悪魔に転生した彼は老衰を望む |
あの堕天使との戦いの後、俺は気を緩めてしまったせいか倒れてしまったらしい。しかも、あの極限状態での緊張によるストレスと堕天使から受けた傷で3日寝たままだったらしい。そういえば堕天使の事だが、堕天使側も悪魔側も望まぬことだったので、お互い不干渉することに決まった。両親は怒っていたが、俺としては戦争が起こるのを出来るだけ遅くしたかったので、今回の事が火種になる前に消えて良かったと思っている。
そして俺は今回の戦いで色々なことを学び再確認することが出来た。
俺は絶対に死にたくない。
あの時慢心せず攻撃が避けられれば、あの時魔力が使えたら、俺は余裕で勝てただろう。でも考えてみてほしい。あの時光の槍が直撃していたら、体が動かずそのまま滅せられたら、光の槍がもっと速かったら、光の槍を出し続けることが出来たら、木の実が顔に当たらなかったら、俺は負けて、否死んでいただろう。
実戦における負けとは、死を意味する。そんなこと解っていた筈なのに、覚悟していた筈なのに。いや、理解は出来ても、どこかで楽観視していた俺が居たのかもしれない。…ああ、もうこの思考は止めようか。もう終わったことだ、今日か明日から猛特訓だな。
「もう大丈夫なのか?」
思考を終えると同時に父さんが部屋に入ってきた。
「うん、もう大丈夫。心配かけてゴメン。」
「そうか良かった…」
ホッとした顔をした父さん。そして顔つきが真面目になる。
「今回は、本当にすまなかった。まさか堕天使が来るとは…。お前の為にとしたことが、お前を危険に晒してしまうとはなんて情けない親なんだ。謝っても謝りきれない…」
「なに言ってんだよ」
「え?」
「今回については、逆に父さんに感謝したいくらいだ。俺の問題点も解ったし、死についても知ることが出来た。いつかは通る道だったんだよ、それをこの歳で知ることができて俺は感謝してもしきれない。」
これは俺の心からの気持ちだった。この答えに対する父さんの呆ける顔が面白くて俺は少し笑ってしまった。それに気付いたのか、父さんはいつもの顔に戻った。
「そうか…」
父さんはそれだけを残して部屋を出て行った。と、思ったらすぐに引き返してきて
「明日から修行を再開するぞ…あとメニューを変える。」
という死刑宣告に
「うん、出来ればとっても辛いやつね!」
「言ったな?明日からは地獄と思えよ。」
「はっ、上等だよ!」
その後、俺と父さんは二人で笑いあった。
余談ではあるが、この会話の翌日から数年間少年の叫び声が絶えなかったそうな…
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