ゼロの使い魔 〜しんりゅう(神竜)になった男〜 第五話「小僧、そしてオーク鬼」
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眠りについてから数時間後、誰かの気配がしたため目を覚ます。

顔を動かさずに視線だけを向けてみると、一人の少年が近づいてくるのが見えた。

恰好からいって、ここの学院の坊っちゃんのようだ。

 

「・・・・・・ギーシュの奴、あんな平民に負けるとは情けない奴め。貴族の面汚しだ。まぁいい。ギーシュはドットメイジ。ラインメイジである僕とは雲泥の差だ」

 

少年は俺が目を覚ましていることに気付かない様子で、ぶつくさ言いながら近づいてくる。

 

どうやら俺に用があるらしいな。

 

成り行きを見守ると、少年が寝床の前で立ち止まって、俺を見上げ呟いた。

 

「それにしても、なんて美しく頼もしい竜なんだ。これは僕が従えとこそ意味があるのだ。決してあのモンモランシーではない」

 

ほぅ。大した自信だな・・・・・・、小僧・・・・・・。

 

※シェンの精神年齢は28歳である。

 

「おい! 目を覚ませ!」

 

小僧がいきなり命令してきた。

 

かなりムカついたので、無視・・・・・・。

 

「おい! 聞いてるのか! この僕、ヴィリエ・ド・ロレーヌが命令してるのだぞ!」

 

無視・・・・・・。

 

「おい! 起きろ!」

 

無・・・・・・。

 

「起きろよ!」

≪・・・・・・・・・・・・何か用か? 小僧≫

「なっ!? き、貴族に向かって何様のつもりだ!?」

 

無視しようかと思ったが、うるさいため顔を上げて口を開く。

その言葉が気にくわなかったのか小僧はそう怒鳴り散らした。

 

≪貴族がどうした。我は神竜。我が従うのは我が認めた者だけだ≫

 

俺は身体を巨大サイズにして、小僧を睨みつけながら言葉を続けた。

 

「やややややる気か!? ぼぼぼぼぼ僕はロレーヌ家出身だぞ!? 風系統のメイジだぞ!?」

 

はぁ・・・・・・。

 

「ぶぉおおおおおおおおおおおお!!」

「うわっ!?」

 

雄叫びをあげると小僧は尻餅をついてしまった。

俺は身体を縮小して、寝床に戻り小僧を睨みつけた。

 

≪帰れ、小僧。お前には我を従えるだけの実力がない≫

「なっ!? 何だと!?」

 

まぁ実力云々は嘘で、ただ単にこいつに従うのが嫌なだけだが。

 

「くっ! いい気になるなよ! ラグーズ・ウォータル・イス・イーサ・ハガラース」

 

頭に血が上ったのか、小僧は杖を取り出し呪文を唱えて、氷でできた槍をこちら目掛けて放ってきた。

 

「やれやれ・・・・・・」

 

俺はそう呟き“ひのいき”で氷の槍を跡形もなく消しさると、小僧を睨みつける。

 

「何!?」

≪無駄なことはやめろ。お前は、我を倒せん≫

「((ジャベリン|氷の槍))を消したぐらいで、いい気にならないでもらいたいね。いくぞ!」

 

やれやれ・・・・・・、もう相手するのも疲れた・・・・・・。

 

〔マホカンタ〕

 

俺は疲れたので、“マホカンタ”の呪文を唱てから眠りについた。

 

 

**********

 

「ジャベリンを消したぐらいで、いい気にならないでもらいたいね。いくぞ!」

 

そう怒鳴りド・ロレーヌは呪文を唱えた。

“ウィンド・ブレイク”・・・・・・、一気にシェンを木の上から吹き飛ばすつもりだった。

シェンは何ともないかのように眠りについていた。

“ウィンド・ブレイク”は強力な呪文で、たとえ竜種でも吹き飛ばせる自信がド・ロレーヌにはあった。

 

(もらった!)

 

ド・ロレーヌがそう思った瞬間・・・・・・。

 

「え?」

 

シェンの前に張られた透明な障壁によって、ド・ロレーヌの放った“ウィンド・ブレイク”は、行き先を変えド・ロレーヌを襲った。

ド・ロレーヌは己の放った烈風によって、壁に叩きつけられ気絶してしまった。

 

 

*********

 

眠りから覚めたら朝になっていた。

 

しかし、非常に眠い・・・・・・。

 

小僧の相手をしてたから、さほど時間が経ってない気がする。

 

「・・・・・・やるべきことをしたら寝直すか」

 

そう考えた俺は寮塔のルイズの部屋の窓を覗いて、ルイズを起こさないように才人の様子を窺っていく。

昨日の“ラリホー”がまだ効いているのか分からないが、才人は寝息を立てて眠っていた。

 

〔ラリホーマ〕

 

昨日の今日で全快すると、後々、才人にとって面倒なことになり得るため、明日起きるように“ラリホーマ”の呪文を唱えて、眠りを深くする。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

呪文がちゃんと効いたのを確認した俺は寝床に戻る。

ふと見ると小僧が寮塔の真下で倒れていた。

 

ああ、自分の魔法でここまで吹っ飛ばされたのか・・・・・・。

 

〔ダモーレ〕

 

俺は身体の異常がないか調べるために、“ダモーレ”の呪文を唱える。すると、小僧のステータスが目の前に浮かび上がった。

 

 【名前】  ヴィリエ・ド・ロレーヌ

 【最大HP】表示OFF

 【最大MP】表示OFF

 【攻撃力】 表示OFF

 【守備力】 表示OFF

 【素早さ】 表示OFF

 【賢さ】  表示OFF

 【状態】

   気絶(HP全回復)。それ以外は正常

 

“状態”以外の欄が表示OFFなのは、俺がそう設定したからだ。

 

この世界では、状態以外は無意味だし、プライバシーを侵したくないからな。

だから名前も本人が名乗ってなければ非表示設定だ。

でだ。・・・・・・・小僧は大丈夫みたいだから、ほっとく手もあるが・・・・・・。

 

「仕方がないな・・・・・・〔オクルーラ〕」

 

後々面倒になることを避けるために、俺はそう呟きルーラの複合魔法である“オクルーラ”を唱えた。

これは“ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章”に出てくるオリジナル魔法だが、使用可能であることは確認済みである。

どうやらゲームだけでなく、漫画などのドラゴンクエスト関連の魔法や特技は全てできるみたいだ。

 

まぁ、ドラクエシリーズ以外の呪文はこれしか覚えてないわけだが・・・・・・。

 

それはさておき対象者である小僧が飛んでいった先は窓があいている部屋だった。

おそらく窓から抜け出してここにきたのだろう。

小僧が部屋の中へと入ったことを確認した俺は睡魔に逆らうことなく眠りについた。

 

ああ、そう言えば人間の状態での魔法・特技の確認をするんだったっけ・・・・・・。

まぁ、それは起きてからでいっか・・・・・・。

 

*****

 

「シェンさん・・・・・・?」

「・・・・・・うん。ちょいやり過ぎた」

 

ロビンの問いかけに俺はそう呟く。

今現在、俺たちの周りにはオーク鬼の死体が転がっている。

その理由を語るには昼頃に遡らなければならない。

 

「ねぇ、シェン!」

≪何か用かい、主?≫

 

惰眠を貪っていると、主のモンモンに呼ばれたため目を開けて、用件を訊ねる。

 

「あなたにお願いしたい事があるんです」

≪願い事?≫

 

あの時、威圧をかけたのがいけなかったのか敬語のままのモンモン。

 

まぁ、それはさておき願い事とは何だろうか?

 

「香水用の秘薬“オークモス”を取ってきてもらいたいんです」

≪・・・・・・うむ≫

 

俺はそう呟き思案していく。

 

秘薬を取りに行くというのは構わない・・・・・・、構わないんだが、それが何なのか、それがどこにあるのかが分からんと、返事のしようがないぞ。

 

「私が知ってるよ、シェンさん」

 

どう返事しようか悩んでいると、モンモンの肩に乗っているロビンが口を開いてきた。

 

ふむ・・・・・・、ロビンが知っているのなら大丈夫か・・・・・・。

 

≪・・・・・・あい分かった。その願い引き受けよう。ロビンも一緒に連れていくが構わないか?≫

「は、はい」

≪うむ≫

 

俺は頷くと、顔をモンモンに近づける。

モンモンは『よ、よろしくお願いします』と言って、ビビりながらも肩に乗せていたロビンを俺の頭に乗せた。

 

「ロビンよ、その秘薬“オークモス”とやらがある場所を思い浮かべてくれ」

「分かったの♪」

「では・・・・・・、〔ルーラ〕」

 

俺はロビンが鬣にしがみついた事を確認し空へと飛びあがって、“ルーラ”の呪文を唱え秘薬があるという場所に向かった。

 

※シェンが一瞬で飛んでった様子を見ていたモンモランシーが驚いたのは言うまでもない。

 

「ここかい?」

「うん! でも凄いね、シェンさん。一瞬で着いちゃうんだもん!」

「ははは、そうか? さて、秘薬を探すとしようか」

「うん」

 

あ、そうだ。ここはロビンしか見てないから、テリーで捜索するか。

 

「どうしたの、シェンさん?」

「いや、ちょっとな。ロビン、ちょっとそこの葉っぱに乗ってくれ」

「? う、うん」

 

ロビンを近くの葉っぱの上に乗せた俺は“ドラゴラム”の呪文を唱えて、テリーへと変身する。

ロビンは『凄い! 凄い!』とはしゃいで、完全にテリーになった俺の肩に飛び乗ってきた。

 

「ねぇ、シェンさん。どうやってるの?」

「秘密だ」

「むぅ。ケチ」

「お前なぁ」

「えへへ♪」

 

頬を膨らませてすねるロビン。

俺は苦笑しながらロビンの頭を撫でる。

すると、ロビンは気持ちよさそうに目を瞑った。

さて、ロビンの機嫌が直ったところで秘薬探しを再開しよう。

 

「で、“オークモス”とやらはどこにあるんだ?」

「えっとね、ご主人様が教えてくれたんだけど」

「うんうん」

「オーク鬼が集まっている木の根元だって」

「うんうん・・・・・・。ん? オーク鬼?」

「うん。オーク鬼」

「オーク鬼っていうと、二メイルほどの身長と人間の五倍の体重、豚の顔と肥満した肉体を持つ亜人で、手だれの戦士五人に匹敵する戦闘力を持ち鬼の名の通り人間を喰らうと言われるあの・・・・・・?」

「うん。そのオーク鬼」

 

ロビンよ。何故、そんなに落ち着いてんだ?

お前にとっても物凄く危険な亜人でしょうが・・・・・・。

 

「シェンさんは凄い強い竜だから、安心だもん♪」

 

だもん♪って・・・・・・・。

まぁいい。なるべくオーク鬼に見つからなければ良い事だ。

 

そう思った俺は話を戻すことにした。

 

「で、なぜオーク鬼の集まる木の根元なんだ?」

「ご主人様曰く、オークモスはオーク鬼の大好物なんだって」

「ああ、だからね。じゃ、オーク鬼を探しますか」

「うん♪」

 

俺とロビンは“オークモス”を探すために、オーク鬼がいそうな場所へと向かって・・・・・・、いけなかった

 

「ふぎぃ!」

「ぴぎっ!」

「あぎっ!」

『『『『『 んぐぃぃいいいいいッ!』』』』』

 

なぜならオーク鬼によって、囲まれていたからだ。

 

あらら、こりゃ大ピンチってか?

 

「はぁ・・・・・・、運がいいのか悪いのか。ロビン、俺の襟に隠れてろ」

「う、うん!」

 

俺はため息を吐くと、ロビンに指示する。

取り乱すかと思ったが、意外に冷静な俺にちょっと吃驚している。

 

まぁ、それはその方がいいから良いが・・・・・・、どうすっかな・・・・・・?

 

俺は“ドラゴンスレイヤー”を抜いて、構えながら考えていく。

 

あ、一度やってみたい剣技があったんだった。

 

「ふぅ・・・・・・」

 

俺はゆっくり息を吐くと、棍棒を振りあげ襲ってくるオーク鬼たちを見据える。

そして無数の棍棒が振り下ろされた瞬間、空高く跳び上がることで回避し、両手を広げてデインエネルギーを溜める。

 

「ギガ・・・・・・、ブレイク・・・・・・!!」

 

そして、中心に集まっているオーク鬼たちめがけて、剣状のオーラを振り下ろし攻撃する。

 

『『『『『ぶぎゃぁあああああっ!?』』』』』

 

攻撃が直撃したオーク鬼たちは、焼き豚みたいにプスプスと煙を立てて倒れ込んだのだった。

 

まぁ、そんな感じだ。

ちょっと雑草も焦げてしまったんだけどね。

 

「さてオーク鬼がここにいたということは、この辺りに“オークモス”があるワケだ」

「うん、多分」

「さぁ探すぞ」

「うん!」

 

そう切り出した俺はロビンと共に周辺の木の根元を捜索する。

すると一つの木の根元に苔がびっしりと生えているのを発見した。

 

「これか? “オークモス”というのは?」

「うん♪ これでご主人様も喜ぶね♪」

「ああ、そうだな」

 

俺はロビンの背中の小壜に“オークモス”を入れると、ロビンを葉っぱの上に乗せて変身を解いた。

 

「さぁ、帰るか」

「うん♪」

 

ロビンを鬣にしがみ付かせ俺は空へと飛びあがって、“ルーラ”の呪文を唱え魔法学院に帰った。

 

※その後、モンモンが作成したシェンとロビンが持ち帰った“オークモス”入りの香水は高値で売れたとさ。

 

*****

 

モンモンにロビンと小壜を渡した俺は学院近郊の森へとやってきて、人間の姿における魔法や特技について確認していった。

で、確認して思ったことが、セーブしないと後々面倒なことになりそうだということだった。

 

「今後の課題はセーブ力を高めるだな・・・・・・」

 

今後の課題を決めた俺はあたりに誰もいないことを確認して、変身を解き学院へと戻ると、寛ぎ始めた。

そして、昨日と同じようなリアクションで食べ物を置いていくシェスタに苦笑しつつ、高級そうなお肉を“メラ”で焼きながら堪能していった。

説明
死神のうっかりミスによって死亡した主人公。
その上司の死神からお詫びとして、『ゼロの使い魔』の世界に転生させてもらえることに・・・・・・。

第五話、始まります。
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ゼロの使い魔 ドラクエ 呪文・特技 しんりゅう(神竜) テリー 

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