魔法少女リリカルなのはStrikerS 〜赤き狂戦士〜
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第一章 赤き狂戦士

第九話「動き出す運命」

 

 

 

---とある研究施設---

 

 

そこである白衣の男が恍惚な表情を浮かべながらモニターに付いたキーボードを操作していた。

 

誰が見ても危ない思考を持っていると感じるだろう。

 

 

「レリック専門の部隊・・・機動六課がついに動きだしたか・・・

機動六課とは我々と今後必ずぶつかる事になるだろう!!」

 

 

 

モニターにはガジェットやカプセルに全裸で入っている人間が写しだされていた。

 

 

カプセルに入っている人間からは生気が感じられない。

 

 

そんな彼に声がかけられる。

 

 

「ドクター」

 

 

「おや、ウーノどうしたんだい?」

 

 

ウェーブがかかった薄紫の長髪の女性---ナンバーズTウーノが彼の背後に立っていた。

 

ドクターと呼ばれた男---ジェイル・スカリエッティはそんな彼女を見てこれから彼女が話す事は自分達にとって面倒な事であり、同時に面白い事だとも感じていた。

 

 

「機動六課の事は既にご存じで?」

 

 

「あぁ。今その協力者から送られてきた表向きのデータを見終わったところだよ。

特に危惧する事ではないが、我々の計画にちょっとした刺激をくれるのは間違いないだろうね」

 

 

計画には狂いはないとスカリエッティは余裕の表情で話す。

 

むしろ六課が今後自分達を追い詰めてくれるか期待すらしていた。

 

 

「・・・実は六課に関する情報でまた新しい事がわかりました」

 

 

「ほう・・・どんな事なんだいそれは?」

 

 

ウーノは端末からあるデータを映す。

 

 

そしてそこに映っている事の説明を始める。

 

 

「あの特務殲滅部隊「インフェルノ」から隊員が二名派遣されたようです」

 

「ほう、あの鬼畜部隊から六課に・・・よほど六課は我々の事を警戒しているようだね」

 

 

スカリエッティもインフェルノの事は知っている。

というか彼とナンバーズ達は二度ほどインフェルノの奇襲にあい、

研究所を二つ失った事があるのだ。

 

その時にインフェルノの隊員のデバイスの設定は当然殺傷設定。

 

ナンバーズの数名もインフェルノの猛攻で多少手傷を負いはしたが、

なんとか逃げ延びる事ができた。

 

 

正直ナンバーズ達はその時の事は思いだしたくはない。

 

あのスカリエッティですらインフェルノにはあまりいい印象を持っていない。

 

 

 

「少々六課に対する評価を下げようか。いくら人で不足だろうとあんな野獣共に協力を扇ぐのは

全く持って正気とは思えないよ」

 

 

狂気の科学者と呼ばれているスカリエッティが言える事ではないと思うが・・・

 

 

「でその二名の野獣とは?」

 

残念そうな表情でウーノに派遣された人員が誰なのか聞く。

 

正直スカリエッティはもうこの話はどうでもよかった。

 

 

「この二名です」

 

 

二人の顔写真と経歴が映し出される。それを見てスカリエッティは

モニターを信じられない者を見るかのように凝視する。

 

思わずウーノがたじろぐ。

 

 

 

「ド、ドクターどうなされました?」

 

 

「ふ、ふ、ふ、・・・フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

 

狂ったように笑い出すスカリエッティ。

 

まるで砂漠で落とした指輪をやっと思いで見つけたかのように・・・

 

 

 

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!・・・すまないウーノ・・・

私とした事がつい興奮してしまっていたよ・・・」

 

「いいえ・・・特に気にしてはいません・・・ところでドクター、

なぜそこまで興奮されたのですか?この二人に何か」

 

 

「ウーノ」

 

 

言葉は最後まで言えず、話そうとした事を口に止める。

 

 

「君はもう下がったくれ・・・少々一人で考えたい事があるんだよ」

 

 

「・・・・・・」

 

 

再び恍惚な表情を浮かべウーノに退室を求める。

 

 

「わかりました。何かありましたまたお呼びください」

 

 

「あぁすまないね。後でお詫びに一緒に紅茶でも飲もうか」

 

 

「はい。楽しみにしています・・・では失礼します」

 

 

ラボから消えるウーノ。

 

 

そこで再び笑い声が響き渡る。

 

 

「フハハハハハ!!カリス・カーティス!!君はなんて素晴らしい事を・・・!!この私ですら君のやる事には敬服するよ!!・・・まさか・・・まさか!!・・・ふふふ・・・フハハハハハ!!」

 

 

因縁、執念、運命・・・今のスカリエッティにはこの3つが本当に

最高に自分を楽しませてくれるものだと感じていた。

 

 

「カリス・・・君は本当に素晴らしいよ!!

しかしこれでは私は六課の評価をやはり上げなくてはいけないようだ!!」

 

 

 

両手を上に掲げ、天を扇ぐ。

 

 

 

「さぁ始めようではないか!!宿命のゲームを!!」

 

 

イレギュラーが決して悪い方向に行かない事を彼は改めて理解し、今後の計画の確認を始める。

 

 

「あの二人が出てくるなら我々も出せる力は全て出し切らなければ確実に負けるだろう・・・」

 

 

そう・・・インフェルノから派遣された二人はそれほどまでにスカリエッティにとっては爆弾なのだ。

 

 

「だが、だからこそ面白い!!このゲーム・・・必ず勝たせてもらうよカリス!!」

 

 

ここにはいない男に話し掛けるスカリエッティ。

 

 

彼は本気でカリスの仕掛けたゲームに参加するようだ。

 

 

 

---インフェルノ部隊長室----

 

 

「始まる・・・か・・・」

 

 

執務用の椅子に座り、メガネを外し背にある窓から見える夜空を見上げるカリス。

 

 

「私は運命に勝つ事ができるのか・・・」

 

彼らしくない弱々しい表情になる。

 

 

それを紛らわす為に机にあるワイングラスを手に取り中身を一気に飲む。

 

 

そしてある事を思いだす。

 

 

「あぁ・・・そういえば初めてハーナと酒を飲んだ時酷い目にあいましたね・・・」

 

 

去年、ハーナの副部隊長就任祝いに初めてアルコールを飲ませた事を思いだす。

兄妹水入らずクラナガンの三本の指に入るくらいの超高級レストランで地球から取り寄せた50年物の赤ワインをハーナが飲んだ時だ。

 

カリスは嫌われているとはいえハーナの実の兄だ。

だがそれでもたった一人の妹なのだからこういうめでたい場で妹を心の底から祝いたかった。

 

 

 

・・・がそうはいかなかった。

 

 

 

「まさかあれがあそこまで酒に弱かったとは。我が妹ながらつい驚きましたよ」

 

 

 

突如席を立ち、ワインボトルを手に持ち、一気に飲み始めたのだ。

 

 

 

 

 

---回想---

 

 

 

「ぷっはぁぁ!!オイ兄貴!!なかなかうめぇ酒飲ませてくれんじゃねぇかぁ!!」

 

 

 

 

 

「・・・は?」

 

 

妹の豹変ぶりに智将と呼び名があるカリスでもこの事態に上手く対応できない。

 

「よぉし!!オイそこのゴボウ!!オマエが今運んでるその酒よこせ!!」

 

 

店員の男からワインボトルを奪いとるハーナ。

 

多分そのワインボトルは他の客に運ぶ為の物だったのだろう。

 

当然そのまま黙って奪われる店員ではない。

 

 

ワインボトルを奪還する為ハーナの前に出る。

 

 

「お、お客様!その品は別のお客様がご注文された物なのでお客様の物で」

 

 

「うっせぇぇ!!」

 

 

「$&%$!#!!?」

 

 

声にならない声で叫ぶ店員。

 

ハーナが持つワインボトルに手を掛けようとした瞬間、

ハーナの右足が下から店員の股間にヒットする。

 

 

激痛のあまり床でのた打ち回る店員。

 

 

「ワハハハハハハ!!楽しい祭りはこれからだ!!」

 

 

 

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「おかげで店内はぐちゃぐちゃ・・・弁償としてかなりの額を請求されましたね」

 

その額はあえて言わないが、例えるなら一般サラリーマンの一年の平均給料の五年分と

でも言っておこう。

 

だがそんな額でもカリスにとっては大した額ではないのだが。

 

 

「しかも暴れた本人はやった事を覚えない上、飲んだ酒の味だけはちゃんと覚えていた・・・

本当に質が悪いですね」

 

 

思わず苦笑する。

その一件以来カリスはハーナにはノンアルコールの酒を飲むよう進めたが、

嫌っている兄の言う事などきかずその後も酒を飲み暴れた事があった。

幸いなのは最初みたいな店ではなくインフェルノ隊舍でしか事が起きなくなった事だろうか。

 

だがそれでも暴れた後の後片付けはハーナの部下がするのである意味インフェルノでの

重労働の一つでもある。

 

 

「しかしなぜあれはそうなるとわかっていながら飲むんでしょうかね・・・」

 

グラスにワインを注ぎ、少しずつ飲む。

 

 

「・・・私への嫌がらせでしょうか?」

 

 

笑ってしまう。

 

流石にそこまで子供ではないと思い、次会った時にでもこの事を聞いてみよう。

 

そう思った矢先に扉が叩かれる。

 

 

「入れ」

 

 

「失礼します」

 

 

カリスの声と共に一人の隊員が部隊長室へと入る。

 

 

「おやぁクランツ君じゃないですか」

入ってきたのは、実働部隊隊長であるヴァンの代わりでもある、

クランツ・エリクトン隊長代理だった。

 

天然の長髪の黒髪で遠くから彼を見れば女性にも見えるだろう。

 

 

「・・・部隊長・・・いい酒が入った・・・一緒に飲まないか?」

「これはこれは♪丁度私もコレクションの一つを空けて飲んでいたところなんですよ。

いやぁ〜実に気が利いてますねぇ」

 

 

クランツを来客用のソファーに座らせグラスをもう1つ用意し、端末で食堂に連絡し、

酒に合う料理を持ってくるよう連絡する。

 

 

「では、特に祝う事もないですがとりあえず・・・」

 

 

 

お互いにグラスを前にだす。

 

 

「「乾杯」」

 

 

 

クランツの持ってきた酒を飲みながら、カリスは今後の事を考える。

 

 

(私はおそらくそう永くは生きられないだろう・・・だが・・・)

 

 

カリスはやらねばならない事がある。

 

 

 

その為に彼は今まで生きてきたのだから・・・

 

 

(戦わなければ勝つ事などできはしない・・・その為に私は妹だろうと友だろうと利用する・・・

全ては・・・)

 

 

 

 

 

勝つ為なのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クランツに見えない角度で笑うカリス。

 

 

彼は一体何を思っているのか?その笑みは何を意味するのか?

 

 

 

そしてここでもまた1つ止まっていた運命が動きだした。

 

 

 

 

この運命がどのような結果を及ぼすかはまだ誰にもわからない・・・・

 

 

 

説明
時空管理局特務殲滅部隊---通称「インフェルノ」。そこには管理局員、次元犯罪者の両方が「赤き狂戦士」と恐れる青年が所属していた。そんなある日彼は、インフェルノの部隊長の命を受け新しく設立された部隊「機動六課」に異動する事になり、狂喜的な笑みを浮かべ素直に異動を受諾する・・・彼の笑みは何を意味するのか?
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インフェルノ なのはがヒロイン StrikerS 魔法少女リリカルなのは 

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