夜天の主とともに  1.新しい世界 
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夜天の主とともに  1.新しい世界

 

 

 

新しい世界に転生してから早4年が経った。

 

あの神様が言っていた通り俺は海鳴市というところで生まれたようだった。

もちろん男である。

魔力のことに関してはそもそも魔力というものがどういうものなのかがわかってないから実際に自分の中にあるのかわからない。聞いておけばよかったな。

 

これらの記憶は生まれてすぐではなくおおよそ2歳ごろに思い出した。

 

たぶん生まれてすぐから前の記憶があるといろいろと恥ずかしいだろうと神様が配慮してくれてあのだろう。危うく黒歴史が刻みこまれるところだった、神様マジ感謝。

 

ちなみに俺の名前は((時野健一|ときのけんいち))といういたって普通の名前だった。

 

それで現時点で支障があったことといえば2つほどある。

 

1つは俺は喘息にかかっていた。

よくゴホッゴホッ咳き込むあれである。

死ぬほどの喘息ではないし軽い時は少し咳き込む程度で済むのだがたまに大きな発作が起きた時などはその場から動けなくなり軽く呼吸困難になってしまう。

だからいつも親に携帯用吸入器をいつも持たされ発作が起きた時に使っている。

 

もう1つはそれほどの問題でもないといえばないのだが、精神が肉体年齢に引っ張られているということだった。つまり、

 

「ママ〜、公園に遊びに行ってきていい〜?」

 

このように年齢相応のしゃべり方になってしまっているのだ。

心の中では転生前と同じように思考できるのだがいざそれを口に出すとそうなってしまうのだ。

ちなみに今のところ一人称は『僕』だ。あと何年かしたら『俺』に変わるだろう。恥ずかしいが仕方ない。

 

「健ちゃん1人で大丈夫?」

 

「大丈夫だよ、僕男の子だもん」

 

「う〜んそうね。じゃあママと約束。あまりはしゃいで激しく動き回らないこと、発作が起きたらすぐにこれを使ってすぐに家に帰ってくること。約束守れる?」

 

母さんが吸入器を指差しながら言ってくるのを聞きながら改めていいところに生まれたなと思った。

俺が喘息だからというのもあるかもしれないけど父さんも母さんも俺のこととなるとほんとに親身になってくれる。おもわずこちらが照れてしまうぐらいだ。

 

「うん、約束する」

 

「うんいい返事ね。今日はお父さんも早く帰るみたいだから遅くならないようにね」

 

「うん、じゃあ行ってくる!!」

 

「いってらっしゃい」

 

母さんの声を後ろから聞きながら俺は海鳴公園に向かった。

 

実を言うと俺はまだ1人で1度も外で遊んだことがないのだ。

 

喘息のせいで1人で遊んだことはなく家族でどこかに行ったり父さんと遊んだりはしたことはあるのだがそれも家にある少し大きめの庭で喘息が起きない程度でだ。

近所に子供がいないわけではないがこれも喘息のため遊びの誘いを断ってきたため友達はまだいない。

 

最近になって喘息も安定してきてるからついに許しが今日になって出たのだ。だから走るとまではいかずともつい駆け足になってしまうのを抑えられなかった。

 

そして少し咳き込みながらも海鳴公園についた。

ここから新しい友達ができると思うとわくわくしてたまらない。

どんな子がいるのかと思いながら公園に入るといっぱい俺と同じくらいの子がいっぱいいた。

 

たださっきも言ったようにここに来るのは初めてなのでどのグループに行けばいいのかという壁に突き当たった。

 

(ん〜、おにごっこしてるのは喘息があるからダメ、野球もサッカーもダメ。あとは砂場か。あれなら激しく動くなんてありえないしちょうどいるみたいだから砂場に決定!)

 

砂場には金髪オッドアイで妙に顔が整った男の子と栗色の髪をリボンでツインテールにして結んだ女の子がいた。その2人を見ていると何となくだが女の子が嫌そうな表情をしているような気がした。

 

しかしその逆に男の子の方はその歳では妙に整ったいわゆるイケメンの顔で終始笑顔を女の子に見せつけながら話しかけている。

 

俺は近寄りがたいものを感じた。この世界に来る前から初対面の相手に対して話しかけるのが苦手だったのだがここであきらめたらきっとできないだろうな、よし行くぞ!

 

「ねぇ、僕も一緒に遊んでいい?」

 

「あん?なんだよ俺はなのはと2人で遊んでんだ、どっか行けよ」

 

いきなりの痛烈な一言。

俺の繊細な心は崩れそうになったがここでくじけてはだめと思いもうひと踏ん張りした。

 

「僕ここに来るの初めてでまだ友達もいないしちょっと僕病気だから砂場ぐらいでしか遊べないんだ」

 

そう言うと女の子がやったと言わんばかりに笑顔になった。

 

「そうなんだ、うんじゃあ一緒に遊ぼう!私高町なのはっていうの」

 

「僕は時野健一。君は?」

 

「フンっ!」

 

成功したと思って男の子にも名前を聞いたがどうにも嫌われているらしかった。まぁなにはともあれ友達ができそうである。

 

その後数時間ほど俺は3人と砂場で遊んだ。

砂の山でトンネルを作ったり泥んこ遊びをしたりと楽しかった。心配していた喘息も起きなかったから問題なかった。

そして楽しい時間はあっという間に過ぎいつの間にか夕方になっていた。こんなに外で遊んだのは初めてではないだろうか。

 

「あっ、もう私帰らなきゃ。お父さんたちが心配するし」

 

「なのは、俺が送ってやるよ」

 

「…………いいよそれぐらい、なのは一人で帰れるもん、じゃあ健一君またね〜」

 

手を振りながら帰るなのはちゃんに手を振りかえした。

そしてなのはちゃんの姿が見えなくなり俺も男の子にじゃあねと言おうとした。が、それはできなかった。

 

その男の子にいきなり殴られたからだ。

 

「いぎっ!な、なにするんだよ!!」

 

転生前にも殴られたことがなかった俺は頬に感じる痛みに驚きながら後ろに下がった。そしてその痛み以上に驚くことを男の子が言った。

 

「お前転生者だろ」

 

その言葉に思わずドキッとした。そんなことを聞くということは‥‥

 

「もしかして君も?」

 

「ふん、やっぱりな。俺のなのはに近づくからそうなんじゃないかと思ったんだよ。お前の中に魔力も感じられたしな」

 

「本当に僕以外にも転生した人いたんだ。ねェよかったら同じ転生者同士仲良くs「うるせぇ!!」あがっ!?」

 

話してる途中に少年は再びしかもさっきより力強く俺の胸を殴った。

 

「ゲホッゲホッな、なんでゲホッ!」

 

「なのはに近づく男は全部殺すと決めてるからに決まってんだろうが」

 

(俺を殺す?嘘だと思いたかったがどうにも本気のようみたいだ。でもこんな人がいっぱいいるとこなら)

 

「あぁちなみこの公園に封時結界張ったから誰にもここでのことはわからねぇから?」

 

「ゲホッ!えっ!?」

 

見渡すといつの間にか公園にいた人がみんな消えていた。あり得なかった。いくらこのタイミングで公園にまだ残っていた子たちが帰ったにしても不自然すぎた。

 

しかしどんどん混乱していく俺を待ってくれるほど現実は甘くなかった。

 

「そんじゃいっちょ殺しますか」

 

そういうと男の子は手をこちらにかざした。いったい何がしたいのだろうかと思っていると、その手に渦巻くようにして何かが現れようとしていた。

 

それを見た瞬間俺の頭の中で警鐘が大きく鳴った。あれに当たってはだめだと。

 

そう感じるよりも一瞬早く少年は『それ』を俺に放った。俺を舐めきっての事か『それ』が俺に近づいてくる速度はボールを投げてくるそれと同じくらいだった。しかし、投げているものがボールとは比べるのもおかしいであろうものだ。

 

受け止めるなんて考えは最初からなかった。放たれたと思った瞬間に横へ跳ぼうとした。しかし、先ほどの痛みでその動きが鈍る。

 

それでも奇跡的にギリギリではあったが直撃しなかった。その代わりに『それ』が地面に当たった衝撃によって俺は壁に叩きつけられた。

 

「ガハッ!?」

 

「おらどうした反撃して来いよ」

 

少年が何か言っていたが俺はそれどころではなかった。

胸を殴られたり壁に叩きつけられたりしたせいで発作が起きてしまったのだ。

それもかなり強めの。

 

「ゲホッゲホッゲホッ!!ゲホッ!!」

 

呼吸困難になりながらも俺はポケットに入った吸入器を取り出し口に当てた。

ヒューヒュー苦しい音を立てながら俺はなんとか発作を止めることに集中した。

 

男の子が今度は機械のような武器をどこからか出し、それを向けながら近寄ってくきた。逃げようにも逃げれない俺はとにかく発作を止めようとした。

 

「ん?なんだこいつ?ホントに病気だったのかよ。魔力は確かにあるみたいだが使ってこねぇし、ちょっと心の中を見てっと‥‥‥‥‥なんだよ、こいつ原作しらねぇのか」

 

「ゲホッ、ゲホゲホッ!!(ヒューヒュー)」

 

「じゃあ殺すまでもないか。おいお前。魔法も知らねェし原作も知らねェ、デバイスもねぇのなら今回は見逃してやる。だが、今度俺のなのはに近づいたら‥‥‥殺す」

 

そう言って少年は立ち去って行った。

それから30分ほどたったころにやっと発作が止まった。

そして緊張の糸が切れた途端体中をガタガタ震わせた。

 

(‥‥‥‥あれが神様が言ってた他の転生者。なんだよあれ、俺を殺そうとしたぞ。原作ってなんだよ!!)

 

あの少年はなのは、つまり今日出会った少女に近づくと殺すといった。

 

(やっと友達で来たと思ったのになぁ。もうここにも来れない‥‥‥‥いやもう来たくない、怖いよ)

 

そして俺は眼にたまった涙を拭ってから家へと帰った。

家に帰ると当然母さんと父さんが何があったのか聞いてきた。頬は腫れてるし、服もかなり汚れていたからだろう。

 

砂場で遊んでた時に転んだと2人にいい俺は自分の部屋に行った。

母さんと父さんに言えばきっとなんとかしようとしてくれるだろう。でもそしたら今度は2人がきっと殺される。あの男の子なら躊躇なくやるに違いない。だから俺は何も言わなかった。

 

その日から俺は公園はおろか外に出なくなった。

 

 

 

 

ちなみにこれは余談だが健一を襲った少年はほかの転生者と奪い合いになって殺し合い、多数いた転生者ともども死んでしまってたりする。

 

説明
イッツァ転生。
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