魔法少女リリカルなのは〜原作介入する気は無かったのに〜 第七話 原作キャラとお友達に |
「さて、コイツら縛って警察に引き渡すか」
縄が倉庫に無いか探す俺。『((王の財宝|ゲート・オブ・バビロン))』の中には縄なんて無いからなあ。……『((天の鎖|エルキドゥ))』でも使って縛るか?とか考えていると
「あの…」
すずかちゃんが声を掛けてきた。
「どうかした?」
「その…助けてくれてありがとうございます」
「ん、そっちこそ無事で何より」
縄を探しながら会話をする俺。倉庫の奥の方は……っとあったあった。結構丈夫そうだな。しかもたくさんある。都合が良すぎるような気がするがまあいいか。
俺は倒れている安次郎とチンピラ達を縄で縛っていった。イレインは起動停止させているので縛らなくても問題無いだろう。
「これで良しっと」
ほどいたり縄抜け出来ないようにしっかりと縛る。
俺はポケットから携帯を取り出すとすずかちゃんに渡す
「え?」
「連絡だよ。家族の人とかきっと心配してるだろ?」
「あっ、そうですね」
俺の携帯を使い、家に電話するすずかちゃん。その間に俺はイレイン達をどうしようか考えていた。
まさか警察に直接渡す訳にもいかんだろうし、かといってこのまま放置というのもなあ…。
俺がしばらく悩んでいると
「あの…携帯、ありがとうございました」
「ん?ああ、家族は心配してた?」
「はい。でも無事だって事を伝えておいたので」
「それは何より。ところでさ」
「は、はい!何でしょうか!?」
「俺ってさ…怖かったりする?」
「えっ?」
そう、さっきから彼女の態度は俺から距離を置いているような感じでその瞳からは怯えているような印象を受ける。原作キャラ達と違い、見知らぬ少年があんな力を使って大の大人や自動人形を倒してしまうのだ。怖がってしまうのも無理は無い。
「ゴメンな。でも君には何もしないからそれだけは信じてほしい」
「あっ…ち、違います!その、貴方の事は別に」
どうやら俺の事を怖がってはいない様だ。じゃあ一体…
「貴方こそ…私の事が怖くないんですか?」
「へ?」
「私もその…安次郎おじさんと同じ……夜の一族…化け物ですから……普通の人間じゃ、ないんです」
顔を俯かせ答えるすずかちゃん。
ああ、そういう事か。彼女は確かに普通の人間と違う。身体能力が同年代の子供よりも高く将来的にはおそらく血を吸う事になるであろう吸血鬼なのだ。そんな自分が化け物だと思われ初対面の俺に嫌悪・拒絶されるかもしれない、そう思っているからこそ彼女の瞳は怯え、不安に染まっているのだろう。でも
「別に怖いとは思わないけど?」
俺は当たり前の様にそう答えた。
「えっ!?」
えらく驚いてるなあ。
「君が夜の一族ってだけでしょ?他の人はともかく俺は別に怖くないし」
「で、でも…」
「大体、君のどこが普通じゃないんだ?」
「それは…同年代の子供よりも身体能力が異常に高いですし…」
「それだけ?」
「血も吸いますし…」
「誰かから吸った事あるの?」
「あ、ありません!!輸血用のパックに入っている血液でも代用は出来ますから、人から吸わなくてもそれほど問題にはなりません!!」
「他には?」
「えっと…それぐらいですけど…」
「なら問題無いじゃん。他の子より身体能力が高いだけなら気にする程じゃないし、血だって他人から吸わなくてもいいみたいだし。ほら、普通の人間とあまり大差無いじゃん」
「……………………」
「第一、君なんかより俺の方がよっぽど普通の人間じゃないと思うけどね。不思議な力で簡単に大人を倒せるんだし」
それに転生者だからねえ。普通の人間とは言い難いよなあ。
「だからそんなに気にする事はない。俺に比べたら君はずっとマシだって」
「……………………」
「もし、君の事を化け物だなんて言ってイジめる奴がいたら俺が変わりにぶん殴ってやるよ」
俺がそう言うと
「…う……うう……」
すずかちゃんが突然泣き始めた。
「ど、どうしたの!?俺、何か酷い事言った!?」
「…ち……違い…ます……。私の事……怖くないって言ってくれたのが……嬉しくて……」
どうやら酷い事言って泣かせた訳ではなかった。
「初めて会った人に……私を助けてくれた人に……気味悪がられて……拒絶されるかもしれないと思って……」
「そっか…」
俺はすずかちゃんに少し近付き
「さっきも言ったけど俺は君の事怖がったりしてないよ。気味悪がったり拒絶したりもしない。だから安心して」
その言葉がきっかけで限界を超えたのだろう。すずかちゃんは声を出して泣き出した。
俺はそんな彼女の頭を優しく撫で続けるのだった………。
しばらくして泣き止んだすずかちゃん。泣いている間に頭を撫でられていたのが恥ずかしかったのか今は顔を赤くしてやや俯いている。
「ところでさ…」
俺はさっきから考えていた問題を口にする。
「これ、どうしたら良いと思う?」
そういって俺は指を差す。その先にはイレインとその姉妹機達があった。
「警察に渡す訳にはいかないだろうし、渡したとしても説明するのがなあ…」
「なら私の家に持っていくのはどうですか?」
すずかちゃんが提案してきた。
「君の家に?」
「はい。私には姉がいるのですけど、姉も夜の一族で月村家の当主ですから」
姉……月村忍か。確かに彼女に渡しておいた方がいいかもな。
「じゃあ、そうしよう。警察に渡すよりは良さそうだ」
俺も彼女の提案に賛成した。
「あの…」
「ん?」
「聞きたかったんですけど、どうして貴方は夜の一族の事を知ってるんですか?」
すずかちゃんが俺に問いかけてきた。
「ああ、それは俺が小さい頃の事なんだけど両親と家族で旅行に行った際に一族の人と合ったんだよ。で、その人の抱えている問題に家族共々巻き込まれたのがきっかけで知り合いになったってとこかな。その時に夜の一族の事を知ったんだ」
「そうだったんですか」
「うん。……そうそう、こっちも聞きたい事があるんだけどいいかな?」
「何ですか?」
「さっき君のお姉さんが『月村家の当主』って言ってたけど、ひょっとしてお姉さんの名前って『月村忍』さんって言うのかな?」
「えっ!?お姉ちゃんを知ってるんですか!?」
知ってます。原作知識でとは勿論言えない。
「その知り合いの人に名前だけ聞いた事があって実際に会った事は無いよ。あと、妹がいるっていう事も」
そう答えておく。まあその人から聞いたのも事実だし。
「その知り合いの人って何ていうお名前なんですか?」
「『綺堂さくら』さんだよ」
俺が知り合いの人の名前を教えるとすずかちゃんは驚いている。
「さくらさんの知り合いだったんですか!?」
「そういう事」
「それなら納得できます」
「納得してくれて何よりだよ。それとお願いがあるんだけど…」
「お願い?何ですか?」
「敬語で喋るのは止めてほしいかな。俺達同い年らしいから」
「同い年!?」
更に驚いた表情になるすずかちゃん。
「さくらさんからは俺と同い年の妹だって聞いてたんだけど?」
「ご、ごめんなさい。初めは同い年かなと思ったんですけど、なんか雰囲気が同い年とは思えなくて」
「だから年上だと思った、と?」
「…はい」
「うう、それはちょっとショックかも」
まあ精神年齢は確かに上なのである意味間違ってはいないんだけど。
「ごめんなさい」
「…いや、いいよ。そこまで気にしてないから。ただ敬語は止めてくれると嬉しい」
「わかりま……わかったよ。あ、私はすずか。月村すずかっていうの。え〜っと…」
「ああ自己紹介がまだだったっけ。俺は「すずか!!」…?」
自己紹介しようとしたら突然倉庫の入り口の方から大きな声が聞こえ、俺とすずかちゃんはそちらを向いた。すると…
こちらに一人の女性が駆け寄ってきた。
「お姉ちゃん!」
すずかちゃんもそう叫んで女性の方に寄っていく。
「良かった!本当に無事で良かった!!」
そういってすずかちゃんを強く抱きしめる。
「うん。彼が助けてくれたから」
「彼?」
そういって俺の方を向く女性。すずかちゃんと同じ紫色の髪を腰ぐらいまで伸ばしているこの人は間違い無く
「そう。妹を助けてくれてありがとう。私は月村忍。この子の姉よ」
月村忍本人だった。
「いや、彼女とここで会ったのは偶然ですから。俺はただ釣りをしにきてただけなんで」
「でも君がいなければこの子はどんな目に遭っていたか分からないもの。だからお礼を言わせて」
「…まあ、そうですね。ならありがたくその言葉を受け取っておきます。ところで誘拐犯達を警察に引き渡したいんですが…」
「その事なら大丈夫。すずかと電話で話した後に警察にも連絡しておいたから。もうすぐここに着くと思うわ」
なら問題は無いな。後は…
「じゃあ、後はアレを運ぶだけですね」
俺はイレイン達の方に顔を向ける。
「これって…」
「イレインです。夜の一族によって封印されていた自動人形。そこの男が封印を解いたみたいですけど」
安次郎の方に指を差し答える俺。だが忍さんは
「っ!!貴方、どうしてその事を!?」
「お姉ちゃん、それは…」
「後でお話しします。今はこのイレイン達を忍さん達の家に運びたいのですが」
「私の家に?」
「警察に引き渡すのもアレなんで。それに警察に渡したら夜の一族の事とかを説明しなければいけなくなるかもしれませんから」
「……そうね。確かにここに置いておくと面倒な事になるし。…分かったわ、運びましょう。でもどうやって運ぶの?私の乗ってきた車はここにいる私達と運転手が乗れるくらいの小さな車よ?」
「それは大丈夫です。……『((王の財宝|ゲート・オブ・バビロン))』」
宝物庫を解錠する俺。すると何も無い空間にイレイン達が飲み込まれていく。その光景を忍さんとすずかちゃんは驚いた表情で見つめている。
「ねえ君、今、何をしたの?」
「これですか?俺のちょっとした能力の一つなんですよ。……よし、収納完了っと。あ、釣り道具も収納しとかないと」
そう言って倉庫から出た俺は釣り道具も宝物庫に収納する。そのすぐ後に警察が現場に到着し、安次郎とチンピラ達、誘拐犯を現行犯で逮捕していった。
俺達も簡単に事情聴取されたが魔法の事なんかは喋れないので適当に嘘を吐いて説明しておいた。
「じゃあ、私の家まで行きましょうか。ノエル、運転お願い」
「かしこまりました」
車の側で待機していたショートカットのメイドさんが返事をする。
そして俺は月村家に向かって行くのだった…………。
「成る程ね」
月村邸に着いた俺達は一つの部屋に集まった。まずは改めて自己紹介をした。
月村家の当主、月村忍さん。
忍さんの妹、月村すずかちゃん。
忍さんの専属メイド、ノエル・K・エーアリヒカイトさん。
すずかちゃんの専属メイド、ファリン・K・エーアリヒカイトさん。
どうやらこの世界のノエルさんとファリンさんも自動人形みたいだ。普通の人や忍さん、すずかちゃんとは少し違った感じがするし、アニメ版では不明だったイニシャルの『K』がこの世界ではとらハ3で判明していた綺堂の『K』らしいし。
そして、先程すずかちゃんに話した事を忍さんにも話していた。
「そういえば、さくらが以前言ってたわね。知り合いに頼まれてその子の保護者代理人になったって」
「はい。最近は会っていませんが時々携帯に連絡はしてくれますね。さくらさんのおかげで色々助かってます」
家庭訪問なんかある時にはわざわざ予定空けて保護者として立ち会ってくれてたからなあ。去年は用事が外せないらしく結局小学校で俺一人だけ家庭訪問出来なかったんだよな確か。
そういえばシュテル達と会った事ないんだよなあ。どうしようか?
「今も結構忙しいらしいからね。こっちに来る時間が取れないって前に言ってたわ。ただ、今度来る時に合わせたい男の子がいるからって言ってたけど」
「俺も聞いてます。同い年の子がいるからって聞いてたので。まさかこんな形で会う事になるとは思いませんでしたけど」
そういってすずかの方をチラリと見る。先程から俺の方を見ていたすずかと視線が合うと、すずかは頬を少し赤らめ視線を逸らす。頭を撫でられた事がそんなに恥ずかしかったのか?
「まあ、貴方が夜の一族を知っていた理由については分かったわ。次に聞きたい事なんだけど、あのイレイン達はどうしたの?飲み込まれるように消えていったんだけど?」
「ああ、あれは俺の特殊能力の一つです。亜空間にある倉庫の中から物を取り出したり、逆に物を収納したりできるんです」
「あ、亜空間…」
あ、忍さんの口の端が引きつってる。まあ普通はそういう反応でしょうね。
「そういえばイレイン達を収納したままだった。何処に運べばいいんですか?」
「なら、ここに出してもらえる?後はノエルとファリンに運ばせるから」
「分かりました」
俺はイレイン達を宝物庫から取り出して部屋の隅に置く。しかし自動人形とはいえ、見た目がどこからどう見ても人間だからいきなり空間から出てきたりする光景はちょっとアレだなあ。神隠しなんてのが本当に存在してるのならこんな風に突然出てきたりするのかなあ?
そう思いながらもイレイン達を出し終える俺。ノエルさんとファリンさんが別室に運んでいく。それから数分後、二人が戻ってきてから俺は口を開いた。
「それで他には何かありますか?大体の事は説明したつもりなんですけど」
「そうねえ。勇紀君が普通の人間じゃないって自分で言ったけど、じゃあ君は何者なの?って事かな」
「俺ですか?」
「ええ、確かに普通では考えられない力を持ってるみたいだし」
どう答えようか?魔導師って答えるのは……かといって適当に答えるのもなあ。
「ひょっとして答えられない様な事かな?無理なら言わなくてもいいけど」
忍さんがそう言ってくれる。どうやら俺がどう答えるか悩んでいる姿を見てある程度察してくれた様だ。
「……いえ、そんな事は無いです。分かりました。お話しします。ただ、この事は誰にも言わないでくれると助かります。俺自身、進んで面倒事や厄介事には巻き込まれたくないんで」
俺がそう言うと四人は頷いてくれた。
「まず、俺は『魔導師』…この世界で言う魔法使いみたいなものですね。そして俺がすずかちゃんを誘拐した連中とイレイン達を相手に使った力は主に二種類。一つは『魔法』です」
「「「「魔法?」」」」
「はい。小説やゲームなんかに出てくるあの魔法です。敵を攻撃したり誰かを治療したり…ただ魔法といっても小説やゲームなんかの『幻想』的なものとは違い、俺が使っているのは魔力、ゲームで言う((MP|マジックポイント))を消費して発動する『超科学』的な存在の事です」
それから簡単に魔法について説明した。もっとも原作キャラである彼女達は魔法の事なんて知っているだろうから単に復習的な意味合いになるかもしれないが。
「それからもう一つ。これは((希少技能|レアスキル))と呼ばれる能力で通常の魔法とは違い、本人しか持たないような特殊な能力、固有技能と言った所です」
そしてレアスキルについても語った。すずかちゃんのすぐ傍で突然姿を現した『((拒絶観測|キャットボックス))』、突然チンピラ達が狼狽えだした原因になった『((実行不能|エラーコード))』、イレインや安次郎に一瞬にして迫った『((禁猟区域|インポッシブルゲート))』、そしてイレイン達を出し入れした『((王の財宝|ゲート・オブ・バビロン))』と、今回使った4つの能力についての説明を付けて。
「……とまあ、こんな所ですかね?」
一通り自分の事を説明し終えた俺。結局自分は魔導師だと誤魔化す事はしなかった。こちら側が相手の正体について知っているのに自分だけ嘘を吐いて隠すのはフェアじゃないし、話してみてこの人達は信用出来るいい人達だと、ただ原作知識を持っているだけでは分からない部分もちゃんと理解出来たからだ。
「そうね。君の事も分かったし話してくれてありがとう。」
あっさりと信じてくれた忍さん。少し気になったので俺は聞いてみた。
「自分で言うのも何ですけど簡単に信じていいんですか?俺が嘘を吐いてないっていう保証は無いのに」
「確かにそうだけど勇紀君の目を見てたら何となく分かるわよ。善い人か悪い人かぐらいは。勇紀君は平気で嘘を吐ける様な目をしてないもの。だから君の話は信用出来る」
「そうですか//」
ちょっと照れるな。でも自分の話を疑う事無く信じてくれたのは素直に嬉しい。
「む〜〜〜」
何か視線を感じたので見てみるとすずかちゃんがこっちを見ていた。頬を膨らまし少し不機嫌そうに唸っている。…………何で?
「と、とにかく今日はこれぐらいでいいですか!?もう日も暮れてきてるし」
外を見ると日も沈み始め、だんだんと暗くなり始めていた頃だった。
「あ、そうね。それじゃあノエルに家まで送らせるから」
「え、いや悪いですよ。一人で帰れますし」
「遠慮しないの。暗くなり始めてるんだから子供が一人で歩くのは危険よ」
別に襲われても撃退出来る自信はあるんだけどなあ。まあ折角の好意だし
「それじゃあお願いします」
「ええ、ノエルお願いね」
「かしこまりました。準備をしますので少々お待ち下さい」
一礼した後、部屋を出て行くノエルさん。
「あ、あのっ!」
突然すずかちゃんが声を掛ける。
「もし良かったらその…晩御飯食べていったらどうかな?助けてくれたお礼という事で」
夕食に誘われた。
「う〜ん、今日は遠慮しておくよ。両親は仕事で家にいないけど家族は俺一人じゃないから」
「…そっか」
肩を落とし、シュンとなるすずかちゃん。うっ…何か悪い事したみたいに感じるな。
「ゴメンね。今日は無理だけどまた今度誘ってくれるかな?その時はちゃんと予定とかも空けておくから」
「本当!?約束だよ!?」
「うん!約束する」
一転して笑顔になるすずかちゃん。良かった。やっぱり彼女には笑顔が似合ってる。
「あらあら。すずかったらひょっとして」
何やら忍さんがニヤついてこっちを見てるがどうしたんだろうか?
「あ、じゃあ連絡先教えとかないと。すずかちゃんの携帯に赤外線機能ある?」
「あ、うん。あるよ」
「じゃあ番号とアドレスのデータを送るから登録しといてくれるかな?」
「わかったよ。後、私の方も送るから登録しておいてくれるかな?」
「了解」
そういって俺達はお互いの番号とアドレスを交換した。何だか交換し終えたすずかちゃんはすごく嬉しそうだったけど。
「長谷川様。車の準備が出来ましたので来ていただけますか?」
「あ、はい。ありがとうございます。じゃあすずかちゃん。また今度ね」
「あ、あの…長谷川君!」
「ん?」
俺を呼び止めるすずかちゃん。まだ何か用でもあるのかな?
「えっと…私の事は『すずか』って呼んでくれないかな?」
「呼び捨てで?いいの?」
「う、うん。私と同い年だし……もっと仲良くなりたいし//」
「分かった。なら今度からは『すずか』って呼ばせてもらうな。改めてよろしくなすずか。それと俺の事も苗字じゃなく名前で呼んでくれ。呼び捨てでも構わないから」
「っ!!よ、よろしくね……勇紀…君///」
頬を赤く染めて俺の名前を呼ぶすずかちゃ……すずか。
「良かったわね〜すずか。名前で呼べるようになって」
ニヤニヤしながら忍さんがすずかに話し掛ける。
「…………//////」
顔が真っ赤になって俯くすずか。疲れてんのかな?今日は色々あったからなあ。
「長谷川様」
「あ、すみません。じゃあすずか、忍さん、ファリンさん。お邪魔しました」
「また今度、絶対来てね勇紀君!!」
「ウチにいつ遊びにきてもいいからね」
「ううっ…ほとんど空気になって会話に参加していなかった私にも忘れず声を掛けて下さって…長谷川様はすごくいい人です」
こうして俺は月村邸を後にし、家に帰るのだった………。
「あ、ここが俺の家です」
家の前まで車で送ってもらった俺はノエルさんにお礼を言う。
「送って頂いてありがとうございました」
「いえ、こちらこそ今日はすずかお嬢様を助けて頂いて本当にありがとうございます」
そういってノエルさんは頭を深く下げお礼を言ってくれる。
「いえいえ。それよりノエルさんも俺の事苗字でなく名前で呼んでもらえますか?」
「ですが……」
「俺には両親以外にも家族がいますし、苗字で呼ばれると誰を呼んでいるのか分からなくなるかもしれませんから」
「……分かりました。では今後は『勇紀様』と呼ばせて頂きます」
「『様』は無くてもいいんですけどね」
そういって軽く会話した後、ノエルさんは車に乗り込み帰っていった。
「でも良かったのユウくん?」
突然ダイダロスが声を掛けてくる。
「良かったって何が?」
「魔法の事とか正直に喋っちゃって」
「どうだろうな?でもあの人達は皆良い人達だから嘘は吐きたくなかったんだよ」
「原作介入のフラグ立っちゃったかもよ?」
「いや、これだけでは流石に立たんだろ?それにすずかは魔導師じゃないし」
「どうだろうね?小さな事でも関わった時点でフラグが立つなんてよくある事だよ?」
「まあ、その時は介入フラグを折っちゃえばいいさ」
「そんな簡単に折れたらいいけどね」
「先の事を気にしてもしょうがない。とりあえず中に入るか。腹減った」
ダイダロスとのやり取りを終え、俺は家の中に入っていった………。
〜〜すずか視点〜〜
勇紀君が帰った後、晩御飯の準備が出来るまで私は自分の部屋に戻って彼にもらった携帯の番号を眺めていた。
「男の子の番号を登録したのって……初めてだなあ」
今日、街中で誘拐された私を助けてくれた男の子。
勇紀君はただ釣りに来てただけで私の誘拐現場に遭遇したのは偶然だったと言う。でも、その偶然が無ければ今頃私はどうなっていたか分からない。
突然目の前に現れ誘拐犯を次々とやっつけていく彼。私が夜の一族だと知っていても怖がりもせず
『なら問題無いじゃん。他の子より身体能力が高いだけなら気にする程じゃないし、血だって他人から吸わなくてもいいみたいだし。ほら、普通の人間とあまり大差無いじゃん』
『もし、君の事を化け物だなんて言ってイジめる奴がいたら俺が変わりにぶん殴ってやるよ』
と言ってくれた。嘘偽りの無い真っ直ぐな言葉で。
私は泣いてしまった。怖がる事も無く、拒絶もされずに私の事を『人間と大差無い』なんて言って受け入れてくれた事が嬉しくて声を出して泣いてしまった。
それから私が泣き止むまで彼は私の頭を撫で続けてくれた。恥ずかしかったけど暖かくて心地良かったなあ。///
彼と話してさくらさんと知り合いだった事や同い年だって事は驚いたなあ。私よりもすごく大人びた雰囲気だったし。「年上だと思った」って言うとちょっとショックを受けたみたいだった。
その後、お姉ちゃんが来て、警察の人達が安次郎おじさんと誘拐犯達を逮捕していって、私達も簡単に事情聴取されたけどすぐに解放されて、家に帰ってきた。
そこで彼が話してくれた。自分が魔導師だって言う事。魔導師っていう事はなのはちゃん達と同じ管理局っていう所の局員さんなのかな?とも思ったけど勇紀君は
『この事は誰にも言わないでくれると助かります。俺自身、進んで面倒事や厄介事には巻き込まれたくないんで』
そう言っていた。何となくだけど勇紀君はなのはちゃん達とは違って私達みたいに素性を隠してるって思った。
それから勇紀君自身の力の事も全て聞き終えた。簡単にその話を信じたお姉ちゃんが気になったのだろう。彼が
『自分で言うのも何ですけど簡単に信じていいんですか?俺が嘘を吐いてないっていう保証は無いのに』
なんて聞き返していた。お姉ちゃんはそんな勇紀君に
『確かにそうだけど勇紀君の目を見てたら何となく分かるわよ。善い人か悪い人かぐらいは。勇紀君は平気で嘘を吐ける様な目をしてないもの。だから君の話は信用出来る』
そう言っていた。私もその意見に納得していた。その言葉を聞いた勇紀君は恥ずかしそうにしながらもお姉ちゃんの言葉を嬉しそうに受け止め頬を少し赤らめていた。そんな彼を見て
『む〜〜〜』
彼をジト目で見ている私だった。何だか今の勇紀君を見ると胸の中がもやっとして嫌な気持ちになっていた。
これってもしかして……
何て事を考えていると勇紀君はもう帰ると言い出した。確かに空も暗くなり始めていたので家に帰るのも当たり前なのだが私はもう少し彼と一緒にいたかった。だから晩御飯に誘ったのだが…
『う〜ん、今日は遠慮しておくよ。両親は仕事で家にいないけど家族は俺一人じゃないから』
と言われた。一人じゃないって事は彼にもお兄ちゃんかお姉ちゃん、もしくは弟か妹が家で待ってるって事だよね。それなら家族に心配を掛けさせない様、帰るのも当然だけどやっぱり残念だ。でも彼は今度また誘ってと言ってくれた。予定を空けておくと約束もしてくれ電話番号とメールアドレスも教えてくれたのだ。
ふふっ。嬉しいな。///
それから帰る前に私の事を呼び捨てで呼んでくれと頼むと彼も名前で呼んでほしいと言ってきた。彼に『すずか』って呼んでもらえた事、『勇紀君』って呼んだ事、すごく恥ずかしくて胸がドキドキしてる。////
でも、すごく嬉しい。やっぱりそうだ!出会ってまだ間もないのに
私は彼の事…………好きになっちゃってる。
その後すぐに勇紀君が帰って今こうして部屋にいる訳だが……
「また今度っていったけど早く会いたいな//」
そうしてファリンが私を部屋に呼びにくるまで私は勇紀君の事ばっかり考えていた………。
〜〜すずか視点終了〜〜
説明 | ||
神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。 | ||
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遂に原作主人公組の一人と邂逅。さて、今後の展開やいかに?(海平?) | ||
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