仮面ライダークロス 第三十三話 残されたU/帰ってきたお医者さん
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一真は夢の中で、渡に再会していた。

「渡。光輝が…この世界のライダーが消えた。」

「…そうですか…」

「…俺はまだこの世界にいるべきか?俺にできることは、もう…」

「あなたには、もう少しだけいてもらわなければなりません。」

「どうして?」

「間もなく、全次元世界を巻き込む大事件が発生します。それを止めるために、あなたの力が必要なのです。」

「大事件?」

「それまで、この世界にいてください。」

「…わかった。」

 

 

 

 

 

 

一真は目を覚ました。

「…大事件って、何のことだろう…?」

 

 

 

 

 

光輝が消えてから、二日経った。琉兵衛は罪を償うため自ら警察に出頭し、事実上ミュージアムは壊滅したと言える。余談ではあるが、フィリップの飼い猫ミックも見つかり、鳴海探偵事務所に置いていいということになった。

 

 

だが、全ての問題が解決したわけではない。

 

 

園咲邸の焼け跡から、園咲若菜の遺体を発見できなかったことだ。加えて、園咲冴子も行方をくらましている。この二人の姿を発見できないことには、まだ全てが終わったとは言えない。

 

 

そこで翔太郎達は、二手に別れて捜査を行うことにした。

 

まず翔太郎、フィリップ、照井の三人で琉兵衛と面会し、若菜の居場所を聞き出す。琉兵衛なら若菜がどこにいるか確実に知っているだろう。

 

次に、一真、ダンテ、バージルの三人で冴子を探し出し、確保する。冴子はミュージアムから既に離脱している身なので、琉兵衛でも居場所は知らないはずだ。だが、彼らはディスクという心強い情報屋を知っている。こうして一同は、この事件を真の解決へと導くために、行動を開始した。

 

 

 

 

フェイトは部活にも出ず、ずっと自室で塞ぎ込んでいた。最愛の人が消えてしまったのだから、当然である。夏休みも残すところあとわずか…もうすぐ登校日だ。だが、もはやフェイトにとってそんなことはどうでもよかった。

「光輝…」

彼の存在は消えてしまったが、彼との思い出は、全く色あせていない。まだ二日程度しか経っていないのだから、当然と言えば当然だが。

 

と、フェイトの携帯に、一真から電話がかかってきた。

「もしもし?」

「フェイトさん?今、空いてる?」

「…空いてるけど…」

とはいえ、傷心から部活を休んでいるだけだが。

「ならよかった。これから園咲冴子を確保しに行くんだけど、一緒に来ない?人手は多ければ多いほど助かるからさ。」

「…」

フェイトは答えない。一真は続けた。

「…これも、光輝が俺達にやって欲しかったことの一つだと思うんだ。つらいかもしれないけど、光輝の意志を引き継ぐと思って、協力してくれないかな?」

「…わかった。」

フェイトは了承した。その後、一真から詳しい情報を聞き、電話を切る。

(…光輝。私、頑張るよ。だから…)

外出の準備を整え、フェイトは家を出た。

(だから見守ってて。光輝…)

 

 

 

 

 

「若菜が行方不明?」

琉兵衛はフィリップに聞き返した。

「父さん、あなたなら若菜姉さんの居場所を知っているはずだ。教えてくれ、父さん!」

フィリップに言われて、琉兵衛は記憶の糸をたどる。そして、琉兵衛は答えを出す。

「…私の予想が正しければ、若菜はCHARMING RAVENという製薬工場にいるはずだ。」

それを聞き、翔太郎は妙に思った。

「製薬工場?なんだってそんな所に?」

琉兵衛は答える。

「…表向きは製薬工場だが、実際はメモリの製造工場。そして、ミュージアムのスポンサー、財団Xとの交渉場でもある。」

「財団X?」

尋ねる照井。

「ああ。さっきも言った通り、ミュージアムのスポンサーだよ。だが、ミュージアムは既に壊滅した。ガイアメモリから見切りをつけるだろうな…それに、急がなければ、若菜の命が危ない。」

「若菜姉さんの命が!?」

聞き捨てならない言葉に反応するフィリップ。

「どういうことだ?」

翔太郎が訊くと、琉兵衛はこう返した。

「…ミュージアム最大の計画、ガイアインパクト。その最終段階は、地球規模でのガイアインパクトの発動だ。これにより、地球上からメモリに適性のない人間は、全て消滅する。そのために若菜をデータに変換し、財団Xの衛星から、地球全域に放射する。つまり、財団Xがそれを実行した場合、若菜は消えてしまうのだ。」

「なんだと!?お前はそんなことをしようとしていたのか!!」

照井は怒るが翔太郎が抑える。

「落ち着け照井!だが、ミュージアムが壊滅した以上、そんなことしたって意味がねぇだろ。大体、そこまで考えるやつがいるのか?」

「いる。一人だけだがね…彼ならば、やりかねない。」

「マジかよ…で、そりゃ一体誰なんだ?」

再び尋ねる翔太郎に、琉兵衛は答えた。

「加頭順。財団Xの一員で、冴子に心底惚れ込んでいてね。私を蹴落とし、冴子をミュージアムのトップにしようと企んでいる。私は不覚にも、彼にガイアインパクトの全容を教えてしまった…冴子をミュージアムのトップにするために若菜を連れ去ったとするなら、合点がいく。」

「まずいな、そりゃ…」

「父さん、ありがとうございます。僕は必ず、若菜姉さんを救い出す。それから、冴子姉さんも…」

琉兵衛から訊くべき情報を全て聞き出し、若菜奪還に赴こうとする翔太郎。と、

「待ちたまえ、左翔太郎君。」

琉兵衛は翔太郎を呼び止めた。

「…何か?」

聞き返す翔太郎。琉兵衛は言う。

「…私は、白宮光輝に言われた。生きて罪を償えと…今になって、自分がどれだけ間違ったことをしていたか気付いたよ。そして今私は、若菜を失うことがたまらなく恐ろしい。彼もきっと、こんな思いをしたんだね…」

「琉兵衛さん…」

翔太郎はいつの間にか、琉兵衛に琉兵衛に敬語を使っている。そして、

「私から鳴海探偵事務所へ依頼する。頼む!若菜を…若菜を救ってくれ……!!」

琉兵衛は涙を流しながら、頭を下げた。

「…わかりました。お引き受けします」

翔太郎は力強く頷き、了承する。今の翔太郎には、琉兵衛の姿が一人の優しい父親に見えた。

 

 

 

 

 

 

 

ディスクの情報だと、冴子はサーキットで、一人バイクを走らせているらしい。その情報を頼りにサーキットへ行ってみると、情報通り、冴子がバイクに乗って走り回っていた。早速確保しようと接触する一真、フェイト、ダンテ、バージル。

「見つけたぞ、園咲冴子!」

「年貢の納め時ってやつだ。観念しな!」

一真とダンテは言い放つが、冴子の反応は実に冷ややかなものだ。

「あんた達、無限の使徒のお友達ね?あの戦い、無限の使徒が勝つことは大体予想できてたけど、父を殺さず生かしておくなんて…とんだ甘ちゃんだわ。」

「光輝にはちゃんと白宮光輝っていう名前があります。そんな呼び方しないでください!光輝のことも悪く言わないで!!」

冴子の発言に憤りを隠せないフェイト。冴子は鼻を鳴らしてフェイトを見下すばかりである。一真は尋ねる。

「園咲若菜はどこにいる?」

「父に訊いたら?私はもう園咲の一員じゃないし、答える義理なんてないわ。私自身も知らないし」

一真すら見下す冴子。

 

と、バージルが気配を感じて振り向く。そこにいたのは、加頭だった。

「ひどいですよ冴子さん。勝手にいなくなるなんて」

バージルは問う。

「貴様、何者だ!」

「財団Xの、加頭順と申します。」

加頭の名乗りを聞いて、一真は驚く。

「財団X!?」

「大方、ミュージアムのスポンサーってトコだろ。」

ダンテは見抜いた。

「正解です。冴子さん、今日はあなたを迎えに来ました。ようやくあなたをミュージアムのトップにする目処が立ちましたからね」

冴子は加頭の言葉に驚く。

「まさか、あんたが若菜を!?」

「ええ。」

笑顔で答えた加頭は、Uと書かれた金色のメモリを出した。これを見て、冴子は再び驚く。

「園咲と同じゴールドタイプのメモリ!いつの間に…」

「スポンサー特権というやつです。私とこのメモリの適合率は、98%。まさに、運命。」

 

〈UTOPIA!〉

 

加頭はドライバーを装着してメモリ、ユートピアメモリを起動。メモリから手を離す。

「ッ!!下がれ!!」

バージルが鋭く叫び、一同は後退。その目の前で、メモリが意思を持つかのようにしてドライバーに挿さり、無重力状態が発生。その後、加頭は凄まじいオーラに包まれて、マントを羽織った黄金のドーパント、ユートピア・ドーパントに変身した。

「くっ、変身!」

 

〈TURN UP〉

 

一真はブレイドに変身し、ブレイラウザーを振りかざす。対するユートピアは、重力・引力・斥力を自在に操るステッキ、理想の杖を使ってブレイラウザーを止める。そのままブレイドを理想の杖で浮かべ、

「その姿では、私に勝てない。」

「ぐああっ!!」

地面に叩きつけ、蹴り飛ばした。

「ダンテ!」

 

〈SLASH!〉

 

「ああ!」

 

〈BLAST!〉

 

「「変身」」

 

〈SLASH/BLAST!〉

 

ダンテとバージルはソウガに変身。

 

〈PERFECT JOKER〉

 

ブレイドもジョーカーフォームに強化変身する。

「おっと、今はあなた方と事を構えるつもりはありません。」

ユートピアは理想の杖を使って冴子を引き寄せ、さらに抱き寄せた。

「加頭!放しなさい!」

嫌がる冴子。だが、ユートピアは聞かない。

「行きましょう。あなたが輝ける場所に」

ユートピアは理想の杖で地面を割る。すると、割れた地面から蒸気が吹き出し、ユートピアはそれに紛れて姿を消した。冴子を連れて…。

「逃がしたか…!」

変身を解くブレイド。

「予想外の事態だな…」

「フェイト!探偵達に連絡を入れろ!一度事務所に集合するべきだとな。」

「う、うん!」

ソウガも変身を解除し、フェイトはバージルに言われて翔太郎に電話した。

 

 

 

 

 

事務所で合流した翔太郎達は、互いが入手した情報について話した。若菜の居場所、冴子と加頭のこと。それらを話し終えてから、今度はフィリップが、大切なことがあると言って、驚くべき事実を告げた。この前若菜と同化したことをきっかけに、フィリップの肉体が消滅を始めていると。彼の話では、Wに変身できるのはあと一回だけらしい。

「そんな…光輝くんに続いて、フィリップくんまで消えちゃうなんて…」

亜樹子はあまりの話に呆然となる。フィリップは言った。

「白宮光輝が神に近付きすぎたように、僕らは地球に近付きすぎたんだ。だから最後の変身は、若菜姉さんを確実に救える瞬間まで取っておく必要がある。」

「フィリップ…」

翔太郎には、受け入れられなかった。いや、受け入れられるはずがない。ずっと一緒に戦ってきた相棒が消えてしまうなど。

 

しかし、ダンテは言う。

 

「あんたらが変身することはないぜ?ライダーはあんたらだけじゃないんだからな。」

そう、まだライダーはいる。ダンテとバージルのソウガ、一真のブレイド、照井のアクセル。何も翔太郎達が戦う必要はないのだ。だが、フィリップは言った。

「だが、遅かれ早かれ僕は消える。どうせ消えるなら、若菜姉さんを救ったあとで…」

その時、翔太郎が事務所を飛び出していった。

「左…」

翔太郎の心中を安じる照井。フェイトは言う。

「やっぱり、受け入れられませんよね。私だって、まだ光輝が消えたこと、受け入れられていませんから…」

大切な人を失うことの悲しみを知るフェイト。彼女には翔太郎の気持ちが痛いほど理解できた。

 

 

 

 

 

 

CHARMING RAVEN。

冴子と加頭は、加頭の上司である女性、ネオン・ウルスランドに会っていた。加頭はウルスランドに冴子を紹介し、自分がガイアインパクトの最終段階を起こす旨を伝える。

「なるほど、上層部に再投資を掛け合ってみてもいいわよ。うまくいけば、だけど。」

言い終わると同時に、ウルスランドは手に持っているタイマーを止めた。彼女は常に時間を計っており、かかった時間に応じてスケジュールを実行するのだ。

「次があるから行くわ。」

ウルスランドは次のスケジュールを実行するため、去った。

「冴子さん。ついにあなたがミュージアムのトップになれる日が来ましたよ」

加頭は、あるメモリを冴子に差し出す。それは、以前奪われたタブーメモリだった。

「タブー…!」

冴子は迷うことなく、タブーメモリを受け取った。

 

 

 

 

 

 

「シュラウドォォォォォーッ!!!」

翔太郎はシュラウドを捜していた。フィリップを救うためである。間もなくしてシュラウドは姿を現し、翔太郎は詰め寄る。

「教えてくれよ!どうすればフィリップを助けられるんだ!?」

「…私は答えを持ち合わせていない。」

「ふざけんな!!おやっさんからも頼まれてんだよ!!あいつを救ってやってくれって!!」

「…鳴海荘吉に来人を救うよう依頼したのは、私だ。そして、あの子はもう、ただのデータの塊などではなくなった。お前のおかげだ」

「でも消えちまうんだろ!!」

「あとあの子にできるのは、笑顔で消えさせてあげるだけ。それがあの子を救うということ…」

シュラウドは消え、そこには翔太郎だけが残った。

 

 

 

 

 

 

万策尽きて戻ってきた翔太郎。彼を待っていたのは、ウォッチャマンにサンタちゃん、クイーンにエリザベス、刃野に真倉、さらにはブロリー、パラガス、悟空、ベジータ、悟飯、ピッコロ、トランクス、科学者まで集めてのサプライズパーティーだった。これは亜樹子の計らいで、少しでもフィリップに楽しい思いをしてもらうためとのことだった。

 

そして始まるパーティー。プレゼント交換(もちろんピッコロからのプレゼントは仙豆で、出した瞬間にブロリーに蹴り飛ばされた)、フィリップからのスピーチ、それからも様々な催しが行われ、誰も彼もが全てを忘れて楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

翌日。

フェイトと亜樹子を加え、ライダー一同は若菜奪還に向かった。施設内に乗り込み、次々と敵を倒していく。途中から翔太郎以外のメンバーはライダーに変身。フェイトもバルディッシュを起動。翔太郎とフィリップ、亜樹子は彼らに戦いを任せ、若菜を捜す。そして、ついに若菜を発見した。

「若菜姉さん!」

翔太郎達とともに駆け寄るフィリップ。と、翔太郎は若菜の頭に取り付けられている小さな装置を見つけた。

「これは…計測器?何を計ってるんだ?」

「彼女のメモリの発動係数です。」

そこへ、加頭が現れる。

「その計測器は、この端末と繋がっています。」

端末を操作する加頭。すると、計測器が若菜の頭の中に埋め込まれた。

「クレイドールエクストリームを100%として、今の数値は…43%。」

「姉さんをプログラム扱いする気だな!?」

「さすが元祖データ人間。理解が早くて助かります」

「ふざけるな!!」

「これがふざけている顔に見えますか?」

 

〈UTOPIA!〉

 

加頭はユートピアメモリを起動させる。

「翔太郎今だ!早く!」

フィリップは翔太郎に変身するよう促すが、翔太郎は変身しない。そうこうしている間に加頭の変身が完了し、理想の杖を使って若菜を引き寄せる。

「あっ!」

「若菜姉さん!」

驚く亜樹子とフィリップ。

「大事な生け贄です。返してもらいますよ」

ユートピアは理想の杖で壁を破壊し、若菜を抱えて逃げる。

「待て!」

その先にいたアクセルがユートピアの存在に気付き、アクセルトライアルに強化変身して突撃。しかし、ユートピアは理想の杖を使って若菜を高い場所の壁に張り付け、アクセルと同じ速度で戦う。

「馬鹿な!トライアルと同等のスピードだと!?」

「すぐに私が勝ちます。というより君が遅くなる」

言ったユートピアは再び若菜を引き寄せ、アクセルをも同時に抱えて離れた場所へ移動。アクセルだけ地に落とす。と、なぜかアクセルはトライアルから元に戻っていた。

「何!?なぜ力が…」

「ユートピアとは希望の力のメモリ。君の生きる希望を奪い、私のものにした。その結果を知りなさい」

ユートピアには、相手のメモリのパワーを吸収する力がある。それによってトライアルメモリのパワーを奪い、強化変身を解除させたのだ。そしてユートピアはアクセルメモリのパワーも吸収し、そのパワーを乗せた蹴りをアクセルに食らわせた。

「ぐああああああああああああ!!!」

爆発して変身が解除されるアクセル。

「竜くん!!」

そこへ翔太郎達が駆け付け、亜樹子が驚く。

「ああああああああ!!!ああああああああああああ!!!!」

照井は全身に火傷を負い、転げ回っていた。

「この野郎!!」

怒る翔太郎は生身のままユートピアに突撃。ユートピアは若菜を放し、翔太郎を投げ飛ばす。

「やめろ翔太郎!無茶だ!」

フィリップは翔太郎の無謀な行動を見て、翔太郎に下がるよう言う。と、

「ああ!ああああ!」

昏睡状態の若菜が苦しみながら発光する。

「ん?」

ユートピアは端末を取り出し、メモリの発動係数を見た。若菜はフィリップの叫びに合わせて発光し、その度に係数が上昇している。

「素晴らしい!彼女のメモリの発動係数は、弟の来人君とリンクしている!メモリの発動条件は、来人君の精神的苦痛…ならば…」

ユートピアは倒れている翔太郎の首を掴んで持ち上げた。

「ちょっと死んでみてください。来人君の目の前で」

「ぐあ…があああああ!!」

徐々に翔太郎の首を絞めていくユートピア。

「やめろ!!やめてくれぇぇぇぇぇぇ!!!」

フィリップは叫び、

「ひ…左…!」

満身創痍ながらも翔太郎に手を伸ばす照井。その間にも若菜は発光し、発動係数は上がっていく。

「78%…もう一声!」

楽しそうに端末を見るユートピア。

 

その時、

 

「ぐああああ!!」

ユートピアは銃撃を受け、翔太郎を放した。そこへ、

「ラァァァァイッ!!!」

ブレイドがユートピアにライトニングソニックを叩き込み。さらにトライデントスマッシャーが直撃して、ユートピアは吹き飛んだ。銃撃を食らわせたのはソウガ。トライデントスマッシャーを撃ったのはフェイトだ。

「ぐぅ…」

しかし立ち上がるユートピア。だが、直後に現れたタブー・ドーパントが全力の光弾を放ち、ユートピアは炎に包まれた。

「来人!若菜を!」

フィリップに若菜を回収するよう言うタブー。

「冴子姉さん?まさか、僕達を助けに…」

フィリップが呟いた時、炎の中から、加頭が歩いて出てきた。

「冴子さん。私、ショックです。死んでいるところですよ?私がNEVERでなければ。」

「死者蘇生兵士!?来人、ここは退きなさい!」

タブーは再び加頭に攻撃を仕掛けるが、加頭はその前にユートピアに変身。理想の杖で光弾を防ぐ。

「退くぞ!怪我人を巻き込むわけにはいかん!!」

バージルが言い、ソウガとブレイドは照井を担ぐ。フェイトと亜樹子も翔太郎に肩を貸し、フィリップも若菜を連れて逃げようとするのだが、それよりも早くユートピアがタブーを倒し、理想の杖を使って若菜を引き寄せてしまう。

「若菜姉さん!!」

「何やってんだ!さっさと退くぞ!!」

ダンテはフィリップに退避を促す。

「だが!」

「今は照井さんを病院に運ぶことが先決です!チャンスはまた必ず来ます!!」

「…くっ!」

ブレイドの説得に仕方なく応じるフィリップ。こうして一同は離脱したのだった。

 

 

 

 

 

 

大怪我を負った照井は即入院。それから一真、ダンテ、バージル、フェイトは、翔太郎とフィリップが最後の変身を行うための心の準備が整うまで、二人を二人きりにし、ユートピアと若菜の捜索を開始した。

 

しかし、亜樹子までが離れたのがまずかった。

 

ユートピアには、対象の『生きる』という意思を奪うことができる。ユートピアにその意思を奪われた者は、のっぺらぼうのような顔になり、死人同然になってしまうのだ。

 

ユートピアはメモリの発動係数を上昇させるためにクイーン、エリザベス、ウォッチャマン、サンタちゃん。刃野や真倉までも襲い、生きる意思を奪ってしまった。そして、ついに亜樹子までもが餌食に…。

 

 

 

 

 

 

財団Xが所有する天文学研究所。若菜はうなされながら目を覚ました。側には冴子が。

「悪い夢でも見てたようね、若菜。」

「お姉様!?」

「でも、現実はもっとひどいわよ。」

「何の話!?」

そこへ、

「さぁ冴子さん。いよいよですよ」

どこからともなく、加頭が現れた。

「出会った時、私はあなたに、一発逆転のチャンスを与えると言いましたが、達成しました。愛ゆえに」

その言葉を聞いて、冴子は考える。思えば、加頭はいつも彼女をサポートしてきた。

「本気だったって言うの?あれで?」

「よく言われるんです。感情が込もってないから、本気だと思ってなかったと。あなたは私を撃ちましたが、しかし許します。それはあなたが園咲冴子だからです」

言いながら、冴子に取り上げたタブーメモリを差し出す加頭。しかし、冴子は顔を背けるばかりで受け取らない。

「…なぜです…なぜそこまで私を拒むのです!?」

「…あなたが園咲を舐めてるからよ。もしこれが本当にガイアインパクトの最終段階だったとしても、こんな勝ち方、私自身が認めない!」

冴子は加頭からタブーメモリを奪い、加頭に飛び掛かってから若菜に言う。

「若菜!逃げなさい!!」

 

〈UTOPIA!〉

 

しかし加頭はユートピアメモリを起動。

 

〈TABOO!〉

 

冴子も合わせてタブーメモリを起動し、二人はドーパントに変身した。やがて始まるドーパント同士の戦い。若菜は言われた通り、逃げ出した。

 

 

 

 

戦いは屋外に及び、タブーは劣勢。ユートピアはタブーの首を掴んで締め上げる。

「さようなら、冴子さん。」

ユートピアの言葉を聞き、

(…井坂先生…今、そちらへ行きます…)

死を覚悟するタブー。

 

 

 

次の瞬間、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その手を放してもらいましょうか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

声が聞こえて、二人はその方向を見る。タブーにとっては、二度と聞けないと思っていた声。ユートピアは、そこにいた存在を目にして、ショックからかタブーを落とした。タブーはダメージで変身が解ける。しかし、それでも冴子は感激から『彼』の名を呼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「井坂先生…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、そこにいたのは井坂深紅郎だった。井坂は言う。

「手に入れたメモリの力を肉体に馴染ませていたら、遅くなってしまいましたよ。」

「井坂深紅郎…なぜ!?あなたは死んだはず…!!」

驚くユートピア。彼は井坂と面識こそないものの、前もって園咲家のデータを見て知っていた。

「君が、加頭順君ですね?いや、今はユートピア・ドーパントでしたか。死ぬかとは思いましたよ?ですが、私の力を利用したいと望むお馬鹿さん達のおかげで生き延びたんです。」

悠々と語る井坂。ユートピアは、最初こそ驚いていたものの、すぐに調子を取り戻す。

「ふん…だからどうだというのですか。今さらあなたごとき、私の相手にはなりませんよ。」

「ほう…なら、」

ユートピアの挑発を聞いた井坂は、ウェザーメモリを出し、

「試してみますか?」

 

〈WEATHER!〉

 

起動させ、コネクタに挿す。すると、井坂は全身が青いウェザー・ドーパント、Bウェザー・ドーパントに変身した。

「ふん…所詮は見かけ倒し。何ができるか見せてもらいましょう」

「…私の力を甘く見ない方がいい。今の私は、あの時とは違う!」

言うが早いか、ウェザーは高速移動で一気に距離を詰め、ユートピアを殴り飛ばした。

「ぐあっ!!」

吹き飛ぶユートピア。だが、ユートピアもただ吹き飛ばされただけでは終わらない。

「はっ!!」

手から炎を出す。対するウェザーは指を鳴らし、バリアを出現させて炎を防いだ。

「何!?」

「私の能力の真似事をしても、無駄ですよ。」

ウェザーは右手から重力衝撃波を放ち、再びユートピアを吹き飛ばす。さらに、左手からは巨大な電撃を出し、ユートピアにダメージを与えた。ユートピアは焦る。高速移動、バリア、重力操作、どれもウェザーにはない能力のはずだ。それだけではない。最初の高速移動時に食らった拳の威力も、今食らった電撃の威力も、かつてのウェザーにはありえないほど強化されていたのだ。

(何があったのかは知らないが、これ以上はまずい…!!)

予想以上の戦闘力を得たウェザーに対して恐怖を抱いたユートピアは、逃げていった。

「冴子君!」

ウェザーは変身を解除し、冴子に駆け寄る。

「井坂先生…本当に…先生…?」

「ええそうですよ。紛れもなく、私です。」

ゆっくりと冴子を抱き起こす井坂。と、

「い…井坂…?」

近くから声が聞こえた。そこには、一人で若菜を救い出そうとやって来た翔太郎がいる。

「どういうことだ…何でお前が生きてる!?」

「…まぁ、そういう反応をしますよね。」

井坂は、自分がスカリエッティのおかげで助かったことを伝えた。

「あのマッドサイエンティスト、本当に余計なことしてくれやがる!!」

「そう言わないであげてください。私は、あなたを助けに来たのですから。」

「…何?」

井坂の発言に耳を疑う翔太郎。

「私は、ガイアインパクトの最終段階を知っています。そして、それを阻止しようと思っている。」

「何でだ?お前にとっては願ったり叶ったりな話だろ?メモリのパワーを増幅するための過剰適合者捜しが楽になるからな。」

「…少し前の私なら、財団Xに協力していたでしょう。ですが、今は違います。私は…」

井坂は冴子を見る。

「…愛を…知ってしまいましたから…」

「先生…」

「そして、私は今になって気付いたのです。今の私と同じように、愛を抱いている者は大勢いる。私はそれを奪ってしまった…なんと愚かな真似をしてしまったのか…」

「井坂…」

「…だから私は、あなたに協力します。少しでも自分の犯した罪を償うために…」

「…よし、わかった。手を貸してくれ」

思わぬ味方を得た翔太郎。冴子を安全な場所へ避難させ、二人は研究所へ突入するのだった。

 

 

 

 

 

 

人類を、この世界を、そして、愛を護るために。

 

 

 

 

 

 

 

 

************************************************

次回、

仮面ライダークロス!!

 

?「素晴らしい!もはや園咲若菜など必要ない。私一人の手でガイアインパクトを達成します!!」

 

翔太郎「くっ…バケモンが…!!」

 

フェイト「光輝…光輝ぃ…!!!」

 

第三十四話

始まりのA/破滅へのカウントダウン

 

これが裁きだ!!

 

 

Bウェザー・ドーパント

 

井坂が変身する全身が青いウェザー・ドーパント。

 

いくつものメモリのパワーを吸収することによって、怪力、高速移動、バリア展開、重力操作など、様々な特殊能力を使えるようになっている。実はエフェクトメモリという特殊なメモリのパワーを吸収しており、それによって戦闘力は通常時のウェザーの数十倍で、テラーエクストリームにも匹敵する。吸収したメモリのパワー全てを集束し、巨大な光線として発射する『カタストロフラッシャー』が必殺技。

 

ちなみに、スカリエッティから改造を受けてから、井坂は原作における異常なまでの食欲から解放されている。

 

 

エフェクトメモリ

 

スカリエッティが開発したメモリで、これ単体には何の記憶も宿ってはいないが、他のメモリのパワーを何倍にも増幅するという効果があり、このメモリのパワーを吸収することで、ウェザーメモリと自分が吸収した全てのメモリのパワーを増幅。この相乗効果でBウェザーの戦闘力は数十倍となっている。そのため、井坂は過剰適合者を利用したメモリのパワー増幅はしていない。

説明
この作品も、もうすぐ最終回…気合いを入れて書きます!
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