焼き鳥ハイスクールD×D!? 〜 ちょいワルホスト系に転生した男 |
……突然ですが、こんにちは。いるかどうかわからない、画面の向こうの皆様。
俺の名前は、『兵藤(ひょうどう)和真(かずま)』。今年で、十六歳になる。
…いや、十六歳になるはずだった(…)と言ったほうがよかったか。
俺は、生まれつき体が物凄く弱く、病院に入退院を繰り返しており、ろくに学校にも行けない状態だった。
幼いころから、闘病生活を送る日々。そのせいか、同年代の友人など、全くといっていいほどできないという、寂しい少年期を送っていた。
幸い、両親や、年の離れた兄たちがほぼ毎日お見舞いに来てくれて、闘病生活に苦しむ俺のことを励ましてくれたりしたから、あまりつらいとか感じることもなかったけど。…いや、肉体的にはそりゃあつらかったよ?でも家族の励ましがあるだけで、精神的にはかなり助かったんだな、これが。
しかし、そんな家族の励ましも虚しく、俺は、複数の病気を併発。医者も匙を投げ出す状態にまでなってしまい、結局、十四歳の誕生日を迎える前に死んでしまったんだ。
でもまあ、他人から見たら不幸な人生かもしれないけれど、結構幸せだったよ?
友達とかは一人もできなかったけど、そのぶん兄さんや、病院の先生や看護師さん。患者さんとかも暇な時に相手してくれたし。
父さんと母さんも、二人とも働いていて忙しいはずなのに、クリスマスとか俺の誕生日とかそういうイベント事がある時は、よほど重要な仕事がないとき意外は必ず休んでくれて、俺の病室でパーティを開いたりしてくれたし。
こんな面倒ばかりかける俺なんかのためにいろいろしてくれる家族がいたんだ。不幸なんて言ったら罰(ばち)が当たっちまうよ。
まあ、そんなわけで、俺はそんな愛すべき家族に見守られながら笑顔でこの世を去った。…はずだった。
そう、はず(…)だったんだ。
なんではずだったかというと、それは現在、死んだはずの俺がとある状況に陥っているからだ。
それがどんな状況かというと、
「ふふふふ、こんにちわ。私があなたのママですよー」
なんか、見知らぬ美人さんの腕のなかに抱かれてた。
…うん、この時点で普通にわけがわからなかったよ。
でもさ、まだおかしい事があるんだ。
それはね?
「ばぶばぶばーーーーーーー!!?(俺、赤ん坊になってるーーーーーーー!!?)」
そう、どうも体の様子がおかしいと思って、自分で調べてみたら、俺はなんと赤ん坊の体になっていたのだ!!
そんな俺の身に突然起きた、非現実な事態。そんな事態に俺は!!
「…ばぶ(寝よ)」
ふて寝した。
いやだって、さすがに理解できねえよこんな状況。もう寝るしかないだろ?
まあ、そりゃあ状況把握はしなきゃなんないだろうけどさ。そんなもの、後でも、できるだろうしー。
というわけで、おやすみ〜♪……zzzZZZ。
〜三年後〜
どうも。三歳になった兵藤和真です。…といっても今は違う名前になっているが、…まあそれについては後でな。
さて、とりあえず俺が現在置かれている現状を説明しよう。
どうやら俺は『転生』というものをしたらしい。
転生。つまりは一度死んで生まれ変わるということだが、よくよく考えたら俺確かにあの病院で死んだはずなんだから、そうでもないと説明つかないよね。
まあ、それはいんだよ。そんなことはあの赤ん坊状態になってふて寝した後に速攻で理解したから。
問題は、俺の転生先(…)にあった。
まあ、そのことを説明するために、まずは俺の現在の名前を教えておこう。
俺の現在の名前は、ライザー・フェニックス。
悪魔のなかでも名家にあたる、『元七十二柱』のうちの一柱。『フェニックス家』の三男に産まれた男だ。
…ここまで言ったら、わかる人にはわかるだろう。
俺が転生した世界は、ライトノベル『ハイスクールD×D』の世界。
その原作キャラである、『ライザー・フェニックス』に転生したらしい。
…なんでさ。
☆
【ハイスクールD×D】。
俺は、この物語を知っている。というか、生前一番上の兄が、気晴らしにと俺に買ってきてくれた本のなかにこれが混じってたんだが。
前世の兄貴たちは、俗にいう『オタク』というもので、よく病院に彼らのお勧めである漫画やライトノベルを持ってきてくれて、俺は暇つぶしによくそれを読んでいたものである。…そのせいか、俺も思考がオタク化してしまったが。まあ後悔はしてないからいいけどねッ!!
このラノべは、そんな兄たちが持ってきてくれたものの中でも特にお気に入りだったもので、よく病室のベッドに横たわりながら、何度も読み返してのを覚えている。
これは、元女子高であり、現在も女子生徒の比率が圧倒的に多い学園。『駒王(くおう)学園』に通う、エロいことが大好きな主人公。『兵藤一誠(いっせい)』が、同じくその学園に通うメインヒロインの『リアス・グレモリー』の手により、彼女の眷属。下僕悪魔となって、自らの主のため、そしてなにより自らのハーレムを築くために、上級悪魔目指して日々奮闘するのだが、この主人公に宿る神器(セイクリッド・ギア)。神滅具(ロンギヌス)、『赤龍帝(ブーステッド)の籠手(ギア)』にひきつけられてくる敵やら、事件やらに立ち向かうという話なのだが、この主人公である兵藤一誠が、様々な困難な出来事に見舞われても諦めないで立ちあがっていく姿に、闘病生活を送っていた前世の俺は、いつも元気づけられていたものである。
そして、俺が転生したこの【ライザー・フェニックス】というキャラ。
このキャラは、原作の第二巻の敵キャラであり、ヒロインであるリアスの婚約者として登場する。
通称、『焼き鳥』とも呼ばれているこの人物。
実は、一誠たち、主人公グループである『グレモリー眷属』の、初めてのレーティングゲームの相手であり、初めて敗北を味合わせたという、さりげない強キャラなのだ。
…まぁ、そのレーティングゲームが終わった後で行われた婚約発表の場で、会場に乗り込んできた一誠に、トラウマを刻み込まれるほどにボコボコにされ、リアスが一誠に、本格的に惚れるきっかけになるという、かませ犬的キャラでもあるのだが。
さて、とりあえず現状の確認もすんだことだし。とりあえず俺には、一つ決めなければいけないことがある。
それは、『これから、どう行動するか』だ。
前述した通り、このライザー・フェニックスというキャラクターは、リアスの婚約者として登場しており、そのせいで主人公たちと対立することになるのだが、俺としては、主人公を敵にまわしてまで、リアスと結婚したいとも思わないんだよなー。
いや、そりゃあ、リアスは可愛いよ?でもさあ、嫌がる相手を無理矢理力づくで嫁にするっていうのも趣味じゃないし。まあ、リアスの婚約者じゃなくなると、原作に全くというか、ほとんど関われないことになるけど…。
いや、まあそれはいいんだ。原作に関われなかったら関われなかったで。せいぜい、「原作キャラに人目会いたいなー」くらいのミーハーな気持ちくらいしか持ってないし。まあ、関わったとしてもなんのチートもない俺だと下手に関わったら死ぬだけだろうしな。
え?不死だから死なないだろうって?いや、フェニックスの不死は確かに強力だけどさ、主人公組が将来的に敵対するのはそんなもんじゃ対抗できないレベルのやつらばかりだから。
特に、『禍(カオス)の団(ブリゲート)』の『英雄派』トップである『曹操(そうそう)』。あいつはやばい。
人間だけど英雄の子孫だから身体能力高いし。戦闘技術もかなり卓越していて、白龍皇、『ヴァーリ』は曹操を、『最強の人間』と称賛したほどだ。
それになによりあいつの持つ最強の神滅具(ロンギヌス)、『黄昏(トゥルー)の聖槍(ロンギヌス)』。
あんなもん、いくら上級悪魔っていってもかすっただけで死ぬわ!しかも曹操はすでに禁手(バランス・ブレイカー)に至ってたし、それに原作ではうまく発動しなかったけど、『光輝(トゥルー・イデア)』なんていう奥の手もあるし。
まあ、これは極端な例だけどな。それでも、主人公が戦うやつらは終盤になると、上級悪魔くらい簡単に殺せる実力のあるやつらばかりだからなー。軽い気持ちで原作に関わると簡単に死んじまうのは目に見えてる。
だから、このまま原作に全く関わらないで過ごすっていうのもありっちゃありなんだけど、一つだけ気がかりな事があるんだな。
それは、『イレギュラーの存在』だ。
例えば二次創作によくある『チート転生者の登場』。これは別にいい。むしろ登場してくれたら、俺が余計なこと考える必要もなくなるから、むしろ登場してほしいくらいだ。
…いや、まあハーレム狙いのいわゆる『最低系』だったら考えるけどな。役に立つならいいけど、噛ませ犬的にでてくるような、ただわがままなやつだったりしたら困るし。
でも、怖いのは、そんな転生者が悪魔側ではなく、敵対する『堕天使勢力』や『天使勢力』。そして、禍の団に出てきたりすることだ。俺が生前読んだ二次創作にも数は少ないけどそういうのあったし。
それに、イレギュラーとして現れるのが、転生者だけとは限らない。バタフライ効果の場合もありうる。
『バタフライ効果』。
通常なら無視できるような小さい差が、やがて無視できない大きな差となる現象のことをいうのだが、俺が危惧しているのは、俺の存在、俺の行動によって起きる、原作との大きな差異のこと。
それで、原作から大きく外れて、悪魔滅亡とかなったら、大変だろ?
だから、下手に変なイレギュラーが発生してると、困るわけだ。
それを防ぐためには、原作近くで見張っていて、適度に介入できる位置にいるのが一番なのだが、それには問題が二つある。
一つ目は、『立場的な問題』。
原作では、ライザーの年齢は、見た目二十歳以上。
少なくとも、成熟してるところから、リアスより年上なのは確か。そうなると、駒王学園に入学して見張るという真似はできない。
教師をやればいいと言うやつもいるだろうが、そもそもどういう理由で教師になるんだ?
リアスや生徒会長である、『ソーナ・シトリー』なら、『人間の文化について学ぶため』とか、『学校について学ぶため』とか、いろいろ理由をつけられるかもしれないが、俺は原作開始時には成熟しているから、そういう理由は使えないだろう。
つまりは、人間界。しかも駒王学園の付近に長期間スタンバイしてもおかしくない立場を得なくちゃならないわけだ。
そして二つ目の問題。
それは、『俺自身の強さの問題』である。
先程も言った通り、原作組とともに戦うことになった場合、最終的に、平気で上級悪魔を倒すようなやつらを相手にすることになるため、少なくとも原作ライザーの強さのままだと、すぐにとは言わないが、いずれ消されてしまう可能性が、高くなる。
つまりは、原作に関わるなら、それ相応の実力が必要だということだ。
一誠のライバルである、ヴァーリが、堕天使の幹部の『コカビエル』を軽く倒していたことから、俺も、最低コカビエルを倒せる程度の実力は欲しいところだけど…、
「普通の訓練じゃあ、無理だよなー」
ヴァーリに舜殺されているからわかりにくいけど、コカビエルは、あれでも聖書にも記されている、歴戦の戦士。生半可な訓練では、到底勝つことなどできないだろう。
「まあ、結局のところ、どうするにも力は必要か…」
原作だと、禍の団によって、冥界が戦いに巻き込まれることになるから、戦う力はどのみち必要だろうし。
「よし!なら今のうちから修行をしておきますか!」
そうすれば、原作介入するにしても、しないにしても動きやすくなるだろうし。
そう考えた俺は、気合いをいれる。
とりあえずは…、
「父上に相談するか…」
一人でやってもいいのだが、それより、誰かに戦い方を教えてもらったほうが、上達早いだろうしな。
俺は、そこんところを相談するために、父上の書斎を訪ねることにした。
説明 | ||
これは『ハイスクールD×D』の原作キャラの一人である“ライザー・フェニックス”に転生した男が将来の冥界の危機と自分の未来のためにいろいろとがんばるお話。 |
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