騎士団も集まった。
『貴様ら誰ひとり、この国に入れさせやしない!!』
スタンは、ディセンダーに対して叫び
『ここは……俺達の国だ!!』
ルークは、大声で主張した
『そんな言葉、ここで私達が打ち勝ってみせる!!』
ディセンダー達も、剣を構えて唱えた。
『ルーク……スタン…』
エドは、地に降りて行った彼らを見て、
自分は今、何をしているのか考えた
『…………』
いざという時、ただ震えている
震えるな
震えるんじゃない
『………アル』
こう言う時こそ
『……うん…』
こんな、追い詰められている時こそ
『俺達も行くぞ!!』
笑え
そして戦え
その、目の前にある壁に
『最終戦争だ!!!』
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