魔法少女リリカルなのは〜原作介入する気は無かったのに〜 第六話 ついに遭遇。誘拐犯と原作キャラ
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 今日は日曜日。時刻は現在8時半過ぎ。朝食を食べた後、俺は皆に今日の予定について聞いてみた。

 

 「皆は今日の予定どうすんだ?」

 

 「私は特に何もありませんね。家で過ごそうかと」

 

 「僕はW〇i S〇or〇sかな」

 

 「我も今日は家にいるぞ」

 

 「私は本屋さんにでも行こうかと思ってます」

 

 ふむふむ。家にいるのはシュテル、レヴィ、ディアーチェでユーリは外に出ると。

 

 「ユウキはどうするのです?」

 

 「俺?俺は釣りにでも行こうかなと思ってる」

 

 「「「「釣り?」」」」

 

 皆の声が重なる。

 

 「ああ。朝から物置の整理をしてたら釣り竿があったんでな。で、ちょっと釣りでもしようかなと」

 

 「ユウは釣り得意なの?」

 

 「シュテル達と会う前に2〜3回やった程度だからなあ。まあ、釣れるか釣れないかなんてやってみないと分からないし」

 

 「今から行くのか?昼はどうするのだ?」

 

 「今から行くよ。昼はまあ、コンビニで適当に買って済ませる」

 

 「ユウキよ、少し待てるか?何ならその…我がサンドイッチでもよ、用意してやるが?//」

 

 頬を少し赤らめて言うディアーチェ。

 

 「そうだなあ…。ディアーチェ、お願い出来るか?」

 

 「う、うむ!ならすぐに作ってやるから」

 

 笑顔でキッチンに向かうディアーチェ。

 

 「「「むうう〜」」」

 

 そして三人にジト目で見られる俺。

 

 「あの、何か?」

 

 「何でもないです」

 

 「どうせ僕は料理できないよ〜だ」

 

 「サンドイッチなら私だって作れるのに」

 

 俺、何も悪い事してないよね?

 ま、まあ黒いオーラが出てないだけマシだよな、うん。

 

 「そ、そういえばお前等の昼はどうすんだ?外で食うのか?」

 

 それとも誰かが作って食うのかな?

 

 「なら昼は私が作ります。最近料理してませんから」

 

 「シュテル。私もお昼前には帰ってきますのでお手伝いします」

 

 シュテルとユーリが作るようだ。

 

 「むう〜、やっぱり僕も料理覚えようかな〜」

 

 レヴィは悩んでいる。

 

 「レヴィ、前にも言ったけど料理するなら絶対に誰かと一緒にしろよ」

 

 「僕も前に言ったけど最初はユウに教えてもらうって決めてるんだよ」

 

 あ〜、言ってましたねそんな事。

 

 「じゃあ今度練習するか?今日はもう釣りに行くって決めたから無理だけど」

 

 「ホント!?」

 

 凄い勢いで聞き返してきた。うわ、目がキラキラと輝いてるよ。

 

 「レヴィにやる気があるならな」

 

 「うん!僕、頑張るよ!!」

 

 力強く頷き返事をするレヴィ。そんなレヴィの頭を撫でてやる。

 

 「あ………えへへ////」

 

 お〜お〜、顔がふにゃってなってるよ。

 

 「「………………」」

 

 ジィィィィィッ…

 何かさっきより鋭い視線が突き刺さる。

 

 「…ユウキ」

 

 「はい!!」

 

 ユーリさんに呼ばれる俺。まさかO☆HA☆NA☆SHIじゃないよね!?

 

 「私にも料理を教えて下さい」

 

 「は?」

 

 「ですから私にも料理を教えて下さい!」

 

 「いやいや!ユーリは料理出来るでしょ?」

 

 「それはそうですけど…」

 

 何でユーリは料理が出来るのに教えてほしいんだ?

 

 「ユウキは勿論、シュテルやディアーチェみたいに得意な料理があまりありませんし」

 

 あ〜、そういう事か。

 

 「つまりもっと色んな料理を作れるようになりたいと?」

 

 「はい」

 

 そういう事なら協力してやってもいいかな。

 

 「分かった。ユーリにも色んな料理を作れるように教えるよ」

 

 「本当ですか!?約束ですよ!」

 

 ユーリも約束した事が嬉しいのか笑顔になる。

 

 「むうううう〜〜」

 

 そして頬を膨らまし睨んでくるシュテルさん。

 

 「ユウキ!!」

 

 「は、はい!!」

 

 思わずピンと背筋を伸ばし返事をする俺。シュテルさんはすごく不機嫌そうだ。

 

 「レヴィとユーリには料理を教えるんですよね?私には何をしてくれるんです?」

 

 「えっ?いや、何をと言われても…」

 

 「二人には料理を教えるのに私にだけ何もしないのは不公平です」

 

 「う〜ん…じゃあシュテルにも料理教えたらいいのか?」

 

 シュテルにはもう教える必要無いと思うけどなあ。

 

 「ではお菓子の作り方を教えて下さい」

 

 「お菓子?」

 

 「はい」

 

 お菓子ねえ…。

 

 「まあいいけどレヴィやユーリとは一緒に教えられないぞ?」

 

 流石にキッチンもそんなに広い訳じゃないしな。

 

 「構いません。むしろ望むところです(ユウキと二人きりになれますしね…///)」

 

 シュテルの頬が若干赤いような?

 

 「なら我にも教えてもらおうか?」

 

 声がした方を向くとディアーチェが立っていた。弁当を作り終えたらしい。

 

 「ありがとうディアーチェ。で、教えるってのはお菓子作りの事か?」

 

 弁当を受け取りながら尋ねる。

 

 「うむ。よく考えれば我も菓子は作った事が無いしな《二人きりにはさせんぞシュテル》」

 

 「ディアーチェなら本を見て一人で出来るのでは?《邪魔しないで下さいディアーチェ》」

 

 何やら二人の間に不穏な空気を感じるな。とっとと出て行かないと巻き込まれそうな気がしてならない。

 

 「ま、まあ二人まとめて見るかどうかはシュテルとディアーチェで決めといてくれ!俺は釣りに行くから!じゃあ行ってきます!!」

 

 そのまま俺は弁当と釣り竿を持って家を飛び出した…。

 

 

 

 そして俺は今釣りをしに海へきている。場所は海水浴場に使われている砂浜のある所から少し離れた防波堤。すぐ近くには倉庫が沢山ある。この辺りに人が来るなんてまず無いだろうからのんびりと釣りが出来る。

 

 釣りを始めて1時間…。

 

 「……………………」

 

 1時間半…。

 

 「……………………」

 

 2時間…。

 

 「……………………」

 

 2時間半…。

 

 「釣れないなあ…」

 

 「釣れないね」

 

 俺の呟きに反応する声が一つ。

 

 「ダイダロス。この辺に魚はいないのかな?」

 

 「ちゃんといるよユウくん。反応あるもん」

 

 俺の左腕に着けている腕輪から声が聞こえる。

 名前はダイダロス。俺のデバイスだ。

 

 「しかしここまで釣れないとヒマだな」

 

 「じゃあ、もう止めて帰る?」

 

 「いや、まだ昼前だし夕方まではやるつもり。そう簡単に諦めるつもりは無いな」

 

 「そうなんだ」

 

 「あと、最近アイツらといたら何故かO☆HA☆NA☆SHIを受けやすいからな。そもそも俺としてはO☆HA☆NA☆SHIばっかりするアイツらに彼氏がちゃんと出来るのか不安だぞ」

 

 「そ、そうだね(ユウくんは皆の気持ちに気付いてないんだね。シュテルちゃん達も大変だ)」

 

 「けど腹が減ってきたな。ちょっと早いけど弁当食うかな」

 

 俺は((王の財宝|ゲート・オブ・バビロン))から弁当を取り出す。

 ディアーチェが作ってくれたサンドイッチだ。玉子サンドにカツサンド、ツナサンドにBLTサンドがある。あの短時間でよくこれだけ作れたもんだな。そう思いながらサンドイッチを一つ食べる。

 

 パクッ……モグモグ……

 

 美味い。アイツまた料理の腕上げたな。

 ゴクンと飲み込みすぐに次のサンドイッチに手を伸ばす。

 それからあっという間に弁当を平らげ腹が満腹になった俺は釣りを再開するのだった……。

 

 

 

 弁当を食ってから更に4時間程が過ぎた。時間は3時半過ぎ。未だ一匹も魚が釣れず無駄に時間が流れていく。夕方ではないがもう帰ろうかなと思い始めた時、こちらに近付いてくる車があった。

 小さなトレーラーが一台にワゴンが4台。車は俺が釣りをしている場所から少し離れた所にある倉庫の一つの前で止まった。ワゴンからはチンピラ風の男達、トレーラーからは一組の男女が降りて倉庫へと入っていく。どうやら誰も俺には気付いていない。そしてチンピラ風の一人の男に抱えられ、縄で手足を縛られた俺と同い年ぐらいの女の子がいた。

 

 「(あの子は…)」

 

 俺はその女の子を知っていた。その子とは今まで会った事も話した事も無いが、((原作知識|・・・・))を持っているからこそ俺はその子を知っていたのだ。紫色の長い髪、頭につけている白いヘアバンド、間違い無い…

 

 「月村すずか…」

 

 そう、原作キャラの一人である月村すずかだった。

 

 連中が倉庫に入った後、俺はこっそり倉庫の前に行き、僅かに開いている扉の隙間から中の様子を窺う。

 

 「何してるんだろうね?」

 

 ダイダロスが聞いてくるが

 

 「本気で聞いてるのかそれ?」

 

 「冗談だよ。どう見ても誘拐…だよね」

 

 こんな所に手足を縛って連れて来るのだ。それ以外に普通は考えんわな。

 

 「月村家もお金持ちだからね。身代金目当ての誘拐かな?」

 

 「お前…月村が金持ちとかよく知ってるな」

 

 「私は『リリカルなのは』に関する知識は一通り詰め込まれてるから」

 

 「そうなのか?」

 

 「そうだよ」

 

 今まで知らなかった。まあ、そういうのも有りか。神様にもらったデバイスだし。

 

 「だけど身代金じゃなくて目当ては月村の財産そのものだろうな」

 

 「えっ?何でそんな事が分かるの?」

 

 俺のハッキリ答えた言葉に疑問を浮かべ聞いてくるダイダロス。

 

 「あの男がいるからな」

 

 そういって俺は一人の男を指で差した。

 その男はさっきトレーラーから出てきた男女の内の一人だ。小太りで眼鏡をかけ、オールバックでひげを少々生やしている。

 

 「月村安次郎…」

 

 俺は呟いた。

 

 「月村安次郎?誰?」

 

 ダイダロスは知らないようだ。

 

 「お前、『リリなの』原作しか知らないのか?なら無理はないさ。アイツは『リリなの』には出てきてない。『とらハ3』のキャラだからな」

 

 そう、『リリカルなのは』の原典である『とらいあんぐるハート3』に出てきた月村家の財産と、とらハ3では自動人形であるノエルを狙っていた小悪党。

 

 「そうなんだ…」

 

 「ああ、しかしアイツがいるとはな。まあここはIFの世界だし…それに((あの人|・・・))もいたから何ら不思議ではないんだが」

 

 しかしこの展開はとらハ3の忍ルートに若干共通しているな。それに安次郎の隣にいる女性…あれは

 

 「イレインか」

 

 ノエルの後期型で最終機体。『夜の一族』の失われた技術で作られた存在。表情は無表情で冷たい目をしている。

 

 「で、どうするのユウくん?」

 

 「どうするって?」

 

 俺はダイダロスに聞き返す。

 

 「ここで彼女を助けるのかって事」

 

 「助けるね」

 

 俺は迷う事無く即答した。

 

「いいの?ユウくんは原作に関わりたく無いんだよね?ここで彼女に関わったら原作に介入しちゃうかもそれないよ?」

 

 「確かに関わりたくは無いが月村すずかとはいずれ出会う事になってるからな。早いか遅いかの違いだ。それに…」

 

 「それに?」

 

 「こういう事する奴らは流石に許しておけんだろ?」

 

 「そうだね」

 

 「あと、魚が釣れなかったせいでストレスが溜まってるから暴れて発散したい」

 

 「むしろそっちが本命!?」

 

 「冗談だって冗談。…さて無駄話はここまでにしてとっとと行きますか。ダイダロス、セットアップだ。ついでにリミッターも解除。」

 

 「分かったよユウくん」

 

 光に包まれる俺。そして光が止んだ俺の服装は変わっていた。

 黒いカッターシャツに白いズボン。シャツの上には黄緑のジャケットを羽織っている。

 そして普段リミッターで抑えていた魔力も解放する。

 

 「じゃあ、まずは人質の傍にいきますか。…『((拒絶観測|キャットボックス))』」

 

 俺は((拒絶観測|キャットボックス))を使い、存在を消してから倉庫に入り一直線に月村すずかの傍に行き、彼女を襲おうとする男の前で姿を現し思いきり男を蹴飛ばした。

 

 「いい大人が女の子を襲おうとするなんてどうかと思うがな」

 

 

 

 〜〜すずか視点〜〜

 

 私は今、街から離れた所にある倉庫に連れてこられている。メイドのファリンと一緒に街へ買い物をしていたのだが街中でファリンとはぐれた時に知らない男の人達に突然車に押し込まれ手足を縛られた。

 誘拐…。

 真っ先に私の頭の中に浮かんだ言葉だ。

 私の家は一般家庭と比べると裕福で、仲の良い友達には「相変わらず大きい家だよね」と良く言われる。だからこういう事をする人達がいる事も理解していた。学校へ行く時はバスを使い、家に帰る時、塾や習い事から帰る時にはアリサちゃんの車で家まで送ってもらうかメイドのノエルに迎えにきてもらっている。

 最近は特に怪しい人達がこの街で見かける事があるので注意しなさいとお姉ちゃんに言われていたのに…

 お姉ちゃん心配してるだろうな。ファリンも責任を感じてそうだ。

 どうしよう…。

 そんな事を考えている内に私を誘拐した人達の間から一人の男の人が近付いてくる。私はその人の事を知っていた。

 

 「久しぶりやなあ、すずか」

 

 「安次郎…おじさん」

 

 月村安次郎おじさん。私達の親族の一人で月村の財産を執拗に狙っていると前にお姉ちゃんから聞かされていた。おそらく私を誘拐するように指示をしたのはこの人だろう。そして狙いはおそらく…

 

 「手荒な事して悪いなあ。でもワシももう手段を選んでる余裕はないんや」

 

 「こんな事までして…。どうしてそんなにお金が欲しいのですか!?おじさんだって…決して貧乏じゃないのに」

 

 「世の中は、お前や忍みたいにな………キレーな姿して、才能にあふれてる連中ばっかとちゃうねん。ワシらみたいな凡俗はな……金がのうなったら愛も幸せも手に入らへんのや!」

 

 「だからって!」

 

 「もうええ。このままお前と話しても意味はない。後は忍が財産渡すか渡さんか、そんだけや」

 

 そう言って私から離れて女性の傍に行く安次郎おじさん。そしてそんなおじさんの傍に一人の男の人が近付く。さっき私を抱えていた人だ。

 

 「安次郎さん」

 

 「何や?分け前の話やったら前にしたやろ?」

 

 「いやいや、そういう事ではないです。人質のあの子の事ですが…」

 

 その男の人の視線が私に向く。私は身震いした。車の中でも見られていた時に感じた不快な視線。

 

 「…ああ、そういう事か。好きにしたらええ」

 

 「ありがとうございます。…へっへっへ」

 

 私に近付いてくる男の人。

 

 「安次郎さんから許可も出たし少しの間、俺と楽しもうや」

 

 この人の言った事がすぐ理解できた。そして身体が強張った。

 この人は私を…犯す気だ。

 嫌だ嫌だ嫌だ!怖い、怖いよ!!

 私は手足を縛られながらも必死にもがく。逃げようとするがろくに動く事もできずもう男の人は目の前に来ていた。

 

 「い…いや…!いやぁ!」

 

 誰か!誰か助けて!!お姉ちゃん!!ノエル!!ファリン!!

 私は家族の名前を必死に心の中で叫ぶ。そして男の人が私に触れようとした瞬間…

 

 

 「いい大人が女の子を襲おうとするなんてどうかと思うがな」

 

 

 突然何も無いところから姿を現した『何か』から声が聞こえ私に近付いていた男の人が吹き飛んだ。

 

 「……え?」

 

 思わず目をパチクリさせた私。そして……

 

 「大丈夫?」

 

 私の目の前にいたのは、私と同い年ぐらいの男の子だった…………。

 

 

 

 〜〜すずか視点終了〜〜

 

 「大丈夫?」

 

 とりあえず彼女の方を向いて声を掛けた。彼女は呆然としている。まあ、いきなり姿見せたらビックリして固まるわな。

 

 「お〜い、大丈夫か〜?」

 

 もう一度声を掛ける。

 

 「…あっ!は、はい。私は大丈夫です」

 

 「そっか。それは良かった」

 

 俺は彼女に微笑み縄を解いてあげる。

 

 「……はっ!!な、何だテメエは!?」

 

 「こ、このガキ。今どこから現れやがった!?」

 

 突然の出来事に固まっていたチンピラ達も意識が再起動したようだ。そしてポケットから折り畳み式のナイフを取り出す。

 

 「一匹も魚が釣れずどこかでストレスを発散したいただの釣り人だ!!」

 

 そう答えておく。

 

 「やっぱりそっちの理由が本命なんだね…」(ボソッ)

 

 何かダイダロスが呟いた様な気がしたが…まあ、今はいい。それよりも

 

 「ああ!?ふざけてんのかクソガキ!!!」

 

 チンピラ達が吠えるが別にふざけてなんかないんだけどなあ。

 

 「黙れロリコン共、喋るな。頭の中も見た目も残念な連中のくせに。」

 

 とりあえず挑発してみると怒りが増したのだろう。憤怒の表情になっている。そして何人かが襲い掛かってきた。

 

 「よっと」

 

 「きゃ!」

 

 縄を解いたすずかを抱えてチンピラ達の攻撃をかわし距離を取る。

 

 「悪いけどここでジッとしててくれ。すぐ終わらせるから」

 

 「えっ?あの…」

 

 彼女が言い終える前に俺はチンピラ達の方を向き、

 

 「とっとと片付けるかな」

 

 俺は足元に魔法陣を展開させた。魔法陣の形は真円。俺の魔法はミッド式だ。

 

 「魔力を感知されない様に出力は出来るだけ抑えて…っと」

 

 そして俺の周りに魔力の球体が現れる。その数は17。チンピラ達と同じ数だ。球体はフワフワと俺の周りに浮かんでいる。

 

 「な、何だありゃあ!?」

 

 「いきなり変な玉が現れやがったぞ!?」

 

 魔力の玉を見て驚くチンピラ達。まあこの世界には魔法文化なんてないから驚くのも当たり前か。

 

 「どうせトリックか何かだろ!構わねえ、やっちまえ!!」

 

 一人おチンピラが声を掛け再び襲い掛かろうとするチンピラ達。だが

 

 「いけ!アルテミス!!」

 

 ビュビュビュビュビュッ!!

 

 俺が声を出すと同時に俺の周りに浮かんでいた球体が一斉にチンピラ達に向かう。

 

 『アルテミス(Artemis)』

 

 原作『そらのおとしもの』のイカロスの武装の一つ、永久追尾空対空弾である。一度放つとその名の通り対象に命中するまで追い続ける。自動的に追いかけていくので俺が制御する必要も無い。これを完全に躱すのはほぼ不可能なので相手は撃ち落とすかシールドで防ぐしかない。

 

 全ての球体がチンピラ達に命中する。顔や腕、腹など当たる所は様々だが

 

 「ぎゃああっ!」

 

 「痛えええっ!」

 

 悲鳴を上げているチンピラ達。しかし魔力は極力抑えて放ったので一撃で意識を奪う程の威力ではなく痛みを感じる程度だ。

 

 「このガキャアッ!!」

 

 「やりやがったな!!」

 

 更に怒りを露わにするチンピラ達だが俺はすでに次の行動に移っていた。

 発動の条件は相手に攻撃を当てる事………。

 

 「『((実行不能|エラーコード))』」

 

 俺がそう呟くと同時にチンピラ達の様子が変わる。

 

 「な、何だ!?どうなってんだ!?」

 

 「見えねえ。何も見えねえよおっ!」

 

 突然視覚を奪われ混乱するチンピラ達。

 やはりただのチンピラ達だな。これなら簡単に片づけられる。

 

 ドガッ!

 

 「がはっ」

 

 ドサッと音がして一人のチンピラが倒れる。俺が正面からチンピラの腹に魔力で多少強化した拳を叩きこんだからだ。

 

 「お、おい!どうした!?」

 

 「なんで!?なんで何も見えねえんだよおっ!?」

 

 すぐさま俺は近くにいるチンピラに回し蹴りを放つ。

 

 ドゴッ!

 

 「げふうっ」

 

 最初の一人と同じ様に吹き飛ばす。

 

 「ひいっ!」

 

 「ど、何処だ!?何処にいやがる!?」

 

 視力を奪われて怯え、叫ぶチンピラ達を無視し俺は次々と倒していく。

 

 『((実行不能|エラーコード))』

 

 相手の五感を一時的に奪う能力。どの感覚を奪うかは使用者である俺の意思で決める事が出来る。これによって相手に恐怖を与え排除するのに特化した能力である。発動の条件は相手に何らかの攻撃を与えなければならない。

 

 最後の一人も倒し、残るは安次郎とイレインだけになった。

 

 「後はお前等だけだな」

 

 「…小僧、お前何モンや?」

 

 安次郎が俺に尋ねてくる。

 

 「さっき名乗っただろ?ただの釣り人だ」

 

 「ならさっきの妙な力はなんや?ただの釣り人にあんな事出来るかい」

 

 そりゃごもっともだ。

 

 「……アンタら『夜の一族』とは違うが、俺も普通の人間じゃないとだけ答えておこうか」

 

 「な!?」

 

 「っ!」

 

 驚く安次郎。すずかもビックリしている。まあこんな子供が夜の一族について普通は知らんわな。

 

 「…小僧、ただもんやないな。ワシらの事知っとるっちゅー事はお前も一族の一員か?」

 

 「何故知ってるかなんて言うつもりは無いが、それは違うとだけ言っておく」

 

 「……まあええ。お前がただの小僧やないのはよー分かった。……イレイン」

 

 「……………………」

 

 安次郎の傍にいた自動人形、イレインが安次郎の前に出る。と、同時にトレーラーから5つの人影も降りてこちらにやってくる。全員がイレインと同じ姿形をしている。どうやらイレインの姉妹機のようでやはり表情は無い。

 

 「ターゲットはあの小僧や…行け」

 

 「了解」

 

 イレインは安次郎の命令に従い腕にブレードを装着する。他の姉妹機は安次郎を護衛するように囲む。が…

 

 「悪いけど先手必勝だ……『((禁猟区域|インポッシブルゲート))』」

 

 瞬間、俺の姿は消え

 

 「っ!?」

 

 イレインの目の前に現れた。

 

 「でえいっ!」

 

 ドガッ!

 

 俺の一撃はイレインに決まり吹き飛ぶイレイン。チンピラと闘っていた時よりも更に少しだけ魔力強化を施しているので先程よりも威力は高い。

 

 『((禁猟区域|インポッシブルゲート))』

 

 10メートル前後の直線距離を移動出来る短距離転移能力。直線上に遮蔽物があれば転移が止まってしまうので転移の際には遮蔽物を除けねばならない。ま、これに関しては今後の訓練次第でもっと転移出来る距離も伸び、遮蔽物の有無に関わらず敵に接近出来るだろう。

 

 先手を決めた俺だが一応魔法陣を展開しておく。自動人形であるイレインもすぐに立ち上がる。しかし

 

 「ああああああっっっっ!!!!このガキィィィィィッッッッ!!!!!」

 

 突然声を上げ、感情を露わにするイレイン。安次郎もいきなりの事で驚いている。

 まさかさっきの一撃でイレインのリミッターが外れたか?そんな事を考えていた俺に

 

 「お前達!あのクソガキを切り刻んでやりな!!」

 

 イレインが姉妹機に命令をする。姉妹機達は安次郎から離れ全員腕にブレードを装備する。そして一斉に襲い掛かってくる。

 

 ブンッ!

 

 次々とブレードを振り下ろし攻めてくる姉妹機。動きに無駄が無く見事な連携で俺は今の所回避に徹していた。

 たまに隙を見つけるが他の姉妹機がカバーに回り、相手の懐に踏み込む事が出来ない。

 

 「あれがイレインの指揮能力か。大したもんだ」

 

 俺は冷静に姉妹機の動きとイレインを観察する。

 

 『指揮能力』

 イレインは5つの別の姉妹機を一人で制御する事が出来る。イレインが最終系と呼ばれるのはこの能力があるからこそである。

 

 「冷静に見てる場合じゃないでしょ。力を抑えている今のユウくんじゃ5体同時は少しキツいんじゃない?」

 

 ダイダロスが俺にそう言う。確かに魔力を感知されないために力を抑えて闘っている俺にはちょいとキツい。だが…

 

 「まあな。でもこっちも準備は出来た。イレインもまとめて一気に終わらせるさ」

 

 そう、俺はただ回避だけをしていた訳ではなく、少しずつ魔力を溜めていた。その証拠にイレインに攻撃を加えた直後から展開していた魔法陣は輝きを少しずつ増している。

 

 「街からは結構離れてるし、これぐらいの魔力なら多分誰にも気づかれないだろ」

 

 「何をゴチャゴチャと。いい加減切り刻まれな!!」

 

 イレインも加わり6体で四方八方から同時に向かってくるが

 

 「これで終わりだ!!アフロディーテ!!!」

 

 魔力の衝撃波がイレイン達に直撃。そして

 

 「な、何だ!?何かが私の中に!!?ぐううっ!!」

 

 困惑し、苦しみだすイレイン。他の姉妹機達も動きを止めその場に倒れていく。

 

 『アフロディーテ(Aphrodite)』

 

 原作『そらのおとしもの』でニンフが使っていた素粒子ジャミングシステム。対象のプログラムに干渉し、侵入する事が出来る。俺は魔法として使用しているので強制干渉魔法といった所か。生物には効果が無いが機械やプログラムには絶大な効果を発揮する。

 

 魔力によるハッキングを受け、更にプログラムの強制停止を試みる。イレインも必死に抵抗するが俺の魔力を退ける事が出来ず遂に停止してしまった。

 

 「そ…そんなアホな。夜の一族の技術の結晶がこんな小僧に」

 

 「さて、後はお前だけだ。大人しく自首する事を勧めるぞ」

 

 「ひっ、ひい〜」

 

 こちらに背を向け走り出すが

 

 「逃がさねえよ」

 

 ((禁猟区域|インポッシブルゲート))で一気に安次郎に近付き手刀を首に叩きこむ。

 

 「がっ!」

 

 その場に崩れ落ちる安次郎。

 

 「ま、こんなもんかな」

 

 こうして俺は誘拐犯達を叩き伏せ、月村すずかの救出に成功するのだった……。

 

説明
神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。
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