おいでませ! 木之子大学・部室棟へ♪ 第4話 赤い人の部活と青い人の魂の叫び
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 升太のパーティ(?)全員は、中央の1F防火扉を超え、階段を上がって2Fへたどり着いた。1Fの時にあった各部室の紹介プレートは一行が使ったのが“中央階段”だったため、置かれていなかった。

 

 パーティは升太とテトを先頭に、“咲音メイコの部室”の部室看板を探していた。

 

升太:え〜っと、あれ? そういう名前の看板、ないですね

リン:私も鍵だけ渡されただけで、実際の部屋には行ったことがないからなぁ・・・

テト:自力で見つけてよね

ミク:・・・もしかして、これミクか?

升太:え?

 

 “201号部屋 M・E・I・K・O・おねーさまのお・へ・や♪”

 

升太:MEIKO・・メイコさんって事なのか?

レン:な、なんていうネーミング。部活名すら書いてない・・・・

ミク:アバンギャルドな部活ミクね

テト:見つけたみたいね。じゃあ、とりあえず入ったら?

升太:すごーーーーーーっく、やな予感しかしないんだけど、とりあえず入らないと先に進めないからな。入るか

 

 カチャ

 

 升太はリンから貰った鍵でドアを開けて、とりあえず升太だけ入り口から一歩中に入った。

 

 カポーーーーーーーーーーン

 

 モアモアモアモア・・・

 

 ザザーーーーー

 

升太:な・・・・・

 

 そこは湯気が一面に上がっている露天風呂だった。

 

 そして一人、湯船に浸かっていた女性が振り返って、升太の方に目線を移した。

 

女性:あら? お客さん?

升太:す・・・すんませんでした!!!!!

 

 バタン!!!

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 升太は真っ赤になりながらドアを閉めて、廊下で頭を抱えて座り込んでしまった。

 

ミク:・・・・女風呂だったミクね

レン:しかも何故か露天風呂・・・・

リン:板間はあったけど、脱衣所は経由しなかったね・・・

 

升太:テ・・・・・テト・・・・・し、知っていたのか? これ?

テト:当然よ。1Fの仕返しに黙っていたの。絶対驚くだろうから

升太:こ、ここは何の部活なんだ? 少なくても思いつく物がないんだが・・・

テト:咲音メイコさんが部長の、“温泉&お酒研究部”よ。活動自体は結構普通で、温泉を巡って、温泉自体、お酒、郷土料理を研究したりしているんだけど、温泉好きが高じて、部室を露天風呂にしちゃったんだよね

 

レン:な・・・なんというか・・・・

ミク:ほんとに温泉が好きミクなのね

リン:というかここの温泉水とボイラー、どこから引っ張っているのかしら?

 

升太:お、俺には理解できん・・・

 

テト:理解出来なくても出来ても、ここでメイコさんと対決しないとだめなのは変わらないよ。さぁ、入った入った

升太:女性風呂に名目付きで入れるのを、素直に喜んでいいのか??

テト:ここの対決はそういう物なの。さぁ、こういうことはそうそう出来ないと思うよ?

升太:そりゃそうだが・・・・

 

インターホン:お客さんごめんね〜、今、脱衣所で着替えたから、隣の“脱衣所方面ドア”から入って来てよ

 

 二人が会話していると、ドアの隣にあった、黒い“インターホン”からさっきの女性の声が聞こえてきた。

 

升太:はい、すぐそちらに行きます

ミク:まぁ、ドアからすぐに湯船じゃ、こうしないとダメミクね

テト:(あれ? いつもは脱衣所に行かせて、強引にお風呂&お酒勝負になるのに・・・・・)

 

 升太達は隣にあった、のれんが掛けてある“脱衣場方面ドア”から、中に入った。

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(201号部屋・脱衣所&休憩所)

 

 ブーン

 

 升太達は全員靴を脱いで脱衣所&休憩所になっている部屋に移動した。そこには赤い服に着替えたさっきの女性が籐の椅子に座っていて、女性の番頭さんが立っており、部屋には扇風機が回っていた。

 

メイコ:あー、お客さん、さっきはごめんね。やっぱりドアからほとんど直結で湯船はまずかったね。今度改装工事するわ

升太:・・・というか、湯船そのものも取り払った方がいいと思いますが・・・・

メイコ:まぁ、細かいことは気にしない気にしない!

ミク:(細かいことミクか?)

 

メイコ:私は“温泉&お酒研究部“の部長の”咲音メイコ“よ。でもって、隣の番頭さんが、部員の”弱音ハク“さん

 

 隣で立っていた銀髪の女性番頭さんが軽く会釈をした。

 

ハク:皆さんこんにちは。部員の弱音ハクです。部活とここのメンテナンスもやってます

升太:ハクさん、大変ですね。ここって言ってみれば“温泉”そのものなわけだから

ハク:いえいえ、結構楽しいですよ。活動時間外は、お酒も飲めますし

レン:まぁ活動がそうだから、飲まないとだめですよね

メイコ:そういうわけだから、この休憩所とか、一緒に湯船に浸かって一杯とか、そんな事やっているわ

ハク:ここの湯船は気持ちいいですよ。お酒も美味しいのを仕入れておりますし

メイコ:でもって、ハクちゃんの“でっかいなんたら“を見ながら飲む一杯は格別なんだわ、これが

 

 ハクは真っ赤になったが、一応お約束の言葉は出た。

 

ハク:あの・・メイコさんのは私より・・その・・・・お酒がもっと美味しくなります・・・・

 

 怪しい雰囲気になりそうだったので、テトが話を切った。

 

テト:えー、アブナイ雰囲気申し訳ないけど、勝負の話にそろそろ移っていただけませんか? いつもは湯船モードからすぐ酒飲み勝負だったのに、何でまた今回は、着替える手間を入れたんですか?

 

メイコ:あーーーー、ごめん、テトちゃん。今回は勝負なしだわ。その挑戦者君の勝ちでいいよ

 

テト:・・・・え?

 

メイコ:いや、今日はまた温泉がいい感じだったのよ。だから、隣の海斗じゃないけど、“アイス”、食べたくなっちゃったのよね。風呂上がりのアイス

ハク:なので、今回は勝負無しで、戦利品の“海斗の鍵”は私たちが自ら使います。でもって、隣の海斗さんの部活である“アイス品評研究部”にある、美味しいアイスを食べに行くことにしました。皆さんもどうですか?

 

リン:リンは猛烈に食べたいです!

レン:あ、僕も食べたいな。甘党だし

ミク:ネギアイスあるミクかな?

升太:あ、俺も食べたいなぁ・・・・・って、そこの頭を抱えている女子、大丈夫か?

 

 升太の隣で座って頭を抱えてうなっているのは、テトだった。

 

テト:酒で酔い潰され、湯当たりして苦しめるはずだったのに・・・・。わ・・・・私のアイデンティティが・・・・。私の役割がどんどん無くなっていく・・・・。お父様になんて言えばいいの・・・

 

升太:・・・・グアバアイス、あるかもよ?

テト:私も行かせていただきます!

 

 ハクは201号部屋を自動管理モードにし、ドアを全て閉めて、全員で202号部屋の“アイス品評研究部”へと移動したのだった。

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(202号部屋 アイス品評研究部前)

 

 部屋の中から、なにやら叫び声が聞こえてきた。

 

声:ああ!!! なんて麗しく甘美で上品な甘さ! その白くなめらかな舌触り! ああ、これ以上の表す言葉が、私には見つからない!!!!!

声:・・・・・・・・・・んー、だめだ! これではアイスに失礼だ! もっと、こう、アイスの内面を鋭く突くような表現はないのか!

 

升太:あ、あのー、この声、なんですか?

メイコ:あー、気にしないで。これ海斗の部活動だから

升太:は?

ハク:ここの部長さんの声です。ここ“アイス品評研究部”では、量を食べるわけでも紹介するわけでもないんです。“アイスのおいしさを、どれだけボキャブラリー豊富に素敵に表現できるか”を研究している部活なんです

レン:なんですか、それ

ミク:まぁ、あの海斗さんミクからね・・・・

升太:“あの”なんですか?

リン:この部室棟でも、かなり“重度の変人”な部類に入る部長さんなんです。名物とも言いますが・・・

 

テト:良かった。海斗さん、ちゃんと活動してるわ。これならアイス食べても、勝負はしてくれそうだわ・・・・

升太:な・・・なんか・・・もの凄く“寒気”がするんですが・・・・

メイコ:まぁ、海斗のアホ活動はほっといて、アイス食べに行きましょう!

 

 メイコは“海斗の鍵“を使って、202号部屋のドアを開けた。

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(202号部屋 アイス品評研究部・活動部屋)

 

 そこは空調で少し涼しく設定されていた。そして、部屋のほとんどを占めていたのが“でっかい冷凍庫”だった。

 

升太:お、おじゃまします・・・

ハク:海斗さん、活動中、失礼します。隣の“温泉&お酒研究部“と挑戦者一行です

メイコ:おーい、海斗ぉ〜! アイス食べに来たぞー!

 

 部屋の中央には、カップアイスとスプーンを持ち、青いマフラーをなびかせながら、スタンドマイクの前でブツブツうなっている白いコートのお兄さんがいた。

 

 そしてアイスとスプーンをテーブルの上において、升太達の方へ颯爽と振り返った。

 

海斗:おお!? 客人!! 君たちはアイスは好きか!?

 

升太:え?、え、ええ。好きです

リン:大好きよ! それより早く食べさせろー!

レン:僕も好きです。しかし、でっかい冷凍庫だな・・・

ミク:好きミクよ。ところで“ネギアイス”あるミクか?

メイコ:はい、好きですよ。しかも今風呂上がりで、ムショーに早く食べたいんだけど!

ハク:好きです。アイスにブランデーかけて火を付けた大人なアイスが好みです

 

テト:私も好きです。それより、勝負しようよ・・・・

 

海斗:ぅ゛ぬ゛ぉ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!゛!゛!゛!゛!゛!゛ 表現が乏しい! “アイスが好き”という情熱が伝わってこない! 挑戦者も含めて、アイス食べたいヤツ全員と、勝負だぁぁぁぁぁ!

 

テト:! やった! ようやっとまともな勝負になってくれた! ここの地獄は“お腹壊す”事。カチンコチンになるまでアイスを食べさせられる事・・・・・・・・・ん? 勝負は“品評”で・・・・しかも“全員”?

海斗:そうだぁ! そこの客人全員と、“アイス品評対決”だ! 私を感動させる品評が出来たら合格でアイスをいくらでも食べさせてやろう。さぁさ、最初は誰が来るのだ!!!!!

テト:(勝負方法が違う・・・・・・しかもなんで私まで・・・・・)

メイコ:あ・た・し・ね、お風呂上がりで、思いっきり“アイスが食べたい”のよ。最初は私がやるわ

海斗:おお! メイコからか! いいだろう! 来るがいい!!

 

 メイコはサクサクとスタンドマイクの前に移動し、マイクを外して右手に持ち、少しかがみ気味になったと思ったら、思いっきり後ろに反り返り、シャウトするように、アイスを愛でるセリフを発した!

 

メイコ:おお! その宝石の一口! 我が魂にこだまする、極上の甘さ! そして冷たさ! 風呂上がりで火照った私の体に突き抜けるその一陣のアイス魂!! もう、どうにでもして!!!!!!!! ハゥ!

 

ミク:うっわー! メイコさん凄い表現ミク!

レン:よっぽど食べたかったんだね、あれ

リン:うう、レベル高い・・・。私たち、相当のを要求されるね

ハク:さすがメイコさん、素敵です!

 

升太:メイコさん・・・・あなたも相当の変人だと思うよ・・・・・

 

 海斗は椅子に座って、目を閉じて黙って聞いていた。そして・・・・

 

海斗:うむ、合格だ! 私のアルマに共鳴した! その食べたい魂の言葉、アイスを賞賛するその表現! 素晴らしい! その冷凍庫から好きなだけ出して食べてくれ!

 

メイコ:やったあ!! んじゃ、ダッ○にリキュールかけて頂かせて貰うわ

海斗:なんでもいいぞ。では、次!!

 

ハク:メイコさんが合格なら次は私が行かせていただきます!

海斗:おお! 番頭さん・・・・じゃなかった、ハクさんか! では行ってみよー!

 

 トテトテトテ・・

 

 ハクもスタンドマイクの前に立ち、両手を祈るように組んで、(恥ずかしいから)目を閉じて、思いっきり叫んだ!

 

ハク:メイコさんがアイスを愛するのなら! 私もアイスを愛しましょうぞ! その甘美なる舌触りと甘さ、私の舌で味わわせて下さい! お願いします!!

 

リン:なーんか、ハクさんの言葉、聞きようによっては凄く・・・・なんなのよね・・・・・

ミク:? なんでミクか?

レン:ミクさんは知らなくていいよ

升太:俺はわかるぞ!

テト:あんたはいいの

 

 海斗はまたも目を閉じて聞いていたのだが、今度は反応がちょっと違っていた。

 

海斗:・・・ぷっ・・・くふふふ・・・“アイスを愛する“・・・”あいすをあいする“・・・くつくっくっ・・・・あーーーはっはっはっ!!! 合格! ギャグを入れたパターンは初めてだ! さぁ、いくらでも愛でるアイスを食べてくれ!

 

ハク:は? ギャグ? ま、まぁ合格ならいいや。持ってきたウイスキーかけて頂きます!

メイコ:あ! 私にも頂戴! ま、この長椅子の隣に来て、一緒に食べましょう!

ハク:有り難うございます

 

升太:うーむ、あの海斗って人が“屈指の変人”と言われているわけが、よくわかったよ

リン:“アイスを愛する“で、“あいすをあいす”る、ねぇ・・・・ハクさん、そういう意図で使わなかったと思うよ

レン:同感。しかし、シャウトにギャグまで使われちゃったな・・・。ネタが狭くなってきたね

テト:とりあえずなんか言わないと先に進めないわね

 

海斗:くふふふ・・・つ、次は誰だ!?

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リン:リンが行きます!

海斗:お! 今度はリボンちゃんか! 頑張ってくれよ!

升太:(リボンちゃん・・・・・・)

 

 トコトコトコ・・

 

 リンはおもむろにスタンドマイクの所にやってきて、目を閉じて深呼吸をした。そしていざ喋る時、顔つきと目元が変わった。なんというか、“劇画調”というか・・・・・

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・

 

リン:WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYN!!!!! いいだろうぅぅぅぅ! アイスゥゥゥゥゥ! お前の甘さぁぁぁぁぁぁ、全てぇぇぇぇ、吸い尽くしてやるぅぅぅぅぅぅぅ、馴染む!!! 馴染むぞぉぉぉぉ!!!! その甘さ!! 俺の舌に馴染むぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!! WRYYYYYYYYYYN!!!!!!

 

 海斗は黙って聞いていたが、さすがに挑戦者チームは全員“引いてしまった”。弟のレンですら、どうやらこのモードは初見だったらしく、冷や汗を垂らしていた。

 

レン:あ・・・・・姉貴・・・・・今後は絶対喧嘩売らないようにしよう、そうだ、絶対だめだ・・・・

ミク:レ、レンさん、アレ、初見だったミク?

レン:はい・・・・。姉さん、これまでは本気じゃなかったようですね・・・・・

升太:俺も今後は言葉に気を付けよう・・・・

テト:お、“お父様の本気“といい勝負だわ・・・

 

 マイクの前に今いるのは、普通モードに戻ったいつものリンだった。

 

リン:海斗さん、どうですか?

 

海斗:・・・・うむ、合格だ! デスメタル調というのは新しい! 表現的にアイスの甘さが飛んでしまうかと思ったが、アイスへの愛情がこもった、愛ある叫びだった! いいだろう、好きなだけアイスを食べるがいい!

 

リン:やったぁ! じゃあ、私はミカンシャーベットから、もーらおっと!

メイコ:いらっしゃーい!

ハク:一緒に食べましょう

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海斗:うむ、残りは4人か。で、次は誰だ?

レン:僕が行きます!

海斗:いいだろう、来なさい!

 

 ポテポテポテ・・

 

 レンはリンの握力で装甲がひしゃげたスタンドマイクの前に立ち、目を閉じて精神統一し、そして目を開けた! すると、目がきゅんきゅんな状態になった、まるで“少年”のような雰囲気で、マイクに“語りかけた”

 

レン:ぼ・・・ぼく・・・君が食べたいんだ・・・。君の優しい甘さ・・・・でも冷たい感じ、ぼく・・・・君が好きなんだ! だから、一口でいいから、食べさせてよぉ♪。ぼく、ぼく、君がいないとだめなんだ! 君が欲しいんだぁぁぁ!

 

***

 

(102号部屋 技術研究部)

 

 ゾクッ!!!

 

ネル:・・・・・なんか、今、どこかで、凄く、私の好物が生まれた感触がしたんだけど・・・・。気のせいね。片づけ続けよ

 

***

 

(202号部屋)

 

 レンはスタンドマイクの前で真っ赤になっていた。本人的にもどうやら“作った性格”だったらしく、かなり恥ずかしかったようだ。

 

メイコ:よ! いいぞ! このショタっ子!

ハク:年齢、15歳は下がったわね

リン:くっくっくっ・・・動画は取らせて貰ったぞ・・・。これで半年は果物食べ放題ね

 

 カチャ

 

 レンも携帯電話を取り出した。

 

リン:な、なに?

レン:さっきの“壊れ姉貴”の動画、記録してあるんだよね。これでイーブンだね

リン:くっ、さすが抜け目無い・・・・

 

 海斗はまたもや考え込んでいた。が、起きあがり、レンに人差し指を向けた!

 

海斗:うむ、合格だ! ちと低年齢向けだと思ったのだが、これ系はむしろ対象年齢が高いようだ。新しい方向性だし、いいだろう。アイスを食べていってくれ!

レン:やったぁ! じゃあ、バナナアイス食べよぉ!

リン:レーン、さっきのショタ、入っているよ〜

レン:あ・・・・う、うむ、バナナアイスを食べることにするか

 

海斗:これで残りは3人か。で、どうする?

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ミク:次はミクが行くミク! これでも料理に携わっているミクからね

海斗:うむ、来るがいい!

 

 ミクミクミクミク・・・

 

 ミクは変な擬音を立てて、なかば“ひん曲がった”状態の壊れかけのスタンドマイクの前に行き、目を閉じて瞑想し、“アイスが大好きな少女”、のキャラに入った。そして、

 

 “歌い出した”

 

ミク:♪ あなたはー わたしのー 素敵な恋人なのー ♪

ミク:♪ ネギ色のそのお肌ー 甘くて酸味たっぷりのー ネギ味アイスー ♪

ミク:♪ 毎日 見つめていたいの あなたのアイスカップー ♪

ミク:♪ 冷たくてー 甘くてー ネギネギのー その夢一杯のー あなたー ♪

ミク:♪ だ・か・ら・ 今日もこんにちはするのー 冷凍庫でー ♪

 

 ペコッ。

 

 ミクは目を開けて一礼した。

 

メイコ:ヒューヒュー! いいぞ! このネギ娘!

ハク:素敵です!

リン:うーん、これは売れるな・・・・えっと、レコーディングスタジオはどこでやろうかしら・・・

レン:姉貴、黒いよ・・・・

 

ミク:あ、あの、どうですか・・・・あれ?

 

 海斗は涙を流して感動していた。

 

海斗:お、おれは、猛烈に感動しているぞーーーーー!!!!!! まさか“品評で歌を歌う”なんて、思わなかったぁぁぁ!!! 勿論、満点合格だ! さぁ、君の恋人の“ネギアイス”、冷凍庫から好きなだけ持っていってくれ!

 

ミク:やったぁ! ネギアイス〜♪ ネギアイス〜♪

リン:い、一緒に食べましょう。でもって、さっきの歌だけど、いつならレコーディング出来る? CDで出す? まずはネット配信から行く?

ミク:はぁ?

レン:姉貴〜、だから黒いって・・・・・

 

海斗:うむ。素敵な歌だった! で、残りはお二人さんか。どっちから行く?

 

 二人はもめ合いをやっていた。

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テト:私が先よ!

升太:俺が先立って! ドベはやだぞ!

テト:私だってやだよ! えいっ!!

 

 パコン!

 

 テトはあのプラカードを取り出して、思いっきり升太の頭にヒットさせた!

 

升太:きゅぅーーーーーーーーーばたん

 

 升太はその場で伸びてしまった。

 

テト:はいはーーーい! 次は私!

 

海斗:うむ、多少強引だが、いいだろう。来なさい!

テト:おう! いくぞ!

 

 テトテトテトテト・・・・

 

 テトもまたもや変な擬音を立てて、ミクの歌で綺麗になったスタンドマイクの前に立った。が、後ろを向いてしまった。

 

海斗:?

 

テト:なに、あんた、そんな甘ったるくて冷たくて・・・。ばっかじゃないの〜? あんたなんか好きなわけないじゃない!・・・・

 

メイコ:あの子何言っているのよ・・・・

レン:・・・・・いや、まさかアレやるんじゃ・・・・

 

テト:・・・・そ、その保冷機は・・・その・・・好きだから入れて上げたんじゃないんだから! 勘違いしないでよね!

 

レン:(や・・・やっぱり・・・・)

 

テト:で、でも、あなたが・・・その・・・食べて欲しいって言うんだったら・・・食べてあげてもいいんだよ?

 

 テトは両手を前でねじる感じで組み合わせて真っ赤になった。凄い演技力である。

 

テト:そ、その・・・・私・・・・ほんとは・・・・貴方のこと・・・・・す・・好きだよ・・・・・

 

レン:ツ・・・・・ツンデレ・・・・・・

 

海斗:う゛ぉ゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛、リアル、ツンデレーーーーー!!!!! 最高だ! 満点だ!! さぁ好きなだけ持ってけぇ!!!!!

 

テト:ふん! ざっとこんなもんよ! 私を誰だと思っているの? ここの案内役で小悪魔死神よ!? 軽い軽い! じゃあ、グアバアイス、頂こうっと♪

 

レン:最後までツンデレを演じきったよ、この人・・・・・

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 升太はゾンビのように起きあがった。

 

升太:ぬぉぉぉぉ・・・・テ、テトめ・・・・・やりやがったな・・・・・

テト:ほっほっほっ、アイスが美味しいわ〜♪ 勝負事と仕事と愛情は別物なのよ〜、カ・レ・シ♪

升太:さ、さすが小悪魔死神・・・・・。ぬぉぉ・・・・・結局、最後か、俺

 

海斗:まぁ、そういうわけだ。とりあえず、ここまででネタは出尽くした感はあるな。君がどういうネタで来るか、楽しみだ

 

メイコ:パクッ。頑張ってネー!

ハク:頑張って下さい!

リン:期待してるよ〜♪

レン:気合い入れてやっちゃってください!

ミク:最後の大トリミク! ヅガンと行くミクよ!

テト:頑張ってね〜♪

 

升太:ぬぉぉ・・・今回は洒落にならない位、ネタがない・・・。助け船もないし、マネしたらボツだろうし・・っていうかマネ出来ないし・・・。ええい! “当たってくじけろ”・・・・・・じゃなかった、“当たって砕けろ”だ!

 

 スタスタスタ・・・

 

 最後の升太がスタンドマイクの前に移動し、語りだした。

 

升太:ぬ・・・ぬおおおお!!! このアイス最高だ! 俺が食べた中でも極上の品だ! き、君は素敵だぁぁあぁ!

 

メイコ:・・・

ハク:・・・

リン:・・・

レン:・・・

ミク:・・・

テト:・・・最低

 

海斗:・・・・・・ボツ。升太君だっけ? それはないよ、やっぱり・・・。もう1回!

 

升太:ぅぅぅ・・・

 

***

 

(1時間経過)

 

メイコ:うぃ〜ひっく・・・升太君、頑張るねぇ〜

ハク:ぽ〜、そうですね〜

リン:パクパク。レーンー、彼、これで何回目?

レン:えっと、たぶん100回目位だと思うよ

ミク:凄いミクね、ずっとスタンドマイクを挟んで、海斗さんと個人レッスンミクね

テト:まぁ正確には、次でちょうど100回目なんだけどね。フフフ、勝負方法は違っちゃったけど、今回はちゃんと苦労しているみたいね。はぁ〜、やっとこお父様に報告できるネタが作れたわ

 

升太:はぁ・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・

海斗:はぁ・・・・はぁ・・・はぁ・・・・これだけ挑戦しているのに、私の合格ラインに引っかかる物が一つもないなんて・・・・なんて恐ろしい子! ある意味、才能だよ、これ

 

升太:はぁ・・・はぁ・・・・こ、これはマジでやばい・・・。何も飲まず食わずで過酷なセリフ99回・・・本気で体がどうにかなりそうだ・・・

海斗:はぁ・・はぁ・・・あの升太君? 私も体内の“アイス分”が切れてどうにかなりそうだし、君の声もかれてきたみたいだ。この“飲むアイス”は特別に支給しよう。ほれっ

 

 ぽ〜い

 

 海斗は“必要な飲み物“ということで、”飲むアイス“を升太に投げて渡した。

 

升太:あ、有り難うございます! 頂きます!

 

 ゴクゴク・・・

 

升太:う・・・・・・・・

 

海斗:あ!? もしかして喉がもう腫れていたのか?

 

 升太は本能的にスタンドマイクのマイクを掴み、心の叫びを吐き出した!

 

升太:うーーーーーーーまーーーーーーーいーーーーーーーぞーーーーーーーー!!!!!!!

 

 ドカーーーーーーン!!!!!!!

 

 マイクが衝撃で吹き飛んでしまった!

 

 プスプスプス・・・・

 

メイコ:え・・・・・

ハク:あ・・・・・

リン:すごぉ・・・・

レン:魂の叫びだ・・・・

ミク:あの、もしかして・・・あれが100回目ミクか?

テト:そ、そうなるね・・・・

 

海斗:お゛・・お゛・・お゛・・。感゛動゛し゛た゛ぞぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!゛!゛!゛!゛!゛!゛ 満点合格だ!!

 

升太:え・・・や、やったぞ! 自然に体が動いて叫んだだけだけど、や、やったぞ!!!!!

 

 テトは例の手帳になにやら書き込んだ。

 

テト:升太、100回目でアイス品評勝負に合格・・・っと。まぁ、こんなもんかな

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海斗:さぁ、君の好きなアイスを好きなだけ食べるがいい!

升太:遠慮なく頂きます! 次の部屋もあるみたいだし、ここで栄養を補給しないと

海斗:・・・・え? もしかして君、あのゲームの挑戦者だったの?

テト:だから、最初からそう言っているじゃないの! ハクさんが紹介したとき、確かにそう言っているよ?

 

 バタン

 

 海斗は突然、巨大な冷凍庫のドアを閉めてしまった。

 

升太:あ・・・まだ1個しか出してないのに・・・

海斗:升太君、ここの次は、部室棟“戦闘力最強”の姐さん、「巡音ルカの部屋」だ。アイスを食べている場合ではない。自販機で飲み物でも買って、体調を整えて望むがいい。アイスではお腹が冷える

升太:え・・・そんなに凄いんですか?

 

???:凄いですよ。何たって戦闘力最強ですから

 

 いつの間にか、升太の後ろにはスカイブルーの服を着た、女性が立っていた。

 

ミリアム:私はここの部員のミリアムです。さっきまで裏方でアイスの補充をしてました

ミリアム:海斗様、ご所望の“ルカの鍵”です

 

 さっ

 

 ミリアムは海斗に、持ち手が“タコ”型の“ルカの鍵”を手渡した。

 

海斗:では皆さん、参りましょう。部室棟2F最強の「巡音ルカの部屋」にご案内します

 

升太:ありゃ、海斗さんも仲間に加わっちゃったよ

ハク:あ、私は抜けますね。番頭の仕事がちょっとあるので

メイコ:あ、お願いね。ハクちゃんの分も私が頑張るから

升太:メイコさんも一緒に来るんですか?

メイコ:もちのロンよ。久々にルカさんに会いたくなったし

 

リン:名前は聞いたことあるけど、戦闘力最強ね・・・・

レン:どんだけ強いのかな?

ミク:ミクのネギブレードさばきとどっちが強いミクかな?

升太:おいおい、戦闘力最強って・・・

テト:ふふふ。いくら升太でも、ルカさんは越えられまい・・・・

 

 それぞれの思惑を胸に、一行は203号部屋を目指した。

 

(続く)

 

CAST

 

主人公・墓火炉 升太(ぼかろ ますた)=升太:とあるボカロマスター

 

案内役の死神小悪魔・重音テト:重音テト

 

料理研究部部長・初音ミクさん:初音ミク

技術研究部部長・鏡音レンさん:鏡音レン

模型研究部部長・鏡音リンさん:鏡音リン

 

温泉&お酒研究部部長・咲音メイコさん:MEIKO

アイス品評研究部部長・工藤海斗:KAITO

 

技術研究部部員・亞北ネルさん:亞北ネル

温泉&お酒研究部部員・弱音ハクさん:弱音ハク

アイス品評研究部部員・ミリアムさん:MIRIAM

説明
○ボーカロイド小説シリーズ第8作目の”おいでませ! 木之子大学・部室棟へ♪“シリーズの第4話です。
☆初めて、ボカロキャラ以外の“ボカロマスター”を主役に、UTAUのテトをヒロインに持ってきました。
○ノリはいつもの通りですが、部室棟という今までと違った場所での対決をメインにしているのがウリです。
○部室棟や大学のモデルは、私の母校です。
○年長組のメイコさんとカイトにーさんの部活です。今回はまた凄く変な感じになりました。
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