ILKI 生章 一話 |
ポケモンは逃げていた。
自分の同属の仲間達には既に逃げるように指示を出してある。
ポケモンは四足歩行だった。
走るのは得意だ。
しかし、群れのリーダーである以上、狙われやすいのは当たり前だ。
ポケモンは追手を次々と蹴散らすごとに傷を負い、深い物を既に二、三負っていた。
ポケモンは群れのリーダーである以上、死ぬわけにはいかなかった。
狂獣、か。
かつて人間に付けられたあだ名。
幾多の人を殺め、仲間のために尽くした。
悪いのは人間だ。
その考えはいつも曲がらなかった。
「見つけたぞ!追え!」
人間の声がする。
厄介な事に、追手は銃を持っている。
こっちの能力に対抗するためだろうが、銃弾はポケモン達の能力よりもたちが悪い。
クソ!こっちはもう殆ど力が残ってないんだぞ!
流れ出るポケモンの血で逃げたルートは知られてしまうだろう。
それでも、逃げないよりはましだ。
不意に足がもつれた。
立ち上がろうとしても上がらない。
なんだ、撃たれたのか・・・。
「ようやく捕まったか。
まったく、手間かけさせやがって」
警備員の服を着た男は銃をこちらに向けた。
この場で処刑するつもりらしい。
ポケモンは最後の抵抗として思いっきり、憎しみをこめて睨みつけてやった。
効きもしない呪いもついでにかけてやろう。
「なんだ、その目は?」
ポケモンは静かに答えた。
「気に入らないならここで殺せ。
はあ、これで少しはこっち側の怒りも思い知ってくれたかな?
二千人、さっきの奴で達成した。
まったく、お前達も懲りないねえ。
俺達はお前等みたいなカスを始末してやったまでさ。どうせ同属にも良く思われてないんだろ?
俺達だって、人間の勝手な都合で滅びるのはごめんだからよ。
特にお前達みたいな奴らのためにな」
人間の男は何も言わなかった。
ただ、見下すだけだった。
ポケモンは最後に心の中で呟いた。
俺が死んでも、俺の仲間は全員生きてる事を忘れるな。
あいつらならきっと、殺ってくれる。俺以上に。
呟き終わるのと同時に意識は跡絶えた。
人間はポケモンを撃ち殺した。
狂獣と呼ばれた、そのポケモンを。
ポケモンは目を開けた。
まず目に入ったのは、白いリノリウムの床。
生きてる・・・?
ポケモンは立ち上がろうとして気付いた。
自分の手が違った形状をしていることを。
俺の手じゃない・・・!
手の色は、黒だった。
しかも、人間の手のような形をしていた。
足や胴体にも目を走らせる。
全てが赤と黒で彩られていた。
ふと、立ち上がってみる。四足歩行だと、違和感があった。
試しに、違う立ち方をしてみた。
二足歩行になると、違和感は無くなった。
そして、後ろの方に目を走らせる。
あったのは、赤い髪だった。
足まで伸び、綺麗な丸い髪飾りのようなもので留められていた。
間違いない。
ポケモンは悟る。
俺はゾロアークになって、蘇った。
慣れない体で首を動かすと、周りには学生服を着た人間達がいた。
全員、物珍しげにゾロアークを見ていた。
その人間のうち、最も近いところにいた人間が訊いてきた。男だ。
「お前、もしかしてポケモン?」
当たり前のことを訊いてきた。
ゾロアークがそうだ、と答えると訊いてきた少年はさらに言った。
「転生、してきたらしいな。
信じられんけど。そう思うしかないか」
少年は苦笑した。
説明 | ||
にじファンより移転。 ポケモンの二次創作であり、シリーズモノでもある。 |
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