魔法少女リリカルなのは〜原作介入する気は無かったのに〜 第八話 フラグはやっぱり立っていた?
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 すずかと遭遇してから二日経った。今日は火曜日。二時間目の授業を終えた休憩時間。俺は次の授業に使う教科書とノートの準備をしながら今日の夕食は何にしようか考えていた。昨日は豚肉の生姜焼きにしたからなあ。何か魚が食いたい気分だなあと思っていると

 

 「長谷川はいるか〜?」

 

 教室の前の扉の方から誰かが俺を呼んでいた。声色からすると男子だろう。

 苗字だけならシュテル達も含め長谷川家の誰を呼んでいるのか普通は分からないが四人は天使と崇められているので男子から呼ぶ事はまず無い。仮に呼ぶとしても名前で呼ぶからだ。だから基本的に男子から苗字で呼ばれるのは俺である。

 

 「長谷川ならあそこにいるぞ」

 

 クラスの男子が俺の方を指差し答える。俺の名前を呼んだ男子は俺がいるのを確認するとこちらに向かってやってきた。

 

 「よう長谷川。ちょっといいか?」

 

 「なんだ直博?」

 

 俺に声を掛けてきたのは隣のクラスの堀田直博。スポーツ刈りで長身、学力はそこそこでスポーツが大好きな奴だ。去年と今年はクラスが違うが入学して三年間は同じクラスであったため、今もそれなりに仲は良い友達だ。

 

 「お前、今週の日曜空いてるか?」

 

 「日曜?空いてるけど何だ?」

 

 「いや、俺の叔父が監督をしてるサッカーチームの試合が日曜にあるんだけどレギュラーメンバーの一人が用事でどうしても来れないらしいんだ」

 

 「ふむふむ」

 

 「それでお前に試合に出てもらいたいんだが?」

 

 「待て。俺の記憶が確かならお前ん所の叔父さんのサッカーチーム、補欠含めても20人はいただろ?そっちからメンバー選べばいいじゃねーか」

 

 「それはそうなんだが残りのメンバーにお前程、運動神経良い奴がいないんだよ。だからお前に頼みにきたんだ」

 

 「だからといってチームに所属してない俺が出るのは問題あるんじゃないのか?」

 

 直博の叔父さんが監督しているチームに初めていったのは半年ぐらい前だっけ。それ以来何回か見学と、ちょこっと混ぜてもらった程度だぞ?その時はレヴィもついてきて、俺と一緒にサッカーしてたなあ。

 

 「問題無い。公式試合って訳でもないし、他の奴らはお前なら別に良いと許可ももらってる」

 

 随分と準備の良い奴だ。

 

 「だから頼む!日曜の試合に出てくれないか?」

 

 「…別に構わないけど」

 

 「マジか!?助かる!!」

 

 まあ、一回試合に出るぐらいならいいだろ。

 

 「しかし、わざわざチームに入ってない俺を誘うなんて何でだ?最近負け越してんのか?」

 

 「いや、今年になって他所のチームと何度か試合してるが負けてるのはまだ一回だけだ」

 

 「調子いいじゃん。やっぱ俺いらなくね?」

 

 「でも今度対戦するチームは初めて対戦するチームらしくてな。それに叔父さんにとって因縁の相手らしいんだ」

 

 「因縁って…」

 

 「何でも以前から好きだった人を知らない男の人に取られたとか」

 

 「凄い私情だなオイ!?」

 

 好きな人が取られたのが悔しくて絶対に負けたくないって事かよ。

 

 「もうその人達も結婚してかなり経つのに未だ諦めきれないらしいんだ」

 

 「いい年した大人なのに…」

 

 「だよな」

 

 溜め息が出る俺と直博。

 

 「まあ、私情に巻き込まれるのはいい気しないが試合には出てやるよ。日曜の何時に何処でやるんだ?」

 

 「ああ、試合は午前10時からだ。場所は河原のグラウンド。現地集合だから9時半過ぎにはもう来てくれ。軽くアップとかした方がいいだろうしな」

 

 「分かった」

 

 「じゃあ頼むな長谷川」

 

 「というか、いい加減俺の事名前では呼べんのか?」

 

 「もう苗字で呼ぶのに慣れちまったからな」

 

 「そうか」

 

 そういって直博は教室を出て行った。

 日曜か…。まあ折角だし思いっきり楽しむとしましょうかね。

 

 

 

 そして昼休み。給食を食い終わった俺に

 

 「そういえばユウ。二時間目終わった後の休憩時間にナオヒロが来てたけど何だったの?」

 

 隣のレヴィが話しかけてきた。授業中は寝てるのに休憩時間には起きるんだよなコイツ。

 

 「ん?ああ、今週の日曜サッカーの試合に参加してくれってさ」

 

 「え〜〜!!?いいないいな〜!!僕も試合に出たい!!!」

 

 「俺に言われてもな…。直博に聞いてくれ」

 

 「じゃあ、ちょっとナオヒロに聞いてくるよ!」

 

 そう言ってレヴィは教室を飛び出していった。アイツ本当に身体動かすの好きだよなあ。

 レヴィと直博は互いにスポーツが好きな者同士、結構気が合う。昼休みもよく運動場で遊ぶ姿を教室から見かけるしな。

 

 「ユウキ、レヴィは何処にいったのだ?」

 

 俺の傍にきたディアーチェにレヴィの事を聞かれる。

 

 「隣のクラス。サッカーの試合に出たいんだとさ」

 

 「アイツは本当に動きたがる奴だな」

 

 ディアーチェが呆れた様に言う。俺はただ苦笑するだけだった。するとレヴィが帰ってきた。ガックリと肩を落とし落ち込みながらトボトボと俺達の方に来る。

 

 「今回はダメだって言われた」

 

 「残念だったな」

 

 「ユウはいいなあ」

 

 む〜っと唸りながら俺を見てくる。

 

 「まあ『今回は』って言われたんだろ?なら次の試合の時に頼んでみたらいいじゃんか」

 

 「……うん。そうする」

 

 とりあえずは納得するレヴィ。とはいえレヴィは女の子。試合に出れるのかは疑問だな。

 

 「ですがチームに入ってないユウキを試合に参加させる理由は何故ですか?」

 

 シュテルとユーリも俺の傍に来て、ユーリが俺に尋ねてきた。長谷川家が揃って、俺と会話しているのを見た男子達と((担任|ロリコン))が殺気をぶつけてくるが四人が傍にいる以上は何もしてこないだろう。

 

 「ぶっちゃけ私情に巻き込まれた」

 

 「「「「私情?」」」」

 

 首を傾げる四人に俺は説明した。

 

 「それはまあ…」

 

 「何と言うか…」

 

 「女々しい奴だ。とっとと諦めればよいものを」

 

 「それだけ一途なんだよ」

 

 シュテルとユーリは言葉に詰まり、ディアーチェはバッサリと言う。レヴィは一応フォローしてるみたいだな。

 そんな会話をしていたら

 

 〜♪〜♪

 

 突然俺の携帯が鳴り出した。誰だろう?と思って画面を見て見ると

 

 『今週の日曜日、予定は空いてますか?この前のお礼として晩御飯に招待したいんだけど駄目かな?連絡待ってます』

 

 すずかからのメールだった。

 

 日曜日はサッカーの試合があるけど晩御飯って事は夕方以降の予定って事だよな?なら特に問題無いか。

 

 『午前中から友達に頼まれてサッカーの試合に出る事になってるけど、夕方以降なら大丈夫。だからその招待受けさせてもらうよ』

 

 そう返信しておいた。

 

 「ユウキ、何をしているのです?」

 

 携帯を操作している俺にユーリが声を掛けてくる。

 

 「ん?メール」

 

 「メール?誰にだ?」

 

 「日曜日に知り合ったすずかって子」

 

 「「「「「「「「「「すずか!?」」」」」」」」」」

 

 シュテル達だけでなくクラスの連中の声も重なった。

 そういえばシュテル達に日曜日の事説明してなかったっけ。

 

 「…ユウキ」

 

 「何?シュテ……ル……?」

 

 シュテルの方を見ると先程とは違い黒いオーラを纏っていた。

 …いや、シュテルだけでなくレヴィ、ディアーチェ、ユーリもだ。

 

 「すずかって誰?」

 

 「だから日曜日に知り合った子なんですけど…」

 

 「日曜日は釣りに行った筈ではなかったのか?」

 

 「釣りをしてる最中に色々ありまして…」

 

 「そもそも本当に釣りに行ったのですか?」

 

 「行きましたよ!?釣り道具ちゃんと持って家出たじゃん!!」

 

 「ですがユウキなら持っていく『フリ』をするのが可能ですよね?《((王の財宝|ゲート・オブ・バビロン))を使えば手荷物なんて無いも同然ですよね?》」

 

 「フリなんてしてないよ!?何でそんなに疑ってんの!!?」

 

 レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、シュテルの質問に答える俺。答える度にオーラが増している様な…

 

 「おい貴様」

 

 不意に声を掛けられた。声のした方を向くと((担任|ロリコン))がいた。

 

 「何ですか?」

 

 「すずかとはまさか『月村すずか』の事じゃないだろうな?」

 

 「そうで「貴様ぁっ!!」すけど…」

 

 会話を遮って叫ぶ((担任|ロリコン))。何だ一体?

 

 「私立聖祥大付属小学校5年1組出席番号17番にして『聖祥六大女神』の一人である彼女と知り合っただとおおおおおっっっっっ!!!?」

 

 「何で他校の生徒なのにそんなに詳しいんだよ!?」

 

 もうストーカーじゃねえか。

 

 「何を今更。この海鳴市に存在する全ての女子小学生は俺の愛しい天使(リトル・レディ)達だからだ!!!!」

 

 …………コイツマジで警察に突き出した方がよくね?いつか犯罪やりかねんぞ。

 そう思っている俺をよそに

 

 「あの野郎…」

 

 「ついに他校の生徒にまで手を出しやがったのか」

 

 「しかも先生の様子から察するにその子も相当可愛いとみたぜ」

 

 「シュテルさん達だけで満足できねえとは」

 

 「もう殺ろう。俺、捕まってもいい。コイツ殺っちまおう」

 

 「「「「「「「「「「という訳で貴様を処刑する!!!!」」」」」」」」」」

 

 「何が『という訳で』だ!!!」

 

 こっちの言い分聞かずに勝手に処刑とか言ってんじゃねえよ!!

 

 「「「「とりあえずO☆HA☆NA☆SHIですね(だよ)(だな)(しましょう)」」」」

 

 俺の家族も俺を殺る気満々の様だ。だからO☆HA☆NA☆SHIされる理由が分からないんですけど!?

 しかしこのままではまずい。とりあえずここは戦略的撤退を…

 

 ガシッ×2

 

 「は?」

 

 両腕を掴まれた俺。左にレヴィ、右にディアーチェがいつの間にか…。

 だから何で瞬間移動出来るの君達は!?

 周りを見渡すとさっきまで『処刑する』と言っていたクラスの男子達と((担任|ロリコン))は満面の笑みで手を振っている。謙介は俺に向かって敬礼している。俺の味方は誰もいなかった。

 

 「「「「じゃあO☆HA☆NA☆SHIしましょうね(しようね)(するか)(しましょう)」」」」

 

 「い、嫌だあああああああっっっっっ!!!!!」

 

 俺は四人に連行されO☆HA☆NA☆SHIを受けるのだった…………。

 

 

 

 〜〜すずか視点〜〜

 

 昼休み。私は勇紀君にメールを送った。内容は今週の日曜日に、この前のお礼という事で晩御飯を食べに来ないかという内容なんだけど……。

 

 男の子に初めて送ったメール。

 ただメールを送るだけなのに凄く緊張しちゃった。

 

 後は、返事が返ってくるのを待つだけ。もし来れるなら嬉しいな。///

 

 「すずか?どうしたの?箸が止まってるけど?」

 

 アリサちゃんが声を掛けてきた。

 

 「あ…ううん、何でもないよ」

 

 そうだ。私は今、皆と一緒に屋上でお昼ご飯を食べていたんだった。

 

 「そういえばさっき誰かにメールしてたみたいだけど?」

 

 「う、うん…。ちょっとね」

 

 アリシアちゃんに聞かれたので私は曖昧に答えておいた。

 

 「それに少し顔が赤いみたいだけど風邪?無理はしない方がいいよすずか」

 

 フェイトちゃんが心配してくれる。

 

 「ありがとうフェイトちゃん。でも大丈夫だよ」

 

 とりあえずご飯を食べる事にしよう。

 

 「ところでアンタ達はゴールデンウィークどうするの?」

 

 アリサちゃんが私達に聞いてきた。ゴールデンウィークかあ…。

 

 「私は特に何も無いよ」

 

 なのはちゃんが答える。

 

 「わたしも特に無いで。シグナム達も任務とかは無いみたいやし」

 

 はやてちゃんも予定は無いみたい。

 

 「フェイト、私達は?」

 

 「え?ううん、特に無いよ姉さん」

 

 アリシアちゃんとフェイトちゃんも特に何も無いみたいだ。

 

 「すずかは?」

 

 「私も何処かに行くとかそういう予定は無いよアリサちゃん」

 

 「ならここにいるメンバーは全員予定が空いてるのね?じゃあ皆で遊びに行かない?」

 

 アリサちゃんが聞いてくる。

 

 「それは構わへんけど、何処に行くんや?」

 

 「それはこれから決めるのよ」

 

 「私は賛成。家にいてもする事無いからゴロゴロして過ごすだけだしね」

 

 「アリシアちゃん…」

 

 「姉さん……。でも皆で何処かに行くってのは悪くないと思う」

 

 「そうだね。私とアリサちゃん以外はお仕事なんかで予定の合わない時があるよね」

 

 そんな私達全員の予定が合うのは久しぶりだなあ。皆はお弁当を食べながらワイワイと『何処に行こうか?』『何をしようか?』って話し合っている。私も何か考えないとって思っていたら

 

 〜♪〜♪

 

 私の携帯が鳴り出した。メールが届いたみたいで、もしかしてと思ってメールを開いてみると

 

 『午前中から友達に頼まれてサッカーの試合に出る事になってるけど、夕方以降なら大丈夫。だからその招待受けさせてもらうよ』

 

 やっぱり勇紀君からだった。しかもOKの返事だった。けど…

 

 「(午前中はサッカーの試合?という事は朝からは会えないのかあ。少し残念だなあ)」

 

 出来れば彼と一緒の時間を少しでも多く過ごしたかったけど予定があるんじゃ仕方ないよね。

 でも勇紀君がサッカーするところは見てみたいなあ。……応援しに行こうかな。

 

 何処でサッカーの試合をするのか聞いてみようとメールを打とうとすると

 

 ジィィィィィッ…

 

 皆が私の事を見ていた。

 

 「えっと…皆、どうしたの?」

 

 「さっきから携帯見て嬉しそうな顔してるアンタが気になったのよ」

 

 アリサちゃんがそう答える。

 確かに勇紀君からOKの返事が来て嬉しかったけど顔に出てたんだ。

 

 「で、またメール?何て書いてるの?」

 

 「今度の日曜日に予定が空いてるか聞いてみたら大丈夫って返事が返ってきたんだよ」

 

 「日曜の予定?その子と会うの?」

 

 「う、うん」

 

 アリサちゃんとアリシアちゃんが聞いてきたので答える。

 

 「私達の知ってる子なの?すずかちゃん」

 

 「ううん。私が知り合ったのも二日前だもん。なのはちゃん達は知らない子だよ」

 

 「その割には仲ええんやね。出会って二日しか経ってない子を家に誘うやなんて」

 

 「私の叔母にあたる人とその子の両親が知り合いなんだ。同い年の子っていうのを聞いていただけで今まで会った事は無かったんだよ」

 

 「同い年なんだ」

 

 「うん」

 

 なのはちゃん、はやてちゃん、フェイトちゃんも聞いてくるので私は答える。

 

 「で、どんな子なのよ?」

 

 「アリシアちゃん、すずかちゃんがメール見てあんなに嬉しそうにしとるんやで?ひょっとしたら男の子、しかも彼氏とちゃうか?」

 

 私に聞いてきたアリシアちゃんにはやてちゃんが冗談っぽく答えている。

 

 彼氏?

 

 

 

 勇紀君が?

 

 

 

 ……………………。

 

 

 

 …………………………………………。

 

 

 

 ………………………………………………………………。

 

 

 

 えええええええええええっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!?

 

 

 

 「ちちち、違うよ!!ゆ、勇紀君はかか、彼氏なんかじゃ!!!//////」

 

 少し固まった後、私は否定する。多分、今の私は顔を真っ赤にしているだろうな。

 

 「「「「「勇紀君!!?」」」」」

 

 皆が一斉に反応する。そういえば相手が男の子だって言ってなかった。

 

 「ちょちょ、ちょっとすずか!!相手の子って男の子なの!?」

 

 「そ、そうだよ」

 

 すごい剣幕でアリサちゃんが尋ねてくる。

 

 「すずかに彼氏!?まさか先を越されるなんて…」

 

 「だからアリシアちゃん。彼氏じゃないってば!」

 

 確かに勇紀君がか、彼氏だったら嬉しいけど……。////

 

 「冗談のつもりで言うたんやけど…。なんや興味あるわあ。すずかちゃんの彼氏に」

 

 「だからはやてちゃんも!」

 

 私は違うと言っているのだが一向に聞いてくれない。

 

 「こうなったらその子の事詳しく聞かせてもらうわよ!!アリシア!はやて!すずかを確保!!」

 

 「「((了解|ラジャー))!」」

 

 「ええっ!?」

 

 アリサちゃんの号令と共に隣にきて私の腕を掴むアリシアちゃんとはやてちゃん。私は先程から静かな、なのはちゃんとフェイトちゃんに視線で助けを求めるが

 

 「ごめんすずかちゃん。私も少し興味あるの」

 

 「……私も」

 

 二人も興味がある様で私を助けてくれそうには無かった。

 ゆ、勇紀君!!助けて〜〜〜〜!!!!

 

 

 

 〜〜すずか視点終了〜〜

 

 気付けば放課後……。昼休みにO☆HA☆NA☆SHIされてからの記憶が全く無い。

 

 何があったのか気になるが思い出さない方がいい気がする。

 

 とっとと忘れよう。うん。

 

 俺は家に帰る事にした……。

 

 

 

 晩メシを食って自分の部屋でくつろいでいると

 

 〜♪〜♪

 

 突然携帯が鳴り出した。

 

 画面には『月村すずか』と表示されている。俺は携帯を取り

 

 「もしもし?」

 

 「も、もしもし月村です。長谷川君のお宅でしょうか?」

 

 やや緊張した様子のすずかの声が聞こえてくる。

 

 「お宅も何も俺の携帯に掛けてるんだから出るのは俺しかいないと思うぞ?すずか」

 

 「あっ…そ、そうだね。ごめんなさい勇紀君」

 

 「別に謝る必要は無いって。気にしてないから。でも何で緊張してるんだ?」

 

 「そ、それは…男の子に電話するの初めてだから……」

 

 「そうなのか?」

 

 「う、うん。男の子の番号で登録してるの…勇紀君だけだから。学校でもあまり男の子とはお話しないし」

 

 「そりゃあ緊張もするか。まあ徐々に慣れてくれたらいいさ。それで何か用?」

 

 「あっ!うん。聞きたい事があったんだけど勇紀君、今度の日曜日にサッカーの試合に出るんだよね?」

 

 「出るけどそれが?」

 

 「何処でやるのかな?と思って」

 

 む?言ってなかったか?

 

 「河原のグラウンドだな。10時から試合が始まるから俺は少し早めに行く予定」

 

 「そうなんだ…。あの、私も見に行っていいかな?」

 

 「別にいいけど。ていうか俺の許可なんていらないんだから、すずかの好きにすればいいよ」

 

 「じゃ、じゃあ絶対見に行くね!!」

 

 「あんまり凄いプレイとかは期待するなよ?」

 

 それからしばらく俺はすずかと会話を続けていた。

 ただ、この会話を盗み聞きしている者がいると気付かずに………。

 

 

 

 〜〜日曜日〜〜

 

 空は晴れ絶好の試合日和。俺は9時15分頃に河原に着いた。グラウンドには直博の叔父さんと、直博を含む男子が6人すでに来て身体を動かしていた。相手のチームはまだ来ていないようだな。

 

 「うい〜す」

 

 「おう、長谷川。随分早いな。もう少し遅くても良かったのに」

 

 「まあ、家でボ〜っと待っててもしょうが無いしな」

 

 「そうか。ところで…」

 

 直博は俺のすぐ後ろにいる四人を見て

 

 「相変わらず仲良いな。お前ん所の家族は」

 

 「いや、コイツらは元々見に来る予定は無かったぞ」

 

 そう…四人共昨日までは何も言わなかったのに今日朝メシを食った後、いきなり試合を見に行くと言い出した。

 

 「ユウキ、何か不満でもあるのですか?(すずかという子に会うために私達が邪魔だとでもいうのでしょうか?)」

 

 「不満は無いけど、本当によかったのか?今日は四人で買い物に行くって言ってたのに」

 

 「服とかはいつでも買えるのだ。別に今すぐ必要という訳でもない(むしろ我等の知らぬ女とユウキを二人にさせる訳にはいかんしな)」

 

 「そ〜そ〜。ユウは別に気にする事ないよ(スズカってどんな子なのか気になるし)」

 

 「それにユウキが試合をしてる所を見たいので(もしかしてその子もユウキの事を好きなのか確認しておかないといけませんし)」

 

 「…そっか。まあ、四人がいいなら俺は何も言わないさ」

 

 そういってから直博の叔父さんの方に向かい挨拶する。

 

 「おはようございます」

 

 「おお、おはよう勇紀君。今日は悪いね。チームに入っていない君に頼んで」

 

 「いえ、たまには思いきり運動するのも悪くないんで気にしないで下さい」

 

 「そういってもらえると助かるよ。君の運動神経はチームの皆がよく知っているからね」

 

 「あはは、まあ今日は頑張らせてもらいますよ。ところで俺のポジションは何処になるんですか?」

 

 「君ならどのポジションでもこなせるだろうけど、今日休んでる子はMFだからね。とりあえずMFを頼んでもいいかな?」

 

 「分かりました」

 

 そして俺はグラウンド内に入り、ストレッチをして身体をほぐし始めた。

 その後、直博とパスの練習をしたりドリブル、リフティング等を行って時間を潰していると叔父さんのチームに所属している子供達がグラウンドに集まり始め、9時半にはレギュラー、補欠を含めた全員が揃っていた。レギュラーメンバーは勿論、補欠の子達もアップし始める。気合は充分みたいだ……

 

 「というか気合入り過ぎじゃないのか?」

 

 何か見学で見てた時よりもやる気に満ちている様な気がする。

 

 「それは間違い無くお前の家族のせいだな」

 

 パス練習相手の直博が答えてくれる。

 

 「アイツらがか?」

 

 「ああ、元々お前と来ていたレヴィちゃんはチームでも人気があったし、他の三人も相当可愛いんだ。少しでも良い所見せて自分をアピールしたいんだろうよ」

 

 確かに他の子供達は皆練習しながらもチラチラとシュテル、ディアーチェ、ユーリの三人がいる方へと目を向けている。三人は特に気にした様子も無くこっちを見ている…………って

 

 「あれ?レヴィがいない?」

 

 さっきまでいたレヴィの姿がいつの間にか姿を消している。何処いったんだ?

 

 「レヴィちゃんならあそこだぞ?」

 

 直博が指を差す方に顔を向けると

 

 「やあ〜〜っっ!!」

 

 ドゴンッ!!

 

 ボールを全力で蹴り、シュートするレヴィの姿があった。GKの少年はレヴィのシュートを受けきれずに吹っ飛び、ボールは勢いを落とす事無くゴールに突き刺さるように入る。そして立ち上がるGKの少年。よく見ると何度かボールに吹っ飛ばされた跡があるような…

 

 「…はあ……はあ……」

 

 「ダメだよそんなんじゃ。僕のシュートも防げないなら相手チームのシュートを止めるなんて絶対に無理だよ。キーパー失格だよ」

 

 「お………おす……」

 

 既に息が上がってハアハア言っているGK。身体もフラフラしてる。試合前なのに体力使わせるなよレヴィ。

 

 「キーパーが最後の一線を守ってくれるっていう信頼があるから皆は前線で頑張れるんだよ。それなのにこう簡単に得点を入れられたら勝てる試合も勝てなくなるよ!分かってるの!?」

 

 「おす……。もういっちょ……お願い……します!!」

 

 「じゃあいくよ!10本連続で止めるまで続けるからね!!」

 

 アイツ鬼だな……じゃない!!!

 

 「レヴィ!!」

 

 俺は大声でレヴィを呼ぶ。レヴィがこっちを向いたのでコッチ来いと手招きする。

 

 「あ、ユウが呼んでる。悪いけどそこの君」

 

 「はいっ!何ですか!?(やった!レヴィさんに声掛けられた!!)」

 

 「ユウに呼ばれたからアッチ行くけど、キーパーの彼が10本連続で止めるまでシュートを続けておいて」

 

 「お任せ下さい!!(レヴィさんにアピールするチャンスだ!!)」

 

 すぐ近くで練習していた子を呼び止めレヴィが何か言った後、こちらに小走りで寄ってくる。

 

 「ユウ、どうしたの?」

 

 「レヴィ、アレは何だ?」

 

 俺はGKの彼がいる方を差す。

 

 「何ってシュートを止める練習だよ?ユウ達が試合に勝てるように僕も手伝ってるんだ。えらいでしょ?褒めて褒めて〜」

 

 そういって自分の頭を差し出すレヴィ。どうやら撫でてほしい様だな。俺はそんなレヴィの頭を…

 

 「ふんっ!」

 

 スパーンッ!

 

 思いきり叩いてやった。

 

 「ふぎゃっ!」

 

 叩かれて声を上げその場にうずくまるレヴィ。

 

 「何するの!?」

 

 涙目で俺を睨みながら見上げている。

 

 「『何するの!?』じゃねえっ!!試合前に選手ヘバらせてどうすんだ!!」

 

 このチームにGKは彼しかいないんだぞ!!

 

 「だって、シュート止められないと勝てないじゃん!」

 

 抗議するレヴィ。

 

 「いや、レヴィちゃんの弾丸シュート止められる奴なんて長谷川以外にいないと思うけど」

 

 直博も会話に参加してくる。

 

 「それにレヴィちゃん並の威力もったシュート蹴れる奴なんて相手チームにはまずいないだろうし」

 

 だよなあ。コイツのシュート半端無えもん。あれと同クラスの威力で蹴れる奴なんて同年代ではいない筈だ。

 

 「でも〜…」

 

 「でもじゃない。とりあえずあの練習止めてGKの彼に謝ってこい」

 

 もう本格的に彼はヤバいと思う。このままだと試合前に倒れてしまう。

 

 「……分かった」

 

 レヴィはGKの少年の方に向かっていき、謝っている。

 ふと、視界にシュテル、ディアーチェ、ユーリが入るが三人共『本当にレヴィは…』といった表情でレヴィを見ている。

 それから選手のいる席に戻り、休憩するGK君。彼には試合が始まるまで休んでもらった方が良いだろう。

 先程とはうって変わって元気が無くなったレヴィがこっちに戻ってくる。

 

 「ちゃんと謝ったか」

 

 「…うん」

 

 「レヴィが俺達の事考えてやってくれた事は嬉しいけどやり過ぎは良くない」

 

 「うん…。ごめんなさい」

 

 「分かってくれたら良い」

 

 そういって優しくレヴィの頭を撫でる。

 

 「あ……」

 

 「今後は相手に無理をさせない程度にな」

 

 「うん……えへへ///」

 

 笑顔で返事するレヴィ。

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴッ……

 

 そして応援席から感じるプレッシャー×3。

 

 「熱い視線でお前の家族がこっち見てるぞ長谷川」

 

 「気のせいだ直博。気のせいという事にしといてくれ」

 

 「…分かった」

 

 理解してくれて助かる。俺はレヴィの頭を撫でるのを止め、手を離す。

 今、向こうを向いたら俺は試合が始まる前に人生が終わってしまうかもしれん。

 そんな事を思っていると向こうから新たな子供の一団がきた。今日の相手チームの様だな。

 

 「ついに来たか。叔父さんの因縁(?)の相手が」

 

 直博がそう言う。俺もその相手らしき人を見たが、その瞬間、俺は固まった。

 ちゃんと相手の情報を聞いた上で今日の事について判断するべきだったと今更に後悔する。

 相手チームの監督らしき人が直博の叔父さんに近付き挨拶する。その人こそ

 

 「今日はよろしくお願いします。チーム『翠屋JFC』のオーナー兼コーチを務めています、高町士郎です」

 

 戦闘民族高町家の大黒柱、高町士郎本人だった。

 

 そして相手チームの方には俺達長谷川家の面々が出会いたく無かった連中…

 

 

 

 

 

 すずかを含めた、残りの原作キャラも揃っていたのだった…………。

 

説明
神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。
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コメント
戦闘民族高町家で変換したら一発で出てきた件についてwwwこれはマジで草不可避www(海平?)
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